ニヒルの夜
いつもそうだろう。
晩ご飯を食べたらすぐ横になるから寝ちゃうんだ。ばーか。ばーか。お前は本当に学ばないな。お、おい、お前まさか今からまたなんか作んのか。もう0時は回ってんだぞ。デブになるぞ、知らないぞ。
結構うまそうにできたじゃねぇか。部屋はカレーと中華が混ざったような鉄板焼きやの匂いがするけどな。バカが好きなもの全部混ぜたみたいなお好み焼き作りやがって。足を立てて食うんじゃないよ、行儀が悪いからな。聞いてないや。馬鹿馬鹿しい。おいおい、醤油かけすぎじゃないのか。血圧上がるぞ。
飯食ったらタバコ吸いにいくのか。お前は本当にどうしようもないな。こんな寒いのに外でんなよ。風邪引くぞ。タバコのためだけに外に30分も散歩するなんてお前は本当にわけわかんねぇよ。どこほっつき歩いてんのか知らないけど早く帰ってこいよ。風呂入ってないんだろ。
なんだって、中学校の隣の公園、なくなんのかよ。マジかそれは聞いてねぇぞ。それで小学校がなくなって小中一緒になんのか。マジか。そんなこと今まで聞いたことなかったぜ。あんなにお前とよく遊んでたのにな。なんか街が変わるのは切ないな。まぁいいから風呂入れよ、寒いだろ。
お前がなんて言ったってそれは間違えてるからな、俺はお前を信じてたんだからな。くだらないことを一生懸命にやるお前が好きだったんだからな。なんでやめちゃうんだよ。なんで無くしちゃうんだよ。まっさらなものに書き足すことはできるけど、一度全てを消したまっさらにしたら消し痕だけがいつまでも残るんだよ。なんで考えちゃったんだよ。なんでそんなこと考えちゃったんだよ。崩さないでくれよ。俺のために。
気に入ってくれてたなら嬉しいよ。そのために俺は無くしたんだ。わかるだろ?
俺は別に何をしたって本質的なとこには届かないんだ。誰だって誰でもないんだ。なんだってなんでもないんだ。神様からしたら戦争も風邪引いたくらいだ。何になりたかったわけじゃないんだ。ただ楽しかったんだ、お前がこれを聞いてくれるのが。
ニヒルの夜に
冷たい月
草の陰に
いるたぬき
良かったと思えるものが
この世を輝かせるのなら
良いと思えなかったなら
この世の形は分からなかったろうか
この世の形は感情で
もし何も思えなかったなら
この世の形は分からない
この世の形は分からない
さようなら