共同親権と養育費

 先日、共同親権の導入が決定した。詳細や議論については多くの識者が語っている(noteも多数あるはず)なので、気になったことを述べる。

 共同親権が必要になるのは離婚後の子の養育に関わる場面において、①子と同居しない(親権を持たない)親が子の養育に関われない(関わりづらい、逢えない)、または、②子と同居しない(親権を持たない)親が養育に関わろうとしない養育費を支払わない)、この2点において、同居しない親に対しても親権を付与することで養育に関われるようにする、また強制的に関わらせるためと理解している。この場合の親権は、旧大日本帝国憲法下における旧民法による「親が子を服させる権利」ではなく、「親の義務として未成年の子の養育監護を行う」ことである。「親権」、権利の形で表現されるから勘違いされるが、あくまでも「義務」である。議論や問題提起のいくつかは、これが掛け違ったままである。親にしてみれば①が(経済的には②も)大事であるが、この養育監護のために②が担保されるのであれば、特に経済的に保障されるのであれば共同親権は必ずしも必要ではない。特に同居している(現に親権を持っている)親に養育を放棄されている子にとっては、親権者たりえない親権者が本当に必要なのであろうか(子より親権者の変更請求を認めるべきではないだろうか)。

 視点を変える。

 私の子どもを幼稚園に通わせていた時の話である。2015年、3年保育の2年目から幼稚園の学費相当分の無償化が始まり、役場から「教育保育給付認定決定通知書」が届いた。この通知書を見て「要介護認定みたいだな」と感じた。双方とも、認定の等級が記載されており、サービスを利用する際にはサービス提供者に通知書の提示が必要であるのも共通である。

 介護保険法は2000年4月施行の法律である。高齢者の介護において、法施行の前後では考え方が大きく変わっている。一つは家庭内・家族に依存していた介護を「社会全体で支える」とした理念の変化である。もう一つは、施設入所などの介護サービスの利用に際して「(市町村による)措置から(個人とサービス事業者間の)契約へ」の契約主体の変更である。
 「子ども・子育て支援法」は2015年4月施行の法律であるが、理念や運用などで介護保険法を後追いしている部分が見受けられる。只、これは「支援を必要としている人(存在)を家庭(個人)から社会全体で支える」とした理念は共通であるので、枠組みを流用した方が制度設計及び運用がスムーズになると評価できる。

 支援が必要な存在、という視点を発展させる。

 高齢(及び病気や怪我)に伴う身体的精神的変化により成人としての判断能力を損なっている(または欠く)者において、介護保険のサービス利用やその他の契約行為を行なうのは難しい。一部はご家族の補佐で行える場合もあるが、他の家族との間で財産に関する争いが起こることもあるため、これを法の元で公正に行なう枠組みとして「成人後見制度」がある。これは2000年4月の民法改正で従来の禁治産者制度に変わって制定されたものである。
 子どもの場合はどうか。未成年の子どもは契約に必要な判断ができない、または不足しているとして、単独での契約が制限される。高齢者の場合は身体的精神的変化により契約が制限されるのに比して、子どもの場合は年齢要件のみで契約が制限されると考えて良い。となると、高齢者の扱いと子どもの扱いは共通性が出てくる。

 であるならば。

 未成年者における後見制度が「親権」である、と規定して良いのではないか。成人であれば裁判所によって後見人(補助人・補佐人)が選定されるところを、未成年者であれば親権者(通常は親)が民法により自動的に選定されているものと考える。


 今回、このnoteを投稿したきっかけを述べる。

 YouTubeの動画広告で、「貧困家庭なので給食を3人分食べます〜」というのが流れていた。背景は、離婚後の親の収入が少ない(さらに養育費が支払われない)などで経済的に困窮する事例がある、というものである。
 原因を切り分けると、①同居し親権を持つ親(多くは女親)が何らかの理由で就労できないか女性である又非正規労働者である等で収入が少ない、②同居しない親権を持たない親からの養育費が支払われていないか不十分である、③生活保護が利用されていないか利用できない(セーフティーネットとして機能していない)、が考えられる。これらは共同親権を導入した後でも大きく変わることがないと考えられる。
 であればまずは、③必要に応じて生活保護を利用した上で、①低所得者・非正規労働者に対する就労支援を行い、②同居しない親から養育費を支払わせ、子どもの貧困を解消することが必要であると考える。もっとも、④ネグレスト(養育放棄)も考えられるので、「子の養育を親のみに任せる」のは不適当なのかもしれない。

 最後にいくつか提案する。

 ①子の養育費は親権者(共同親権者)が負担すべきものであるので、離婚後に養育費の支払いがされない、また滞った場合は、法的強制力で養育費を代行徴収する制度を創設する。
 ②子の養育に関わる費用のうち、憲法第25条1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」で規定される生活保護相当分はベーシックインカムまたはナショナルミニマムとして給付する。
 ③ネグレストに対しては国・地方自治体が積極的に介入する。そのためには親権の停止、制限、特別代理人の選定、生活保護法における世帯分離を厭わない。

いいなと思ったら応援しよう!