'24 凱旋門賞 傾向と予想
こんばんは。今年も凱旋門賞の季節です。
オルフェーヴルから10年以上、日本馬は毎年のように参戦しながらも馬券にすら絡めていない因縁のレースです。
その一方で、昨年はスルーセブンシーズが4着に健闘、今年は2020年の覇者 Sottsass の全弟にあたるシンエンペラーが3歳で遠征、愛チャンピオンSでいきなり3着と、一縷の希望も見えてきていると言えそうです。
City of Troy, Auguste Rodin といった今年の欧州古馬芝中距離路線の中心となる2頭が回避、伏兵ながら KGVI&QES(キングジョージ)を制した Goliath は騙馬のため出走不可という混戦の中、栄光を掴むのはどの馬になるでしょうか。
例のごとく、情報の完全性および馬券の的中を保証するものではありません
ので悪しからず。
馬券購入は無理なく自己責任で。
傾向
昨年の記事('23 凱旋門賞 傾向と予想|ui (note.com))で触れているため以下に引用します。
単純にまとめてしまえば、馬場が渋れば狭義ドイツ血統、馬場が軽ければ Danzig(+α)の台頭という二極になります。
上記のように馬場によって傾向が異なることから、近年と比較した馬場状態を掲載しておくと以下の通りです。
今年は前日時点で一昨年と昨年の中間程度の馬場状態にあり、まとまった雨の予報も見られない(小雨予報はあったりしますが)ことから一旦は維持と考えて差し支えないと思われます。
→記事ツイートとほぼ同時に当日更新があったため数値のみ差し替えました。
中間よりは昨年にやや近い程度でしょうか。(24/10/06 17:35)
一昨年と昨年の中間程度→勝ち時計を 2:30.0 程度と想定すると、ロンシャン改修前も含めますが近いのは
の5年となり、これらをピックアップして好走馬の血統傾向をブレークダウンしておくと以下。
Sadler's Wells 内包は Galileo 内包に代表されますが安定感があり、巷で言われる(?)ほど相性が悪いことはないでしょう。
注目すべきは Danzig 内包も半数以上を占めていることと、狭義ドイツ血統内包がほぼ走っていないことの2点で、どちらかといえば一昨年よりは昨年に近い好走傾向になる可能性があります。
また Mill Reef (Nasrullah+Princequillo)、Mr. Prospector (Nas+fleet) 内包馬が多いことも目立ち、特に改修後の 2018,19年は Galileo~Allegretta~Miswaki 以外の経由から併せ持つ形で Mr. Prospector をクロスしている馬の好走が顕著となっています。
(やや脱線ではありますがオルフェーヴルの異質性が際立ちますね。)
予想
前章の血統整理を今年の出走予定馬に適用したのが以下。
また、血統面以外で今年注目しておきたいのが、冒頭でも少し言及した欧州古馬芝中距離路線の様相です。
City of Troy が今年の本路線トップに値することは間違いなく、Ghostwriter や Bluestocking など所謂 "物差し" 馬もいる一方で、
Auguste Rodin(・Zarakem)のピンパー振りや3歳馬の台頭、GIII・1勝しかしていなかった Goliath の KG 勝利など、"物差し" 馬のそれも含めて全体的なレベル感を推して図りづらくなっています。
細やかな適性の上げ下げがすべて紐解ければ理想ではありますが、上に取り上げたレースの勝ち馬が不在のこのメンバーであれば、いっそ切り捨てて別路線組から買うのも一考の余地があるのではないかと考えます。
◎Delius
パリ大賞3着→ニエル賞2着馬。
C.デムーロが乗っていれば本命まで…(C.Demuro×JC.Rouget は近5年で2勝コンビ)と思っていましたが、Sosie のオッズがだいぶ下がってきたのでこちらを印上に取っておきます。
無敗の3連勝でGIIIを勝ってからは格上の壁に跳ね返されているとも取れる本馬。
パリ大賞は最後方から大外に出して差し切れず3着、ニエル賞も後方から差し切れず(とはいえ、Look de Vega はしっかり差し切り)2着でしたが、まだ奥がありそうな走法。
Sosie を評価するのであれば本馬も十分に評価すべきでしょう。
Frankel×Doyoun の構成は血統傾向にかなり合致しており、父Frankel は以下のように凱旋門賞で確変中で、かつ今年の馬場想定+過去傾向から浮かんできた Mill Reef≒Riverman と Mr. Prospector クロスも持つ形。
鞍上は00年代にフランスのトップを走っていたジョッキーで、10年代はややスランプ気味も、20年代に入ってからは Mishriff, St Marks Basilica などの馬にここぞの代打騎乗で結果を出す場面も散見され、50歳にして初の凱旋門賞制覇なるか注目です。
○Sosie
今年の仏ダービー本命。
昨年は仏ダービー◎Ace Impact が凱旋門賞を制覇、今年も凱旋門賞を見据えて本命を打った本馬が仏ダービーは3着ながらパリ大賞→ニエル賞と連勝してこの舞台へ。
シンエンペラーと武豊の影響で5倍程度に甘んじるのであれば初志貫徹で本命を打とうと思いましたが、執筆中にどんどんオッズが下がってきた(5.9倍→4.9倍)ので対抗に置いておきます。
血統的には Sea the Stars×Shamardal でスピード決着にも対応しながら、母母父に Monsun を持ち道悪にも対応できる両刀タイプ。
Galileo を内包しないのはやや傾向から外れる部分もあります(Sadler's Wells は Old Vic 経由で5代内包)が、総合的に見て軸向きなのは本馬かと思われます。
内枠を引けたのも好材料で、上手く先行しながらオープンストレッチで抜け出せれば鞍上の凱旋門賞初制覇も十分に射程圏でしょう。
重圧に負けず、パリ大賞の走りを引き出せれば。
▲Al Riffa
武豊効果で人気しすぎですが、この位置に上げざるを得ない1頭。
前走ベルリン大賞を圧勝しましたがレベルは相当低く、これを額面通り評価はしづらいのが実情。
しかし前々走エクリプスSで City of Troy に0.2秒差詰め寄った2着、また遡ること5走前、昨年のギヨームドルナノ賞で Ace Impact に0.1秒差迫った2着が評価できる点。
Wootton Bassett×Galileo×Darshaan だから血統傾向にも相当合致しており、武豊×松島オーナーの悲願成っても全く不思議ではありません。
☆Aventure
不気味な魅力を買いたい穴候補。
2400m以上×重馬場で重賞2勝を挙げている本馬。
仏オークスでは1番人気に推されながら4着と敗れていますが勝ち馬とは0.1秒差。前走ヴェルメイユ賞は今回と同舞台で、古馬牡馬混合路線でも上位争いの Bluestocking に 3/4馬身差迫る2着。
Sea the Stars×Singspiel で血統傾向はカバーしつつ、母 Balladeuse は Singspiel×Rainbow Quest×Lyphard だから日本に親和性がありそうな形。
それでも母は仏ロワイヤリュー賞(当時GII・2500m)勝ちがありますし、本馬の走りを見ても欧州適性は高いと言えます。
古馬路線の様相、チャンスがありそうな日本馬の遠征、血統構成・戦歴など、どことなく 2012年の Solemia を彷彿とさせる要素が多く、インスピレーション的ではありますが軽視はしたくない1頭。
△Look de Vega
今年の無敗の仏ダービー馬。
ニエル賞では Sosie、Delius に次ぐ3着と案外な結果でしたが、ハナを切る形になったのは余り本意ではなかったはず。
仏ダービーは4番手ぐらいを追走して直線楽に抜け出す楽勝ぶりがやはり印象的で、3着Sosie、4着Ghostwriter という顔ぶれからも単体評価はすべきと思われます。
血統構成は Lope de Vega×High Chaparral×Cape Cross×Gulch で全体として傾向には合致。
赤オッズではあるものの、欧州オッズとの比較で日本オッズが甘くなっており、前哨戦3着とはいえまだ軽視はできないものと思われます。
△Bluestocking
既に何度も登場している本馬ですが、今年の欧州古馬牝馬の大将格。
プリティポリーS、ヴェルメイユ賞と牝馬GIを2勝、KGVI&QES2着・英インターナショナルS4着と古馬混合路線でも善戦中。
父Camelot は現役時代も種牡馬としても凱旋門賞への良縁には恵まれていませんが、母は Dansili×Distant View で全体として傾向には合致しそうな構成。また、英インターナショナルSの記事で触れた通り本馬は配合的な仕掛けに魅力があり、この点からも無視はできない1頭と考えます。
'24 英インターナショナルS 傾向と見解|ui (note.com)
(Zarakem についても触れています)
今年は矢鱈と引っ張りますが Solemia も Poliglote≒Vallee Dansante 1×2 と言える配合形でしたから、こういった仕掛けはやはり怖さがあります。
※道悪なら Fantastic Moon が本命候補でした。昨年記事も参照。
シンエンペラーについては Sottsass の全弟にあたるから特に血統的に説明することはなく、その意味でも好走して何ら不思議はないですが印を打ってもつまらないので打っていません。
(流石に3連系を買う場合には紐に入れておきます。)
前走の競馬も踏まえて、若き坂井Jがどこまで軌道修正できるかでしょう。
個人的にはシンエンペラーが勝とうが Al Riffa が勝とうが、かたや凱旋門賞馬の全弟を輸入して逆輸出、かたや欧州馬を共同所有して日本人騎手が騎乗という格好でもあり、間違いなくその一歩にはなれど、所謂 "呪い" は完全には解けないのではないかと思っています。
今夜、日本競馬界が阻まれてきた壁を一部でも崩せるのかどうか、静かに見守りたいと思います。
府中PVに行かれる方は(主に帰れなくならないよう)お気を付けて。
それでは良い夜を。
また来年もお会いしましょう。