Frogs episode 2

「5分前か」
誰ともなしにレンはつぶやいて、エレベーターのボタンを押す。
Mは、繁華街の雑居ビルの2階にある。
看板も何も出していないが、知ってる人間からしたら、無闇に知らない人間が来ないのでありがたい。

エレベーターが2階に着き、扉が開くと、目の前がMだ。長い通路などなく、少し歩き、引き戸を引く。
「おう!レン」
リョウの低い声が響く
「おう、全員集合か?」
「あぁ、タク以外な」
「タクは辞めただろ??」
そう言って、カウンターの椅子に座る。
カウンターの椅子には、奥にテツが静かに座っていて、そこから入り口に向かって、カズ、リョウ、俺の順番になっている。
「皆んな、待ってたよ」
テツが意味がありそうに声をかけてくる。
「なにか、トラブルか??」
俺は、少し不安になりながら尋ねる。
「タクの話しだ。俺とテツは知ってるがリョウとレンには、まだ言ってないから、ちょうど良かったよ」
カズが顔だけこちらに向けて言う。

「タク」Frogsのメンバーを1カ月前に辞めた、元仲間である。役割は情報屋と道具屋。
Frogsの創設を1番強く推したのもタクだ。その正確な情報で、いつも、俺たちをバックアップしてくれてた。そして、事実タクがいなくなってから仕事の量がグッと減った。

「とりあえず、何を飲む??」
カウンターの向こうから声がかかるナオだ。
「ハイボールをくれ、皆んなは頼んだのか??」
「俺はビールで、テツは昆布茶、カズはマリブミルク」
リョウが答える
「カズは相変わらずの甘党だな」
少し笑いながら言うと、カズはいつも言われているのだろう、ただ頷く。
この、カズは前にも言ったように、めちゃくちゃにイケメンで背も高い。そして、都内のK大学に通っていて、頭も良いし、コミニュケーション能力も高い完璧超人なのだが、大の甘党で酒はカルアかマリブ、タバコはCASTERで通している。女性からしたら、そこが母性をくすぐられるのかも知れないが。

飲み物がカウンター越しにナオから手渡され、全員に行き渡ると
「乾杯、Frogsに」
リョウが言うと全員が飲み物を上にあげ
「乾杯、Frogsに」
「大切な話しが、あるんでしょう??食べ物はこっちに任せといて。鯵の南蛮漬け、ポテトサラダ、蛸のぶつ切り、トマトスライス、玉子焼き、鯛のアラ煮、他になんかいる??」ナオが空気を読んで言ってくれる。
「それで良いよ」
カズが答えて、テツの方を見る。
テツは言いにくいそうに、こっちを見る。
「気にするなよ、別にタクと連絡を取ってたって怒らないよ。何があった??」
軽く促すようにテツに言うとテツは少しモゴモゴしながら話し始めた。
「実は、タクが辞めた後でもタクのスマホにタクに頼まれて、アプリを入れてたんだ、スケジュール管理のアプリに見えるけど、GPS機能が付いてて、位置情報も把握できる。タクは1週間に1回は必ずそのアプリに近況を入力して、生存確認を取るからチェックして欲しいって頼まれてて」
「なるほど、で、連絡がないのか」
「最初の2週間はあったけど、それから連絡無くて、気になってアプリを見たら、メモ機能に助けてくれって書き残してあったんだ」
テツは小さい声で呟くように言う。
「禁忌(タブー)を踏んだか??まさか、そこまで馬鹿じゃねぇだろ??」
リョウが叫ぶ。

禁忌(タブー)
日本にはあまり知られていないけど、それを調べる事も批判する事も危険とされていて、ネットで検索することすら、止めておいた方が良いとされるものがある。さすがに俺もそれは言えないけど、T、S、D、Y。代表的なもののイニシャルだけあげておく。知ってる人に聞いて欲しい。

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