忍殺TRPGリプレイ【プア・サム・シュガー・オン・ミー】04
前回のあらすじ:ニチョーム自警団の根城『絵馴染』に、またもトラブルが舞い込んできた。女ニンジャ・ブライカンが入れ込んでいるハイオイラン「オタマ」が、カラテカルト教団「ドクノキバ」に洗脳されたというのだ。しかし相手は複数のニンジャを抱える危険集団。ここは……交渉重点!
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「シューッ……あっちのボスと話をつけたわ」ドミネイターは目から血涙を流しつつ、タフに笑った。『然り!』ノレンの奥の神像が声を発した。教団のニンジャたちは一斉に神像に向き直りドゲザし、ニチョーム自警団のニンジャたちも深々とオジギして敬意を表する。お互いに礼儀は大事だ。
『我はアイアンコブラ。この教団の総帥である。先ほど我はドミネイター=サンからのドージョー破りの申し出を受けた。我が使徒タクシャカが、カラテのみで一騎打ちに応じるとな!古来の掟にのっとり、敗者は勝者に従うべし!』ゴウランガ!「私に何の相談もなく、そんな」『ダマラッシェー!』
ナーガストラは納得した。「我らが神の仰せであるからには、従わねばなるまい。勝てばよいのだ」「ちょっと!?」「ヒヒヒ!アンタ、ジツに頼り切りでカラテはいまいちだからなァ!」ブレードルークが身を起こし、肩を揺すって笑う。「……ご武運を祈ります」シャドウティアーも頷いた。
タクシャカは余裕を失い青ざめた。だが……使い魔であるカラテアナコンダの感覚を通じて、彼らの実力の片鱗は見せてもらった。ドミネイターは、ネザークイーンやブライカンよりは、カラテは弱い。ボックス・カラテはあるが反応速度はさほどでもなく、サイバネや武器で武装してもいない。
つまり、比較的与し易い相手ではある。ならば、やるしかあるまい。ここはカラテカルト教団の拠点たるドージョーだ。それを預かる使徒たる者が、ドージョー破りを挑まれて受けぬわけにはいかぬ!何より神の命令だ!「わかったわよ!やってやる!」タクシャカは覚悟を決めた!「グッド!」
試合成立
「ではこれより、神前にて試合を開始する!」ナーガストラが口上を述べ、続いてアイアンコブラの神像に深々とオジギし、タクシャカの勝利を祈るマントラを唱える。「一本勝負。カラテのみ。ジツの使用は失格だ」「「委細承知!」」タクシャカとドミネイターは頷き、神像に礼、互いに礼。
ザクロたちは固唾をのんで見守る。ニチョーム自警団代表のザクロか、オタマを連れ戻しに来たブライカンが挑むべきではあるが、あちらのボスと直に話をつけたのはドミネイターだ。ならば彼女が挑まねばならない!「頼んだわよ、ドミネイター=サン……!」ザクロはブッダやオーディンに祈る。
もしドミネイターが倒されれば、ニチョーム自警団は「ドクノキバ」の軍門に降ることになり、世界征服の片棒を担がされるだろう。ソウカイヤを敵に回せばニチョームはオシマイだ。その時は……全力で抵抗するしかない。「ハジメテ!」ナーガストラが宣言し、手を振り上げた!両者動く!
試合開始
1ターン目
「キエーッ!」先手必勝!タクシャカが飛びかかる!だがそのカラテはタツジンの域には達していない!「イヤーッ!」ドミネイターはボックス・カラテ・スウェーで躱し、連続側転して壁を蹴り、勢いをつけて飛びかかる!「シューシュシュシュ!」精密ジャブ連打!「イヤーッ!」見切って回避!
「シュシューッ!」タクシャカは蛇めいて姿勢を低くし、滑るような動きで床を這い回り、素早くカラテを繰り出す!コブラ・カラテだ!「シューシュシュシュ!」だがドミネイターはこれを見切って躱し、迎撃のボックス・カラテ!BOBOBO!SMASH!「ンアーッ!」命中!タクシャカはよろめく!
2ターン目
「シャアッ!」タクシャカは再び姿勢を低くして飛び込み、内臓を狙ったすくい上げるような掌底打を繰り出す!アブナイ!「シューッ!」ドミネイターは跳躍回避し、天井と壁を蹴って回り込み精密ジャブ連打!「シューシュシュシュ!」BOBOBO!SMASH!「ンアーッ!」命中!押している!
「どうだッ!アンタはアタシより弱い!」「勝ってからほざけ小娘めが!」タクシャカは痛みと屈辱に憤り、蛇めいて牙をむく!「キィエーッ!」タクシャカの反撃!「シューシュシュシュ!」BOBOBO!ドミネイターは見切って躱し迎撃!「イヤーッ!」コブラめいて柔軟ブリッジ回避!ワザマエ!
3ターン目
「ナメるなァ!キエーッ!」タクシャカはバネめいて体を起こし、回転しながら頭突き!SMASH!「ンアーッ!」命中!ドミネイターはよろめく!だがダメージを最小限にとどめ、反撃の精密ジャブ連打!「シューシュシュシュ!」BOBOBO!SMASH!「ンアーッ!」命中!手数の多さが違う!
「い、いいぞ!やれーッ!」ファイアランナーが声援を送る!「しっかりなされい!」ナーガストラは厳しく叱責!「ヌウーッ!イヤーッ!」タクシャカは必死で反撃するが、「シューシュシュシュ!」ドミネイターは華麗に回避し迎撃!BOBOBO!SMASH!命中!蝶のように舞い、蜂のように刺す!
4ターン目
カラテが礼拝所にみなぎり、空気が飴めいて粘る!麝香めいた甘ったるい香りの中、飛び散る汗と血!両者はまるで熱帯のジャングルで喰らい合うコブラとマングースだ!「キエーッ!」「シューシュシュシュ!」BOBOBO!SMASH!「ンアアーッ!」またもタクシャカにパンチが命中!タツジン!
「ヌウウーッ……!」タクシャカは怒りに燃え、隙をうかがう。こちらの鍛錬不足もあるが、なんたる強敵か。我らが神、アイアンコブラ総帥の御前でこのような醜態を晒すとは、なんたる屈辱か。だが、勝つのはこちらだ!彼女はニューロンをフル回転させ、最適のヒサツ・ワザを探り当てる!
「シャアッ!」タクシャカは……相手の腕に飛びつく!関節を極めながら倒れ込み、体重をかけて肘を破壊する凶悪危険なヒサツ・ワザ「ドクガ・ホールド」だ!ボックス・カラテの命である腕を破壊すれば!「アブナイ!」ザクロが叫んだ!だがインターセプトするわけにもいかぬ!瞬時に敗北だ!
どくん……!ドミネイターはアドレナリンを過剰分泌し、ニューロンを加速させた。010101……周囲に蛍光緑色の01が飛び交い、全てが泥めいて遅く感じられる。彼女はコトダマ空間を垣間見、そこに滑り込む。これはジツではない。ゆえに失格とはならぬ。タクシャカの腕がすり抜け、空を切る!
勝機!「イイイヤァアアアーーーッ!」ドミネイターはタクシャカの背後に回り込み、前傾姿勢で体重の乗ったスピーディーな連続フックを繰り出す!BOBOBO!「ヌウーッ!」ナーガストラが目を見張る。あれはボックス・カラテのインファイト・テクニック「デンプシー・ロール」だ!
どくん……!タクシャカもまたアドレナリンを過剰分泌し、ニューロンを加速させて、迫りくる拳を見切る!食らえば昏倒、しかし!「イイイヤァアアアーーーッ!」パンチに合わせてクロスカウンター!SMAASH!「……ンアーッ!」命中!食らったのは……ドミネイターだ!「どうだ、小娘ェッ!」
5ターン目
ダメージは少ないがドミネイターはよろめき、下を向いて動きを止めた。タクシャカの次の手は!彼女は目をギラリと輝かせ、全身のバネを用いて回転!相手の死角から入るように放たれたのは、頭部を狙った上からの右膝蹴りだ!「しゃあっ!コブラ・ソード!」ナムサン!毒蛇の牙が迫る!
「イイイヤァアアアーーーッ!」ドミネイターはカラテを振り絞り、必死で躱す!アブナイ!そして!「シューシュシュシュ!」BOBOBO!牽制の精密ジャブ連打!「甘い!イイイヤァアアアーーーッ!」タクシャカは跳躍回避し反撃!SMASH!「ンアーッ!」命中!躱しきれぬ!このままでは!
その時!ドミネイターの自我に溶けたニンジャソウルが揺らぎ、古代の光景が、小宇宙が、垣間見えた!彼女のカラテが爆発的にみなぎり、両目が白く発光し、全身に縄めいた筋肉が浮かび上がる!「イイイ……!イイイヤァアアアーーーッ!」腕を振り上げ、拳を突き上げる!アッパーカットだ!
「え」タクシャカはとっさに防御姿勢をSMAAASH!「ンア……アバーッ!」ゴ……ゴウランガ!彼女は瞬時に、流星めいた無数の拳に全身を打ちのめされ、空中高く打ち上げられた!「や……やった!」ザクロが身を乗り出す!「バカな……タクシャカ=サン!」シャドウティアーが目を見張る。
空中で意識を失ったタクシャカは、頭から落下!戦闘不能!ナーガストラはタクシャカが立ち上がらないのを確認し、手を振り上げた。「ソレマデ!勝負あり!」ドミネイターの、ニチョーム自警団の勝利だ!「ヤッター!スゴイヤッター!」ファイアランナーは大喜びし、ザクロは胸をなでおろす。
戦闘終了
エピローグ
『……見事であった』礼拝所の奥に安置された鉄の神像が声を発し、健闘を讃えた。彼は古代の神々めいて理不尽な存在だが、勝負においては潔い性格である。ドクノキバのニンジャたちは一斉にドゲザし、ニチョーム自警団のニンジャたちも深々とオジギして敬意を表した。お互いに礼儀は大事だ。
『未熟な我が使徒タクシャカよ、そなたはもっとカラテを鍛えねばならぬ』「は、ハイ」『他の者たちもよいな。勝負はついた。潔くニチョーム自警団の申し出を受諾せよ』「「「ヨロコンデー!」」」「じゃあ、いいかしら」ザクロが挙手した。『許す』「ドーモ。まずは、オタマ=サンの解放ね」
タクシャカとドミネイターは握手して健闘を讃え、治療を受ける。これは殺し合いではないのだ。……かくしてオタマはジム通いを継続しつつ、店に戻ることになった。そしてドクノキバことコブラ教団は、ザクロからの申し出を受け入れ、ニチョームの掟を守り活動を続けることになったのである。
相手は邪悪な手練れニンジャを複数抱えるカルト教団で、ソウカイヤを敵に回した危険な集団には違いないが、掟を破れば本尊のソンケイに関わる。少なくともニチョームにおいては奥ゆかしく振る舞ってくれるだろう。「誰が何を信じようが自由よ。健康増進と自衛のためならカラテ鍛錬も必要」
ザクロは肩をすくめて笑った。この甘い対応が、将来の禍根となるかも知れない。ただザクロとニチョーム自警団は、そうすることにした。「ほら、アレよ。『毒食う虫は皿も大好き』っていうじゃない」
【プア・サム・シュガー・オン・ミー】終わり
リザルトな