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【FGO EpLW アルビオン】第十三節 The Holy Grail

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(前回のあらすじ:決戦の地アルビオンのロンディニウムで、ランサー・マジェスティに立ち向かう一行。そこへ謎の存在ランサーライダーがインターラプトし、ランサーと交戦! 一行はその場を任せ、ランサーのマスター・ダニエルと囚われのマシュがいる、塔の頂上を目指す!)

「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』

アルビオンの首都ロンディニウムを、金色の光と赤黒の闇が駆け抜ける! まるで色付きの風だ! スリケンが舞い飛び、聖槍が閃き、魔槍がゆらめき、ゲルマニアナチ兵どもの首が刎ね飛ぶ! 右!左!ブリッジ回避からのメイアルーアジコンパッソ! ゴジュッポ・ヒャッポ! チョーチョー・ハッシ・ラリー!

ぎらり、とランサー・コンスタンティヌスの慧眼が光る。彼はランサーであり、いわばルーラーでもある。
「……なるほど。余と互角に撃ち合えるからには神霊の類か。神代の、東方の魔神、『蚩尤』……!」
ランサーライダーの顔がメキメキと歪み、嗤い啼き歓び憤るような表情を浮かべる。
『グググ……いかにも、我は蚩尤なり。ちと不本意な方法で現界しておるゆえ、そち如きコワッパに梃子摺らねばならぬがな!』

真名判明

ランサーライダー 真名 蚩尤

あの後……エンシェント・チャイナで蚩尤が爆発四散した後、虚数空間での不可思議な融合が起こり―――服部半蔵でも、将門公でも、木内惣五郎でもない、蚩尤の『断片』が出現したのだ。彼は虚数空間を泳ぎ渡り、聖杯を求め、様々な冒険を経てブリアレオスの空けた穴を通り、今ここに出現した。 カルデアのマスターたちの記憶はある。あるが、明確な味方ではない。彼の望みは……。

互いに七連続バック転を繰り出し、距離を取る。アイサツは大事だ。
『そちも真名を名乗らぬか、無礼者!』
「これはしたり。ドーモ、『コンスタンティヌス』です。そも、何用かな」

『グググ……無論、聖杯! そちを殺せば、そちが蓄えておる英霊どもの霊核も全て我がもの。我のに加えてそれだけあれば、我が望みは叶おうぞ!』
ナムアミダブツ! なんたるヨクバリ!
「それはこちらも同じ。そうなれば、カルデアの連中は後回しでよい。貴様を斃し、霊核を奪ってくれよう」
不敵に笑うランサー。

「とでも言うと思ったか」

低く呟くと、ランサーは片手で手刀を構え、眉間にシワを寄せる。
「我が宝具『世界継ぎ接ぐ凱旋門(アルクス・コンスタンティーニ)』は……過去の栄光を継ぎ接ぎしたものに過ぎぬ」
言霊と共に、手甲が輝く。空間が歪み、穴が開く。そこから……黒い影がいくつも湧き出す。シャドウサーヴァントの類か。

「ゆえに。過去の栄光、過去の記憶を継ぎ接ぎし。再利用できる」

襲い来るは、イシュタムの縄! さらに……ウェンディゴの風! 勾践の双剣! アイアンサイドと騎兵隊!

『霊核もない影法師めが!』

蚩尤も槍を構え、周囲の赤気と砂鉄から六体の影武者を召喚! 各々が英霊の影を組み伏せる! だが……。
『目眩ましにして、逃げおったか!』
空間の歪みが01消える。蚩尤はそ00110こへ01鈎爪を突10っ込み、こじ01101ける!

◆◆◆

塔の頂上。神殿めいた白く広大なホール。魔法陣と、白い祭壇。奥まった高い場所に玉座。そこに鎮座する金髪の少年ダニエル・ヒトラーが、マスターたちと対峙する。左右にぐねぐねと魔神柱のコピーたちが蠢く。ダニエルの奥には、縛られたマシュ。

「ようこそ、カルデアの代理人諸君。お初にお目にかかる」
「……なんだ、おめぇは。サーヴァントか」
「さにあらず。ぼくの名は『ダニエル・ヒトラー』。ランサー『コンスタンティヌス』のマスターさ」

「……ヒトラー、って」

絶句するマスターに、ダニエルは笑いかける。
「父はアドルフ・ヒトラー、母はエーファ・ブラウン。ま、君たちの世界にはいないようだが……」
「異世界から来たお坊ちゃまか。なんだか知らねぇが、お前を倒しゃァいいんだな、ナチ野郎」
「物騒な。ぼくは理想の世界を作ろうとしているだけだ。古の神々が愚かな人類の上に君臨し……」

『Wasshoi!』

ダニエルの長口上を打ち切るように、01虚空01101らランサーと蚩尤が出現!

「でえッ!?」
「おおランサー、そいつを連れて来てしまったか。まあいい、ここで全員、聖槍と聖杯の糧となるがいい!」

ダニエルが左手の甲の紋様を光らせ、『聖槍』の穂先を掲げる!一斉に襲いかかるコピー魔神柱! 荒れ狂う磁気嵐と色付きの風! 炎! 矢の雨! 幻獣たち! 降り注ぐ光線と泥の雨! 頭足類! 触手! 影武者と英霊の影! なんたるケイオス!

だが……カルデア側の英霊たちの動きが鈍い! ダニエルの持つ槍の穂先が、周囲から魔力を吸い上げている! その魔力はランサー・コンスタンティヌスへ流れ込み、そのカラテを嵩上げする!

「あっさり入れたと思えば、釣り出されたというわけか! 儂をナメおって!」
「マスター! 下がっていたまえ! 巻き込まれるぞ!」
「とっくに巻き込まれてンだよ! それより、ランサーはいいからダニエルを狙え!」
「ああ、奴を殺せば……」

ニヤリ、とダニエルが笑う。
「当然、それは想定済みだ。来い、ランサー」
ランサーが蚩尤を振り切り、ダニエルのもとへ瞬間移動する。
「マシュを人質にしようってのか」
「それもいいね」

ダニエルは―――マシュを抱え上げ、ランサーの背中へ飛び乗る。そのままズブズブとランサーの体内へ沈む。……両者が、ランサーに取り込まれた。ランサーの胸に小さなダニエルの顔が出現する。

『さあ、これでいい。サーヴァントとマスター、人質は一体となった。かかってきたまえ!』
マスターは下唇を噛むが、やけっぱちで叫ぶ!
「……構わねぇ、やっちまえ! 聖杯を手にすりゃ、こっちの勝ちだ!」

◇◇◇

「大帝! お覚悟!」
セイバー、エル・シッドが愛馬バビエカを跳躍させ、燃える双剣で斬りかかる!

「ゆけい、千里馬!」
アーチャー、冒頓単于が自分の馬を突進させ、その背後から万の矢を放つ!

『ああ、陛下! お恨み申し上げまする!』
キャスター、チャーナキヤが幻力を振るい、ランサーの皇后ファウスタの幻影を放つ!

ランサーは……二頭の馬を槍で瞬殺し、万の矢を紙一重ですり抜け、ファウスタの首を刎ね、キャスターの目の前に出現する。異常の武。カラテの化物だ。蚩尤やメーガナーダやブリアレオスが人間サイズのまま、超常のカラテを振るうに等しい。

「ですが、所詮は一個の武」
心臓を貫かれたキャスターが笑い、その肉体が鎖と化してランサーを絡め取る。幻術だ!

『所詮は人間あがりよ! イヤーッ!』「「はァッ!!」」
蚩尤が大槍を振るって襲いかかる! 馬を捨てたセイバーも上空から襲撃! アーチャーが再び矢の雨を放つ!

「小賢しいわ!」

ランサーが全身にカラテを漲らせ、鎖を引きちぎり、槍と剣と矢の雨を弾き返す。

「魔力を浪費させおって。お前たちが代わりとなれい」
ランサーがセイバーの胸元に聖槍を突き立て、霊核を抜き、死体を投げ捨てる。縮地。瞬時にアーチャーのワン・インチ距離に踏み入り、喉笛に聖槍を突き立て、首を刎ね飛ばす。両者の死体が爆発四散!
『かあッ!』
蚩尤が口から赤黒い舌を伸ばし、消えかかるアーチャーの生首を絡め取って飲み込む! 霊核獲得!
「ひいッ!?」
キャスターが怯える。こちらのランサーは、味方も喰らう気か。

『グググ……この場で死ねば、そちも我が糧よ。死なぬよう努力せい!』

コンスタンティヌスと互角に戦えるのは、やはり蚩尤のみ! キャスターは背後に下がりマスターを防護しつつ、幻術で蚩尤の援護にまわる!

「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』

なんたる凄まじいカラテ応酬! 両者の間に閃光が散り、カラテ衝撃波が周囲を薙ぎ払う!

「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』

だが、次第次第に……コンスタンティヌスのカラテが、蚩尤を上回る! 圧倒する! 魔力を吸い上げる!

「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『グワーッ!』

柄での薙ぎ払いが一発入った! グラつく蚩尤へ、カイシャクの一撃! だが蚩尤はこれを弾き、クロスカウンター気味に槍を繰り出す!
『イヤーッ!』
コンスタンティヌスは焦らず左の手甲を大槍の前に翳し、小円盾を生成! 攻撃を逸らし、弾き返さんとす! だが、そこに顕現したのは……おお、ナムサン! マシュ・キリエライトの姿! 魔力の集中にタイミングを合わせ、盾に己を投影したのだ!
「!?」
『ランサーさん! このままわたしごとンアーッ!
「グワーッ!?」
ナムアミダブツ! 蚩尤の大槍が、マシュごとコンスタンティヌスの掌を貫く! 躊躇一切無し!

『戯け者! 肉の盾如きで、蚩尤の槍を防げると思うたか!』
「いや、おい!?」
ツッコむマスターを尻目に、大槍から巨大な鋏めいた刃物が伸び……コンスタンティヌスの左肘を切断!
「グワーッ!」
『返してもらうぞ!』
イポン! そのまま左腕は背後へ放り投げられ、マシュの姿に戻る! 傷は浅い!
「よっしゃあ! でかした!」

ランサーは脂汗を流すが、即座に距離を取り、左腕を修復! マシュの宝具も半分奪われた!
「人質が効くとは思わなかったが、意外な方法で取り返されてしまったな。だが、もはや人質など不要!」
『グググハハハ……真のイクサはこれからよ!』

◆■◆

I’ve seen things you people wouldn’t believe.
All those moments will be lost in time, like tears in rain.
Time to die.

◆■◆

マシュに応急手当し、インド人の後ろに下がらせる。さっきの傷は浅いが、手足が折られてる。ヒデェ事しやがって。戦闘にゃ使えねぇし、今は動けそうにもねぇ。まぁ、好都合か。

「マシュ。センパイは見つかったか」
「……いいえ。じっとしてて下さい! 危険です!」
「そうかい。こいつらの目的なんざどうでもいいが、もう大丈夫だ。万事解決する」

笑ったつもりが、どうも声がシリアスになる。マシュとインド人が妙な顔をする。

『したら、行くぞ。◆◆◆』
「ああ。インド人も、頼むぜ」

立ち上がる。混沌の渦のど真ん中を、俺は歩む。前へ、前へ。金ぴかナチ野郎のとこへ。顔が引きつり、毛穴から脂汗が噴き出し、頭と胃袋がキリキリと痛む。大丈夫だ、死なねぇ。死んでも死なねぇ。あいつらが俺を殺すはずはねぇ。マシュともども、死なせるわけにゃァいかねぇはずだ。だから、大丈夫だ。捕まえには来るにしても。

おそらくはヒデェ顔で笑う。蚩尤とランサーとダニエルが訝しむ。戦闘力のないマスターが近づいてくるとは、捕獲してくれと言わんばかりだ。罠か、狂ったか、ってな。
『何か、切り札を持っているのか。近づくな。そこに立っていろ!』
「てめぇみてぇなクソガキに言われて、立ち止まってられっかよォ!」

エピメテウスが輝く。進路は前しかねぇ。鼻血と耳血と目血が出て、口からも血が流れる。だいぶ、慣れてきやがった。

◆◇

「「「■■■■■■■■!!!」」」

天が砕け、塔の頂上がブリアレオスに呑み込まれる。そこから触手が地上へ伸び、ガイアの力を補充せんとする。ブリアレオスとて、無敵ではない。ガイアとポントスの落とし子である彼は、大地か水と接触していなければ不死身ではなくなる。彼を投げ落とした天空(ウラノス)は、彼の居場所ではないのだ。

「「「・・・・・・・!?!?」」」

だが、彼の触手が、塔の中へ吸い込まれる。確かに塔も大地から生えているが、放つ光は天空のもの。聖なるアイテール。ならば、彼が引き寄せられる筋合いはない。いや、これは。この感覚は、大地のものだ。奈落(タルタロス)のものだ!

◇◆

父よ、御心なら、この杯をわたしから取りのけてください。
しかし、わたしの願いではなく、御心のままに行ってください。――――『ルカによる福音書』22:42

「マシュちゃんよ。今までいろいろあったが……俺はここまでだ」
「何なんですか! 無責任な、今更死ぬ気ですか!? 許しません!」
「おうよ。サヨナラだ」『ンだな』

BAGOOOOOOMMM!! ブリアレオスの触手が塔の壁や床や天井を突き破り、◆◆◆へ引き寄せられる!

「聖杯は! ここにあるぜ!」

水晶髑髏が、衝撃で粉微塵に砕けた。

血飛沫。破片。

「…………え?」

◆◆◆の頭部が砕け、眼球と脳漿が飛び散る。胴体がひしゃげ、四肢がもげ飛ぶ。のたうつ触手が死体をネギトロにし、喰らい、飲み込む。
ダニエルとランサーが眉根を寄せ、マシュが絶句する。

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三宅つの
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