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【AZアーカイブ】神聖マルコメ帝国AZ 第五話
俺、なんでこんなもん必死に書いてんだろ?
ナオンと……である。略し過ぎ?
『神聖マルコメ帝国AZ(あのゼロ)』
第五話 MG部隊設立
前回のあらまし:ルイズの誇るワルドによって、ファーザーたちは安全に晒されていたが、ワルドはブタッキー(中森)だったので、ファーザーたちは危機に晒された。
港町ラ・ロシェールに到着して二日目。明日の朝にはアルビオン行きのフネが出る。ファーザーは中森に決闘を申し込もうとして、取り巻きのナオンたちに、よってたかって殺された。なぜか僕、マリコルヌも一緒に。ああ、何だか危ない被虐趣味に目覚めそうだ。
「おのれ―――、あのブタのばけもん、ブタッキーめがー!! なぜわしの前途には、いつも男と犬の魔手が伸びているんじゃよ―――!!」
「……男と犬?」
ファーザーの妄言は、いつも何が何だかさっぱり分からない。部屋で昼食(トンカツ定食)を食べる僕が訝しげにしていると、ファーザーは蔑みと憐みの混じった口調で語り始める。
「フン、きさま……まだ男と犬の恐ろしさを知らんと見える。いいか? 有史以来常に人類社会とともに存在し、あらゆる重要な場面に現れ、世界を動かしてきた謎の組織―――『男』。そしてその尖兵が『犬』とヤクザじゃよ。歴代教皇の全ては男で占められ、かつてナオンが教皇になったという事実は、すでに伝説として歴史の闇の中に沈められている―――」
「……そりゃ、嘘じゃないけど。男って、別に全世界的に秘密組織を作って、計画的に活動しているわけじゃないだろうが」
「なあに、世間にそう思わせておくのが、奴らのやり口よ。奴らの秘密を知ったものは皆、狂人として社会から隔離され、密かに葬り去られてきたという……」
「お前の病的妄想なんぞどうでもいい。今は中森をどうにかしないと」
「ふむう、そうじゃった。ではここに主権者たるわしの名において、神聖マルコメ帝国における『MG部隊』の設立を宣言する。」
(バーン ドドーン ジャーンジャーンジャーン ゲェッカンヌ)
「……何だそれ。」
「フフフ、まぁわしに全て任しておくのじゃよー。(ピーン)」
【MG(MOTEMOTE GAIJIN)部隊】
MG部隊とは、MO(モテる男)を地上から抹殺するために創設された、
顔・体格・性格など、すべてがトップクラスのMNO(モテない男)から編成される最精鋭武力集団で、国軍に属する公然軍事SOG(特殊作戦部隊)にあたる。
《隊規》
一、ナオンにもてる者は殺す
二、ナオンにいいよる者は殺す
三、ナオンにもてない者と友達になりたい
「かつて天下にMNOを募った際、猫ばかりが募兵に応じた上、はからずもブタッキーが現れた苦い思い出がある。今回の募兵には慎重を期さねばにゃー」
「モテない男っつっても、僕らのパーティーでは、他に男はギーシュとヘビトカゲとサイトしかいないぞ。ヘビトカゲはともかく、ギーシュとサイトは一応MOだろうが」
「ボケーーッ、任意のカップルからナオンを引き算すれば、たちまちフラレナオンとMNOが発生する。この悪魔の方程式をあてはめるとじゃなー、つまりあのーあれー、日野を釘宮から引き抜こうってわけよ。バールのようなもんについてる釘抜きで」
「そんな神をも恐れん真似が、お前のような存在に可能なのか? 異端審問官に連れて行かれて、略式宗教裁判ののち、火炙りにされるのがオチだぞ」
【いろんな事情があるので、危険なネタはほどほどにしておく。】
こいつのたわ言は9割がた聞き流したほうが良いが、たまには真実を含んでいることもある。それを見つけ出すのが、正気を保っている僕の役割だろう。
「……つまりお前の妄言からノイズを抜いて整理すると、サイトをけしかけて中森と戦わせればいいんだな?」
「然り。両者共倒れしたのを見計らって、ナオンたちをいただいちまおうぜ? ホホホ、これを『才人争豚の計』と申します」
と、そこへ忍び寄る一つの影。
「ふーん。あの中森って奴と、俺を戦わせようってのか」
「うわあ、サイト!? 今の話、聞かれていたのか?」
「しまった、機密が漏洩したー! ええい、死ねこの脇役!! きさまの死を通じて、人間的に成長してやる!!」(グオオ)
ファーザーは混乱して殴りかかるが、サイトは思わず背中の長剣を抜き、振り下ろす。
「誰が脇役だ、この変態おやじ!!」(ザシュッ)
【ファーザー死亡】
「あ。し、しまった、つい……」
「大丈夫だって、こいつしばらくすれば生き返るから」
◆
僕とサイト、それに復活したファーザーは、部屋の中で密談を始めた。
「―――まぁ、俺もあいつにはムカついてるから、見返してやりたいな。ちくしょう、俺のルイズを……」
「じゃあ話は早い、さっさと中森に決闘を申し込んで来いよ」
「……でも、あいつは強いし。見た目はどう見ても、ただのデブオタなのに! なんでだ! なんでなんだよ!! ちくしょう!!(ガッ)」
「サイト……」
ファーザーが、自暴自棄になっているサイトを叱りつける。
「ええい、夢をあきらめるな斉藤。悪・即・斬の壬生狼の誓いを忘れたか!」
「俺は斉藤じゃなくて、平賀才人だってんだろうが、変なおっさん! つうか、そんなの知っているって事は、あんたも地球から来たのか? 宇宙人とか言ってるけど」
「わしは善良なる一般宇宙人じゃよー。細胞内によくわからないオルガネラが存在し、DNAは左巻き。あと、パンツ丸見えなのは宇宙の掟です。ちなみに旧町田市民(市民権なし)。」
「……まあ、どうだっていいよ。大体、あんただって中森に決闘申し込んで、ルイズたちに殺されてたじゃねえか! キュルケやタバサも味方につけてるし、この俺があんなのに勝てるわけがねえよ!」
フッ、と鼻で笑うファーザー。
「やりもせんうちから敗北主義とは、正しい思想教育が必要じゃなー、このダメな負け犬。いいか? これは帝国全体の総意であり、すでに作戦は開始されている。ならばこのわしが、きさまをMG部隊員に相応しい男として叩き直してやるぜ! そこの広場までついて来い!!(ゴオー)」
【阿鼻教官】
阿鼻教官は、神聖マルコメ帝国海兵隊におけるハートマン軍曹的存在であり、彼のしごきに耐えて生き残った者は一人もいないと噂されている。
「よーし微笑みデブ、まずはきさまがブタッキーの代わりとしてサイトと立ち会え。どっちも本気でやらねえと、この『破壊の杖』が火を噴くぜ?(チャキ)」
「うわあお前、何持って来てんだ学院の秘宝を!?」
「それ、俺が使っちまったから、もう弾はないはずだぞ。どうやって持ってきたんだ? ま、ドットとスクウェアの違いこそあれ、マリコルヌも中森も風メイジ。練習相手としては悪くないかもな」
サイトが長剣(デルフリンガーという魔剣らしい)を構え、僕も仕方なく杖を抜く。これもまあ、友情のためだ。あと自分のためでもある。なんだか決闘騒ぎと聞いて、どこからかギャラリーが集まって来たが。
◆
そして、夕方。僕の百戦百敗、とばっちりでファーザーが6回ほど死亡した。サイトには怪我一つない。あいつって、こんなに強かったのか? ……ああそうか、僕が弱いんだ。
「よーし、何か吹っ切れたぜ。ありがとな、マリコルヌとファーザーのおっさん! 負けて元々だ、中森にケンカ売ってくる!」
『ひゃひゃひゃ、調子を取り戻したじゃねえか相棒! その調子さ!』
「……うう、今回の作戦の意図は何じゃっけ。なぜこうなった?」
「―――というか、サイトが仮に中森に勝ったら、あいつがMOに復帰するだけだろうが。案外、負けてもナオンたちに心配してもらえるかも」
「くっ、他兵を借りて敵を討つというところに、そもそもの誤りがあったか。このままでは軒を貸して母屋を取られ、深山に虎を放って身を守るようなもの。ならばいっそ宿屋に火計を仕掛け、二つの害悪をすみやかに排除して」
「やめろ!!」(ドガッ)
ファーザーを殺してから、疲れた体を癒すべく、僕は一階の酒場へ向かう。
早くも日は落ちて、二つの月が夜空に浮かんでいる。酒場に行ってみると、サイトがなぜか中森と打ち解け、楽しげに酒を酌み交わしていた。ナオンたちと一緒に。……ナオンたちと一緒に。
「ふーん、中森さんも数年前に日本から来たのか。名前で分かるけど奇遇だなー、しかも秋葉原からかよ」
「ええ、ほんと早く帰りたいです。でもなんだか知らないけど強力な魔法使いになってるし、ワルドって貴族に気に入られて養子にされてるし、とんとん拍子に出世しちゃって、どうしようかって。あと、あのファーザーって人も見覚えがあります。よく思い出せないけど」
「ええっ、中森子爵って異世界から来たの? ロマンチックだわ」
「あはははは、すげーなあ。俺なんかただのアキバ系高校生だぜ? 『ガンダールヴ』なんて伝説の使い魔らしいけど、ご主人様のルイズからは犬扱いだし。いっつも鞭でしばかれてるから、そのうちマゾに目覚めそうだよ」
「ははっ、なんだか僕と気が合いそうですね。頑張って、一緒に地球へ帰りましょうよ」
「ぎゃっははは、二人の友情にかんぱーい」
「もーっ、私たちも混ぜてよ、かんぱーい」
―――もういい、僕のことはほっといてくれ。部屋に帰るとしよう。
飛行船が出港するのは、明日の朝か。まあ、ファーザーは置いていこう。
ギーシュも自分の部屋でのんだくれているだろう、いつも通り。
そう思った時、突然背後で轟音がした。
振り返ると、岩でできた巨大なゴーレムの足が、今までいた広場全体を踏み潰していた。見上げれば高さは30メイル、トライアングルクラスの大きさだ。まさか、アルビオン貴族派の刺客か?
……あ、そう言えばあそこにはファーザーが。まあいい、急いで逃げなくては。
「きゃああああ!?」「いかん、敵襲だ!!」「くそっ、酒場に踏み込んで来たぞ!」
中が騒がしい。サイトたちがいる酒場にも、別の敵が来たようだ。くっ、僕はどうすれば? 無関係を装って、部屋から荷物を持って、こっそり抜け出そうか? ええい、しかし見殺しにするわけにも……。
「おおおおおおおおおお、胸くそわり――――――!!!」(カッ)
絶叫、閃光、爆音。広場に立っていた30メイルの巨大ゴーレムが、唐突に爆発した!
「なっ!!?」
ゴーレムは瞬時に『土くれ』に変わり、砂埃がもうもうと立ち込める。
僕は呆然と、それを見ていた。
……そこに立っていたのは、血塗れのファーザーだ。いや、流血は速やかに止まり、傷口がどんどん塞がっていく。しかも胸にある謎のルーンが光り輝いていた。まさか、アレの力なのか!? いや、ルーンだけではない。頭頂部の赤色灯も耳の突起物も、目や鼻や口や指先も輝きを纏っている。いっそ神々しいほどだ。パンツ一丁のくせに。
「……こ、これが、わしの超能力(ちから)……? で、できたぜ、幻の大技『バンカラきりもみレーザー』が!!」
【バンカラきりもみレーザーとは、「胸くそわりー」の叫びを合図に、バンカラな人から全方位に発射されるレーザーである。欠点はみさかい無く発射される事。時々バンカラは巻き込まれて死ぬ。】
(続かない。)
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