忍殺TRPGリプレイ【ライド・オブ・ザ・ヴァルキリーズ】02
前回のあらすじ:謎のニンジャ・アシッドウルフの指令と指導のもと、三人の若き「鷲のニンジャ」たちは次々と任務をこなし、なかなかの手練れに成長しつつあった。次の任務は、オナタカミが開発した新型戦闘兵器の実験場に潜入し、プロモーションを妨害しつつ機密情報を盗み取ることだ!
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ダンゴウ
ソード山脈の地下秘密アジト、ブラックサイトの作戦司令室。充分な休息をとった後、アシッドウルフはここに三人を呼び集め、次の任務を伝えた。「磁気嵐の荒野で、お前たちが遭遇した戦闘兵器について。あれはオナタカミ社の新型ロボニンジャ『モータートラ』だ。ドラグーンとも呼ばれる」
アシッドウルフはモータートラの機密情報を記したファイルを机の上に投げ出す。「その機能テストのため、オナタカミはネオサイタマ南部の荒廃した市街地を購入した。数日後、そこにメイライ社の役員たちが訪れる。プロモーション演習の見聞にな。それを妨害し、失敗させる。それが任務だ」
「「「ハイ」」」三人は頷いた。「オナタカミとメイライには疎遠でいてもらう必要がある。お前たちも先の遭遇戦で因縁があるだろう。そして、目的はそれだけではない」アシッドウルフはフロッピーディスクを懐から取り出し、アースハンドに投げ渡した。「機密データを抜き出して来い」「ハイ」
「外で騒ぎを起こして敵を引き寄せ、その隙にデータセンターへ潜入しろ。つまり二手に分かれることになるが、いけるな」「「「ハイ!」」」三人は力強く答えた。「よし。モータートラ、ないしドラグーンは、バイクに変形する機能がある。ハッキングで制御を奪い、脱出に利用して持ち帰れ」
「「「ハイヨロコンデー!」」」実際シンプルだ。この任務のために、アシッドウルフはアースハンドにハッキングスキルを叩き込み、サイバーメイヘムには戦闘兵器や重サイバネ相手に有効な、内蔵型パルスダガーを与えた。デッドリーパーは二人のサポート役だ。いざとなれば切り札もある。
アシッドウルフは必要な情報を伝えた後、告げた。「お前たちの存在は、すでに相手には露見している。必要以上に隠密にこだわることはない。派手にやれ。強敵からは逃げ、生存を最優先しろ。俺やここの存在は絶対に秘匿しろ。いいな」「「「ハイヨロコンデー!」」」「よし。行動開始!」
兵器実験場
ネオサイタマ南部、オナタカミ洋上本社要塞の対岸、ケオサキ地区のさらに端。荒廃した小さな都市区画まるごとをオナタカミが買い上げ、実戦に近い市街地戦闘シミュレーションが可能な兵器実験場とした。区画の全体は高い壁に囲まれ、壁の上には武装したトルーパーや監視ドローンが巡回する。
日本国とキョート共和国の戦争により、軍事兵器の需要は急速に高まっている。事実上の日本国軍である湾岸警備隊に強固なパイプを持つオナタカミは、競合他社のオムラに対抗するためもあり、戦闘兵器の開発と実験に余念がない。それらは治安維持警察組織ハイデッカーにも配備されつつある。
この物騒な実験場は、その訓練と売り込みのためのデモンストレーションを行う場だ。あちこちにオムラのモーターヤブ、クローンヤクザ、捕獲されたアウトローやアナキストなどが配置され、モータートラ……オナタカミでの正式名は「ドラグーン」……の小隊が、それらを走査・識別・撃滅する。
◆ドラグーン(種別:戦闘兵器/クローンヤクザ)×3
カラテ 5 体力 8
ニューロン 3 精神力 -
ワザマエ 8 脚力 4
ジツ - 万札 -
攻撃/射撃/機先/電脳 5/ 8/ 3/ 3
◇装備や特記事項
●アームバルカン×2:連射4、バースト2×2
●アームパンチ:近接武器、ダメージ2
●移動スタイル:モーターサイクルモード 一時的に脚力2倍、ナナメ移動可
●高機動回避:射撃回避ダイスを毎ターン、ニューロン値に等しい数獲得(回避H)
●クローンヤクザ生体脳:精神攻撃系のジツに対して「クローンヤクザ」とみなされる
精神力ダメージは体力で受ける スキルによる精神攻撃は無効
●ラン&ガン連携:オペレーター指揮スキル
2体以上のドラグーンによる集中射撃は「まとめて回避」不可
◉タクティカル移動射撃
◉シャープシューター:集中時に射撃+3
◉疾駆
◉突撃
能力値合計:16
区域内には、ドラグーンの戦闘を中継・記録するための監視カメラも多数配置されている。これらはドラグーンが走行する地上へと向けられており、荒廃した建物の内部にはほとんど存在しない。高い場所を移動すればカメラに写ることもないが、監視ドローンやニンジャには発見されやすくなろう。
三人は監視の目をかいくぐり、しめやかに実験場へ潜入した。事前に作戦はダンゴウ済みだ。アースハンドはウイルス入りフロッピーを懐に隠し、データセンターへ向かう。デッドリーパーとサイバーメイヘムは陽動だ。「さあて、派手にやるわよ」「うん」二人は闇に潜み、顔を隠して駆け出した!
行動開始:陽動班
二人は実験場の南東に潜入した。道幅の狭い直線道路が1本通り、そこから枝分かれする形で複数の十字路やT字路が構築されている。小規模な建物が非常に入り組んだ状態で混在し、モーター兵器では通行困難と思われる裏路地が多数存在する。まずはここから行動を開始するとしよう。
物陰に潜んで様子を見ると、中央の道路に三機のドラグーンがバイクの形状で移動してきた。その時!「「「ザッケンナコラー!」」」建造物の窓から武装したクローンヤクザ部隊が顔を出し、ロケットランチャーやアサルトライフルでアンブッシュを仕掛けた!BRTTTTTT!BRTTTTT!KABOOOM!
『『『ピガーッ!』』』激しい攻撃にドラグーン部隊は回避しきれず、ダメージを食らう!だがこれしきでは破壊されない!『『『反社会的市民から攻撃を受けました。正当防衛重点』』』ドラグーンたちはアームバルカンを展開し、クローンヤクザたちを狙う!アンブッシュのチャンスだ!
戦闘開始
1ターン目
「イヤーッ!」サイバーメイヘムは物陰から飛び出し、監視カメラの死角に回り込んで内蔵型パルスダガーでドラグーンへ攻撃!ZZTZZT!『ピガーッ!SAYONARA!』KABOOOM!ドラグーンは爆発四散!「TAKE THIS!」デッドリーパーは物陰から二挺拳銃を構えてドラグーンへ連射!BLAMBLAM!
『『反社会的勢力!』』残る二機のドラグーンはなめらかに後退しながら、デッドリーパーとサイバーメイヘムへアームバルカンを向ける!AIによる高度な独自判断だ!BRTTTT!BRTTTTT!「「イヤーッ!」」だがニンジャに銃弾はめったに当たらぬ!難なく側転回避!「「「スッゾコラー!」」」
窓から顔を出したクローンヤクザたちは、オートマチック自動的にドラグーンめがけアサルトライフルで一斉射撃!BRTTTTTT!『ピガーッ!』一機に命中!だがもう一機はジグザグに動いて銃弾を高機動回避!『『反社会勢力をこの区画から排除します』』無機質な電子音声で威嚇する!
2ターン目
「イヤーッ!」サイバーメイヘムは連続側転を繰り出してドラグーンへ追いつき、パルスダガーで刺突!ZZTZZT!『ピガガーッ!SAYONARA!』KABOOOM!爆発四散!「TAKE THIS!」BLAMBLAM!デッドリーパーが残るドラグーンを撃つ!『ピガーッ!』一発命中!だがなおも動く!
『ピガガーッ!』BRTTTTTT!ドラグーンはよろめきながらサイバーメイヘムへ銃弾を降り注がせる!「イヤーッ!」回避!「「「スッゾコラー!」」」BRTTTTT!クローンヤクザ部隊の一糸乱れぬ一斉射撃!『ピガガガガーッ!SAYONARA!』KABOOOOM!ドラグーンは爆発四散!全滅!
戦闘終了
「「よし」」二人は頷きあい、しめやかに隣の区画へ駆け去った。クローンヤクザたちも頷きあい、窓から顔を引っ込める。乏しい自我でニンジャらの戦闘訓練の一種だと状況判断したのだろう。それは実際間違ってもいない。だが、ドラグーンをモニタリングしていた者たちはやや不審に感じた。
行動開始:潜入班
その頃、アースハンドは兵器実験場の中心部に聳え立つ、要塞化されたヘッドクォーター(HQ)への潜入に成功していた。ドラグーンの監視や制御の他、戦闘データのフィードバック、様々な戦闘兵器の研究開発が行われる司令塔だ。そして、定期的に資材搬入トラックが出入りしている。
アースハンドはそのトラックの積荷に潜み、容易に侵入できた。戦闘兵器の実験場に好き好んで入り込むのは狂人か斥候ニンジャぐらいだろうが、意外にも警備は手薄である。彼はまず清掃スタッフを手早く眠らせ、衣服とIDカードを奪い取って変装し、大型の清掃カートを押しながら先へ進んだ。
ウィーン……ガコン。『最上階ドスエ』電子マイコ音声が鳴り、清掃員に変装したアースハンドは清掃カートを押してしめやかにエレベーターを降りた。現在地は、無機質な壁と床に囲まれたエレベーターホールだ。正面には観測室に繋がる大扉。左右には各々制御室と工房に連結する通路がある。
事前の情報収集とニンジャ第六感により、この階層の構造は掴んでいる。観測室にはオナタカミやメイライの役員、その護衛ニンジャらがいるはず。目的地はその逆側、北に位置するサーバルームだ。当然セキュリティは厳重。この階層の上級オペレーターのIDを手に入れなければ侵入はできない。
殺す……のは、目立つ。どうにかして盗むことになる。清掃員の姿なら見咎められないにせよ、どうしたものか。アースハンドは地を這う蛇の如く、狡猾に知恵を巡らし、慎重に立ち回らなければならないのだ……!
【続く】
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