忍殺TRPGリプレイ【ライド・オブ・ザ・ヴァルキリーズ】03
前回のあらすじ:謎のニンジャ・アシッドウルフの指令と指導のもと、三人の若き「鷲のニンジャ」たちは次々と任務をこなし、なかなかの手練れに成長しつつあった。次の任務は、オナタカミが開発した新型戦闘兵器の実験場に潜入し、プロモーションを妨害しつつ機密情報を盗み取ることだ!
◆
行動開始:潜入班
その頃、アースハンドは兵器実験場の中心部に聳え立つ、要塞化されたヘッドクォーター(HQ)への潜入に成功していた。ドラグーンの監視や制御の他、戦闘データのフィードバック、様々な戦闘兵器の研究開発が行われる司令塔だ。そして、定期的に資材搬入トラックが出入りしている。
アースハンドはそのトラックの積荷に潜み、容易に侵入できた。戦闘兵器の実験場に好き好んで入り込むのは狂人か斥候ニンジャぐらいだろうが、意外にも警備は手薄である。彼はまず清掃スタッフを手早く眠らせ、衣服とIDカードを奪い取って変装し、大型の清掃カートを押しながら先へ進んだ。
ウィーン……ガコン。『最上階ドスエ』電子マイコ音声が鳴り、清掃員に変装したアースハンドは清掃カートを押してしめやかにエレベーターを降りた。現在地は、無機質な壁と床に囲まれたエレベーターホールだ。正面には観測室に繋がる大扉。左右には各々制御室と工房に連結する通路がある。
事前の情報収集とニンジャ第六感により、この階層の構造は掴んでいる。観測室にはオナタカミやメイライの役員、その護衛ニンジャらがいるはず。目的地はその逆側、北に位置するサーバルームだ。当然セキュリティは厳重。この階層の上級オペレーターのIDを手に入れなければ侵入はできない。
殺す……のは、目立つ。どうにかして盗むことになる。清掃員の姿なら見咎められないにせよ、どうしたものか。アースハンドは地を這う蛇の如く、狡猾に知恵を巡らし、慎重に立ち回らなければならないのだ……!
陽動班:南
陽動班の二人、デッドリーパーとサイバーメイヘムは、兵器実験場の南東区画でドラグーン小隊を撃破した後、西へ移動した。中央のHQの真南にあたり、幅の広い道路が東西に突き抜け、見晴らしが良い。このまま時計回りにHQの周囲で騒ぎを起こし、工作をやりやすくすればよいわけだ。
クオオー……クオオー……!道路に黒い無人バイクが三つ駆けて来る。ドラグーン小隊だ!『『『南東地区へ急行します』』』どうやら先程の騒ぎを不審がり、追加の部隊が派遣されたようだ。クローンヤクザ部隊はいないが、相手はこちらには気づいていない。またもアンブッシュのチャンス!
戦闘開始
1ターン目
「「イヤーッ!」」サイバーメイヘムとデッドリーパーは、ドラグーン小隊に物陰から飛びかかる!ZZTZZT!BLAMBLAMBLAM!KRASH!『ピガーッ!SAYONARA!』KABOOOM!たちまちドラグーン一機が爆発四散!『『反社会勢力による襲撃!射殺!』』残るドラグーン二機が戦闘態勢に移る!
クオオー!クオオー!ドラグーンたちは高速で距離をとりながら、デッドリーパーめがけアームバルカンを展開して銃弾の雨を降らせる!BRTTTTTT!BRTTTTTT!精密なオペレーター指揮によりニンジャでもまとめて回避はできない!ラン&ガン連携だ!「イヤーッ!」デッドリーパーは巧みに回避!
2ターン目
「ちょっとはやるわね。イヤーッ!」ZZTZZT!『ピガーッ!』サイバーメイヘムは連続側転を繰り出してドラグーンの一機に飛びかかり、内蔵パルスダガーを食らわせる!しかし相手は頑丈、なおも動く!デッドリーパーは状況判断し、負傷したドラグーンへすかさず二挺拳銃連射!BLAMBLAM!
『ピガーッ!』一発命中!だがドラグーンは一発を紙一重で躱す!なんたる高度なAI制御か!『『比較的弱敵!』』二機のドラグーンは左右に展開して距離をとり、デッドリーパーへ再び銃弾の雨!BRTTTTT!BRTTTTT!「イヤーッ!」側転回避!だがこのままではニンジャといえど危険だ!
3-4ターン目
「しつこいわね!イヤーッ!」ZZTZZT!『ピガガーッ!』サイバーメイヘムは無傷のドラグーンに飛びかかり攻撃!だがなおも動く!デッドリーパーの脚力では、連続側転を繰り出しても離れたドラグーンに追いつけない。追いつけたとしても、攻撃が当たる可能性は……ならば銃撃あるのみ!「死ね」
BLAMBLAM!デッドリーパーは精神を集中させ、ダメージのより大きなドラグーンへトドメの銃撃!ドラグーンは躱そうとするが、銃弾は地面で別のドラグーンの破片に当たり軌道を変え、跳弾となって襲いかかる!SMASH!『ピガーッ!SAYONARA!』KABOOM!ドラグーンは爆発四散!
『ピガーッ!』残り一機となったドラグーンは、しつこくデッドリーパーへ銃撃!BRTTTTT!「イヤーッ!」だがデッドリーパーは難なく躱す!一対一なら問題なし!「イヤーッ!」ZZTZZT!サイバーメイヘムが飛びかかりトドメを刺す!『ピガーッ!SAYONARA!』KABOOOM!爆発四散!
戦闘終了
「「シューッ……!」」二人はザンシンする。これで六機。「少しは手こずるわね。けど、いける」「うん」サイバーメイヘムのカラテと脚力は、デッドリーパーより上だ。戦闘兵器をたやすく破壊するパルスダガーもある。だがドラグーンは銃撃を回避可能で、デッドリーパーとは相性が悪い。
奥の手のヘンゲヨーカイ・ジツを使えばカラテや脚力はアップするが、ヘンゲするとピストルカラテは使えない。一長一短なのだ。「……もっと鍛錬しないと」「そうね。次は、あっち」「うん」二人はさらに西、兵器実験場の南西地区へと駆け込んでいく。そろそろ異変が伝わっているはずだ。
潜入班
アースメイヘムは耳をすまし、観測室や制御室から漏れ聞こえる音声を拾う。『なんだ?どうなってる?』『南東地区と南地区で、それぞれドラグーン三機が破壊されました』『困るなぁ。プロモーション重点なのに』『クローンヤクザ部隊は手加減しています。敵対ニンジャ工作員の可能性も……』
陽動班はうまくやっているようだ。この隙に動くとしよう。『うう……』アースハンドは、制御室とは逆方向からのうめき声を感知した。『緊張すると胃が痛い……クスリ、クスリ……』トイレからだ。スタッフ・エンジニアか誰かが籠もっているのか。アースハンドはしめやかにそちらへ向かった。
「オジャマシマス」低く呟き、トイレに清掃員としてエントリーする。個室から慌てて若いエンジニアが出てきた。「あ、スミマセン!今!」白衣にはオナタカミ社章があり、首からは社員IDカードを下げている。実際好機だ!「イヤーッ!」「アバッ」アースハンドは彼を眠らせ、衣服とIDを奪った。
陽動班:南西
実験場の南西地区は、またも狭い道が入り組んだ場所だ。「「「ザッケンナコラー!」」」『『『反社会勢力鎮圧!』』』BRTTTTT!BRTTTTT!道路ではドラグーン小隊と、装甲車に乗ったクローンヤクザ部隊が激しい銃撃戦を繰り広げている。ならば、こちらの有利だ!二人はしめやかに接近!
戦闘開始
1ターン目
「イヤーッ!」ZZTZZT!「TAKE THIS!」BLAMBLAM!サイバーメイヘムがドラグーンに飛びかかり、デッドリーパーが援護射撃!ドラグーンは銃撃戦中のため新手の射撃に対処し切れない!『ピガガーッ!SAYONARA!』KABOOOM!一機がたちまち爆発四散!『『新手の反社会勢力確認!』』
二機のドラグーンはサイバーメイヘムに狙いを定め、なめらかに後退しながら銃撃!BRTTTTTT!BRTTTTTTT!「ンアーッ!」躱し切れず数発命中!だが彼女のタフネスなら問題なしだ!「やってくれたわね!ブッ壊す!」
2ターン目
「キエーッ!」ZZTZZT!サイバーメイヘムはテッコを振り上げ、ドラグーンの一機に唐竹割りチョップ!パルスダガーが瞬時に展開して突き刺さり、制御機械に痛烈なダメージを与える!『ピガガーッ!』よろめきふらつくドラグーン!だがなおも動く!「TAKE THIS!」BLAMBLAM!追い撃ちだ!
『ピガーッ!SAYONARA!』KABOOOM!ドラグーンがまたも爆発四散!残るは一機!『射殺許可が出ています』BRTTTTTT!なめらかに動きながらサイバーメイヘムへ射撃!「イヤーッ!」側転回避!モータルならたちまち蜂の巣だろうが、ニンジャ相手には問題なし!「「「イイゾオラー!」」」
3-4ターン目
クローンヤクザ部隊が銃撃しながら讃える中、サイバーメイヘムとデッドリーパーは残る一機のドラグーンを相手取って戦う!だが相手もさる者、意外に巧みな動きで攻撃を躱し、距離を取りながらの銃撃を続ける!「イヤーッ!」『ピガーッ!』しかしニンジャ二人には敵わず、ついに爆発四散!
戦闘終了
「「シューッ……!」」二人はザンシンする。手練れのニンジャ二人でも、それなりに手こずらせる相手だ。サイバーメイヘムは十字砲火を躱しきれず手傷を負っている。ドラグーン数機に加えてニンジャ戦力が襲ってきたら、相当の脅威となるだろう。「よし、次」「OK」二人は北へ駆け出した!
潜入班
トイレでオナタカミのエンジニアを昏倒させ、衣服とIDカードを奪ったアースハンドは、エンジニアに変装して何食わぬ顔で来た道を戻り、この階層の東側に位置する兵器工房へ移動する。トイレで寝ているエンジニアは後でセプクだろう。……工房では、数人のエンジニアが忙しく働いている。
「あーっと、君、ちょうどいいところに!」エンジニアの一人が駆け寄ってきた。だが胸元にIDカードがあるため誰何はされない。幸い体格や髪型も近かったのだ。「このフロッピーディスクを制御室に届けてくれ!」「ハイ」なんたるブッダオハギ。あまりの忙しさに、彼らは本人確認を怠ったのだ!
陽動班:西
兵器実験場の東西には、巨大な建造物が門めいて聳える。ここはドラグーンを格納・調整するメンテナンスドックだ。建造物の前には耐重金属酸性雨特殊コンクリートで固められた広場があり、先程の装甲車両がまばらに停車しているほか、輸送用ヘリポートもある。そして遮蔽物はなく、丸見えだ!
『警戒!警戒!』『工作員が侵入!直ちにドラグーン部隊出撃せよ!』『プロモーション重点!』メンテナンスドックやHQから警戒音が鳴り響き、ドラグーン三機がモーターバイク姿で駆けつける!クオオー!クオオー!クオオー!「そろそろニンジャが出て来るかもね。気をつけましょう」「了解」
戦闘開始
1ターン目
「「イヤーッ!」」二人はドラグーンへ飛びかかる!ZZTZZT!BLAMBLAMBLAM!パルスダガーが閃き、ピストルカラテが唸る!『ピガガーッ!SAYONARA!』KABOOOM!ドラグーン一機が爆発四散!『『ラン&ガン連携重点!』』BRTTTTT!「ンアーッ!」デッドリーパーに銃弾命中!
2ターン目
「お返しよ!イヤーッ!」ZZTZZT!KRASH!『ピガガーッ!』パルスダガーがドラグーンのタイヤを斬りつけ、ふらつかせる!デッドリーパーは側転しながら二挺拳銃を撃つ!「TAKE THIS!」BLAMBLAM!『ピガーッ!SAYONARA!』KABOOOM!ドラグーンが爆発四散!あと一機だ!
『社敵殲滅!』BRTTTTT!「イヤーッ!」サイバーメイヘムは銃撃を難なく躱す!単体なら問題ないが、メンテナンスドックから増援も来るか!
3-4ターン目
「イヤーッ!」ZZTZZT!『ピガガーッ!』「死ね!」BLAMBLAM!『ピガーッ!』ドラグーンは銃弾を一発躱し反撃!BRTTTTT!「「イヤーッ!」」回避して反撃!ZZZTTTT!『ピガーッ!SAYONARA!』KABOOOOM!無傷とはいかなかったが、瞬く間にドラグーン三機が全滅した!ゴウランガ!
戦闘終了
クオオー!クオオー!メンテナンスドックからは次々とドラグーン小隊が出撃!「逃げるわよ!」「了解!」二人のニンジャはビル群が入り組んだ北の区域へ色付きの風と化して駆け抜ける!監視カメラは避けたり破壊したりしているが、かなりの警戒を招いた。HQの潜入工作はどうなっているか?
潜入班
オナタカミのエンジニアに変装したアースハンドは、HQ東の工房でフロッピーディスクを受け取り、西の制御室へ向かう。そこにはLAN直結オペレーターが六人、計器観測エンジニアが二人おり、戦闘演習を成功させるためコンソールにかじりついている。「ああッ!クソ!またやられたぞ!」
観測エンジニアは頭を抱えた。「これでいけるのか!?」「しかし、高機動回避もラン&ガン連携もうまくいっていますよ!」「少なくとも二人の手練れニンジャに手傷を負わせています!」「もっと数を投入すれば、押しつぶせます!」直結オペレーターたちは興奮して叫ぶ!相当の熱気だ!
「次のフロッピーを!」エンジニアやオペレーターたちは、UNIXコンソールの傍らに置かれた箱から次々とフロッピーを抜き取り、確認せずに挿入していく。箱には『ドラグーン・システムアップデート・ホットフィックス用』とある。工房から持ち込まれたフロッピーは、ここに入れればいいわけだ。
アースハンドはこっそりと忍び込み、アシッドウルフから受け取ったウイルス入りのフロッピーを一枚箱に紛れ込ませた。「ご苦労さん!」エンジニアは確認もしない。アースハンドは蛇のように巧みに手を動かし、エンジニアのIDカードをスリ取った。これでサーバルームへ入り込めるだろう。
アシッドウルフから受け取ったフロッピーは二枚ある。残る一枚でサーバをクラッキングし、機密データを抜き取った時点で、もう一枚がコンソールに作用してドラグーンの制御を奪い取る。三人がそれぞれ一機に乗って脱出すればよい。外壁の東西南北には、輸送車両などが通る通用口がある。
???
……その頃。HQの最上階で戦闘の観測を行っていたメイライとオナタカミの役員たちは、思いもよらぬドラグーンの破壊に困惑していた。「ドラグーン自体はよくやっています。ただ、手練れのニンジャ複数にはもっと多くが必要なのでしょう」「ああ……しかし、あのニンジャたちは何者だ?」
「映像等を解析しました。メイライやオナタカミに繰り返し襲撃を行っている、謎のニンジャチームです」「オムラか?ザイバツか?ソウカイヤか?」「詳細は不明ですが、ブラックメイル=サンやダストブレイカー=サン、ベンドナイト=サンらとの交戦記録があります。ニンジャネームは……」
護衛ニンジャたちはデータを受け取り、頷く。「捨て置けんな。我々が出撃して捕獲し、裏を洗うか?」「待機はしておいてください。まずシデムシをぶつけてみます」「データでは三人チームとあるが、もうひとりは別行動か?」「それは……」護衛ニンジャたちはニンジャ第六感を働かせる。
「……あれは、陽動か。とすると、どこかにもう一人が潜んでいるな」「なるほど。では、手分けするか」護衛ニンジャたちは役員の許可を得ると、別の護衛たちに役員を任せ、行動を開始した!
【続く】
◆