忍殺TRPGリプレイ【トゥルース・フォールズ・オン・ユー】01
ドーモ、三宅つのです。これは原作小説「リブート、レイヴン」を元にしたリプレイ小説です。ネタバレにご注意ください。
すなわち、彼の出番です。
◆タカギ・ガンドー(種別:モータル)
カラテ 6>7 体力 9>10
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 7 脚力 4
ジツ - 万札 43>16
攻撃/射撃/機先/電脳 7/ 9/ 7/ 8
回避/精密/側転/発動 7/ 8/ -/ -
即応ダイス:0 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▶生体LAN端子LV1:ニューロン判定+2、イニシアチブ+1
▶サイバネアイLV1:ワザマエ判定+1、射撃判定時はさらに+1
▶強化頭蓋:体力+1、殺伐出目2(頭部痛打)の付属効果をシナリオ中1回のみ無効化
◆探偵服:交渉判定+1
◆探偵手帳(レリック):記憶スロット+4(知識スキルのみ)
◆49マグナム×2:射撃難易度UH、連射2、ダメージ2、マルチ・時間差可
ダブルターゲット 装備にはカラテ6以上必須
◆ZBRアドレナリン注射器、トロ粉末
◇スキル
◉◉タツジン:マグナム・ピストルカラテ
二挺拳銃装備を「素手状態」とし、装備ペナルティ無視、射撃難易度-1
近接攻撃時は連続攻撃+1、攻撃難易度+1
●戦闘スタイル
ピストルカラテ正拳突き:カラテで攻撃判定(H)
連続攻撃3、ダメージ1(出目6で2)、殺伐発生
ピストルカラテ乱舞:ワザマエで攻撃判定(N)
出目6で痛打+1、殺伐なし
●射撃スタイル
射撃反動回し蹴り:ワザマエで通常の射撃判定、隣接敵には難易度+1
射撃終了後に隣接敵1体へ1ダメージ&弾き飛ばし(回避H、迎撃可)
2連射以上の判定に成功した場合、隣接敵全員に1ダメージ(回避H、迎撃不可)
●ワザ:ロウレス・フロンティア 回避出目65+で迎撃発生時、
迎撃ダメージ2(回避H) ターン中1回まで
◉ウィークポイント射撃:出目66で痛打+1、モータルのモブ敵なら即死
●連続攻撃2、連射2
◉頑強なる肉体:体力+2
◇カルマ:善
◉知識:ストリートの流儀、ヤクザの流儀、銃器、サイバネティクス、
スポーツ(オスモウ)、ドラッグ、犯罪、地域:アンダーガイオン 記憶
◉交渉:駆け引き、共感、煽り、鼓舞 2つ記憶
能力値合計:19>20
モータルとしては異常な強さですね。では、始めます。
◆◆◆
序
キョート共和国、アンダーガイオン。ニンジャスレイヤーは奴隷商人のアジトを潰し、奪い取ったUNIXデッキをガンドー探偵事務所に持ち込んだ。肩には気絶した女ニンジャを担いでいる。「オイオイオイオイ……また厄介事を持ち込んだな」「ケージマウス=サンだ。応急手当し、遠くへ逃がす」
ニンジャスレイヤーはトレンチコートとハンチング帽姿に戻り、ケージマウスを事務所のソファに横たえた。「UNIXデッキを調べてくれ。何か情報があるはず」「アイアイ」ガンドーは頷き、ZBRアドレナリン注射器を手渡すと、UNIXデッキを受け取った。「顧客名簿ぐらいは入ってるだろうけどな」
「奴隷商人はニンジャだった。ザイバツに繋がる人脈があるはずだ」ニンジャスレイヤーは奇妙な呼吸を行い、床に座り込むと、奴隷商人の事務所から奪ったスシを食べ始めた。ニンジャはスシを食べ、チャを飲むことで負傷を急速に癒やすという。まるでカートゥーンだ。だが、本当の事なのだ。
ザイバツ・シャドーギルドとの戦いに巻き込まれたガンドーは、隠された世界の真実を少しずつ理解し始めた。ニンジャの恐ろしさを。それに挑もうとするこの男の無謀を。この男は全てのニンジャを殺すと言った。この男はシリアスだった。全てが危ういほど本気なのだと、ガンドーには解った。
伝説的なハッカー「ナンシー・リー」の紹介で、ガンドーは彼の手助けをすることになった。謝礼はナンシーからたっぷりと受け取っているが、当座の借金を一気に返せば怪しまれる。スシはニンジャスレイヤーが自分で適当に調達してくるし、ふらっと消えたままで何日も戻らないこともある。
ニンジャを殺しているのだ。彼やナンシーによれば、ザイバツの本拠地は観光地として有名なキョート城の奥にあり、ナンシーの物理肉体や彼の仲間たちが囚われているのだという。だがザイバツの守りは固く、所属するニンジャは数多い。まずは幹部たちを暗殺し、弱体化させるのだという。
「あんた、全ニンジャを殺すと言ったな」ガンドーがタイピングの手を動かしながら問いかけた。「左様」フジキドが答える。「妻子の仇だ、そりゃ解るぜ。でもよ、全部殺す必要はあるのか? あんたが助け出したケージマウス=サンはニンジャだし、そもそも、あんたも、ニンジャだろ?」
「……全ニンジャを殺す。そう誓った。全てのニンジャソウルは邪悪だ。憑依後急激に、あるいは少しずつ……人間は必ずや、大きすぎる力と狂気に魂を蝕まれる。私はそれを何度も見てきた。彼女も……他ならぬこの私もだ」彼はケージマウスにZBRアドレナリンを注射しながら、そう言った。
「矛盾してるぜ!言う事とやる事がよ!」「……私に宿る、邪悪なニンジャソウルは、そう望んでいる。だが……人間の部分は、そうではないのかも知れぬ。比較的にしろ、邪悪ではないニンジャがいるなら……私は内なる衝動に抗い、人間性に従って、助けることにしている」「そりゃ良かったぜ!」
ニンジャスレイヤーに宿るナラク・ニンジャは休眠中だ。ゆえに彼はケージマウスを助けた。サイオー・ホースと言えよう。「なら、例えばだぜ。俺が明日、急にニンジャになったらどうだ?」「……オヌシが人間性を保ち、奥ゆかしくあるのなら殺さぬ。そうでなくなったら……」「おお、コワイ」
「じゃあよ、ザイバツもソウカイヤも潰して、悪いニンジャがいなくなったら、どうするんだ?復讐が終わったら?」ニンジャスレイヤーはしばし沈黙した。ケージマウスは意識を取り戻したが、また目を閉じた。「……復讐が終わってから、考えるとしよう」「そうか。……探偵、やらねえか?」
ガンドーのZBR励起したニューロンが、不意に突飛な考えを導き出した。「探偵……探偵?」ニンジャスレイヤーは唖然とし、訝しんだ。「ああ。ニンジャで、私立探偵だ。笑えるだろ」「……笑えるな」ニンジャスレイヤーは、微かに笑いを漏らした。珍しいことだ。「考えておこう」
なんだ、こいつも笑うんじゃないか、とガンドーは思った。
???
……しばらく後。
『スズキ・キヨシ、脱獄す』ガンドーはチャブの上に置かれた、数ヶ月前の新聞記事の写しを見た。『十年近く前、キョートを騒がせた怪盗が、昨晩ミタラシ刑務所から脱走した』文面はそれだけだ。完全に見逃していた。……続いてガンドーは、もう数枚の猟奇殺人事件記事の写しを手繰る。
ここ三週間のうちに、アンダーガイオン下層部を中心として無差別殺人事件が複数発生。それらの断片的な情報だ。連続殺人などアンダーガイオンではチャメシ・インシデントだ。だが、この事件には猟奇的共通点があった。被害者の誰もが『腹部を銃で撃たれ、黒いセル眼鏡をかけている』という。
あるいは死後にかけさせられ……口紅を塗りたくられていた。男も女も、年齢も、モヒカンも、スモトリも、ペケロッパも、区別なく。……ニンジャスレイヤーはいない。ガンドーはZBR煙草を吹かしながら、生体LAN端子にケーブルをつなぎ、メインフレームUNIXに直結した。何か、気になる。
瞬時に、ニューロン内にはアンダーガイオンの緑色ワイヤフレーム略図が描画された。ガンドーはここに、殺人事件が発生した地点を三次元プロットしていく。ワイヤフレームを回転させ、ある角度から光点を星座のように繋ぐと……そこには「グランド」「オモシロイ」のカタカナ文字が現れた。
正確には「グ」の濁点となるべき場所が一つ、足りない。ガンドーは眉根を寄せた。「間違いねえ、あの野郎だ……誘ってやがるな」彼はイカジャーキーを齧りながら、忌々しげに吐き捨てた。……十年前、彼は怪盗スズキ・キヨシを捕まえた。琵琶湖の豪華客船『グランド・オモシロイ』の上で。
黒いセル眼鏡。口紅。銃で撃たれた腹部。グランド・オモシロイ。ガンドーは静かな怒りをたぎらせる。前頭部に眠る彼女が、彼の怒りに呼応して身じろぎしたような感覚がある。ガンドーが手をこまねいている間にも、新たな犠牲者が出るだろう。……スズキ・キヨシを、止めねばならない!
【続く】
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