忍殺TRPGリプレイ【ハームフル・アス・ジャスト・ラフ】
ドーモ、三宅つのです。これは2024年10月31日にTwitter上で行われた、ニンジャスレイヤーTRPGの公式ソロアドベンチャーでのつののリプレイを纏めたものです。10月は逆噴射小説大賞やら何やらでnjrpgリプレイの更新が滞っていましたし、久々にやっていきましょう。
ソロアドは2023年4月15日以来なので1年半ぶりですね。あの時に誕生したレッドフォックス=サンもそれなりの手練れに成長しています。今回はこのようなニンジャが誕生しました。
◆アパタイト(種別:ニンジャ)
カラテ 3 体力 4
ニューロン 6 精神力 7
ワザマエ 4 脚力 2/N
ジツ 2 万札 -12
DKK 0 名声 1
攻撃/射撃/機先/電脳 3/ 4/ 6/ 6
回避/精密/側転/発動 6/ 4/ 4/ 8
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▶クロームハートLV1(ローンあり):体力と精神力+1
◆ウイルス入りフロッピー
◆キーボード・オブ・ゴールデン・エイジ
◇ジツやスキル
☆カラテミサイルLV2
◉知識:ドラッグ、ハッカーの流儀、電子ウイルス 記憶
○生い立ち:ローグハッカー
能力値合計:17
完成後に初期知識を振ったら「51:ドラッグ」、生い立ち表を振ったら「61:ローグハッカー」が出たので、初期知識(2D6[13]=ハッカーの流儀と電子ウイルス)やアイテムを追加で積んでおきます。性別は1D6を振って奇数なら男、偶数なら女。1D6[5]男性です。名前はフローライト=サンからヒントを得てアパタイト(apatite/燐灰石)としましたが、その他はほぼオッドジョブ=サンになりました。コードロジストではないと思います。外見はフェミニンな美男子としましたが、メンポがないので生体覆面かもです。
今回はハッキングが主な任務ですからうってつけでしょう。能力値は出来立ての割に全体的に高く、正面切って戦うタイプではありませんがカラテもワザマエも低くはありません。切り札としてカラテミサイルもあります。
ではリプレイの様子から、このニンジャのアトモスフィアを感じ取っていきましょう。
◇🎲◇
序
ネオサイタマ市街中心、ツチノコ・ストリート。ここは治安レベル最悪の猥雑暗黒街だ。数々の違法組織やテック系の闇マーケットがひしめき、軍用サイバネや銃火器、違法基板、旧世紀レリックなども露天販売されている。ローグハッカーはこの市場を定期的に巡回し、掘り出し物を探している。
「へへ、毎度」貨幣を受け取った店主は、ウイルス入りフロッピーを客に手渡した。耐重金属酸性雨コートで全身を覆った男は、見るからにローグハッカーだ。彼は無言でフロッピーを懐に仕舞い、ストリートの奥にある雑居ビルへと歩き出す。降りしきる重金属酸性雨が足跡も足音もかき消していく。
「さて、急がねえとな」彼は独り言ち、足を早めた。次第に速度は増し、色付きの風と化し、雑居ビルの壁面を裏路地から垂直に駆け上がる。常人には不可能な芸当だ。然り、彼は常人に非ず。平安時代をカラテで支配した半神的存在「ニンジャ」の霊魂を身に宿す者。ニンジャソウル憑依者である!
事務所前
ハッカーニンジャ「アパタイト」は、音もなく雑居ビルのとある階層に潜入した。目指すはデスシャドウ・ヤクザクランのデータセンター事務所。彼の目的は、ここに忍び込んでUNIXをハッキングし、コケシマート社の未公開株券を奪い取ることだ。やることはニンジャになる前とそう変わらない。
だが、できることは増えた。常人に雑居ビルの壁は駆け上れないし、暴力もそこらのヨタモノやヤクザを軽く捻り殺す程度には可能だ。彼が非ニンジャのハッカーであった頃は、スラッシャー(押し込み強盗の暴力担当)との折衝にも手間取った。しかし今なら、一人でハックもスラッシュも可能!
「イヤーッ!」アパタイトはデータセンター事務所の前に立つ警備クローンヤクザにスリケンを投擲!「アバーッ!」サツバツ!眉間にスリケンが突き刺さったヤクザは傷口から緑色のバイオ血液を噴き出し、仰向けに倒れた。チャカを持った屈強なヤクザであろうと、ニンジャにかかれば一捻りだ。
たとえスリケンを躱されてチャカで反撃されても、ニンジャならば銃弾の軌道を見切って躱し、懐に飛び込んでカラテで殺せる。ニンジャは非ニンジャとはほとんど別種の生物と言ってよい。アパタイトは無言で駆け寄ると、ヤクザの死体を蹴ってどかし、データセンター事務所前のドアと対峙した。
強化ガラスドアには威圧的なデスシャドウ・ヤクザクランの紋がプリントされている。ここで間違いない。周辺の監視カメラや警報機のたぐいは始末してあるが、ロックドアのノブには当然ながら鍵がかかっている。カラテでドアノブをねじ切るか、ニンジャ器用さで物理錠前をピッキングするか。
否、アパタイトの本職はローグハッカーだ。考えるまでもない。「当然、ハッキングだろ」彼は歯を剥き出して笑い、ハンドヘルドUNIXからLANケーブルを伸ばして、ドアの近くのLAN端子に差し込む。チチチチ……キャバァーン!『開くドスエ』電子音声が鳴り、論理錠前は難なく解除された。
「ジャックポット」アパタイトは目を細めた。彼の脳裏に、所属する暗黒組織ソウカイ・シンジケートの先輩、マブな女ニンジャ「サイコダガー」の姿が浮かぶ。直結ハッキングによる電子的デジャヴだ。彼女はどうしていることか。彼が物思いに耽りながらデータセンターの中を歩いていると……!
事務所内
「スッゾコラー!」物陰からドスダガーを腰だめに構えた警備ヤクザが飛び出した!「うおッ!?」アパタイトはとっさに反撃!「イヤーッ!」だが振り向きざまに繰り出したアパタイトのチョップは空を切り、ドスダガーが脇腹に突き出される!ナムサン!なんたるウカツ!このままでは危険だ!
彼の体はサイバネで強化されているため致命傷とはなるまいが、クローンヤクザ相手に負傷すればサイコダガーも軽蔑するだろう!「イヤーッ!」アパタイトはそのまま身をひねり、床に手をついてカポエイラめいた回転上段キックを放つ!「アバーッ!」ワザマエ!ヤクザは首を刎ねられた!
「ハァーッ、アブナイ……」油断大敵だ。アパタイトはあくまでハッカーであり、常人よりは遥かに強いものの、カラテもワザマエもニュービーとしては平凡だ。非ニンジャ時代には荒事はスラッシャーに任せていた。ニンジャなら実際パラディンだが、戦闘経験の乏しさは補えない。「ブッダシット」
彼は舌打ちしてヤクザの懐から財布を奪う。サイバネのローンがまだ残っている。せめて利子だけでも返さねば、ドサンコ行きのカニキャッチ漁船に載せられてカニの餌だ。そして今回の目的は……最奥部のUNIXだ。
今回の目的は、コケシマート社の未公開株券。必要最低限のデータを抽出すれば借金は返せるが、おそらく上前を差っ引かれて足りなくなる。ここはさらにヤクザクランの銀行口座をも狙うべし!アパタイトは舌なめずりし、先ほど入手したウイルス入りフロッピーをUNIXのスロットに挿入した!
チチチチ……チチチチ……キャバァーン!「ジャックポット」欲深いアパタイトは歯を剥き出して笑う。これで借金は利子を含めて全額返済、さっきの財布で僅かに黒字だ。否、消費したウイルス入りフロッピーのぶん、僅かに赤字か。それでもいい。この昂揚感に比べれば。必要な経費だった。
UNIXには毒矢トラップが仕掛けられていたようだ。だが発動しなければ、当たらなければ問題ない。先程のドスダガーのように。今夜はツイていた。ファオンファオンファオン……誰かが通報したのか、接近する武装パトカーのサイレン音を背に、アパタイトはデータを奪って逃げ延びた。
エピローグ
窓から脱出して夜の街に消えたアパタイトは、ソウカイ・シンジケートの中枢「トコロザワ・ピラー」へIRC報告を行い、報酬で電子決済を行い、問題なく借金から自由になった。手元に残ったのは万札1枚。どこかでリラックスし、身を休めるか。幸い近くには巨大歓楽街ネオカブキチョがある。
……アパタイトは、ネオカブキチョの近くにくろぐろと聳える「壁」に目を向けた。反アマクダリ・セクトの根城と化したニチョームを外界から隔離するための防壁を。ソウカイヤ分裂後、やむなくヨルジ派の末端につくことになった彼は、いずれニチョーム制圧のために送り込まれるかも知れない。
【ハームフル・アス・ジャスト・ラフ】終わり
リザルトな