忍殺TRPGリプレイ【シューティングスター・ビバップ】03
前回のあらすじ:西暦20世紀末、アメリカ合衆国。「フォーセイクン」と呼ばれる不完全なリアルニンジャたちは、CIAの特殊エージェントとして活動していた。彼らの居場所を脅かすのが「アンナチュラル」……ニンジャソウル憑依者だ。調査し、排除せねばならない。カラダニキヲツケテネ!
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情報を整理するとこうだ。ベトナム帰りのイカレた元兵士の犯罪者がアンナチュラルとなり、ニューヨークの近くにある原発を狙っている。合衆国の危機だ。止めなければ!「ちょいと待って。あのマッチ箱のダイナーの場所は……」ドロシーは地図に顔を近づける。「原発のすぐ近くだ!」その時!
部屋の天井から何かが落下してきた。三人のニンジャ動体視力はそれが何なのか瞬時にとらえ、理解する。ピンの抜けた手榴弾、それも複数!巧妙なブービートラップだ!「「「なにッ!?」」」
「「「イヤーッ!」」」三人は瞬時に状況判断し、窓から跳び出す!KA-BOOOOOOOM!背後で爆発!ハリスの部屋は粉々に吹き飛び、証拠隠滅!恐るべき時限式トラップだ。だが地図や写真、マッチ箱等の証拠品は回収済みである。「ぼやぼやしちゃおれんな。バーンズに連絡し、急行するぞ!」
だが、路地裏に降り立った三人を剣呑なギャングが取り囲んだ。「テメエらかよ、コソコソとハリス=サンのことを嗅ぎ回ってンのは」「ファックしてやる!」「へへへ!」刃物や拳銃で武装しており危険!ハリスの手下たちだ!「インタビューしたいところだが、一刻を争っていてな」一触即発!
「「「イヤーッ!」」」「「「グワーッ!」」」三人は瞬時にギャングたちを打ちのめし、車両へ駆け戻る!マッテオは運転席、マブは助手席、ドロシーは後部座席に飛び乗り、原発めざし出発!「ハロー、バーンズ=サン。俺たちだ。ヤバいことになりそうだ……」マッテオは移動しながら無線連絡!
三人は常人よりやや強いものの、ハリウッド映画やアメコミのヒーローほどに強くはない。組織の力があってこそだ。『……了解した。支援部隊を派遣しよう。可及的速やかにデビッド・ハリスを発見し、足止めするか確保してくれ』「了解!」ガオオオオン!急げ!狂ったテロリストを止めろ!
川沿いのダイナー
ブルックリン区から50マイル(80km)余り北、ハドソン川沿いのダイナー(軽食屋)。三人は高速道路を飛ばし、全速力でここに駆けつけた。時刻はちょうど晩飯時で、そこそこ混んでいる。ダイナーの入口の傍らのジュークボックスからは、一世代前の古いヒットソングが哀愁と共に流れている。
デビッド・ハリスはここにいるか、少なくともここに来た事が何度かあるに違いない。近くにある原発の警備状況を下見するために。だが、なぜ? 気が狂っているのか、外国の手先になったか、その両方か。三人は客のフリをしてしめやかに店内に入り、スタッフルームへと近づく。……その時!
「ヘイ!お嬢ちゃんがた!ここは貸し切りだぜ!」店内にたむろしていたガラの悪い男たちが、笑いながら声をかけた。バイカーギャングだ!さっきのようにハリスに雇われ、彼を調べようとする者をブチのめすのが仕事というわけか。「いやいや、揉め事は困るな」マッテオはおどけてみせる。
「おいオッサン、ナメてんのか?ア?」ぞろぞろと数人のバイカーギャングが立ち上がり、三人をたちまち取り囲んだ。「いい女連れてンじゃねえか、パスタ野郎!」「この黒人のガキはいらねぇな!」「ヒヒ!そういう趣味の奴もいるぜ!」オーマイゴッド!なんたるヘイト発言か!
「いきなり何だね?このあたりはいつからこんなに治安が悪くなった?警察を呼んでくれないかね?」マッテオは近くの従業員に話しかけ、客からくすねとった100ドル紙幣(訳注:万札に相当する)を握らせた。「うっ……!」従業員は怯え、バイカーギャングたちとマッテオに視線を走らせる。
このダイナーは、不愉快なことに彼らバイカーギャングにシメられているのだ。みかじめ料を払わなければ暴力を振るわれる。銃も持っており危険!「ヒヒヒ!下がってろ腰抜け!」「そうだ!」「困るなあ、こんな……私はシチリア系の実業家にちょっとした知り合いがいてねえ……」欺瞞!
三人は引き下がろうとしない。その堂々たる態度はバイカーギャングたちをやや怯ませた。「喧嘩はよくないと思うんだ……お互い、死にたくないだろう?それと諸君、デビッド・ハリスという男を知らないかね?彼は……」「「「うおおーッ!」」」バイカーギャングたちは襲いかかってきた!
戦闘開始
マップ
1ターン目
「殺すな」「了解」マッテオとドロシーは邪悪に嘲笑い、マヌケそうなバイカーギャングへ一斉攻撃!「「イヤーッ!」」SMAASH!「アバーッ!?」サツバツ!バイカーギャングは不意打ちのトビゲリを食らい、店の外へ吹っ飛ばされた!アスファルトに頭をぶつけ昏倒!意識不明!「やれやれ」
マブは肩をすくめ、バイカーギャングの一人と視線をあわせる。「アイエッ……!?」「眠りなさい」「……ムン」彼はニンジャアトモスフィアを注ぎ込まれ、白目をむいて気絶した。残り三人!「え?」「おい、何しやがった!?」「私の魅力に負けたみたいね。暴力されたい?ウフフフ……」
「「「ウオーッ!」」」三人のバイカーギャングは怒り狂って襲いかかる!「イヤーッ!」マッテオは攻撃を受け流し、ジュー・ジツめいた動きで華麗に投げ飛ばす!SMASH!「グワーッ!」吐血!だがなおも動く!「イヤーッ!」SMASH!「ンアーッ!」マブは巨漢バイカーに組み伏せられた!
2ターン目
「「イヤーッ!」」「「グワーッ!」」マッテオとドロシーは素早いパンチとキックでそれぞれバイカーギャングをノックアウト!否、一人は持ちこたえる!「イイイ……!」マブは口の端から血を垂らしつつ、怒りに燃えて眼前の敵を睨む!「イヤーッ!」ZZTZZTZT!「「アバババーッ!?」」
ジーザス!マブのESP……いわゆる「ジツ」が炸裂し、バイカーギャングたちのニューロンが焼き切れた!「ファック・オフ!」ブチ切れたマブは昏倒した連中を蹴り飛ばす!「「「アイエエエ!?」」」一般客や従業員たちは言い知れぬ恐怖を味わい失禁!眼の前にいるのは、もしや……!?
戦闘終了
「フーッ、ちょっとやりすぎたかな。でもまあ大した被害が出なくてよかった」マッテオは肩をすくめ、おどけてみせる。「ハイ、拍手しなよ。あんたらの店から厄介者を一掃してやったんだぜ!」ドロシーは人々に手を振り上げる。だが彼らはドラゴンか吸血鬼を見たかのように怯えるばかりだ……!
その時!ドルルルルン!三人の車とは逆側の駐車スペースから、突然のエンジン音、そして車を急発進させる音が鳴り響く!三人のニンジャ視力は窓越しに、北側に去ってゆく一台の車両を。そしてニンジャ動体視力は、それを運転する男の姿を捉える。ほんの一瞬、視線が交錯する。ハリスだ!
奴は慎重なことに、自分を追跡している者の正体を確かめようと、ここで三人の戦いを監視していたのだ。つまり、今なら追いつける!「追うぞ!」「「了解!」」三人は色付きの風と化してダイナーを飛び出した!
追跡
ギャギャギャオオオオオオ……! 全速力で夜の道路を北上するハリスの黒い車を、マッテオが運転する車が追いかける!焦れったい数分間のドライブの後、ついに三人は敵の背後をとらえた!相手は銃を持ち、手榴弾をバラ撒いて来る危険な男だ。奴が原発に到達する前に、止めねばならない!
「イヤーッ!」マブは助手席から強引にハンドルを掴み、回転させた!ギャギャギャギャギャ……KRAAAASH!『グワーッ!?』おお、クライスト!ハリスの車は無慈悲な体当たりを食らい激しくスピン!コントロールを失って横転!そして……KABOOOOOM!ガソリンに引火し爆発炎上!「殺った!」
ドロシーが口笛を吹き、手を叩いて喜んだ。悪は滅んだのだ!「いや……まだだ」マッテオは離れた位置に車を停止させ、慎重に炎の中を睨む。……ハリスの黒い影がうごめき、這い出して、立ち上がった。彼がニンジャだとしても、ダメージはあるはずだ。『GRRRRRR……AAAARGHHHHHHH!』
ハリスが叫んだ。断末魔か?否!彼は片方の掌で顔を覆い、ぐしゃぐしゃと抑えるように動かした。炎が彼の体に吸い込まれていく。ハリスが掌を顔から離すと、そこには鼻から下を覆う、金属製のマスクが装着されていた。『……CIAの……犬どもめ……!』彼は掌を合わせてオジギし、アイサツした。
『ドーモ、デビッド・ハリスです……!』
アイサツ。ニンジャ同士が出会った時は、必ず戦闘態勢を一時は解除し、名を名乗らねばならない。古代より伝わるニンジャの礼儀作法だ。そして、アイサツされたニンジャは、アイサツを返さねばならない。「……ドーモ、私はマッテオ・イタロ……シャープハッカーとでも名乗らせてもらおう」
マッテオはそうアイサツした。ニンジャネームといい、ニンジャが用いるコードネームだ。UNIXが普及し電子ネットワークが地球を覆うこの時代、ハッカーとはコンピュータ技術に長けた人物を指すが、彼はそれ以前からそう名乗る。「叩き切る者」「機転が利く者」「解析者」ほどの意味だ。
「ドロシー・ペンライン。イルトゥース(病んだ歯)と呼んで」彼女は並びの悪い歯をむき出しにして嗤った。「私はマブ・B。異名はブルーキラー(青い殺し屋)よ」彼女の背後に不吉な怪物の影が揺らめく。「君はニンジャネームは持たないのかね、デビッド・ハリス=サン?」『……必要ない』
ハリスの目は炎を放ち、狂気に輝いている。『邪魔を……するな。俺はこの汚れた人生で初めて、正しいことをしようとしているんだ』「正しいこととは?聞かせて欲しいな」『……ニューヨーク・シティはLSDに汚染されている。全てだ。だから、ニュークで……プロメテウスの火で浄化しなければ』
三人は眉根を寄せた。LSDを、ニュークで?「よくわからないな。順序立てて聞かせてくれないか?」マッテオは対話で情報を引き出し、時間を稼ごうとする。ハリスの車の炎上は警察を呼び、CIAが支援部隊を派遣しているのなら彼らを引き寄せるはずだ。遠巻きに包囲して、銃で撃てば……!
『AAARGHHH!わからないのか!無色透明、無味無臭のLSDが、都市全体を汚染しているのを!』ハリスは叫んだ。話にならない!『CIAが誰も彼もを見張っている!俺も!奴らは俺を口封じに来た!つまり!貴様らだ!』ハリスはマスクの隙間から燃える涎を垂らし、獣じみて構えた。一触即発!
戦闘開始
【続く】
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