忍殺TRPGリプレイ【テンタクラー・サーカス】03
前回のあらすじ:アンダーガイオンの一角、ブラッドテンタクルス・ヤクザクランの事務所。ザイバツ・シャドーギルドに逆らった彼らは、他クランとの抗争によって滅亡の危機に瀕していた。さらに彼らを皆殺しにしてレリックを回収するため、ザイバツのニンジャチームが派遣されたのだ!
◆
「ンアアアアーッ!」ホワイトコマンダーは必死で脱出!振り向くと、そこには壁があるだけだ。「え?」前にも壁。「仏」のドアなど初めから存在しなかったかのように。だが……彼女の右手には、小さな赤いブッダ像が握りしめられていた。禍々しいアトモスフィアを放っている。レリックだ。
生体LAN端子がチリチリと痛み、ニューロンが加速しているのを感じる。彼女は……新たな扉を開き、目覚めたのだ。少なくとも、その入り口に立つ資格を得た。このブッダはその証……「どうしました」「ダイジョブ?アンタ」二人は左右のドアから何事もなく出てきた。「なんでもないわ」
「アッソ。女風呂には中古のオイランドロイドがいたわ。ここの慰みものにされてたのね。売ればカネにはなるでしょ」「……カタナを、手に入れました」グランドジョラスは一振りのカタナを手にしている。いい知れぬカラテを感じる業物だ。「使いなさい。残るは……」『グワーッ! サヨナラ!』
KABOOOOOM!オヤブン室でニンジャの断末魔と爆発四散の音がした。果たして勝者は?「行くわよ!漁師がカチグミ!」
オヤブン室
……三人はオヤブン室の様子を伺う。バイタル反応は……ニンジャが一人。『SHHHHHH……!』ドアの向こうから異様な声とアトモスフィアが漂ってくる。これは……かなり危険だ。「三対一ならこっちが有利よ。行きましょ」メイサは嗤いながら脂汗を垂らし、そう言った。「……ええ」「ハイ」
「「「オジャマシマス!」」」ドアを開けてオヤブン室に踏み込むと、そこには異様なものがいた。頭部が赤い触手に覆われた、人型の存在である。『SSSHHHHHHH……!』それは部屋中に赤い触手を伸ばし、死体から血液を啜り上げている。それは三人の存在を感知し、不明瞭な声でアイサツした。
『アバー……ドー……モ……リターンブラッド……デSHHHH』
◆リターンブラッド(種別:ニンジャ)
カラテ 11 体力 11
ニューロン 8 精神力 8>3
ワザマエ 6 脚力 5/N
ジツ 0 万札 10
攻撃/射撃/機先/電脳 12/ 6/ 8/ 8
回避/精密/側転/発動 11/ 6/ 6/ 0
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
◆*ブラッドテンタクルス*:攻撃+1、攻撃難易度H、拘束(殺伐なし、脱出H)
拘束時の手番に吸血(回避不能2ダメージ、体力2回復)
◇ジツやスキル
◉突撃
●連続攻撃2、時間差、マルチターゲット
●憑依直後暴走状態
●摩耗:手がかりポイントの半分の値(5)だけ精神力が減少
●不滅:何らかの方法でブラッドテンタクルスを引き剥がさない限り滅ぼせない
能力値合計:25
「……ドーモ、ホワイトコマンダーです」「メイサです」「グランドジョラスです」三人はアイサツを返す。各々の持つ宝石、台座、ブッダ像が、リターンブラッドの脈打つ触手に反応して輝いている。「……要するに、アレがこのヤクザクランのお宝ね。たぶん、台座に置かれていたやつ」
ホワイトコマンダーは推理する。「あの触手を、傭兵ニンジャたちが台座から奪って、ここで使って……誰かが取り憑かれて、ニンジャになった。そう考えればいいのかしら」赤いブッダ像は、彼女のニューロンにそのような情報を送ってきている。「アレをブッ殺せばいいわけね」「了解です」
『SHHHHHH……!血……血ィィィYYYYYYY!』リターンブラッドは触手をうねらせ、三人に向けた!一撃必殺アトモスフィア!
戦闘開始
1ターン目
『SHHHHYYYYHHHHHH!』ナムサン!リターンブラッドは血塗れの触手を展開し、ホワイトコマンダーめがけ飛びかかった!捕まれば生きながら血液を啜り殺されること疑いなし!「イイイ……イイイヤァアアアーーーッ!」ホワイトコマンダーは敵の動きを見切ってブリッジ回避!迎撃のキック!
KRASH!『AAARGHHH!』命中!リターンブラッドは身悶えし、触手をばたつかせる!ニンジャ複数を相手にして疲労し、憑依直後の暴走状態もおさまりつつある!三対一なら倒せる!ここで殺すべし!「イヤーッ!」ホワイトコマンダーは内なる声に導かれ、さらなるカラテを繰り出す!
KRASH!『AAARGHHH!』命中!よろめくリターンブラッドめがけ、グランドジョラスがカタナを振り抜く!「イアイ!」SLASH!『AARGHHH!』命中!急所を切り裂き、おびただしい血液が噴き出し、ボドボドと滴り落ちる!ナムアミダブツ!「イイ……イイイヤァアアアーーーッ!」
KRAAAASH!メイサのしゃがみ回し蹴りが、触手に覆われていない脚部を破壊!両膝を切断した!ナムアミダブツ!『AAARGHHHHHH!』リターンブラッドはべちゃりと床に崩れ落ち、ビタビタと触手をのたうたせる。血液を啜って負傷を癒やし、蘇ろうというのだろう。「カイシャクするわ!」
2ターン目
ホワイトコマンダーはカラテをみなぎらせ跳躍!「イイイヤァアアアーーーッ!」サツバツ!リターンブラッドの背中から心臓へチョップ突きを叩き込んだ!『アババババーッ!』心臓摘出!破壊!だが爆発四散はせず、頭部の触手が心臓めいて脈打ち続ける!「しぶといやつね。どうすれば……」
ホワイトコマンダーはニューロンを回転させ、ニンジャ第六感を働かせて解決法を探る。懐の真っ赤なブッダ像が輝き、彼女に超自然的な直感を与える。「グランドジョラス=サン、コツツボを」「は、ハイ」彼女はコツツボを受け取り、それを……ナムアミダブツ、リターンブラッドに投げつけた!
KRAASH!『AAARGHHHH!』「あなたのオヤブンの遺灰と遺骨よ。それを浴びて、ジゴクへ行きなさい」ナムサン、ナムサン!リターンブラッドは苦しみ悶え、両腕で触手に覆われた頭部を掴み……引き抜いた!『アバババババババーッ!』赤い触手はひとりでに動き、メイサへと近づく!「え」
「台座を!」「え、ええ!」メイサがとっさに台座を掲げると、触手はそこへ撚り集まり……顔の部分に穴が空いた、赤いブッダ像めいた形状となる。「宝石を、そこへ」「……わかった」メイサがその穴へ宝石を嵌め込むと、触手は動きを止めて彫像となった。残ったのは、首なしのヤクザの死体だ。
戦闘終了
エピローグ
「これで、よし……と」ホワイトコマンダーは息を荒げ、片膝をつく。「終わったわ。報告しましょう」「ええ。……結局、どういうことだったのかしらね」「知らない方が良さそう」メイサは鼻を鳴らし周囲を見回す。グランドジョラスは手早く死体や爆発四散跡から金目のものを回収している。
ホワイトコマンダーは腰を下ろし、シャドウウィーヴにIRC端末で連絡した。程なくシャドウウィーヴがオヤブン室の窓から現れ、二つのブッダ像と卓上UNIXを回収する。「ご苦労だった。確かにレリックだったようだな」「ハイ」「そのカタナは貴様が使え、グランドジョラス=サン」「ハイ」
「あ、アタシも頑張りました!」メイサは情熱的な目でシャドウウィーヴを見つめる。「そうか。では、今日からこの事務所は貴様らチームのアジトとする。以後も励め」「「「アリガトゴザイマス!」」」「清掃は貴様らがしておけ」「アッハイ」「近所のヤクザとか脅して働かせましょ」
……こうして、アンダーガイオンのブラッドテンタクルス・ヤクザクランは滅び、その事務所はザイバツニンジャチームのアジトとなった。果たしてどのような未来が三人を待つことになるのだろうか……。
【テンタクラー・サーカス】終わり
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