忍殺TRPGリプレイ【ザ・ニンジャズ・オブ・ザ・ショーグン】13
前回のあらすじ:ドラゴン・ドージョーの忘れ形見ユカノはザイバツ・シャドーギルドに拉致され、キョート城の何処かに幽閉されている。彼女を救出しザイバツを滅ぼすため、ニンジャスレイヤーたちはついにキョート城へ突入した!死闘の末に本丸エリアへ潜入したものの、早くも満身創痍!
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……4人のニンジャは白砂の上に着地し、膝をつく。実際恐るべき強敵であった。ディテクティヴを除く全員が負傷、特にニンジャスレイヤーは満身創痍だ。ディテクティヴは肩を貸した。「立てるか」「ああ……スゥーッ……ハァーッ……!」ニンジャスレイヤーは息を調え、チャドー呼吸を行う。
大気中からエテルを吸収して少しずつ負傷を癒やす秘術だ。しかし、このまま天守閣に突入すれば危険。どこかに潜んで体勢を立て直す必要がある。「スシを」「オヌシらが食べよ」ディテクティヴは周囲に視線を走らせ、中庭の敷地内に建物……テンプルを発見する。「ホウリュウ・テンプルか」
ディプロマットがうなずく。「グランドマスターか、ロードの許可を得た者にしか出入りを許されていない場所だ。ニンジャにまつわる古文書が収蔵されていると聞く」「ちょうどいいぜ!」ディテクティヴはニンジャスレイヤーをひきずり、そちらへ駆けていく。テンプルを守る門番はもういない。
あれほどの騒ぎがあったというのに増援は来ない。グランドマスターが討ち取られるような事態そのものが想定されていないのか、電算室での騒動に気を取られているのか。ともあれ休息は必要だ。
……かくしてニンジャスレイヤーたちはグランドマスター・ケイビインを倒し、キョート城の本丸エリアに潜入した。果たして彼らはユカノたちを助け出し、ロード・オブ・ザイバツを討ち取ることができるのだろうか……?
ホウリュウ・テンプル
ゼンめいてモデストなホウリュウ・テンプルの佇まいを、ニンジャスレイヤーとディテクティヴは数秒間立ち止まり、眺めた。「ちょっとした史跡……ちょっとした、なんてもんじゃねェか。この下にユカノ=サンがいるかも知れねえ。それなら話は実際早い」「そう容易くは行くまいが……」
テンプル内は無人。内部に祭祀の施設は無く、図書館めいた古文書集積施設となっている。世界中から集められたこれらの古いマキモノや書物には、禁断のニンジャ知識が断片的に記されているのだ。「興味はあるが、読書をしている暇もないな。どこかに潜んで休まねば」アンバサダーが促す。
……4人はニンジャ視力で暗がりの通路を進む。忌まわしい文書が並ぶ書架からはなるべく目をそらす。ニンジャ第六感が何か良からぬ予感を与えたのだ。魅入られてしまえば危険だ。モータルがここに立ち入れば、書物のタイトルを見ただけで発狂していただろう。ゆえに常駐する者もいないのだ。
『アイエエエ……アイエエエ……!』どこかから声が聞こえる。ユカノではない。男の声だ。それは4人の耳ではなく、ニューロンに直接響くような声であった。『ドーモ……アラクニッドです……!』声はアイサツを行った。ニンジャなのだ。「……ドーモ」4人はアイサツを返す。だが、声の主は何処に。
『下だ……螺旋階段……座敷牢の中……そこに、アラクニッドの肉体は囚われている……来てくれ……教えよう……秘密を……!』途切れ途切れに声が届く。4人は頷いた。おそらくロードに背いた罪人が、この下に幽閉されているのだ。何か情報が得られるかも知れない。4人は螺旋階段を発見し、下へ降りる。
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日本の伝統的テンプル建築にはおよそそぐわぬ、増築されたと思しき階段の左右には、上と同じく書棚が並んでいる。それらから目をそらしつつ進むと、書棚はぷっつりと途絶え、剥き出しの岩壁となる。螺旋階段を一周するごとに踊り場があり、座敷牢が隣接している。中に人はなく、物音もない。
「最下層まで降りろってか」ディテクティヴが脂汗を拭う。ここに長居するのも自我に良くない気がする。冷え冷えとした狂気が地の底から立ち昇って来る。『それには及ばぬ……そして、来るのは1人でよい』座敷牢の一つから黒い影が這い出て来た。『アラクニッドの心身が耐えきれないのだから』
それは、黒く長い乱れ髪に覆われた、やせ衰えた男であった。『ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。待っていた』「ドーモ、アラクニッド=サン」アイサツを返し、背後を振り返る。ガンドーたちがいない。「これは!」『夢の中だ。アラクニッドの肉体は動けない。ゆえに、夢の中を歩く』
アラクニッドは奇妙な口ぶりでそう告げた。彼の自我は破壊されており、その分裂した一部がユーレイめいて現れているのだ。『ニンジャスレイヤーはここに来て、知る必要があった。予言の通りに。ロードを倒し、ザイバツを滅ぼすために。アラクニッドはオヒガンから未来を知り、予言する』
……何が語られたかは、ここでは語るまい。現世に戻ったニンジャスレイヤーは激しい怒りとカラテをみなぎらせていた。彼はロードのキョジツテンカンホーを打ち破り、ザイバツを滅ぼさねばならない。絶対に!
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一行はテンプル地上階に戻り、いよいよ本丸への潜入作戦に移る。エーリアスからの極秘IRC連絡によれば、電算室を滅ぼし、グランドマスターのニーズヘグに重傷を負わせて撤退させ、ナンシーの物理肉体を取り戻したものの、電算室長ヴィジランスを取り逃したという。ユカノの居場所は不明だ。
ナンシーはザイバツとの契約により、表立ってザイバツに不利益をもたらすことはできない。そのため、ザイバツのハッカーニンジャ・ストーカーの死体に取り憑いたエーリアスを介する必要がある。『こっちも逃げ回りながら調べてるが、ヴィジランス=サンが妨害して来やがる。どこだと思う?』
ザイバツはサイバネや電子機器の利用を嫌っており、キョート城内には監視カメラがない場所も多いという。ならば、そのどこかだ。アンバサダーは城内の間取りを思い出す。「……ユカノ=サンを用いて何か儀式を行おうというのなら、『琥珀ニンジャの間』という大広間がある。そこだろう」
「琥珀ニンジャ?」「本丸の地下だ。琥珀で作られた聖なるニンジャ像があるという」「聖なるニンジャねえ」ディテクティヴは鼻を鳴らす。いかにもカルト教団らしい施設だ。「わかった。そこへ行く」ニンジャスレイヤーは激しい怒りを抑えながら立ち上がった。敵の首領もそこにいるはずだ。
『わかった。俺たちが陽動する。後で合流だ!』通信終了。「……オヌシらは別行動せよ」ニンジャスレイヤーは深く呼吸し、ザイバツへの憎悪を抑える。ディテクティヴ、ディプロマット、アンバサダーは頷いた。この状態の彼とニンジャが行動をともにするのは、おそらく味方でも危険なのだ。
罪罰罪罰罪罰罪罰
カランカランカラン……カランカラン……キョート城内のナリコが一斉に鳴らされ、モールス信号じみた秘密暗号を伝達する。それはヴィジランスのタイピングによって、城の外、キョート共和国全域へ展開していた全てのザイバツニンジャに伝達された。『キョート城、琥珀ニンジャの間へ集え』と!
罪罰罪罰罪罰罪罰
【続く】
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