忍殺TRPGリプレイ【サバス・ブラッディ・サバス】03
前回のあらすじ:ネオサイタマ、デスタニ・ストリート。廃テンプルに立て籠もり、ジアゲの邪魔をするアンタイブディズム・ブラックメタリスト(ABBM)集団を殲滅すべく、三人の手練れニンジャが派遣された。だが本堂で行われていた儀式により、クロヤギ・ニンジャが現世に顕現する!
◆
「「「アアダブ……!」」」「「「ダミアムナ!」」」ABBMたちは失禁しながら涙を垂れ流し、反ブッダ呪文を唱えている。「ブッダの奴隷を殺せ!」「マサカリを振り上げろ!」「血肉を捧げよ!偉大なるブッダセイタンに!」彼らは魔術ニンジャたちに唆され、血走った目で武器を振り上げた!
「どうする」「……逃げたいところだけど」ヴェノムパピヨンはカタカタと震えている。三人がかり、否、五人がかりでも厳しい相手だ。クロヤギ・ニンジャの肉体は、01分解しかけながらも徐々に再生を始めている。再生が分解を上回り、現世に定着しきってしまえば、ネオサイタマはオシマイだ。
「何か……解決法がある筈ッス!」デンパルスは呼吸を調え、カラテとニューロンを振り絞る。「このままにはしておけないわ」ヴェノムパピヨンも覚悟を決める。「ブッ殺す」キルキラーは殺人カラテを構えた。大気に邪悪なカラテが満ちる!「「「マッポーカリプス・ナァァウ!」」」
戦闘開始
1ターン目
『AAARGGGHHHH……!』恐るべきクロヤギ・ニンジャの凝視がキルキラーに向かう!「い、イヤーッ!」身を沈めて回避!凝視はぐるりと半円を描き、レオナールに向かった。「おお、我があるじ……!」レオナールは恍惚とした声で腕を広げる。『ヨギスミカテ……ソルナガバレ……!』
クロヤギ・ニンジャは一歩進み出て、レオナールに向けて邪悪な杖を振り上げ、意味不明の文言を唱え始める。何か祝福を与えようというのか?『ロウ・ワン!』力ある名が唱えられ、異様なエテルの流れが黒い瘴気となってレオナールへほとばしる!「え?」レオナールは訝しんだ。これは、呪い?
ZMZMZMZMZM……!「アバババーッ!?」ナムアミダブツ!クロヤギ・ニンジャの恐るべき呪いがレオナールに直撃し、灰色の彫刻めいて石化せしめた!狂えるリアルニンジャには、敵も味方も区別がつかないというのか!「アイエエエ!?レオナール=サン!?」マレフィカルムは震え上がる!
「イヤーッ!」ヴェノムパピヨンは素早くマレフィカルムの背後に移動し、彼女の肩を掴んだ!「ヒッ」「見たでしょう?アレはあなたたちも見境なく殺す気よ!」「アイエッ!?」「きっとアレは、ブッダの化身よ!協力してあいつを倒しましょう!」ヴェノムパピヨンはエテルを注ぎ込んで交渉!
「アイエエエ……わ、わかりました」マレフィカルムは震えながら頷いた。彼女の精神はオヒガンの深みの狂気と接続しやすく、高度なジツを操ることが可能だが、代償として自我が不安定かつ脆弱なのだ。つまり、誰かに強く命令されると逆らえない!「「「ヴォイド……アイエエエアバーッ!」」」
ナムアミダブツ!本堂内のABBMたちは、クロヤギ・ニンジャが振るう邪悪なパワーの余波を受け、全身の穴から血を噴き出して昏倒!いかに薬物と狂気に身を委ね、魔術ニンジャらに守られていても、その守りを失ってなまの混沌の狂気を浴びれば、脆弱なモータルではひとたまりもない!
「降伏しろ!死にたくねェだろが!」キルキラーはレオナールの背後に移動し、必死で呼びかける!「……い、偉大なるあるじの血肉になるのならば、我が本望……!」レオナールは拒む!「ザッケンナコラー!」デンパルスがレオナールに駆け寄り、キアイを込めて説得する!「死なせねェぞ!」
「し、死なせてくれ……俺たちにはそれだけが」「五月蠅ェッ!オレたちが活かしてやる!社会に貢献させてやる!」「うう……!」デンパルスにキアイを入れられ、レオナールは震えながら頷いた。彼に残された僅かな人間性が、眼の前に顕現した自らのクランの始祖にあらがったのだ!
「う、ウオオーッ!」レオナールは内なるカラテで始祖の呪いを……打ち払う!そして肉体をヘンゲさせ、黒山羊と人間を混ぜ合わせた悪魔めいた姿に変わった!「AAARGHHHHH!」もはやカラテあるのみ!
2ターン目
『0101010SHHHHH01101011』クロヤギ・ニンジャの凝視が、ヴェノムパピヨンに向かう!「い、イヤーッ!」マレフィカルムは術式に干渉し、始祖の呪いを打ち払う!『GRRRRRR……!』クロヤギ・ニンジャはブルブルと震えながら、黒い子山羊を次々と生みだし始めた。『『『『MYYYY!』』』』
◆クロヤギ・ミニオン(種別:危険生物)
カラテ 2 体力 2
ニューロン 1 精神力 1
ワザマエ 1 脚力 2
ジツ - 万札 0
攻撃/射撃/機先/電脳 2/ -/ 1/ -
◇装備や特記事項
●角と蹄:近接攻撃、ダメージ1
◉突撃:脚力の2倍直進移動、直後の攻撃に痛打+1
◉同化:自身の体力をクロヤギ・ニンジャに与えて消滅、回復させる
能力値合計:4
ナムアミダブツ……!これぞクロヤギ・ニンジャの眷属としてカラテノミコンに記される「群れ為す不完全なものたち」にほかならない。彼女の信者であるABBMたち、魔術ニンジャたちも実際そうではあったが……!「めんどくさいわね」ヴェノムパピヨンは状況判断する。本体を叩くべきだが……。
「キエーッ!」クロヤギ・ミニオンへキアイを放ちゼゲン・ジツ!直接クロヤギ・ニンジャから生え出たとはいえ、その自我は子山羊めいて脆弱だ!『『『MYYYY!』』』三匹のミニオンがジツを浴びて昏倒!残り一匹!「イヤーッ!」キルキラーが壁を蹴ってクロヤギ・ニンジャへ飛びかかる!
『GRRRRR!』クロヤギ・ニンジャは不定形の肉体を変形させて回避!だがそこへデンパルスとレオナールが駆け寄る!「シューシュシュシュ!」「AARGHHHH!」SMASH!KRAASH!『ARGHHH!』命中!邪悪なリアルニンジャは悍ましい叫び声をあげる!『MYYYYY!』ミニオンが駆け寄る!
一匹となったクロヤギ・ミニオンは、ニンジャたちに攻撃するでもなく、子山羊が母山羊の乳房に飛びつくように、混沌の母の肉体に飛びついた。ミニオンはそのまま同化吸収され、再びクロヤギ・ニンジャの肉体に戻り、負傷した部分を補った。「「うう……」」魔術ニンジャらはその魅力に抗う!
3ターン目
『GRRRRR……AAARGGGHHHHH!』クロヤギ・ニンジャはブルブルと身を震わせ、身体を膨張させていく!本堂の天井に頭がつかんばかりに巨大化した彼女は、複数の腕、樹木のような角を伸ばし、邪悪なカラテを溢れさせる!『我……に……逆らう……か……子らよ……かわいらしや……』ナムアミダブツ!
ズオオオオ……!クロヤギ・ニンジャはブッダめいて微笑みながら、デンパルスへ抱擁するように複数の腕を伸ばした。彼女に捕まれば、命はない!どくん……!デンパルスはニンジャアドレナリンを過剰分泌し、恐るべき死の抱擁を……「イヤーッ!」側転回避!「フーッ、フーッ!ヤバい!」
デンパルスは恐怖におののく。五対一で圧倒的有利かと思えば、全くもって危険だ。「アイエエエ……!」マレフィカルムは涙目でガクガクと震えて失禁し、気絶寸前だ。戦えそうにないし、ジツが効きそうにもない。カラテはある程度通じるようだが……「バラバラになって、外へ逃げましょう!」
ヴェノムパピヨンはマレフィカルムを担ぎ上げ撤退!「イヤーッ!」「「「イヤーッ!」」」キルキラー、デンパルス、レオナールもそれぞれ本堂の外へ!「援軍を呼ばねェと!」『ホホホホホホホホ……!』クロヤギ・ニンジャは嘲笑う!『鬼ごっこかえ。かくれんぼかえ。捕まえるぞよ!』
4ターン目
ズオオオオオ……!クロヤギ・ニンジャは西へ顔を向け、扉の外にいたレオナールを凝視した。『我が子よ』「アイエエエ!」レオナールは恐怖と歓喜に絶叫した。彼の脳内にアドレナリンが溢れ、ソーマト・リコールが流れた。「あ、ああ」『いい子じゃ。かわいらしや。我がもとに戻れ……!』
KRAAAAASH!「アバーッ!」クロヤギ・ニンジャの巨大な掌が、レオナールを弾き飛ばした!彼はトマトめいて潰れる運命をギリギリで逃れ、境内の岩に叩きつけられて昏倒した。『ホホホホホ!』「レオナール=サン!」本堂南西に飛び出していたデンパルスは、それを目撃する!このままでは!
「見捨てなさい!イヤーッ!」ヴェノムパピヨンは状況判断し、マレフィカルムを抱きかかえて撤退!「見捨ててられっかよ!イヤーッ!」キルキラーは本堂へ飛び戻りスリケン投擲!『ホホホホ!』クロヤギ・ニンジャは難なくはたき落とす!「此処で見捨てちゃ、漢が廃る!」
デンパルスは覚悟を決め、クロヤギ・ニンジャへ殴りかかった!「シューシュシュシュ!」SMASH!『AAARGHHH!』命中!だが浅い!「女は殴打らねェ主義ッスけど、敵なら別ッス!」『ホホホホ……かわいらしや』クロヤギ・ニンジャは意に介さない。『邪魔じゃ。押し通るぞよ』
5ターン目
ボコボコボコボコ……!クロヤギ・ニンジャは自らの肉体を無数のクロヤギに分解し、扉を塞ぐデンパルスの頭上の壁を突き破って外へ飛び出す!『SHHHH0101001……!』無数の目がギラギラと輝き、デンパルスを凝視する!「い、イヤーッ!」パシン!デンパルスはカラテを振り絞って弾く!
だが……!「アバーッ!」ナムアミダブツ!レオナールは凝視をまともに浴びて心臓停止!死亡!彼の肉体はそのままクロヤギの群れに分解され、クロヤギ・ニンジャに取り込まれていく!インガオホー!「仏陀不悪口!」デンパルスは振り向き、口汚くブッダを呪った。
「「イヤーッ!」」キルキラーとデンパルスはクロヤギ・ニンジャへ必死で立ち向かい、カラテを叩き込む!SMASH!SMASH!SMAAASH!『『『AAAARGGGHHHHH!MYYYYYYY!』』』クロヤギ・ニンジャは猛攻を浴びて身悶えし、肉体を崩れさせていく!『01010101SHHHHHAAAA!』
ゴーン……!ゴーン……!ゴーン……!遠くのテンプルから、ウシミツ・アワーの終了を告げ知らせる鐘が鳴り響いた。たちまちクロヤギ・ニンジャの肉体は01分解し、オヒガンの彼方へ消えていく……!『我が……子よ……もうひとりは……また……迎えに……ゆくぞ……!01010101010101010』
戦闘終了
エピローグ
……イクサは終わった。レオナールはクロヤギ・ニンジャに吸収されて消滅したが、マレフィカルムは助け出せた。そして、クロヤギ・ニンジャは現世にとどまることなく、消えていった。倒したわけではないが、最悪の事態は免れたのだ。「フー……有難っした」デンパルスは腰を下ろす。
キルキラーは無言で頷き、ヴェノムパピヨンにIRCで連絡する。『……それはチョージョー。私だけ逃げちゃって、かっこ悪いわ』「いいさ。一人は助け出せたんだからな」「然様っすよ」キルキラーとデンパルスは力なく笑い、自分たちの身代わりに犠牲となったレオナールに手を合わせた。
ヴェノムパピヨンがマレフィカルムを背負って駆け戻ってきた。詳しい事情は彼女に尋問するとして、ABBMを殲滅するミッションは成功したのだ。「ジアゲもうまくいくな」「悪魔除祓したが善良ッスね」「だな」血まみれのサバトは終わった。だが……これが最後とも思えない。
【サバス・ブラッディ・サバス】終わり
リザルトな