忍殺TRPGリプレイ【トゥルース・フォールズ・オン・ユー】02
前回のあらすじ:キョート共和国、アンダーガイオン。その第八階層に探偵事務所を構えるタカギ・ガンドーは、ザイバツ・シャドーギルドに敵対するニンジャスレイヤーの行動を密かに支援していた。そしてある時、彼は『スズキ・キヨシ脱獄』という数ヶ月前の新聞記事に目をとめる……。
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ガンドー探偵事務所
ここ三週間のうちに、アンダーガイオン下層部を中心として無差別殺人事件が複数発生。それらの断片的な情報だ。連続殺人などアンダーガイオンではチャメシ・インシデントだ。だが、この事件には猟奇的共通点があった。被害者の誰もが『腹部を銃で撃たれ、黒いセル眼鏡をかけている』という。
あるいは死後にかけさせられ……口紅を塗りたくられていた。男も女も、年齢も、モヒカンも、スモトリも、ペケロッパも、区別なく。……ニンジャスレイヤーはいない。ガンドーはZBR煙草を吹かしながら、生体LAN端子にケーブルをつなぎ、メインフレームUNIXに直結した。何か、気になる。
瞬時に、ニューロン内にはアンダーガイオンの緑色ワイヤフレーム略図が描画された。ガンドーはここに、殺人事件が発生した地点を三次元プロットしていく。ワイヤフレームを回転させ、ある角度から光点を星座のように繋ぐと……そこには「グランド」「オモシロイ」のカタカナ文字が現れた。
正確には「グ」の濁点となるべき場所が一つ、足りない。ガンドーは眉根を寄せた。「間違いねえ、あの野郎だ……誘ってやがるな」彼はイカジャーキーを齧りながら、忌々しげに吐き捨てた。……十年前、彼は怪盗スズキ・キヨシを捕まえた。琵琶湖の豪華客船『グランド・オモシロイ』の上で。
黒いセル眼鏡。口紅。銃で撃たれた腹部。グランド・オモシロイ。ガンドーは静かな怒りをたぎらせる。前頭部に眠る彼女が、彼の怒りに呼応して身じろぎしたような感覚がある。ガンドーが手をこまねいている間にも、新たな犠牲者が出るだろう。……スズキ・キヨシを、止めねばならない!
???
アンダーガイオン第八階層。数年前に倒産した「猥褻動画の会社」の看板が残る廃社屋。周辺にも廃ビルが多く、浮浪者もさして近づかない。だが、閉ざされたシャッターの前には黒いヤクザスーツを着た二人のよく似た男が仁王立ちし、埋込式サイバーサングラスで油断なく周りを見張っている。
私立探偵タカギ・ガンドーは正面から突入せず、廃ビルの床下スペースを這い進んでいた。彼はニンジャではないのだ。「畜生め、ここはクローンヤクザのデパートか?」彼は愚痴をこぼしながら、LAN直結小型カメラやハッキングによって廃ビル内を調査していく。明らかに異常なヤクザの数だ。
クローンヤクザの人数は、およそ30。みなカタナを持っている。おそらく懐にはチャカガンがあろう。ニンジャなら一斉射撃や一斉攻撃を受けても躱せるだろうが、ガンドーはニンジャではないので搦め手を使う必要がある。ZZZZ……ブゥーン、ブン!部屋の隅に横置き放置されたUNIXが突然動いた。
『アーン!ハァーン!』モニタには古臭い3Dオイランビデオが流れ始める。ガンドーのハッキングだ。「「「ワッザコラー!?」」」異常に気づいたクローンヤクザたちは、一糸乱れぬ動きでUNIXの前に駆けつけ、一斉に首を傾げた。ガンドーはその隙に背後の床下から姿を現し、机を踏んで天井裏へ。
「ザマミロ!」ガンドーは天井裏の配線スペースをネズミめいて這い進み、奥の部屋へ向かう。『アイエエエ……』かすかな泣き声が聴こえた。オイランビデオの音声ではない。……長い廊下の一番奥、窓もない大部屋に、その少女は監禁されていた。スズキ・キヨシがガンドーを誘き寄せる餌だ。
彼女は椅子に座らされ、鎖で拘束されている。頭髪はぞんざいに切られ、顔には真新しい黒いセル眼鏡と、はみ出した口紅。頬には青あざがあり、恐怖に怯え、泣きじゃくっている。着せられているのは探偵助手服。天井裏から彼女の様子を見たガンドーは、安堵しつつも激しい怒りを覚えた。
ガンドーは深呼吸して、冷静であろうとつとめる。大部屋の戸口には見張りクローンヤクザが二人。あれを静かに殺し、少女を……ガタン!「!」ナムサン!腹這いのガンドーの体の下で、粗悪な天井パーティションが軋み、斜めに傾いた!「ブッダミット!」彼は毒づきながら両腕で板を叩く!
SMAASH!ガンドーの巨体がタタミ大の板ごと部屋に落下し、立膝姿勢で着地!フロア全体に破壊音が鳴り響き、切れた回線から火花が散った!「アイエエ!?」少女は傍らに落ちてきた巨漢に驚愕!「ドーモ、お嬢ちゃん。俺は探偵だ」ガンドーは立ち上がり、49マグナム二挺拳銃を構えた!
「「スッゾコラー!」」クローンヤクザたちは振り向き、カタナを構える!一触即発アトモスフィア!
◆クローンヤクザY-12型×2(種別:モータル/バイオ生物/クローンヤクザ)
カラテ 2 体力 1
ニューロン 1 精神力 1
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ - 万札 2
攻撃/射撃/機先/電脳 2/ 3/ 1/ 1
◇装備や特記事項
◆カタナ
能力値合計:6
戦闘開始
1ターン目
「TAKE THIS!」BLAMBLAM!ガンドーの49マグナム二挺拳銃が火を噴く!「「アバーッ!」」クローンヤクザたちは胸部を吹き飛ばされ即死!『ナンオラー!』『ダッテメッコラー!』部屋の外から複数のヤクザスラング!まもなく30人ものクローンヤクザ軍団がここに雪崩込んでくるはずだ!
「結局はカラテかよ。クルゼ所長にゃ程遠いぜ!」ガンドーは舌打ちし、リボルバーに銃弾を再装填した。こうなれば敵の全員を殺し、少女を担いで脱出するしかない!彼は呼吸を整え、暗黒武道「ピストルカラテ」の構えをとった。銃弾の予備はあるが、再装填する余裕はなさそうだ。「行くぞ!」
「「「「ザッケンナコラー!」」」」「ウオオオーーーッ!」
2ターン目以後
ガンドーはカタナで斬りかかるクローンヤクザたちを引き付け、射撃!「イヤーッ!」BLAMBLAM!「「アバーッ!」」即死!さらに射撃の反動を利用して回し蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」SMASH!「アバーッ!」即死!タツジン!これが暗黒武道ピストルカラテだ!まだまだいける!
「「テメッコラー!」」ヤクザたちがカタナで斬りかかる!SLASHSH!「グワーッ!」一発命中!やはり無傷とはいかぬ!ガンドーはヤクザ部隊にあえて突入!「イヤーッ!」BLAMBLAM!「「アバーッ!」」「イヤーッ!」「アバーッ!」「「アッコラー!」」SLASHSH!「イヤーッ!」回避!
「イヤーッ!」BLAMBLAM!「「アバーッ!」」「イヤーッ!」「アバーッ!」「「シネッコラー!」」「グワーッ!イヤーッ!」BLAMBLAM!「「アバーッ!」」「「タマトッタル!」」「グワーッ!」飛び散る血飛沫と弾丸と薬莢!なんたるシュラバ・インシデントか!「ウオーッ!」……
……Killin',Killin'とサツバツの音。49口径弾の薬莢がコンクリート床に落ちて散らばり、しばしの静寂。「シューッ……!」ザンシン!既にガンドーの周囲に敵はいない。緑色のバイオ血液の海には、合計35人ものクローンヤクザの死体が倒れている。ガンドーもやや負傷したが、なんたる奇跡的勝利!
戦闘終了
暗黒武道ピストルカラテと、ヤバレカバレと、潜入前に限界まで注ぎ込んだZBRの賜物だ。ガンドーは少女を振り返る。……彼女はあまりのことに失神していた。足元は濡れている。仕方あるまい。鎖は少々厄介か。椅子ごと担いで逃げるか? 彼が少女に歩み寄った、その時。……パチ、パチ。
???
部屋の外、廊下の奥から挑発的な拍手が聞こえた。ガンドーは49マグナムに弾丸を再装填しながら振り返り、長い廊下の先を見た。……バチバチと明滅する電灯に照らされた人影が見える。拍手する白い手袋、ロングコートの上に黒いケープ。顔にはハーフハンニャ・オメーン!見覚えのある姿だ!
「ヘェーヘェーヘェー……ブラーヴォ!……ブラーヴォ!」
ガンドーは無言で少女の椅子を部屋の隅へと運んだ。そして恐ろしいほど静かに、暗黒武道ピストルカラテを構える。彼が構え終わるのを待っていたかのように、相手はアイサツした。「ドーモォ、タカギ・ガンドー=サン。俺はガンスリンガー……いや、スズキ・キヨシです!」
◆ガンスリンガー/スズキ・キヨシ(種別:ニンジャ)
カラテ 3 体力 7
ニューロン 10 精神力 10
ワザマエ 13 脚力 7/N
ジツ 0 万札 20
攻撃/射撃/機先/電脳 3/15/10/10
回避/精密/側転/発動 13/13/13/ -
即応ダイス:3 緊急回避ダイス:1
◇装備や所持品
◆近代的タクティカルニンジャ装束一式(反映済み)
◆オノミチ・カスタム×2:射撃難易度H、連射3、ダメージ1、マルチ・時間差可
ダブルターゲット 側転難易度+1
◇スキル
☆テッポウ・ニンジャクラン(アーチ級)
◉ウィークポイント射撃:出目66で痛打+1、モータルのモブ敵なら即死
◉タクティカル移動射撃
◉グレーター・ツジギリ
◉銃弾の見切り
◉スリケンの見切り
◉◉タツジン:マグナム・ピストルカラテ
二挺拳銃装備を「素手状態」とし、装備ペナルティ無視、射撃難易度-1
近接攻撃時は連続攻撃+1、攻撃難易度+1
●戦闘スタイル
ピストルカラテ正拳突き:カラテで攻撃判定(H)
連続攻撃3、ダメージ1(出目6で2)、殺伐発生
ピストルカラテ乱舞:ワザマエで攻撃判定(N)
出目6で痛打+1、殺伐なし
●射撃スタイル
射撃反動回し蹴り:ワザマエで通常の射撃判定、隣接敵には難易度+1
射撃終了後に隣接敵1体へ1ダメージ&弾き飛ばし(回避H、迎撃可)
2連射以上の判定に成功した場合、隣接敵全員に1ダメージ(回避H、迎撃不可)
●ワザ:ロウレス・フロンティア 回避出目65+で迎撃発生時、
迎撃ダメージ2(回避H) ターン中1回まで
●連射3、時間差、マルチターゲット
◉知識:テックガジェット、犯罪、ザイバツ
◉交渉:駆け引き、煽り
◉◉狂気:異常執着
◉◉狂気:メガロ妄想
◉黒い復讐心(狂戦士化4):ダメージを受けると戦闘終了まで攻撃+4、回避-4
能力値合計:26
「やっぱりテメエか。ドーモ、タカギ・ガンドーです」彼はアイサツを返した。相手は、復讐心に狂った凶悪ニンジャ。こちらは手負いの非ニンジャ。殺せるか。あるいは、説得するか。ニンジャスレイヤーがいれば。「ヘェーヘェーヘェー……興味深い戦いを見せてもらった……」ニンジャは嗤った。
「何故興味深いかと言うとォ……俺に憑依したニンジャソウルに関係があるのさ……ヘェーヘェーヘェー……」スズキ・キヨシもまた、二挺のリボルバーを抜き……おお!ナムアミダブツ!その構えはまさか!?……暗黒武道ピストルカラテ!?「そいつは何の冗談だ」ガンドーは笑いながら脂汗を垂らす。
【続く】
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