【つの版】ニンジャスレイヤーTRPGソロアドリプレイ【ゲット・ワイルド】01
ドーモ、三宅つのです。これは2023年4月15日にTwitter上で行われた、ニンジャスレイヤーTRPGの公式ソロアドベンチャーでのつののリプレイを纏めたものです。少々長くなったので分割します。
ソロアドは2021年1月以来なので2年以上ぶりですね。あの時に誕生したフレイムスローワー=サンもすっかり手練れです。今回はこのようなニンジャが誕生しました。
◆レッドフォックス(種別:ニンジャ)
カラテ 3 体力 3
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 5 脚力 3/N
ジツ 1 万札 0
DKK 0 名声 0
攻撃/射撃/機先/電脳 3/ 5/ 3/ 3
回避/精密/側転/発動 5/ 5/ 5/ 4
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
◆オーガニック・スシ:体力3回復(使い切り)
◇ジツやスキル
☆キツネ・ニンジャクラン、ジツLV1
☆ヘンゲヨーカイ・ジツLV1
◉知識:ストリートの礼儀
◉交渉:欺き、卑屈
○生い立ち:言いくるめ
能力値合計:13
プレロールドキャラクターとして提示されたイエロータヌキ=サンをそのまま使おうかとも思いましたが、ちょっとひねってキツネにしてみました。キツネ系のケモノパンクス野郎が立ち絵集にいたので採用です。どこぞのインスタントカップ麺とは無関係ですが、グリーンタヌキ=サンもいるかも知れません。レッドタヌキ=サンだとガンダムに乗りそうです。カトン使いではないのでファイアフォックスではありません。
能力はイエロータヌキ=サンとほぼ同じで、ワザマエが1低いだけです。生い立ち表を振ったら「言いくるめ」が出たのでキツネらしくなりました。そういえばシルバーフェイス=サンというキツネめいたニンジャもいましたが無関係だと思います。特に善良でもありませんが、用心深いためサイバネやバイオサイバネを入れておらず、ローンはないもののカネもありません。
ではリプレイの様子から、このニンジャのアトモスフィアを感じ取っていきましょう。例によってパルプ小説仕立てでやります。
◇🎲◇
序
ネオサイタマ、キタノ・ディストリクト。重金属酸性雨が降る薄暗い午後。薄汚れたピザ店『ピザタキ』に、一人の男が入店した。
薄汚れた赤と黒のスニーカー。同じ配色のカーゴパンツとパーカー。どれもAAHMR(耐重金属酸性雨加工/アーマー)値が高いタフなストリートウェアだ。腰には剣呑なチェーンアクセサリー、背中には頑丈な背嚢。フードからはケモノの耳が突き出し、顔はまさにキツネめいていて、尻尾まである。
彼はレッドフォックス。ネオサイタマでは彼程度の異形は珍しくもなく、ケモノパンクスとしてストリートではしばしば見られる程だが、その姿かたちはバイオサイバネではない。オーガニックでもなく、超自然的な理由だ。彼に憑依したニンジャソウルが、不可逆の肉体的変化をもたらしたのだ。
そう、彼はニンジャである。平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在は実在した。今やその魂は各地に降り注いで非ニンジャに憑依し、復活しつつあるのだ。とはいえレッドフォックスは常人よりは強いものの、かつての半神的存在からは程遠い。ゆえに彼は貧乏暮らしを続けている。
「なンだよ、また来たのか……」店主のタキは薄汚い金髪をかきながら、気怠そうにレッドフォックスを迎え入れる。カウンターの中には中古UNIXデッキが並び、モニタではビキニカーウォッシュ動画が再生されている。タキの趣味だ。彼はテンサイ級ハッカーと自称しているが、本業は情報屋だ。
ダンゴウ
「ピザならセルフだ」「飯は食って来た。ビズはねえのか」「アー、これなんかどうだ。カネモチ・セレブの家出事件……」タキは別のUNIXを操作し、情報を表示させる。「家出事件?」「ああ。最近カネモチ・セレブたちの間でちょっと増えててよ。誘拐事件じゃねェってのが、どうもキナ臭いぜ」
タキは腰抜けだが、仕事はそれなりにできる。でなければ裏社会では生き残れない。ネオサイタマを牛耳る暗黒組織「ソウカイ・シンジケート」の傘下にも一応入っており、敵に回せば報復される可能性がある。「カネモチ仲間に誘われて、ドラッグとか、カルトにでもハマったんじゃないかってよ」
「カネになりそうじゃねェか。そういうのを待ってたんだ」レッドフォックスは目を細める。キツネめいて用心深い彼は、なるべく敵を作らず、借金もせずに生きているが、懐具合は常に寂しい。一匹狼の悲しきさだめだ。「よし。情報はこれだ」タキは簡単な情報をまとめたファイルを差し出す。
捜索するターゲットは、アタラシイ・ソリューションズ社の部長令嬢「エモコ」だ。失踪してからまだ日が浅い。ドラッグやカルトにハマったとしても、説得やカラテなどで連れ帰れる可能性は高いだろう。危険はあるだろうが、こっちはニンジャだ。そこらのヨタモノやカルティストなら問題ない。
「ふん、なるほどな。俺も調べてみるぜ」レッドフォックスは頷き、ピザタキを後にした。入れ替わりで、オレンジ色の髪をした女性がピザタキに入って来た。「と、ドーモ」「ドーモ!配達から戻りました!」アルバイトのコトブキだ。レッドフォックスはオジギし、振り返り、彼女を目で追った。
調査
選択肢は二つ。IRC-NETにダイヴして情報を漁るか、時間はかかるが足やコネを使って地道に調査するか。ハッキングはあまり得意でない。戻ってタキを殴って脅し、さらに情報を探らせる非道な手もあるが、気が進まない。タキからソウカイヤにチクられると面倒だし、コトブキが怒るだろう。
となると、地道に調査するのが一番だ。彼はストリートの流儀に詳しく、それなりのコネもあるし、鼻もきく。キツネが地面の下のネズミを嗅ぎつけるように、歩いて聞き込みを行うのだ。彼はまずカチグミが好む高級繁華街「ネオロポンギ」に当たりをつけ、現地を調査することにした。
……夜になる頃、だいたいの情報が出揃って来た。最近、若いセレブの間では『ドクノキバ』という名の頽廃カルト教団が人気を集めているという。アユタヤ仕込みのビューティー・ヨガやら、カラテ健康法やらをうたってカネモチの若い女を勧誘し、囲い込んで資金を出させている、というわけだ。
タキにIRCで確認したところ、ソウカイ・シンジケートとは先ごろまで提携関係にあったが、最近になって離反したという。つまり、タキのケツモチにとっての敵だ。派手に暴れてもいいどころか、暴れてやればいいらしい。実際好都合だが、ニンジャが背後にいる可能性が高い。用心せねば。
潜入
そのカルト教団が存在するというのが、ネオロポンギの一角に聳えるビルだ。カチグミ向け高級クラブもいくつか入っており、着飾ったセレブ男女や性別不詳の人物も多数出入りしている。このようなビルのワンフロアが犯罪組織やカルトの根城になっていることは実際珍しくない。どう忍び込むか?
セレブが集う高級繁華街のため、セキュリティの高さはマケグミ地域の比ではない。レッドフォックスは少し考える。カラテやハッキングはやや苦手だ。見つかれば通報されてうまくない。しからば、常連客の振りをして何喰わぬ顔で入るか。ただ彼の風貌は少々目立つし、衣服や靴も少々薄汚い。
となると……彼はニンジャ器用さを発揮して裏口の鍵とセキュリティを解除し、しめやかに潜入した。サイバネアイやセキュリティ知識がなくとも、ニンジャであればこの程度はこなせる。もし彼がハック&スラッシュ(押し込み強盗)を行えば、危険はあるにせよ、相当に稼げていたであろう。
レッドフォックスは注意深く監視カメラやセンサー類を回避し、ニンジャ第六感を発揮して、ビル内のとあるフロアへ辿り着いた。元は高級スポーツクラブだったと思しきこのフロアは、カラテ・ドージョーに作り替えられていた。照明は薄暗く、麝香じみた甘ったるいにおいの煙が立ち込めている。
一般に流通する薬物ではないが、明らかに有害だ。レッドフォックスは眉根を寄せ鼻をつまんだ。さらに暗がりを進むと、壁には「ドクノキバ」「コブラ」「世界征服」などと書かれたノボリと共に、鋼鉄の蛇神の頭部を模したレリーフのようなものが飾られているのが見えた。カルトの偶像だ。
「ブッダファック」レッドフォックスは小さく呟き、ニンジャ野伏力を発揮して気配を隠しつつ、忍び足でさらに奥へと進む。すると、奥から複数の声が……カラテシャウトが聞こえてきた。「「「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」」」レッドフォックスが中を覗くと……おお、ナムアミダブツ!
そこではジュー・ウェアを着たモータルたちが、男女の区別なく、一心不乱にカラテトレーニングを行っているではないか!ドージョーの隅では香炉の煙を吸って半狂乱状態になり、黄金のコブラ像に祈りを捧げる者もいる! その異様な光景は完全にカルト……カラテカルトだ!「なんだこりゃあ……」
ごくり。レッドフォックスが唾を飲んだその時、壁のレリーフが突然目を輝かせ、恐るべき電子音声で警告を発した!『タクシャカよ!侵入者がいるぞ!』ナムサン!その直後、前後左右のフスマが同時に開き、ジュー・ウェアを着たカルティストの群れが襲いかかって来た!「「「イヤーッ!」」」
戦闘開始
【続く】
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