忍殺TRPGリプレイ【コンスピラーシィ・セオリー】02
前回のあらすじ:女ニンジャ・デッドリーパーのボス、アシッドウルフ。フィルギアの推測によれば、彼は電子戦争以前にCIA長官であったアレン・ダレスであり、邪悪なる「鷲の一族」が再び世界を支配するために暗躍しているのだという。それを聞かされたデッドリーパーは困惑するが、その時!
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エンガワ・ストリートに一台の家紋タクシーが停車し、二人の人影が降りた。フィルギア、ルイナー、デリヴァラーは屋上のアジトからそれを観る。「ニンジャだ」「このお嬢ちゃんを追って来たか?」「……!」デッドリーパーの瞳に光が戻る。アシッドウルフが迎えを遣わしたのか、それとも。
彼女はサイバネアイとニンジャ視力で家紋タクシーを観察する。窓からはスーツを着た柔和そうな若い男が顔を出し、車を降りた二人に何事かを指示している。彼の片手はオブシダンめいた黒く美しいサイバネ腕に置換され、襟元には『SP』と刻まれた銀色のピンが取り付けられている。何者か。
「ニンジャが三人か。どうするね」フィルギアはデッドリーパーを見る。「俺たちはここをいったん引き払う。ついてくるか、別々に逃げるか。それともあいつらについていくか。君の自由意志に任せる」「……私は……」デッドリーパーは迷う。フィルギアのことを信用したものか?あるいは……?
???
「とりあえず、あいつらが何者か、なぜここに来たかを確認してみる。その隙に逃げて」デッドリーパーは決断した。「ふむ」「あなたの話を信用したわけじゃないけど、今は敵対しないでおく。あいつらが私を迎えに来たボスの使いなら、そのままついていく。そうでないなら……」「気をつけなよ」
フィルギアは頷いた。彼女からのボスへの疑念は、少しは植え付けられたようだ。最終的に彼女がどうするかは賭けだ。強制はできない。自我を尊重しなければアレン・ダレスと同じだ。「ついでに君の仲間を探すのも手伝ってやろう。合流場所は?」「……これから私が行くところへ」「了解」
「「「イヤーッ!」」」フィルギア、ルイナー、デリヴァラーは各々が必要な物を担ぎ、アジトから撤退した。ビクターを始末させるため派遣したアナイアレイターやスーサイドが尾行されているなら、合流せねばならない。
……デッドリーパーはエンガワ・ストリートに停車した家紋タクシーへとしめやかに接近し、物陰から様子をうかがう。『大まかな位置はわかってるんだ。シラミツブシしろ。探し出して、ブッ殺せ』『『了解』』窓の中の男は降りた二人に物騒な指示を与え、車を発進させた。運転席に、もう一人。
ブッ殺す標的は、フィルギアたちか、自分か、それとも両方か。あるいは別件か。なぜここに彼らが来たのかはインタビューするしかあるまい。こちらは一人、相手は複数。正面から戦って勝つ必要はない。……二人のニンジャは裏路地に入り、キョロキョロと周囲を見回す。見るからに剣呑だ。
「ドーモ」デッドリーパーは顔をボロ布で覆い隠し、距離を保ったまま物陰から姿を現し、アイサツした。「あんたら、誰?」不審な侵入者に誰何するストリートニンジャのように振る舞い、装う。不自然でもあるまい。二人のニンジャは互いに顔を見合わせ、肩をすくめたのち、こちらに向き直る。
「ドーモ、マスペインです」
◆マスペイン(種別:ニンジャ)
カラテ 7 体力 7
ニューロン 8 精神力 8
ワザマエ 8 脚力 4/N
ジツ 0 万札 25
攻撃/射撃/機先/電脳 7/10/10/10
回避/精密/側転/発動 9/ 8/10/ 0
即応ダイス:2 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▶生体LAN端子LV1:ニューロン判定+2、イニシアチブ+1
◆ヒートチャージ・カタナ:特殊近接武器、ダメージ1+火炎2、装備ペナルティなし
近接攻撃を1回繰り出すと、次の火炎ダメージは1減少 1ターン納刀すれば回復する
◆LAN直結型オートマチック・ガン
射撃、ダメージ1、連射3、時間差、マルチターゲット
◆チルアウト・グレネード:回避不可の回避ダイスダメージ1
◆ケブラー強化ブラックスーツ:回避+1
◆サイバーメンポ:射撃+2
◇ジツやスキル
◉◉タツジン:ミリタリーカラテ
◉ツジギリ
◉シャープシューター:集中時に射撃+3
◉電光石火:イニシアチブ+1、側転+2
側転成功時に出目666なら回避ダイス3、6666なら4獲得
●連続攻撃2、連射2、時間差、マルチターゲット
能力値合計:23
「ソージュンです。名乗られよ」
◆ソージュン(種別:ニンジャ)
カラテ 9 体力 9
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 9 脚力 5/N
ジツ 0 万札 25
攻撃/射撃/機先/電脳 9/ 9/ 6/ 6
回避/精密/側転/発動 12/ 9/ 9/ 0
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
◆ボンズ装束&編笠付きロシアン防毒マスク:回避+3
◇ジツやスキル
◉◉戦闘系ソウルの力
◉◉タツジン:ボンジャン・カラテ(コッポドー読み替え)
●ワザ:武装解除 攻撃出目665+で発動、回避難易度+1
命中すると対象は装備中の武器を叩き落される
◉ヒサツ・ワザ:ヘブンスルーキャノン(サマーソルトキック読み替え)
◉ツジギリ
◉特殊近接ステップ
◉トライアングル・リープ
能力値合計:24
「……デッドリーパーです」アイサツを返す。「アシッドウルフ=サンは、どうしてる?」「知らねえ」マスペインは横柄に答えた。「が、テメエに用がある。ビクター=サンを殺し、アシッドウルフ=サンに反逆したってな」「……!」デッドリーパーは戦慄した。「違う!嘘だ!」「知らねえな」
「ソウカイヤに何か吹き込まれたか、あるいは……ま、どうでもいい。俺の仕事はテメエをブッ殺すことだ。ちょうどいいぜ」「我らはビクター=サンの部下の、そのまた傭兵。上の事情は知らぬ。理由も立場も知らぬが、ブッダの加護を祈るぐらいはしてくれよう」ソージュンは合掌した。一触即発!
戦闘開始
1ターン目
「イヤーッ!」マスペインは滑るように低く移動しつつグレネードを投擲!さらにLAN直結型オートマチック・ガンを構えて連続射撃!ミリタリー・カラテの技術「アサルト・タクティクス」だ!KBAM!BLALALAM!油断ならぬタツジン!「イヤーッ!」デッドリーパーは物陰に隠れてこれを防ぐ!
一対二で勝てる相手ではない!彼女は瞬時に状況判断し、撤退を選択!「イヤーッ!」物陰から飛び出し、チルアウト・グレネードのケミカル煙に身を隠しつつ飛び離れ、マスペインめがけノールック射撃!BLAMBLAM!「イヤーッ!」見切って回避!「イヤーッ!」ソージュンが動く!
全速力で追いすがりつつスリケン連射!「イヤーッ!」デッドリーパーは難なく見切って躱す!「こっちだ!」「クソ、逃げ足が速い……!」マスペインは無言で携帯IRC端末を操作し、標的の発見を報告するとともに増援を要請する。彼らの雇い主「カメヤマ」に!『マ?あっちから出て来た?』
家紋タクシーの中で「カメヤマ」は舌打ちする。「使えない奴らだ。『僕らはアシッドウルフ=サンの指図どおり、君を迎えに来たんだ』と言えば、そのまま捕まえられたのに」「そうですね」運転席の男が無感情に頷く。「まあいい、ネズミはあぶり出せた。君のジツで追跡を頼むよ」「ハイ」
戦闘終了
???
どうする。デッドリーパーは重金属酸性雨が降りしきる街を駆け抜けながら考える。ビクターを殺し、アシッドウルフに反逆した。自分はいつの間にか、ボスにそう報告されている。なぜ?誰がビクターを殺した?ソウカイヤか?ならば、ボスに報告したのは誰だ?さっきの家紋タクシーの連中か?
それとも……ビクターがフェイクニュースを流し、自分をアシッドウルフから切り離そうとしている?なぜ?奴が裏切った?フィルギアのこともどこまで信用できる?まさかビクターを殺したというのは……その時!ギャギャギャギャギャ……先程の家紋タクシーが一直線にこちらへ向かってくる!
狙いは、フィルギアたちではない!明確にこっちだ!家紋タクシーの屋根にはさっきの傭兵たちが腹這いにしがみついている!車が入れない狭い路地や下水道を行けば追いつかれないだろうが、こっちのニンジャソウル反応を追跡しているのか?そういうジツやテックがあちらにはある……!
デッドリーパーは焦った。どこへ身を潜めればいい。メイライ社か?だが自分がアシッドウルフを裏切ったとの報告が伝わっていれば、問答無用で迎撃される。クレイニアムに頭を下げて、ソウカイヤやオムラに匿ってもらうか?今さらだ。オナタカミは……完全に敵に回している。行けば殺される。
磁気嵐の荒野。ソード山脈。どれも遠すぎる。とにかく……仲間と合流しなければ。フィルギアが探すのを手伝うと言っていたが、結局のところ合流地点はどこになる?逃げ続けなければ追いつかれてしまう!「おう、見つけたぜ」「!」路地の彼方に大柄な男が立ちはだかり、目を金色に輝かせた。
「ドーモ、アナイアレイターです」
【続く】
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