忍殺TRPGリプレイ【フィール・ザ・ヒート】中編
前回のあらすじ:ネオサイタマ北部郊外、ガミオダ地区。このシケた街のどこかに、ヒートシーカーという野良ニンジャが巣食い、ブラッドパーティーを開いているという。3人のソウカイ・ニンジャは、彼がさらった高性能オイランドロイドを奪還せねばならない。カラダニキヲツケテネ!
◆ファイアシーフ(種別:ニンジャ)
カラテ 4 体力 4
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 4 脚力 2
ジツ 2 万札 11>12
DKK 0 名声 1
◇装備や特記事項
☆カトン・ジツLV2:隣接した3×3マス内の敵に1ダメージ(回避NORMAL)
中心点の敵はD3ダメージ
▶テッコLV1:カラテ判定ダイス+1、回避ダイス+1
▶生体LAN端子LV1:ニューロン判定ダイス+2、イニシアチブ+1
○生い立ち:ブラインドタッチ キーボード使用ハッキング時に判定ダイス+1
生体LAN端子とのボーナス重複不可
◆ウイルス入りフロッピー:ハッキング判定ダイス+3(使い捨て)
能力値合計:18 回避ダイス:7
◆ランタンシャーク(種別:ニンジャ)
カラテ 5 体力 7
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 6 脚力 3
ジツ 3 万札 0>3
DKK 0 名声 3
◇装備や特記事項
☆サメ・ニンジャクラン:ジツ値3
☆ドトン・ジツLv1::土中を脚力の倍速で移動、直後の近接攻撃難易度-1
●噛みつき攻撃:特殊近接武器、基礎攻撃難易度HARD、ダメージ2
●頑強なる肉体:体力+2
○生い立ち:拷問好き
◉邪悪なサディスト:拷問・脅迫判定難易度-1、殺伐で敵を殺すと精神力1回復
◆カタナ
能力値合計:20 回避ダイス:6
◆デモゴルゴン(種別:ニンジャ)
カラテ 5 体力 5
ニューロン 6 精神力 7
ワザマエ 2 脚力 3
ジツ 2 万札 0
DKK 0 名声 2
◇装備や特記事項
☆カラテミサイルLv2:ジツ値+1個のミサイルを連射(マルチターゲット)
使用者から視線が通っていれば必中(回避難易度NORMAL、まとめて回避可)
▶サイバネアイLv1:ワザマエ判定ダイス+2
◆家族の写真:精神力+1、消費すると精神力4回復しDKK獲得やWasshoi判定を回避できる
○生い立ち:下劣なパパラッチ 戦闘中かつ2ターン目以後の手番で、
回避ダイス2とターン時の行動を消費し撮影行為可能
難易度HARDのワザマエ判定に成功するとシナリオ終了時に万札D3獲得
かなりの特ダネであれば万札D6+1を獲得
○立ち位置:秘密や陰謀
能力値合計:17 回避ダイス:6
ハッキングボーナスでファイアシーフが1、ヨタモノボーナスでランタンシャークが3の万札をゲット。
移動
「知ってるだろ。ブラッドバス・シアターまで」「アイエエエ!」運転手は再失禁した。「ブラッドバス! シアター! アイエエエエ!」
「知ってる反応ね」デモゴルゴンはハンカチで鼻をおさえ、懐から出した消臭スプレーを撒き散らした。「クッセ。クッセ。あんたら車ン内は清潔にしなさいよ。風呂入ってンの?」「失禁すんな。助手席の俺が困るだろーが」「アイエエエ……」突然の理不尽に、運転手は恐慌を起こしている。
「だけど、だけど殺されッちまいます!あそこに行くなんてダメだよ……」運転手は泣き声を出した。「通、通行証なんて持ってねえ!」「俺らは持ってるぜ」「アイエエエ!や、やっぱヤクザ?ギャング?」「そんなものね。さっさと行かないと、脳ミソ吹っ飛ばすわよ。場所はわかってるから」
「アイエエ……スンマセン……グスッ」運転手は泣きながら車を出発させた。「助けて下さい……真人間になります」3人は無視した。ゴウ……ゴウ……広告ポールの傍を通過するたび、割れ窓の外で風が唸る。やがてワゴンは脇道へ曲がり、商業区画を抜け、無個性でだだっ広い大通りに合流した。
催眠的景観リフレインの中を白いワゴンは進んでゆく。ランタンシャークとデモゴルゴンは仮眠をとっている。「あそこはヤバイんだよォ……法律は……法律はねえんだよ……」「ギャハハハ!テメエが法律とか言うなや」ファイアシーフが無感情に笑う。「俺らも言えた義理じゃねェけどよォ」
……やがて、黒々とした山のシルエットが遠くに見えてくる。その麓付近、やや高台、曇り夜空にライトを投げかける巨大な建物を、ファイアシーフは確認した。ノイシュヴァンシュタイン城じみた妙な建築物を。「あれです。行きたくないよ」運転手は泣いた。「行きたくない」「行け!殺すぞ!」
やがて、ゆるゆるとワゴンは停止した。唐突に没個性な景観から抜け出し、バンブーの林を前にしていた。運転手ははばからず泣いている。「エッヒ、アグッ、もッ、も進めません」運転手は言った。「も、無理、です、死にたくない無理……無理だよォ……」「まあいいや。おい、起きろ。着いたぜ」
後部座席に呼びかけると、2人は目をこすりながら起きてきた。コキコキと肩を鳴らし、首を鳴らす。「アイ、アイ。出る前にラーメン食って来たから眠てえなァ」「ここから本番。キアイ入れなさい」ワゴンから降り立つと、落ち葉が積もったバンブー林の斜面に道が続いている。「上だな」「ハイ」
「あ、帰りもよろしくな」ファイアシーフは運転席のドアを開けると、鍵を奪い取った。「アイエエエ……」「ここから動かなきゃダイジョブよ。たぶん」「行くぜ」3人はワゴンを離れ、落ち葉を踏みしめながら斜面の道を登っていく。真っ暗闇だがサイバネアイやニンジャの視力なら問題ない。
潜入
ニンジャ聴力で聴こえてくるのは、悲鳴や嬌声、下卑た歓声、アンタイブディズム・ブラックメタルめいた騒がしい音楽。道の傍らに「ストロング夜」と書かれた、朽ちた看板がある。「退廃ホテルの廃墟か」それは男女が性的行為を行う際に利用する、ほとんど日本独自の集合モーテル・システムだ。
厳正な労働倫理や順応的文化、狭い生活空間の中で生きる日本人にとって、退廃ホテルは貴重なプライベートで親密な空間、すべてをさらけ出して楽しむことができる、精神的な避難所なのだ。郊外に聳え立つそうした施設は、非日常性の象徴というわけか、しばしば西洋の城を模して作られている。
「退廃ホテルが廃業した後、地元のヨタモノの溜まり場だったらしいがよ。最近になって突然、ガチでヤバい連中がやって来たんだと。銃で武装した湾岸警備隊崩れとか、ヤクザとか、アンタイブディズム・ブラックメタリストとか」ファイアシーフが運転手から聞き出した情報を共有する。
「マッポも手が出せねえし、デッカーもこんな田舎まで滅多に来ねえ。逆らったヨタモノどもは皆殺しにされて、見せしめに死体が吊るされたそうだ」「ヒートシーカーとかいうニンジャのしわざね」「お、噂をすれば」斜面の両脇、バンブー林の陰から、バラクラバを被った黒服の男たちが出て来た。
◆マシンガン・バラクラバ・ギャングスタ(種別:モータル)×3
カラテ 3 体力 2
ニューロン 2 精神力 2
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ - 万札 2
◇装備や特記事項
◆マシンガン:連射3、ダメージ1
●射撃スタイル:掃射3 難易度HARD、標的が互いに隣接していればマルチターゲット
皆体格が良く、サブマシンガンで武装している。見張りというわけだ。「お客さん?」「パス?」クチャクチャとガムを噛みながら、IDカードの提示を求めてきた。「ああ、持ってる」3人が偽造IDカードを懐から取り出すと、バラクラバの1人がハンドスキャナを向け、情報を読み取った。
ハンドスキャナの液晶に「寿」の漢字が点灯する。「お客さん、ようこそ」バラクラバたちがオジギ。「撮影禁止。スゴイタノシンデネ」彼らの1人に先導され、さらに斜面を登ると、獣道が石畳に変わる。登り切ると赤くペンキで塗られたフェンス門。門の中のバラクラバが合図を受けて頷き、開く。
ブラッドバス・シアター前庭
3人は鼻歌を歌いながら門を潜った。荒れ果てた前庭には、ヨタモノたちの低俗で猥雑な遊戯場が広がっている。酒と薬物、火と裸。命は安く、たやすく奪われる。悲鳴や嬌声、下卑た歓声、アンタイブディズム・ブラックメタルめいた騒がしい音楽。「アイエエエ!」「アハハハー!」「アハハー!」
薬物影響下にあると思しき半裸のヨタモノ達は、スピリタスを口に含んで焚き火に吹きつけ、火炎放射じみたエフェクトを楽しんでいる。
「へへへ、いいな、楽しくなってきた」ファイアシーフが肩を揺する。彼はこういうのが好きだ。ランタンシャークやデモゴルゴンも、そう嫌いではない。彼らにとっては、祭りの屋台が多少物騒になった程度のものだ。ネオサイタマの猥雑とはまた違った趣もあろう。「でもまあ、悪趣味だなァ」
道なりに屋台が並び、ヨタモノ達に酒や薬物や肉を供する。みな、目の焦点がおぼつかず、男女とも上半身は裸で、短絡的文言の刺青が誇らしげだ。途中、ゴミ食物ガラクタが無秩序に堆積する大穴の横を通過した。ゴミの中に頭蓋骨がある。確かにある。デモゴルゴンは唇を舐め、目を向けた。
ワザマエ判定、難易度NORMAL。4D6で[2455]=成功。前庭の様子を激写。
「兄さんスッキリしようよ」目元の腫れた薄汚い女が隣に駆け寄って来る。「館行くの?館より外がいいよ」ランタンシャークは無視した。彼女は尻ポケットから薬包を取り出す。「クスリ、いらない?レートいいよ。トロ粉末あるよ」「あ、どーすっかな。買っとくか」「俺も」「アリガトね」
ファイアシーフとランタンシャークは万札3を消費しトロ粉末を購入。
もう少し楽しんでもいいが、目的のオイランドロイドは館の中にあるはず。館の大扉の脇には、やはりバラクラバ。3人はIDカードを再び提示し、ハンドスキャナが向けられる。認証。「スゴイタノシンデネ」
大ホール
ギギイイイ……。大扉が開くと、大きなホールがある。似合わないスーツやドレスをまとい、サイズの合わない指輪を全ての指にはめた中年・壮年の男女たちが下卑た会話をかわし、酒や肉に舌鼓をうち、あるいはステージ上で行われる殺人ショーに興じている。外と大差ない狂宴ぶりだ。
殺される人間は気の毒だが、探しに来たのはオイランドロイドだ。とは言え売り物でもあるまい。見たところ、女たちはみな生身の人間ばかり。「さあて、どう探す?」「こういうのはバーテンダーに聞くもんさ」ランタンシャークがバーカウンターへ近づき、酒を注文する。会員は飲食無料だという。
「どれ食ってもタダか。いいな」ファイアシーフはテーブル上のごちそうに舌なめずりし、メンポを開いて貪り始めた。高そうな酒を探すが、どれも微妙に安物だ。まあまあな酒を選んで適当に飲み食いする。客たちから指輪をスろうとも思ったが、バラクラバがいる。「法律がねえ、ってこたねえな」
ワザマエ判定、難易度NORMAL。4D6で[1335]=成功。万札1D6を獲得。出目は[3]=万札3をゲット。指輪も装飾品も、みなイミテーションだ。
「コロセ!」「コロセ!」ステージ上では、老貴婦人の格好をした老婆が鎌バットを振り上げ、アンタイブディズム・ブラックメタリストの1人に振り下ろそうとしている。デモゴルゴンはサイバネアイを光らせた。見つかれば問題だろうが、みな興奮していて気がつかない。シャッターチャンス!
盗撮。4D6で難易度HARD、[3466]=成功。大ホールの様子を激写。
「アバーッ!」脳天を狙った鎌バットは僅かに狙いを外れて、肩に突き刺さった!「「「ブーッ!ブーッ!コロセー!」」」デモゴルゴンも老婆に野次を飛ばし、コールに参加する。なんたるマッポー的退廃遊戯場か。しかしてステージに上がって殺人する気はない。撮影対象からは距離を置くべきだ。
「ここのオーナーに会いたい?」ランタンシャークの問いかけに、バーテンダーは肩をすくめた。「そういう人なら、私なんかに聞きませんね」「あ、そう。どこいます?上?」「スタッフを呼びます」バーテンダーが合図すると、ホールの隅にいた大柄なバラクラバたちが足早に近寄って来る。
「お客さん、奥行きましょうか」「ああ待って、ツレもいるから」「おひとりで」ぐい、と肩を掴まれる。「俺、ここで働きたいんスけど」「募集はしてないぞ。予定もない」「怪しいな」バラクラバが警棒を抜こうとする。
カラテ判定、難易度NORMAL。5D6で[13366]=成功、殺伐。出目6、即死。手加減したとして行動不能にとどめる。第2版では殺伐ボーナスはない。
「え?」とん、と首筋を撃たれ、バラクラバのひとりが卒倒、痙攣する。「殺しちゃいない。俺はニンジャだぜ。ツレたちもな」「アイエッ」「ここのオーナーも、そうだろ?ヒートシーカー=サンだっけか。俺たちを仲間に加えりゃ、頼りになるンじゃねェか?なあ」もうひとりの指を握る。
「アイエッ」「俺、結構サディストでさあ。拷問も殺しも好きなんだよな。ここのオーナーと趣味があうかも」ランタンシャークがサメめいた歯を剥き出して嘲笑い、水色の瞳を光らせる。バラクラバは震え上がった。
ワザマエによる交渉判定、難易度は「邪悪なサディスト」により1下がってEASY。6D6で[223333]=一応成功。
「は、ハイ。ご案内いたします」バラクラバは失禁しながらオジギ。「ありがとよ。おーい、行くぜ」ファイアシーフとデモゴルゴンがバーカウンターに集まってくる。「ご苦労さん。トイレいいか?」「私も化粧直さないと」「あー、どうぞ。俺も行くか」3人はバラクラバを伴って化粧室へ向かう。
「コロセー!」「アバーッ!」「「「ワオオーッ!」」」ステージ上では無慈悲に誰かが殺され、大ホールに断末魔と歓声、怒号、悲鳴が響き渡った。バラクラバが倒れた程度では誰も気にしない。ここは退廃と狂気の遊戯場、ブラッドバス・シアターなのだ!
【続く】
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