忍殺TRPGリプレイ【スラッシュ・ユア・ティアーズ・アウェイ】02
前回のあらすじ:謎の男アシッドウルフの部下として活動する三人のニンジャたちに、今回与えられた任務は暗殺だ。相手はメイライ社のCOOゴットリーブ。彼が潜む秘密拠点へ潜入するため、三人は市民のスカウトを行うメイライ社の兵士たちに変装する必要がある。カラダニキヲツケテネ!
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……デッドリーパーは、メイライ社の偽装スカウトトラックを発見した。付近には二人組のメイライ社兵士がおり、サイバーヘルメットに『職業安定』『暖かい食事』『やすらぎ』などの誘惑的文言を表示させ、貧民たちをトラックへ誘導している。貧民たちは全てを諦めた表情で粛々と乗り込む。
彼らは戦争で焼け出された難民や、もともと行くあてもないマケグミたちだ。行く先で何が待っているかは薄々察しているものの、ストリートで暴力や重金属酸性雨に直接晒されるよりはマシだ。少なくとも屋根ぐらいはあるだろう。向かった先で死んだとしても、死が遅いか早いか程度の違いだ。
デッドリーパーはボロ布を纏った姿で、やや小柄なメイライ兵の一人に近づき、無言で袖を掴んで引っ張る。兵士は無言で首を振る。彼らはサイバーヘルメット内部に流れるメガデモめいた映像で常に愛社精神の自我研修を受けており、恐怖も怒りも感じず、カネや前後に誘惑されることもない。
『ダメ』『並べ』といった文言がサイバーヘルメット表面に流れる。デッドリーパーは構わず、兵士を物陰へ引っ張り込むと、カラテをみぞおちに叩き込んで昏倒させた。ヘルメットを脱がせて見れば、自分と同い年ぐらいの少年だ。デッドリーパーは彼のヘルメットを被り、衣服を剥いで纏う。
「見ぃーつけた」突然、背後から声。デッドリーパーはとっさに振り返り、銃口を向ける!「マッタ!俺は味方だ」声の主は慌ててハンズアップした。そこにいたのは黒髪で長髪、長身痩躯の胡散臭い男。「ヒヒヒ……ドーモ、初めまして、お嬢ちゃん。俺はフィルギアです。君に啓示を告げに来た」
ニンジャだ。ニンジャにアイサツされたからには、返事をせねばならぬ。古事記にも書かれている。「……ドーモ、マルファです」彼女は偽名でアイサツした。「違うね。キミはデッドリーパー=サンだろ。俺は詳しいんだ」フィルギアはヘラヘラと笑う。その目は笑っていない。しばしの沈黙。
「……アンタはさ、自分が何をしてるのか理解してやってるのか?」沈黙の後、フィルギアは唐突に言った。「あのおっかない"ボス"……またろくでもないことを企んでるぜ。……昔もそうだったからな。俺は知ってる。あいつのことを」「……」デッドリーパーは油断なくピストルカラテを構えた。
「いいか。このままだとヤバい。あの『アシッドウルフ』がやろうとしてるのは……」『イヤーッ!』突如スリケンが飛来!「うおッ!?」フィルギアはとっさにスリケンを回避し、姿を消した。……否、蛇が路地裏を慌てて這い進むのが見えた。ヘンゲのたぐいか。『雑音に耳を貸す必要はない』
インタラプトしたニンジャはステルス状態のままアイサツした。『ドーモ、ビクターです』「デッドリーパーです」『君は、常に監視されている。余計なことは知らなくていい』「……ハイ」アシッドウルフの協力者、なのだろう。彼女は疑念を頭の隅に押し込み、任務に集中することにした。
もう一人のメイライ兵を無言で殺し、貧民たちを載せたトラックの運転席に乗り込む。彼らの辿る運命に興味はない。やることをやるだけだ。
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……アースハンドは、メイライ社の偽装トラックが走り去っていくのを目撃した。あいにくタイミングが合わず、市民のスカウトは終わっていたようだ。……いや、様子がおかしい。「アイエエエ……アイエエエ……!」トラックが止まっていたであろう場所に、人が倒れ、うめき、すすり泣いている。
「ブッダファック!なんてことしやがる!」人混みの中から背の高い青年が駆け寄り、倒れた市民を助け起こす。「おい、どうした!ダイジョブか!」「アイエエエ……頭が……アバッ」市民は昏倒した。アースハンドが用心深く観察するに、微かにニンジャアトモスフィアと歪んだエテルが感じられる。
ニンジャが現れ、何らかのジツを使ったのだろうか。倒れていた市民の付近には、いくつかの黒い破片と血液。破片は、メイライ社のサイバーヘルメットの素材と良く似ている。まさか……自分たちと同じように、メイライ社に潜入しようとする別のニンジャがいたのか? ソウカイヤやオムラか?
ともあれ、もはやトラックは遥か彼方だ。あの青年や倒れた市民を尋問しても怪しまれるだけだろう。別のスカウト地点へ向かえばいい。アースハンドは状況判断し、常人の三倍の脚力でビル屋上をしめやかに駆け出した。
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……サイバーメイヘムはメイライ社の偽装スカウトトラックを発見した。付近には二人組のメイライ社兵士がおり、サイバーヘルメットに『職業安定』『暖かい食事』『やすらぎ』などの誘惑的文言を表示させ、貧民たちをトラックへ誘導している。貧民たちは全てを諦めた表情で粛々と乗り込む。
少し観察すると、貧民たちの足元はおぼつかず、目はうつろだ。境遇のためだけではない。どうやらメイライ兵たちのスーツから催眠系のガスが噴射され、彼らの判断力を奪っているようだ。暗黒メガコーポのやり口としては珍しくもない。サイバーメイヘムはボロ布を纏い、兵士に近づく。その時!
『イヤーッ!』稲妻めいた速度で何者かがアンブッシュ!「イヤーッ!」サイバーメイヘムは滑らかに回避し、ジュー・ジツを構えた!襲ってきたのは黒漆の鎧を纏い、二振りのプラズマ・カタナを構えた油断ならぬ手練れだ!『シュルルル……ドーモ、私はメイライ社のニルヤ・トルーパーです』
◆ニルヤ・トルーパー(種別:モータル/ボス級)
カラテ 4 体力 7
ニューロン 5 精神力 4
ワザマエ 4 脚力 4/E
ジツ - 万札 5
攻撃/射撃/機先/電脳 6/ 6/ 6/ 7
回避/精密/側転/発動 7/ 4/ 4/ -
即応ダイス:2 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▶テッコLV1:カラテ判定と回避+1
▷内蔵型スマートショットガン:ダメージ2、接射可
回避された時も跳弾により時間差で1ダメージを与える(回避可)
▶ヒキャクLV1:脚力と回避+1
▷ブースター・カラテユニット:攻撃+1
▶生体LAN端子LV1:ニューロン判定+2、イニシアチブ+1
●過剰サイバネ(5個):精神力-1
◆プラズマカタナ二刀流:ダメージ1+電磁1
側転難易度+2、攻撃難易度H、連続攻撃+1
●戦闘スタイル
防御構え:連続攻撃上限1、殺伐なし 次の手番まで回避難易度-1
回転斬撃:連続攻撃上限1、痛打・殺伐なし、迎撃不可
ワザマエH判定に成功すると隣接敵全員に1+電磁1ダメージ
◆サイバーメンポ:射撃+2
◆*メイライ・ユルギザネシロ*:LAN直結型サイバーパワード鎧
体力+3、精神力+2、脚力+1
◇スキル
●壁歩き:側転難易度-1、敵や障害物のマスを判定なしで通過可能
●弾幕射撃:同じターゲットに対して2人以上のニルヤ・トルーパーが射撃する場合、
その射撃に対する敵の回避難易度+1
能力値合計:13
「……ドーモ」サイバーメイヘムは名乗らずにアイサツを返す。微かにニンジャアトモスフィアは漂っているが、ニンジャではない。サンシタニンジャに匹敵する程度のモータルだ。ならば問題なし。だが、なぜ自分を襲った?『ニンジャ反応ポジティブ。敵性ニンジャと判断。処分します』無慈悲!
「社敵!」「排除!」トラックの近くにいたメイライ兵たちもアサルトライフルを向ける!一触即発アトモスフィア!
戦闘開始
1ターン目
「イヤーッ!」サイバーメイヘムは側転しながらスリケン投擲!「「アバーッ!」」メイライ兵二人に突き刺さり昏倒!『キエーッ!』ニルヤ・トルーパーはプラズマカタナ二刀流で斬りかかる!「イヤーッ!」サイバーメイヘムは難なく回避し迎撃!『キエーッ!』回避!モータルにしては手練れだ!
2ターン目
「キエーッ!」サイバーメイヘムはニルヤ・トルーパーを内蔵型パルスダガーで滅多突き!ZZTZZT!『グワ、アバーッ!』命中!大きく体勢を崩す!『う、ウオーッ!』ニルヤ・トルーパーはプラズマカタナ二刀流で反撃!「イヤーッ!」サイバーメイヘムはジュー・ジツの構えで躱し、迎撃!
『グワーッ!』命中!たたらを踏んだニルヤ・トルーパーへトドメの攻撃!「イヤーッ!」ZZZZTTT!『アバーッ!』ナムアミダブツ!パルスダガーがサイバーパワード鎧を貫き、心臓に高圧電流を流し込む!痙攣するニルヤ・トルーパー!『アバババゴボッ……サヨナラ!』KABOOM!爆発四散!
戦闘終了
「フン、所詮モータルね」サイバーメイヘムは傷一つない。周囲のモータルたちはNRSで倒れ、失禁し、泡を噴いている。「アイエエエ!?ニンジャ!?」「ニンジャナンデ!?」「うるさいわね。ともかくこれで変装できるわ」サイバーメイヘムは二人のメイライ兵にトドメを刺し、装束を剥ぐ。
ニルヤ・トルーパーは上級兵っぽいが、ニンジャに襲撃されて殺されたとすればよかろう。二人が一人になったのもそのせいとすれば……と、小柄な影が物陰から現れる。「ドーモ、アースハンドです。もう片付いたか」「ドーモ」「あっちのトラックはもう移動していた。一つ借りるぞ」「どうぞ」
二人は死んだメイライ兵から装束やヘルメットを剥ぎ、変装する。IDは、アースハンドが細工をすればどうにかなる。デッドリーパーからも秘匿IRC通知が届き、うまくいったとのこと。「秘密拠点は?」「トラックのUNIXをさっきクラックした。シャッタード・ランドだ」「了解。行きましょ」
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三人を載せたトラックはケオサキを出発した。車載UNIXに事前に入力された自動運転ルートは、偽装のため複雑で無駄が多い。いくつかの建物をくぐり抜け、99マイルズ・ベイの南部、シャッタード・ランドへ。車両は荒廃したおマミ工場のシャッターを通過し、倉庫に入っていく。そして……。
がぐん。倉庫の床が振動し、車両ごとゆっくりと降下を始める。秘密のエレベーター・リフトだ。降りた先にはゲートがある。アースハンドが遠隔ハッキングでごまかし、問題なく奥へ進む。積荷を降ろしたのち、三人はアシッドウルフのIRC指示に従い、トラックの物陰に集まった。……その時だ。
物陰から右肩が、構えられたサブマシンガンの銃口が、光沢のあるヘルメットと共に姿を現す。三人は警戒するが、現れたメイライ兵はすぐにヘルメットを操作し、その下の顔をあらわにする。「遅かったな。ドーモ、アシッドウルフです」「「「ドーモ」」」彼はすでに潜入し終えていたのだ。
四人は手短な追加ブリーフィングを行う。ゴットリーブを暗殺するためには、例によって二手に分かれ、別々の問題に並行して対処する必要がある。「俺が調査した結果、彼のいるプレジデント・ルームにアクセスするには、メイライ社の上級職員のニューロンパターンが照合キーとして必要となる」
アシッドウルフは淡々と告げる。「すなわち、秘密拠点の防衛を担っているメイライ社の企業ニンジャだ。そいつらの首を刎ねて差し出せばいい……というわけにはいかない」彼は鼻を鳴らした。「当然、そいつらの生体反応は観測され、セキュリティルームに繋がっている。これをどうにかする」
「というと」「一方のチームがセキュリティルームを制圧し、ニューロンパターンのリセットを防ぐため、監視システムを抑える。ついでに予備ジェネレーターを破壊し、重役用脱出路への電力供給を絶って、標的の逃げ道を防ぐ。然る後に、別のチームが企業ニンジャの首を刎ね、いったん合流する」
「なるほど」「俺はセキュリティルームへ向かう。……デッドリーパー=サン、ついてこい」「ハイ!」「俺たちがセキュリティを制圧した後に、あとの二人へIRCで合図する。それまではIRCを使うな」「「ハイ」」「企業ニンジャを殺した後、その首を持って先にプレジデントルーム前へ行くこと」
「「ハイ」」「そこで合流する。どれをしくじってもダメな作戦だ。キアイを入れろ」「「「ハイヨロコンデー!」」」作戦開始!
【続く】
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