忍殺TRPGリプレイ【ヘヴンズ・フォーリング・ダウン】02
前回のあらすじ:ネオサイタマ南西、磁気嵐の荒野。ここに墜落したツェッペリンを秘密裏に回収するため、アシッドウルフは若き三人のニンジャを送り込んだ。数々の戦闘と鍛錬を経て手練れとなった三人だが、この任務を無事に果たすことができるだろうか……。カラダニキヲツケテネ!
◆
アシッドウルフは低く言った。「暗黒メガコーポ各社に先んじて墜落したツェッペリンに潜入し、機体を確保・回収する。最低でも機密データを回収する。それが今回の任務だ」「「「ハイヨロコンデー」」」三人は頷いた。実際重要かつ危険な任務である。「……機体を再浮上させるのですか?」
アースハンドが質問する。「最悪、証拠隠滅のためにミサイルとかで撃ち落とされそうですが」「回収後の行動については追って指示する。とにかくツェッペリンに潜入しろ。俺は別行動だ」「ハイ」アシッドウルフは冷たく答えた。「行動、目的、正体の隠蔽を最優先だ。細かな状況判断は委ねる」
「「「ハイ」」」「……ただ、ブラックメイルとかいう女ニンジャを逃したのはまずかったな。俺の調査によれば、やつはオナタカミ社所属だ。そしてアサノサン・パワーズ社に派遣されている」アシッドウルフは目を細めた。「この任務に派遣されるかも知れんな。来たら殺せ」「「「ハイ」」」
ブラックメイル。前回の任務で偶然出会って共闘した、別組織の女ニンジャ。彼女について報告を受けた時、アシッドウルフは眉根を寄せたが、三人を叱責することも殴りつけることもなかった。彼女を通じて三人の名と顔と存在はオナタカミに伝わっているだろうが、名や顔は変えることができる。
アシッドウルフは三人と手短に質疑応答を済ませ、墜落したツェッペリン「MG775」の物理座標を伝えた。そして自分のサイバー馬にまたがると、磁気嵐に紛れて姿を消した。「……じゃあ、行くぞ」「OK」三人はそれぞれのサイバー馬にまたがった。IRC端末での通信は困難。慎重に進まねば。
磁気嵐の影響が比較的軽微なエリアはあるが、暗黒メガコーポが産業用途で占有しており、警備も厳重だ。接近するなど言語道断。となれば、磁気嵐に紛れ、平地を避け、姿を隠しながら着実に、目的地へと歩みを進めるしかあるまい。モータルなら困難だが、ニンジャならば可能である!
???
……三人はサイバー馬を走らせ、時折互いに言い聞かせるような歓談をはさみながら磁気嵐の荒野を駆ける。やがて廃墟オフィスビル群に差し掛かった時、アースハンドが何かに気づいた。「待て。……あっちに砂煙が立っている」「「了解!」」三人はしめやかにサイバー馬から飛び降りた。
馬を連れて近くの廃墟に入り、ニンジャ野伏力で気配を隠しながら、ニンジャ視力で周囲を観察する。砂煙は少しずつ、こちらに近づいてくる。それは……ナムサン、どこかの暗黒メガコーポのものと思しき、大型の輸送車両の隊列(コンボイ)であった。「まずいわね」サイバーメイヘムが呟く。
選択肢は二つ。一つは最前列の輸送車両のタイヤにここからスリケン等をぶち込んで破壊し、隊列の足を派手に停めること。アンブッシュにより戦力を削ることはできるだろうが、相手を完全に敵に回す。ここは……ひとまず身を潜めて様子を伺った方がいい。何か情報が得られるかも知れない。
三人は手短に相談して頷き、廃墟の奥へ移動して身を潜めた。多勢に無勢ではあるし、最優先目的は墜落ツェッペリンへの潜入で、無闇矢鱈に喧嘩を売ることではない。もし彼らがツェッペリンを狙っているのなら、アンブッシュを仕掛けて戦力を削る必要はあるだろう。……やがて隊列は停車した。
「降車!」「降車!」輸送用車両から降りてきたのは武装した兵士たちだ。数は四。どこかの企業兵か?否、ニンジャ視力で良く見れば、彼らの着用する制服がどこのものか分かる。「湾岸警備隊だと?」アースハンドは訝しんだ。日本政府の事実上の軍組織であり、オナタカミ社とは繋がりが深い。
◆湾岸警備隊員(種別:モータル)×4
カラテ 3 体力 2
ニューロン 2 精神力 2
ワザマエ 4 脚力 2
ジツ - 万札 2
攻撃/射撃/機先/電脳 4/ 6/ 2/ 2
◇装備や特記事項
▶テッコ&サイバネアイLV1:攻撃+1、射撃+2
◆アサルトライフル:連射2、バースト2×2
◉タクティカル移動射撃
能力値合計:9
彼らに続いて二人が降車した。一方は全身が白いコートに覆われており、性別は定かでない。もう一方は白髪で、湾岸警備隊の制服。体格からは女性のように見える。その顔の下半分は金属製のマスクに覆われている。ニンジャだ!おそらく白コートの方もそうだろう。「オナタカミ、ぽいわね」
◆ベンドナイト(種別:ニンジャ)
カラテ 5 体力 5
ニューロン 4 精神力 5
ワザマエ 7 脚力 5/N
ジツ 3 万札 10
攻撃/射撃/機先/電脳 5/ 7/ 4/ 4
回避/精密/側転/発動 7/ 8/ 8/ 8
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:1
◇装備や所持品
◆パーソナルメンポ:精神力と緊急回避+1
◆特殊ミリタリーコート:発動+1
◇ジツやスキル
☆サイコキネティック・タナカ・ジツ(特殊)
手番開始時に精神力1消費し瞬時発動(H)
この手番の間、一時的にジツ値+1と同数の「連続攻撃(固定)」を得る
効果中はリーチ+1の近接武器を装備しているものとし、ジツ判定ダイスで攻撃する
◉◉タツジン:ジュージツ
◉特殊近接ステップ
◉疾駆
能力値合計:22
◆ダストブレイカー(種別:ニンジャ/重サイバネ)
カラテ 4 体力 7
ニューロン 5 精神力 4
ワザマエ 5 脚力 4/E
ジツ 0 万札 10
攻撃/射撃/機先/電脳 6/ 7/ 6/ 7
回避/精密/側転/発動 7/ 6/ 6/ 0
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:1
◇装備や所持品
▶▶テッコLV2:攻撃と回避+2
▶生体LAN端子LV:ニューロン判定+2、イニシアチブ+1
▶サイバネアイLV1:ワザマエ判定+1、射撃時さらに+1
▶クロームハートLV1:体力と精神力+1
▷キネシス干渉波発生装置:自身および視線が通っている味方に対し、
ジツによる物理的遠隔攻撃が発生した時、精神力1消費しニューロン判定Hで発動
成功するとその遠隔攻撃を無効化させられる 精神攻撃には無効
◉重サイバネ化:体力+2、精神力-2、●脆弱性:電磁(1)
◆LAN直結型ハンドガン:連射2、時間差・マルチターゲット可
●射撃スタイル・論理トリガ(集中時):ニューロンで射撃判定
時間差・マルチターゲット使用可能
◆ZBRアドレナリン注射器
◇ジツやスキル
◉常人の三倍の脚力
◉銃弾の見切り
能力値合計:14
サイバーメイヘムが兵士たちの装備やトラックの種類から推測する。察するに、この案件に対してオナタカミが直接動くわけにもいかず、繋がりのある湾岸警備隊の部隊を派遣してきた……ということだろうか。だが、ツェッペリンを探している様子でもない。告げられた座標は遥か彼方のはずだ。
「私たちを追って来た?」「その様子もない。それだけのために、湾岸警備隊を動かすか?」「じゃあ、別件で調査をしてるってだけね」それならば、特に敵対する理由はない。じっと潜んでやり過ごせば済む。しかし……潜んでいる間に、暗黒メガコーポの手先がツェッペリンに到達するだろう。
さらに難儀なことに、輸送車両群やそこから降りた者たちは、廃ビル群全域に展開して何かを探そうとし始めた。女ニンジャはダウジング・ボーを持ってうろついている。このままでは見つかってしまい、どのみち戦闘は不可避だ。こうなればアンブッシュをかけるしかない……その時!
「アバッ!」突然、湾岸警備隊員の一人の頭が弾けた。「「「狙撃!」」」「「警戒!」」残る隊員とニンジャは廃ビルに退避し、全方位に警戒を向ける!「え」潜んでいた三人の攻撃ではない。別の誰かが狙撃したのだ!『ZZZ……ザザ……ドーモ、サイオコールです』三人の秘匿IRC端末から声!
「ど、ドーモ……代表のアースハンドです」三人は警戒し、アースハンドが代表アイサツを行った。『先程狙撃を行ったのは私だ。安心し給え、私はアシッドウルフ=サンの協力者だ』ノイズまみれの電子合成音声。『君たちのことについても聞いている。彼から指示があった。あいつらを殺せとね』
「アッハイ」『君たちはそこそこ手練れのようだが、相手は数が多い。そこで私の出番というわけだ。私は今、超遠距離にいる。相手の射撃はここまで届かない!私が狙撃支援するから、君たちは打って出給え!』「アッハイ」IRC通信は一方的に切られた。胡散臭いが、ここはやるしかあるまい!
戦闘開始
1ターン目
アースハンドは蛇めいた目を光らせ、廃ビルへ駆け込む女ニンジャの生体LAN端子に意識を集中させる。アンブッシュ重点!「kill-9 U!」ZZT!ZZT!「ンアーッ!?」遠隔ハッキング成功!端子孔から白煙を噴き体勢を崩す!そこへ……SMASH!「ンアアーッ!?」サイオコールの狙撃が命中!
女ニンジャの肩に突き刺さったのは……銃弾ではない!スリケンだ!超遠距離からのスナイパースリケンである!「アバッ……!?バカな……!?」女ニンジャは血反吐を吐く!チャンスだ!
「イヤーッ!」サイバーメイヘムは廃ビル残骸から飛び出し、女ニンジャへ肉食獣めいて飛びかかる!「き、キエーッ!」女ニンジャは必死で側転回避!「チッ、惜しい!ドーモ、サイバーメイヘムです!」「ど、ドーモ!ダストブレイカーです!」『ベンドナイトです』互いにアイサツを交わす。
「貴様ら、どこの所属だ!我々は湾岸警備隊だぞ!国家権力を敵に回すつもりか!」女ニンジャ・ダストブレイカーは感情的に喚き立てる。ベンドナイトの方は無機質なアイサツをしたまま動かない。「知らないねェ!ここは私たちのテリトリーだ!身ぐるみ剥いでもらっていくよ!」「盗賊めが!」
ダストブレイカーは激昂し、ベンドナイトの傍らに隠れつつ直結型ハンドガンでサイバーメイヘムを撃つ!「死ねッ!」BLAMBLAM!「イヤーッ!」サイバーメイヘムは難なく回避!デッドリーパーは二挺拳銃を構え、ダストブレイカーを狙う!「死ね」BLAMBLAM!「イヤーッ!」見切って回避!
『イイイ……イヤーッ!』ベンドナイトがキアイを放つと、白いロングコートがネンリキによって傘のように広がり、ほつれ、絡み合い、複数のヤリめいた形状となってサイバーメイヘムへ襲いかかる!SLASH!「ンアーッ!」躱しきれず一撃を食らう!だが彼女のニンジャ耐久力にはかすり傷だ!
「「「愛国精神!」」」BRTTTTTTTT!湾岸警備隊員三人はアサルトライフルを構え、サイバーメイヘムへ一斉射撃!「イヤーッ!」全弾回避!ニンジャに銃弾は滅多に当たらぬ!だがこの狭い場所を弾幕で満たされれば、ニンジャといえど危険だ!「チッ、こいつらから先に……」「「敵襲ーッ!」」
ナムサン!騒ぎを聞きつけた別の湾岸警備隊員が二人、廃ビルの外へ駆けつけた!輸送車両の付近からはさらなる増援の気配!多勢に無勢だ!
2ターン目
「kill-9 U!」ZZT!ZZT!アースハンドはアイサツを込めながらダストブレイカーへ遠隔ハッキング!サイバーメイヘムが代表アイサツをしたとみなしシツレイにはあたらぬ!「イヤーッ!」ダストブレイカーは必死でポートを閉じて防御!そこへスナイパースリケンが!アブナイ!「……イヤーッ!」
SMASH!「アバーッ!」ナムアミダブツ!湾岸警備隊員が負傷したダストブレイカーをかばい、スナイパースリケンを頭部に食らって即死!「イヤーッ!」サイバーメイヘムが追い打ちをかける!『イヤーッ!』ベンドナイトがかばう!「チッ、モテモテねェ!」「オノレ……悪党め、許さんぞ!」
「キエーッ!」BLAMBLAM!ダストブレイカーはベンドナイトの陰に隠れつつハンドガン連射!サイバーメイヘムは遮蔽物を利用し難なく回避!「死ね」BLAMBLAM!「アバーッ!」湾岸警備隊員がデッドリーパーの跳弾を食らい即死!『イイイ……イヤーッ!』「「「祖国防衛ーッ!」」」
ベンドナイトがジツを解き放ち、湾岸警備隊員三名がサイバーメイヘムへ集中射撃!アブナイ!「イヤーッ!」だが鍛え抜かれたカラテで全て回避!「こっちだ!」「ネズミ袋!」「重点!」廃ビルの外にさらに三名の湾岸警備隊員が出現!「どいつもこいつも皆殺しよ!」サイバーメイヘムは嗤う!
3ターン目
「kill-9 U!」「イヤーッ!」ダストブレイカーは遠隔ハッキングを回避!続くスナイパースリケンも側転回避!「キエーッ!」サイバーメイヘムが飛びかかる!『イヤーッ!』ベンドナイトがかばい、ジュー・ジツで受け流す!「ととっ」体勢を崩すサイバーメイヘム!「勝機!行くぞ!イヤーッ!」
ダストブレイカーは側転しながらハンドガン連射!BLAMBLAM!「ンアーッ!」命中!「死ね」BLAMBLAM!「アバーッ!」湾岸警備隊員がデッドリーパーの銃弾を浴び即死!『イヤーッ!』ベンドナイトがジツを解き放つ!SLASHSHSHSH!「ンアアーッ!」命中!このままでは危険だ!
「「「「「援護射撃ーッ!」」」」」BRTTTTTTTT!銃弾の雨がサイバーメイヘムに降り注ぐ!アブナイ!「キエーッ!」紙一重回避!スゴイ!だが!クオオオー!クオオオー!輸送車両の荷台から黒いバイク型戦闘兵器が二機降車!高速で廃ビルへ接近する!『『敵対存在を排除重点します』』
◆試作兵器モータートラ/ドラグーン(種別:戦闘兵器/クローンヤクザ)×2
カラテ 5 体力 8
ニューロン 3 精神力 -
ワザマエ 8 脚力 4
ジツ - 万札 -
攻撃/射撃/機先/電脳 5/ 8/ 3/ 3
◇装備や特記事項
●アームバルカン×2:連射4、バースト2×2
●アームパンチ:近接武器、ダメージ2
●移動スタイル:モーターサイクルモード 一時的に脚力2倍、ナナメ移動可
●高機動回避:射撃回避ダイスを毎ターン、ニューロン値に等しい数獲得(回避H)
●クローンヤクザ生体脳:精神攻撃系のジツに対して「クローンヤクザ」とみなされる
精神力ダメージは体力で受ける スキルによる精神攻撃は無効
◉タクティカル移動射撃
◉シャープシューター:集中時に射撃+3
◉疾駆
◉突撃
能力値合計:16
「クソ……!」アースハンドは舌打ちする。敵はかなりの戦力だ。こんなところで手間取っている暇はないというのに!「殺せる敵から着実に殺そう」デッドリーパーは銃のマガジンを交換しながら冷静に告げる。狙撃による支援もあるし、ここに敵を惹きつけておくことが必要なのだろう。
残った湾岸警備隊員は五人。新手の戦闘兵器は二機。敵ニンジャは二人。こちらはニンジャが三人と、狙撃ニンジャが一人。……問題なし!
戦闘継続
【続く】
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