忍殺TRPGリプレイ小説【ビー・マイ・ベイビー】前編
邦題:俺のアカチャンになってよ(Be My Baby)
これは、ニンジャスレイヤーTRPGのオリジナルソロシナリオ、海中劣=サン作「ニンジャの育児」を元にしたリプレイ小説です。おおむね元シナリオの通りですので、ネタバレにご注意下さい。
◇ニンジャ総合目次◇
挑むのは、前回相方を失った彼です。時系列的には9月頃でしょう。
◆ディマカエルス(種別:ニンジャ)
カラテ 6 体力 6>7
ニューロン 4>5 精神力 4>6
ワザマエ 5 脚力 3
ジツ 3 万札 50>27
DKK 0 名声 5
◇装備や特記事項
☆マカエラ・カタナ二刀流:近接武器、二刀流、連続攻撃+1、ダメージ1、
射撃不可、連続側転難易度+2、戦闘スタイル:強/精密/防御/フェイント、
近接攻撃ダイス+3、回避ダイス+1
●滅多切り:回避ダイス1消費し連続攻撃+1 殺伐なし、攻撃難易度+1、強斬併用可
●タツジン(イアイドー):近接武器装備時に近接攻撃ダイス+1
カウンターカラテ成功時に出目6があれば迎撃ダメージ2 スタイル使用時に有利
●ツジギリ:攻撃後に脚力が余っていれば移動の続きが可能
○刀剣マニア:刀剣類を売却する際に万札+1
◆トロ粉末
◆TNスーツ(体力+1)、Pメンポ(精神力+1)
能力値合計:21 回避ダイス:7 近接武器攻撃ダイス:10
前回の冒険で余暇2日を獲得。カネは充分だが余暇が少ないので、とりあえず初日はTNスーツとPメンポを購入(万札20消費)。残り1日でザゼンすると出目[6]で成功、ニューロンが5となった。万札3を消費。
序
ディマカエルス(DM)。数ヶ月前にソウカイヤに加わったニンジャ。ツキジ・ダンジョンからマグロを持ち帰り、学校に立て籠もったニンジャを始末し、ラオモト・チバの依頼を解決し、オムラの併合先役員を脅迫するビズをこなすなど、アンダーカードの中ではそこそこ活躍して名声を高めてきた。
ただ……最近の彼は元気がない。ツキジから連れ帰って相方にしていたモータルのローグハッカー、エラズマ・カリオを失ってしまったのだ。正確には直後にニンジャ化して復活し、何処かへ飛び去ったのだが……ともあれ新たなパートナーを求めていた彼に、ゲイトキーパーはある指令を下した。
トコロザワ・ピラー上層部、秘密ラボ。「オヤ?ようやく来たようだネェ!ではついてきたまえ!」DMを出迎えたのは長髪で片目を隠し、血と薬品で汚れた白衣を纏った男だ。彼の名前はリー・アラキ。世界随一のニンジャサイエンス研究者にして、ソウカイヤで働くマッドサイエンティストだ。
彼はニンジャではないが、並大抵のニンジャよりも恐れられている。ラオモト・カンの機嫌を損ねたニンジャは彼のもとへ送られ、非人道的な人体実験の材料にされるという。DMが実際目にしたのは、悪魔のおもちゃ箱めいた異様な風景であった。ここではモータルもニンジャも等しく玩具なのだ。
ホルマリン漬けの生首や手足、胎児、剥製、ツギハギのミイラ、数々のバイオサイバネが植え込まれたキメラめいた存在……悪趣味ではあるが、DMはこの程度のグロテスクな光景を気にはしない。気にしているのは、自分がこの悪趣味な陳列品の中に加わることだ。「では、この扉の中に入りたまえ!」
リー先生が叫び、DMは訝しむ。「安心したまえ、君を実験材料にするわけではないネェ!この中に君の新たな仲間がいるのだ!」「ヨロコンデー」DMはツカツカと進み出て、頑丈そうな扉を押し開け、中に入る。バタム!ガシン!背後で扉が閉まり、ロックされた。「エッ?」
『イヒヒーッ!心配なし!さらに先へ進みたまえ!』正面のモニタにリー先生の顔が表示され、声をかける。「アッハイ」DMは奥にある銀行の金庫めいた扉のバルブをぐるぐる回し、ゆっくりと開けた。ガゴンプシュー……!その先にあったのは、先程までのラボとは全く違う内装の大部屋だ。
小さな滑り台、天井から下る動物のモビール、大きなおもちゃ箱にはぬいぐるみやカラフルな積み木。まるで巨大な子供部屋だ。奥へ進むと、またしても背後で扉が閉まり、ロックされた。……逃げられては困るということか。「そこのベッドの陰に、誰かいやがるな」DMは鼻をひくつかせる。
ニンジャアトモスフィアを感じる。ならば、まずはアイサツだ。「ドーモ、ディマカエルスです。アイサツしな」それはゴソゴソとベッドの陰から這いずり出し、アイサツを返した……ようであった。
「……、、………!………。。ムゲ……?……ロェ…。。、、……」
ナ………ナムアミダブツ。”それ”は……”それ”は目?のような部分をぎょろりと動かしてこちらを見、口?のような部分から聞いたことも無いようなくぐもった音を発した。なんたる……冒涜的存在か。「…ニギ……。…。…。、、。……リゥ……」「……なんだ、こいつは……バイオニンジャってやつか?」
DMは顔をひくつかせる。天井のモニタからリー先生の声が響いた。『その通り!私の作ったバイオニンジャだ!だがいかんせん未熟でネェー!廃棄するか別の実験材料に回そうかと思っていたが……ある閃きが我が脳髄にむしゃぶりついた!すなわち、ニンジャに育てさせてはどうかとネェ―!』
「育てる?コレを?」DMはオウム返しにつぶやく。『左様!そこには数日生活できるだけの食料や、なんならUNIXなどの娯楽もあるからネェー!君のカラテを、知識を!存分にそれに与えてくれたまえ!では頼んだネェー!』ブツン。モニタが暗転した。「え、あ、ちょっ」ナムサン、返事はない。
呆然とするDMの耳に、意味不明なノイズが届く。「……、、、、……ソォゾ………。。……、、。、、。。…。……ァァ……」相変わらず”それ”が何を言っているのか分からない。だがこうなった以上やるしかないのだ。すなわち、リー先生の言う通り、バイオニンジャの育児を。
初期ステータス決定
元シナリオではゾンビーニンジャとなっていますが、ゾンビーニンジャ第一号はつのバースでは原作どおりレベナント=サンを待つこととし(「デッドムーン・オン・ザ・レッドスカイ」はゲンドーソー死後)、ここではバイオニンジャを育てることにします。ヒントは「ユーレイ」で既に得ていますしゾンビーニンジャを作ろうとして失敗したのかもしれませんね。なおカミイ・ロキはリー先生のラボに囚われましたが、01化して消滅しました。このバイオニンジャは彼女とは全く無関係です。チーム・ヒップに育てさせてもよかったのですが、なんかDM=サンに白羽の矢が立ちました。
まず1D6を3つ振ってそれぞれの値を半分に割り、端数切り上げでカラテ・ニューロン・ワザマエを決定します。体力・精神力・脚力もこれにより通常通り自動決定します。バイオニンジャなのでナーギニー=サンを参考にし、体力を+4しますが、バイオインゴットを1日1つ必要とします(ペット用で万札1)。基礎体力が高いためそうそう死なないでしょう。
出目は[256]=1,3,3です。生まれたてならこんなものでしょう。名前は後でつけることとし、とりあえず「それ(it)」と呼びます。
◆"それ"・第一段階(種別:バイオニンジャ)
カラテ 1 体力 5
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ 0 万札 0
◇装備や特記事項
○生い立ち:バイオニンジャ、体力+4
●バイオインゴット欠乏症:体力2以下で行動不能
能力値合計:7 回避ダイス:3
イメジはPicrewの「スライムメーカー」で作りました。実際はもっと醜悪でおぞましい感じでしょうが、とりあえずのイメジです。
育成序盤
「まずはアレだ……俺が教えるっつったら、カラテだろ」ノーカラテ、ノーニンジャ。数々の冒険や修行を経て、彼のカラテはなかなかのものになっている。生き残るためには何よりもカラテが大事だ。自分のサポートをさせるにも、多少はカラテがなければ生き残れまい。DMは"それ"に向き合った。
「イヤーッ!」DMはマカエラ・カタナを振り回し、"それ"にカラテを見せつける!"それ"は興味津々のまなざしでDMを見つめ、手らしき器官でおもちゃ箱から棒状のものを探り出し、見様見真似で振り回し始めた。「よおし、その調子だ!みっちり行くぜ!イヤーッ!」「ィァ、ィイァァーッ」
DMは"それ"にマカエラ・カタナを向け、棒と撃ち合わせる!カッ、カッ、カッ、カカッ!リズミカルに金属と木が音を奏でる。殺さないよう手加減し、いい打ち込みには「グッド」、悪い打ち込みには「惜しい」と評価する。首元、心臓、眼球などの弱点をわざと狙わせる。「ィァ、ィイァァーッ」
カラテ判定、難易度HARD。成功すれば当該能力値を2上げることができる。DMのカラテは6なので6D6=[113445]=成功。"それ"のカラテが3になった。
ニンジャはジーンで子をなせないが、ミームによって繁殖する。ニンジャの学習能力は高く、バイオニンジャの可塑性も高い。みるみるうちに"それ"は見違えるように成長した。カラテを繰り返すうち、不格好にねじ曲がっていた肉体は徐々に形を変え、四肢は伸びてしっかりと立ち上がった。
やや細身だが、DMを真似たニンジャらしい姿になった。自我は未発達なようだが、やりやすくはなった。そしてDM自身、他人にインストラクションを与えることで、己のカラテを見直す機会となる。「よーし、ここまで」
◆"それ"・第二段階(種別:バイオニンジャ)
カラテ 1>3 体力 5>7
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ 0 万札 0
◇装備や特記事項
○生い立ち:バイオニンジャ、体力+4
●バイオインゴット欠乏症:体力2以下で行動不能
能力値合計:7>9 回避ダイス:3
イメジはPicrewの「異形人外メーカー」で作りました。造魔めいています。
"それ"はまだ棒を振り回している。自分なりに遊べるようになった。DMは黙々と水を飲み、食糧を摂取する。栄養は充分だろうがうまくはない。ごそごそと食糧袋を探ると、バイオインゴットがあった。「おい、こいつを食っておけや」一日分のバイオインゴットを投げると、たちまち貪り食った。
「『育てたように子は育つ』っつーがよ……こりゃ、ペットだな」DMは子育てなどした試しがない。親に育てられた覚えもない。彼は趣味でカタナを集めていた下等なヨタモノに過ぎず、ニンジャ化した後も独学でカラテやワザマエを学んで来ただけだ。女ニンジャなら育て方も違うのだろうが……。
別に倫理道徳や礼儀作法、社会性を身に着けさせる必要などはない。どうせ自分を育ての親として選んだからには、邪悪で残虐で無慈悲なキリングマシーンがお望みなのだろう。ならば、そう育ててやろう。DMはカラテ鍛錬を終え、奥にあるシャワールームに入って汗を流した。
特別育成序盤
『イヒヒーッ!どうやら順調に育成は進んでいるようだネェー!』シャワールームを出ると、急に天井モニターがつき、リー先生の顔がアップで映し出された。「アイエッ!ど、ドーモ」DMがアイサツを返し、”それ”も真似してオジギをしながら、何事かをモゴモゴと呟く。
『そろそろステップアップが必要かと思ってネェー!以下のプランから選択してくれたまえ!君が選ぶのだ!』画面にサイバネやバイオサイバネ、スキルトレーニング器具などが映し出された。DMは"それ"と画面を交互に見ながら考えを巡らす。バイオニンジャならば、バイオサイバネを入れるか?
「んー、俺のサポート役を作るんであって、俺のコピーを作るんじゃあねえんだがな……」頭をガリガリとひっかく。と言って、カリオのコピーを作るのもどうだろう。バイオニンジャは実際目立つし、ハッキングはハッカーに任せたい。自分のミームを受け継ぎつつ、それとは違った形に……。
「……じゃあ、こうするか」DMは、腕のバイオサイバネを選んだ。手は器用な方がいい。指先は残し、前腕部に仕込みブレードを。ある意味自分の分身ではあるが、少し違う。自分にハッキングは教えられない。『それでいいのだネェ?』リー先生に頷くと、天井から狂った笑い声が響いた。
『よろしい!よろしい!移植手術をしておくから、君は奥の部屋で寝ておりたまえ!』突然"それ"の足元に穴が空き、吸い込まれた。リー先生が一旦回収した、ということだろう。言われるままに奥の部屋の扉を開けると、寝心地の良さそうなベッドが用意されている。「じゃ、寝るとするか……」
◆"それ"・第三段階(種別:バイオニンジャ)
カラテ 3 体力 7>8
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ 0 万札 0
◇装備や特記事項
○生い立ち:バイオニンジャ、体力+4
●バイオインゴット欠乏症:体力2以下で行動不能
▲バイオサイバネ腕(片腕):体力+1、基礎ダメージ2
能力値合計:9 回避ダイス:3
育成中盤
翌日。"それ"は腕にバイオサイバネをつけて戻ってきた。初対面の時よりはかなりニンジャらしくなってきた。が、まだまだひよっこ。DMとイクサすればたちまち敗れ去るだろう。栄養満点だがさほどうまくない朝食を食べながら、DMは言い放つ。「今日もカラテだ。ビシバシやるぞ」「ィァ」
「イヤーッ!」「ィァーッ!」「イヤーッ!」「ィァーッ!」「イヤーッ!」「ィァーッ!」「イヤーッ!」「ィァーッ!」DMと"それ"の激しいカラテ応酬!直接カラテを授受する組手鍛錬だ!メキメキと文字通り音を立てて"それ"は変容し、油断ならぬニンジャとして鍛え上げられていく!
"それ"は前腕部に潜めた生体ブレードを操り、素早く連続側転を行い、意外な方向から攻撃を繰り出す。体表面には甲冑めいた強靭な体組織が形成される。DMは初めて味わう「子育て」の感覚に昂揚した。いい感覚だ。
カラテ判定、難易度U-HARD。成功すればカラテが2上昇し、それ以外の能力値も1上げられる。6D6で[236666]=成功。カラテが5となり、ワザマエも4となった。なかなかの強さだ。
◆"それ"・第四段階(種別:バイオニンジャ)
カラテ 3>5 体力 8>10
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 3>4 脚力 2>3
ジツ 0 万札 0
◇装備や特記事項
○生い立ち:バイオニンジャ、体力+4
●バイオインゴット欠乏症:体力2以下で行動不能
▲バイオサイバネ腕(片腕):体力+1、基礎ダメージ2
能力値合計:9>12 回避ダイス:3>5
特別育成中盤
『イヒヒーッ!なかなかいいデータが取れている!実に興味深いネェー!』急にモニターがついてリー先生の顔がアップで映し出された。”それ”はDMと共にアイサツした。「「ドーモ」」『ハイドーモ!今度は、それに道具を与えてやりたまえ!神話でヒトに最初に火を与えたニンジャのように!』
画面にメンポや装束、カタナ、銃器が映し出された。DMは画面と”それ”を交互に見ながら熟慮する。「銃器やカタナは似合わねえな。となりゃあメンポか装束、サイバーサングラスか……」"それ"はスッと腕を差し伸べ、フルヘルムメンポを指差す。「ほう、これが欲しいのか?」"それ"は頷く。
「なんなのか分かってやがるのか……なんとなく、か」ニンジャには顔を何かで隠したくなる本能がある。"それ"もついにその段階に来たのだろう。『イヒヒーッ!自ら選ぶとは、なんとも興味深い!』リー先生は狂笑をあげ、"それ"の頭部のサイズをレーザー光線で計測した。
……しばらくして、サイズを調整されたフルヘルムメンポが床からせり上がって来た。"それ"はそれを手に取り、躊躇わず頭に被る。体表面の甲冑じみた体組織と合わさり、"それ"は昆虫じみた印象を与えた。DMはいつぞやの、狂ってカブトムシと化したニンジャを少し思い浮かべ、鼻を鳴らした。
◆"それ"・第五段階(種別:バイオニンジャ)
カラテ 5 体力 10>11
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 4 脚力 3
ジツ 0 万札 0
◇装備や特記事項
○生い立ち:バイオニンジャ、体力+4
●バイオインゴット欠乏症:体力2以下で行動不能
▲バイオサイバネ腕(片腕):体力+1、基礎ダメージ2
◆フルヘルムメンポ:体力+1
能力値合計:12 回避ダイス:5
【後編に続く】