忍殺TRPGリプレイ【オペレイション、オペレイション・レスキュー】05
前回のあらすじ:ネオサイタマの北、中国地方に広がるタマチャン・ジャングル。ヨロシサンに追われてここに逃げ込んだサヴァイヴァー・ドージョーは、バイオインゴット不足と分断工作により追い詰められていた。大将サワタリと客人ナーギニーは物資調達と捕虜奪還、救援要請のため動き出す!
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這い寄る蔦は一箇所へ集中し、脚、腰、胴体、腕、頭が順番に形作られていく。やがて顔の部分の植物表皮がバリバリと剥がれ落ちる……そこには生身の顔があった。網の目状に葉脈めいた血管を浮き上がらせた奇怪な顔が!最後に鼻から下を蔦が覆い、メンポを作る!『ドーモ。ボタニックです』
植物ニンジャは赤い目を邪悪に光らせてアイサツした。「ドーモ、フォレスト・サワタリです」「ナーギニーです」アイサツを返す。「貴様と戦っている暇はない。そこをどいてもらおう」『イツデモヨロシサン……ターゲット確認重点……イツデモヨロシサン……現れたな……イツデモヨロシサン……』
ボタニックはブツブツと壊れたレコードめいた文言を口走る。もとより異常なバイオニンジャではあるが、さらに何か洗脳めいた状態にあるようだ。サワタリは訝しんだ。これは、あのサブジュゲイターのしわざか。暴走して野生化したボタニックをジツで手懐け、門番としているというわけか。
この森に野生動物がいない理由がわかった。全てボタニックが排除していたのだ。その死体は養分となってやつを肥やし、あるいはゾンビーと化して操られる!ここは文字通り、やつのフーリンカザンなのだ!「急いで切り抜けるぞ、ナーギニー=サン」「了解」一触即発アトモスフィア!
戦闘開始
1ターン目
『MYYAAHHH!』ボタニックは奇怪なシャウトをあげながらナーギニーへ駆け寄り、無数の触腕めいた拘束蔦を伸ばす!SHSHSHSH!「イヤーッ!」見切って回避!だが狙いを外した拘束蔦は本体から分離し、のたうちながら急速に成長!顔のないボタニックめいたミニオンを三体生み出した!
フォレスト・サワタリはボタニックたちを観察し、弱点を割り出した。火だ。バイオニンジャたちは基本的に火に弱く、植物型ならなおさら。手元に松明やカンテラやライターはないが、サヴァイヴァルの鉄則として常に火縄を入れたバンブー筒を携えている。今こそ役立つ時!「サイゴン!」
サワタリは樹木を蹴って飛び渡りトラップを設置!さらに腰に吊り下げたバンブー筒に綿をつけた矢を入れて、瞬時に火矢とする!「ジェロニモ!」BAMBAM!植物ゾンビーたちへ発射!「「MYYAAAARGHHH!」」植物ゾンビーたちはおぞましく叫びながらメラメラと燃え上がる!ナムアミダブツ!
「キエーッ!」ナーギニーも樹木を蹴って飛び渡り、反動を利用して勢いをつけ、ボタニックへ外骨格ブレードで斬りかかる!SLASHSH!『MYAA!』サツバツ!ボタニックの胴体がすれ違いざま輪切りとなった!……だが、おお、見よ!裂けたボタニックの身体は地面に崩れ落ち、無数の蔦に変化!
それは樹々の陰を這い進み、ミニオンの一体に到達した。するとミニオンの顔を覆っていた表皮が剥がれ落ち、赤い目を爛々と輝かせた、新たな『ボタニック』となって復活したのだ!コワイ!「面倒ね。全部焼けばいい?」「そうするしかないな。恐るべきソ連の新兵器といったところか……!」
「「「「MYYAAHH!」」」」BASHSHSHSH!植物ゾンビーたちが一斉に拘束蔦を二人へ飛ばす!「「イヤーッ!」」側転回避!この程度ならまだ躱せるが、森の奥では次々と植物ゾンビーが起き上がり、こちらへ接近して来るではないか!「「「MYYAAAHHH!」」」「「「MYYAAAAHHHH!」」」
2ターン目
『MYYAAHHH!』ボタニックは奇怪なシャウトをあげながらナーギニーへ駆け寄り、無数の触腕めいた拘束蔦を伸ばす!SHSHSHSH!「イヤーッ!」見切って回避!だが狙いを外した拘束蔦は本体から分離し、のたうちながら急速に成長!顔のないボタニックめいたミニオンをさらに生み出した!
「ホーチミン!」BAMBAM!サワタリは低い姿勢からボタニックたちへ火矢を放つ!『『MYYAAAHHH!』』ボタニックたちがたちまち炎上!「イヤーッ!」ナーギニーは飛び跳ねながらスリケンを投擲!『MYYAAAAHHH!』ボタニック一体の顔面を貫通!もう一体は裏拳で弾き落とした!本体だ!
「「「「MYYAAHH!」」」」BASHSHSHSH!植物ゾンビーたちが一斉に拘束蔦を二人へ飛ばす!「「イヤーッ!」」側転回避!この程度ならまだ躱せるが、森の奥では次々と植物ゾンビーが起き上がり、こちらへ接近して来るではないか!「「「MYAAAHHHH!」」」「「「MYAAAAHHHH!」」」
「きりがない!どうする!?」ナーギニーが焦る。時間がかかればかかるほど、仲間たちの命は危うくなる!「火……火だ。ナムのジゴクを見せてやるぞ……ベトコンども!」サワタリは狂気に取り憑かれ、ナム妄想に浸っている。両目をギラギラと輝かせ、よだれを垂らしたその姿は、まさに狂人!
3ターン目
『MYYAAHHH!』ボタニックは奇怪なシャウトをあげながらナーギニーへ駆け寄り、無数の触腕めいた拘束蔦を伸ばす!SHSHSHSH!「イヤーッ!」見切って回避!だが狙いを外した拘束蔦は本体から分離し、のたうちながら急速に成長!顔のないボタニックめいたミニオンをさらに生み出す!
サワタリは……「モッチャム!」BAMBAM!植物ゾンビーたちへ火矢を発射!「「MYYAAARGHHHH!」」植物ゾンビーたちはおぞましく叫びながらメラメラと燃え上がる!ナムアミダブツ!だが周囲の森の奥からは無数のゾンビーが集まってくる!「トラップ設置完了。フーリンカザンは我にあり」
「キエーッ!」ナーギニーは樹木を蹴り渡り、炎に照らし出された植物ゾンビーたちを外骨格ブレードで薙ぎ払う!「「MYYAAAA!」」二体が斬り裂かれ活動停止!残り六体!「「「MYAAHH!」」」「「「MYYYAH!」」」一斉に蔦が飛ぶ!「「イヤーッ!」」側転回避!しかし逃げ場はない!
「シューッ……!」ナーギニーは周囲を見回す。火が円形に燃え広がり、ゾンビーたちを食い止めている。彼女もバイオニンジャである以上、火は弱点ではあるものの、植物ほどに燃えやすいわけではない。火の輪はボタニックたちも取り囲み、炙り、火の粉を降らせている。「ここで仕留めるぞ」
サワタリはつぶやいた。「ヨロシサンにこいつの厄介払いを押し付けられた形だが、やらねばならん。仲間たちのためだ」「了解」仲間たちの潜む洞窟へ、こいつらが到達すればオシマイだ。この火と煙は狼煙となって周辺のヨロシサン戦力を呼び込むだろう。その前に、倒さねばならない!
4ターン目
『MYYYAAAHH!』ボタニックはサワタリへ拘束蔦を放つ!BASHSHSHSH!「グワーッ!」ナムサン!命中!サワタリの首や四肢や胴体に恐るべき拘束蔦が絡みつく!「ヌウーッ……Wasshoi!」グググ……バチィン!サワタリはバイオ筋肉を縄めいて浮かび上がらせ、必死で拘束から脱出!スゴイ!
「サイゴン!」BAMBAM!「「MYARGHHHH!」」サワタリは左右へ火矢を放ち植物ゾンビーたちを炎上射殺!「キエーッ!」ナーギニーは外骨格ブレードで植物ゾンビーたちを薙ぎ払う!なんたるジゴクめいた戦場か!「グエン・グエン・グエン・グエン……!」サワタリの自我は危険な状態だ!
5ターン目
『MYYAAAAHH!』ボタニックはナーギニーへ駆け寄り拘束蔦を伸ばす!「イヤーッ!」回避!「テッグエンダン!」BAMBAM!「「MYARGH!」」植物ゾンビー全滅!「イヤーッ!」BASHSH!ナーギニーのスリケンが二体のボタニックを貫通!『GRRRRR……オノレ……イツデモヨロシサン……!」
6ターン目
『MYYYAAAHH!』ボタニックはサワタリへ拘束蔦を放つ!BASHSHSHSH!「ジェロニモ!」サワタリは紙一重で躱し、タケヤリを構える!狙うは植物に隠された本体だ!すなわち!「モッチャム!」BOOMBOOM!凄まじい勢いでタケヤリが突き出され、ボタニックの両目と股間を貫いた!サツバツ!
『MYYYAAARGHHH!アババババーッ!』傷口から緑と赤の混じったバイオ血液が噴出!ボタニックは蔦に分裂して逃げようとするが、火に囲まれて逃げられない!「これがナムのジゴク……緑と火のジゴクだ」サワタリは偽りのナムの記憶に苛まれつつ、タケヤリを深く突き刺し、カイシャクした。
『サヨナラ!』KABOOOOM!ボタニックは爆発四散した。
戦闘終了
「「シューッ……!」」二人はザンシンした。ボタニックの蔦がどれほど広く展開していたにせよ、本体は滅びたのだ。危険バイオ生物のたぐいが排除され、ヨロシサン戦力もボタニックたちを恐れて近づかなかったとすれば、今こそ好機。サワタリとナーギニーは火と煙に紛れ、森の闇へ姿を消した。
展開されたヨロシサン戦力のうち、ニンジャはサブジュゲイターやボタニックだけではない。バイオ・イアイドの使い手アサイラム。ネオサイタマの地下下水道から執念深い追跡を続けてきた掃除屋エルトリアト。他にもいるに違いない。サブジュゲイターのジツは危険だが、躱せる。なんとかする!
???
……やがて、崖下に目的の建造物が見えてきた。瓦付きの塀で囲われた風変わりな廃施設だ。中庭には巡回クローンヤクザたちがおり、観察したところニンジャはいない。輸送車両の轍は新しく、この施設が占領されて一日も経っていないことを物語る。防衛システムを展開する時間はないはずだ。
ここはおそらく、先程のボタニックの「故郷」であろう。やつは暴走して施設を蹂躙し、研究員を虐殺し、外界から断絶させた。ヨロシサンの戦力であれば、ボタニックを排除して施設を奪還することも可能だろうが、それをしなかったのはコストやリスクと釣り合わず、不採算だからに他ならない。
サワタリは不快な感覚を覚えた。かつて自分がモータルで、ヨロシサンの研究員だった頃のことを少し思い出し、頭の隅に追いやった。ともあれ、ここは手つかずだ。ボタニックは光合成や動物の捕食でエネルギーを確保するとすれば、バイオインゴットの消費は比較的少ないはず。予備があるはず。
「内部の状態にもよるが、調査可能な部分からいくぞ。電算室が生きていればザイバツへ救援信号を送る。しかし最優先すべきは、バイオインゴットとメディキットの確保だ」「了解」サワタリとナーギニーは頷き合う。「ハイドラも可能な限り救出する。洗脳されていた場合、無力化する」「了解」
ハイドラはバイオインゴットの供給がある限り、ほぼ不死身の肉体を持つ特異なバイオニンジャだ。だが相当に痛めつければ気絶はする。手足をもいで、あるいは首だけにして持ち帰り、バイオインゴットを十分に与えれば蘇生するだろう。それでもヨロシサンの洗脳が解けなければ、仕方ない。
二人は軽いブリーフィングを行ったのち、しめやかに施設へ潜入を開始した。果たして中には何が待ち受けているだろうか……?
【続く】
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