忍殺TRPGリプレイ【ワイルド・ダンス・オブ・カタナ・ソード】02
前回のあらすじ:駆け出しの傭兵ニンジャ・ロングソードに、新たな依頼が舞い込んだ。大ヤクザクラン「デッドフィッシュ」のオヤブン、ヘイショウ・シハカタを暗殺せよとのミッションだ。相方につけられた女ハッカーニンジャ・ドントマインドとともに、彼は行動開始!カラダニキヲツケテネ!
◆
ロングソードは邸宅のマップを入念にチェックする。警備が厳重な正面玄関から突入するわけにもいかない。潜入経路としては、外から庭の池に引き込まれる川がある。しかし、何も警戒していないわけもなかろう。ロングソードのニンジャ野伏力は、それほど高くはない。「庭の北にも扉があるな」
「物資搬入用の裏口ですね。料理人とかが出入りしています」「警備が比較的手薄だな。ここから忍び込めるか」「電子ロックなどが施されてはいますが……料理人を買収すれば、おそらく」「じゃあ頼む」「アッハイ」これでややショートカットが可能だ。他に可能そうな作戦は……?
「料理人を買収して、料理に毒とか致死量のナッツを盛らせれば早いんじゃねえか?」「それですが……当然、毒見役がいます」「そりゃそうか」シハカタは常に護衛兼毒見役としてグレーターヤクザを引き連れている。クローンヤクザには直感や経験、ソンケイがなく、肝心な時には役に立たない。
「とすると……行きつけのレストランで一服盛る、ってのもダメそうか。毒見役がついてくるだろうしな。私邸とレストランの往復の途中で襲撃するってのも……車が止まらないだろうし、警備が厳重か」ロングソードはあれこれ作戦を考えるが、結局は私邸にカチコミをかけるのが一番確実そうだ。
それに、私邸にはシハカタがかき集めた貴重な骨董品などのコレクションが多く眠っているという。暗殺ついでにこれを回収すれば、金欠にあえいでいるロングソードにとっては大きな収入となる。ドントマインドにも報酬の分け前を与えねばなるまいし。「こんなところか。行くぞ!」「ハイ!」
行動開始
草木も眠るウシミツ・アワー。ネオサイタマ南西部に広がるのは、汚染された都市環境とは真逆の、静謐なアトモスフィア漂うタンボ平原だ。碁盤めいて整然と並べられた田園は、ほとんどが都市部への食糧供給を担う暗黒メガコーポ連合の所有物か、封建領主めいたカネモチの私有地である。
ロケットランチャーを装備したバイオスズメよけカカシの防衛網を越え、ナリコ・トラップなどが仕掛けられた森を抜け、ロングソードたちはシハカタの私邸へと到達した。仕事をやり遂げ、金を受け取るために。「ここですね」ドントマインドは息を潜め、鋭敏なニンジャ感覚で様子をうかがう。
私邸は城砦めいた白い壁に囲まれており、正門には巨大なトリイ・ゲートがあって、不届きな侵入者の死骸がシメナワで吊るされ、晒し者にされている。正門前には5人の武装クローンヤクザがおり、同じタイミングで左右を警戒し、「異常なし」の報告を行い、同じタイミングでタンを吐いている。
正門の裏には左右に詰め所があり、クローンヤクザが6人ずつ、合計1ダース(12人)待機している。相当の火力がなければ突破できまい。クローンヤクザは他に5人おり、マシンガンを携えて敷地内を巡回警備している。発見されれば即座に通報され、警備ヤクザが駆けつけて蜂の巣というわけだ。
さらに、監視カメラが屋敷の南側、北側、西側に1つずつあり、巡回ヤクザの死角を補っている。破壊すれば即座に警報が鳴るだろう。ハッキングで無力化は可能だ。幸い裏口から侵入すれば、引っかかりそうな監視カメラは1台しかない。庭を駆け抜けて向かう先は、屋敷の北東に位置する厨房だ。
問題はここからだ。厨房の南には大きなテーブルのある広々としたダイニングルームがあり、側近のグレーターヤクザのうち2人が詰めている。彼らを即座に黙らせねばならない。続いて廊下の巡回ヤクザを始末し、オヤブンのいる寝室にカチコミをかける。しかし……どこかで警報は鳴らされる。
クローンヤクザの行動パターンは機械めいて単純で、警報の鳴らされたエリアに全員が一斉に駆け寄ってくる。となると、屋内や寝室で警報が鳴らされた場合、そこへ全クローンヤクザが来るわけだ。ニンジャといえどそれは避けたい。ゆえに、『東の庭の巡回ヤクザを始末し、警報を鳴らさせる』。
巡回ヤクザが「倒された時点」では、警報は鳴らない。巡回ヤクザが侵入者を発見するか、巡回ヤクザからの「異常なし」の報告が警備主任に上がらなかった時、始めて鳴らされるのだ。つまり、早めに始末するほど時間が稼げる。警報が鳴らされても警備ヤクザは庭に集まり、屋内には来ない!
「……で、いいんだな」「ハイ」ドントマインドは頷いた。この警報パターンプログラムの脆弱性は、コバヤシノからの情報で判明している。全員がリアルヤクザなら問題だったが、自前での状況判断力に乏しいクローンヤクザならではの弱点だ。別の行動が指示される前に、ASAPで暗殺し離脱すべし!
襲撃開始
1ターン目
2人のニンジャは色付きの風と化し、しめやかに裏口へ回り込む。料理人を買収しての手はず通り、扉の鍵は開いている。周囲は漆黒の闇だ。だがニンジャには問題ない。サイバーサングラスを埋め込まれたクローンヤクザたちにも。「「異常ありません」」裏庭の巡回ヤクザが警備主任に報告する。
その時。ZZZT!「ムン」巡回ヤクザの1人が、サイバーサングラスを介してニューロンを灼かれ、崩れ落ちた。次いで闇の中に刃が閃き、もう1人の巡回ヤクザの首が胴体から離れた。ナムアミダブツ。見事なアンブッシュで警備を始末した2人は、ニンジャ野伏力を発揮して再び闇に身を隠した。
2ターン目
ドントマインドは周囲を警戒しながら、厨房の裏口の扉を開け、中に忍び込む。買収した料理人の手はず通り、鍵はかかっていない。厨房にはその料理人がおり、何食わぬ顔で水仕事をしている。こんな深夜に?……南のダイニングルームでは、見張り役のグレーターヤクザたちが食事をしている。
『ドーモ』小声でアイサツすると、料理人は少し怯えた顔で振り返り、無言で調理台の上を指さした。手配してあったオーガニック・スシが真空タッパーに入れられて置かれている。ドントマインドは卑屈な笑みを浮かべながらおずおずとそれを受け取った。ロングソードはまだ扉の外にいる。
3-4ターン目
ドントマインドとロングソードは、薄暗い厨房をしめやかに移動し、ダイニングルームの様子を伺う。天井にはシャンデリア、テーブルには燭台があるが、深夜ゆえ照明は薄暗い。東側には庭を一望できる大きなガラス窓の壁があり、開放的だ。当然防弾であり、あそこから侵入することはできない。
同様の防弾ガラス窓は、シハカタの寝室の北側にもある。そちらから侵入や離脱ができればラクだったが、そうもいかない。「……そろそろですね」ドントマインドが時間を確認する。庭の巡回ヤクザからの定期的な報告がなければ……ジリリリリリリ!『警報!警報!東の庭に侵入者ドスエ……!』
警報が鳴り出した!「「クセモノダー!」」ダイニングルームで食事をしていたグレーターヤクザたちは立ち上がり、警戒体制をとる!襲撃の好機!
◆グレーターヤクザ(種別:モータル)×2
カラテ 3 体力 2
ニューロン 2 精神力 2
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ 0 万札 2
攻撃/射撃/機先/電脳 3/ 3/ 2/ 2
◇装備や特記事項
◆ヒートカタナ:ダメージ1+火炎1
◆チャカガン
能力値合計:8
5-6ターン目
ドントマインドとロングソードは、厨房の南側の扉を開けてダイニングルームに突入!「「ドカマテッパダラー!」」グレーターヤクザたちはヤクザスラングを叫びながら、ヒートカタナを抜いて斬りかかる!SLAAASH!「「イヤーッ!」」2人の侵入者は見切って躱し、迎撃を繰り出した!
SMAASH!「「グワーッ!?」」命中!強い!これがニンジャのカラテなのだ!「「イヤーッ!」」ドントマインドはテーブルに飛び乗り、スリケンを敵の眉間へ投擲!ロングソードはカタナで敵の心臓を貫く!「「アバーッ!」」サツバツ!たちまちグレーターヤクザたちは血の海に倒れた!
「「「ザッケンナコラー!」」」「「「スッゾコラー!」」」屋敷の外では警備クローンヤクザたちが東の庭へ殺到!必然的に正門はがら空きとなる!このままASAPでオヤブンを暗殺し、脱出すべし!「行くぞ!」「ハイ!」
襲撃継続
【続く】
◆