【つの版】「逆噴射小説大賞2022」応募作品・ライナーノーツ
おれだ。二発撃ち終えたのでライナーノーツだ。試し撃ちはせず、準備した銃弾は忘れて、一週間ごとに脳みそをひねって出してみた。おれのすきなものをかけ合わせたり、おれの過去の作品をかけ合わせたり、左右や男女のバランスをとったりしてできている。続くかどうかはわからない。撃ってないやつは撃て。今回はあまりふざけないよう真面目にやったので、全体的にシリアスめになった気がする。手応えや反応は、どれもまあまあだ。
昨年のはこれだ。
一発目：ほろびん様
日本伝奇だ。時は10月、ハロウィンなので例によってヒャッキ・ヤギョがオヒガンから現れた。今度は出雲大社の神迎神事を下敷きとし、八百万の神々が海の彼方の常世の国から現し世に遊びに来たとした。見知らぬ造語やルビ芸は極力使わず、現し世のありものを組み合わせた。知らない語句は眼の前の機械でググって調べろ。ハロウィンをもじってほろびんとし、滅びたいにしえの世の神々が、あんとく様めいてゲートから来たりて浮かれ騒ぐ。あたかも逆噴射小説大賞に多くのパルプスリンガーが群れ集うように。
ハロウィンをWikipediaで調べていたら、関連項目に「ホロロン」というのがあった。メキシコの死者の日、ワルプルギスの夜、節分お化け、ローソクもらい。古今東西で季節の変わり目には現世とオヒガンの境がゆらぎ、あちらがわの存在が来訪するのだ。なまはげ、パーントゥ、ボゼ、タローマン、そういった異形のものどもが。やつらは妖怪ではあるのだが、禍福をもたらす神々でもあり、長く人々から畏れ敬われてきたのだ。神聖四文字なら悪魔だ偶像だと怒るだろうが、あいつも春のオヒガンに海をカラテチョップで割って民をオヒガンに導いていたりする。
センド・ニンジャならぬ猿田彦神を先導とし、稲佐の浜めいたどこかに来たわけだが、ここが出雲とは一言も言っていないし、現在なのか過去なのか未来なのかもわからない。たぶん日本のどこかではあろう。百鬼夜行の描写で終わると話がドライヴしないので、道を阻む存在がエントリーし襲いかかった。神々がカイジュウめいて人を虫けらのように蹂躙して殺すからって、こいつが正義の味方かどうかもわからない。単にこの神々と敵対している別の神かもしれないし、レッドマンやタローマンめいた理解不能存在である可能性もある。だいたいなぜ彼らはこのように呼ばれ、襲いかかられねばならないのか。たぶんあいつはアメノオハバリなんじゃないかしら。
本作はジョン久作＝サンにピックアップ頂いた。アリガトゴザイマス！
◆天◆
◆使◆
二発目：ゲリーリャ・フロリダ
メキシコ伝奇だ。日本から太平洋を横断し、MEXICOかその周辺のどこかが舞台となった。このところアステカ帝国について調べて解像度があがったので、面白いなと思った「花の戦争」という概念を、現代のギャング同士の決闘として蘇らせてみた。暴力と血、汗と筋肉。メキシコなのだ。
現地のナワトル語ではショチ・ヤオヨトル、スペイン語で直訳してグエッラ・フロリダ（guerra florida）という。でも小規模なのでゲリラの語源のゲリーリャ（guerrilla/小さな戦争）とした。ゲリラ・フロリダだと英語的表現過ぎる気がするし、フロリダ半島でゲリラ活動をやってるみたいでストーンオーシャン感がある。やってもいいが。アステカといえばジョジョだ。
マクアフティルは棍棒というより両刃剣の一種で、このような形状をしている。まるでチェンソーだ。黒曜石の刃はガラス片を埋め込んだようなもので実際鋭利であり、スペイン人の報告では「馬の首を一撃で斬り落とした」という。鋼よりは脆いしチェインメイルやプレートメイルには効き目が薄いが、人を殺すには充分な殺傷力がある。手練れが振るえば恐ろしいだろう。
人名はおれが前に作った「ランダム人名ジェネレーター・南欧編」を利用し、性別も電子ダイスを振って決定した（1D6を振って奇数は男性、偶数は女性）。忍殺TRPGをやるようなもので、名前と性別と舞台が決まれば、あとはその場のノリでキャラが動き出し、肉や骨も無から生み出される。男同士でも女同士でも問題ないが、女・男と生成されたので先に生み出された方が主人公となった。たちまちメイヘムめいた褐色肌の筋肉女となり、羽毛の蛇の入れ墨が縄めいた筋肉や血管とともに浮かび上がった。そうした出自を持つのだろう。五対五でイクサをしてもゲームめいているから、ここは一対五の圧倒的不利としよう。なぜ味方たちは彼女を一人で戦わせるのか？ おそらく彼女は勝つだろうが、いかなる方法で？ そのような疑問が湧いて来たところで続く。どうなることだろうか。
◆柱◆
◆男◆
以上だ。健闘を祈る。
【ひとまずおわり】
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