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【つの版】「逆噴射小説大賞2024」応募作品・ライナーノーツ

 おれだ。二発撃ち終えたのでライナーノーツだ。今回も試し撃ちはせず、おれなりに脳みそをひねって出してみた。おれのすきなものをかけ合わせたり、おれの過去の作品をかけ合わせたり、左右のバランスをとったりしてできている。続くかどうかはわからない。撃ってないやつは撃て。

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 昨年のはこれだ。


一発目:巌龍島異聞

 例によって日本伝奇だ。このところ日本刀とその伝説に関してつのpediaしており、伝奇力が高まって来たのでやることにした。先に逆噴射ピックアップして自他の興味関心の傾向を探ると、連載中のニンジャスレイヤー本編の影響かオヒガン的なもの、と関わるものが多かった。オヒガンで海で刀剣と言えば、壇ノ浦の龍宮に沈んだ草薙剣だ。実際フジオも探している。

 なんか「祠壊し」が流行していたので、当初は崖の下に追い詰められた誰かが打ち捨てられた祠を見つけて壊し……という感じで書き始めたのだが、それこそフジオとかぶってしまうし密漁海岸じみてもいるな。他にネタがないかと思って調べていくと、壇ノ浦の西に世にも名高き巌流島があり、宮本武蔵と佐々木小次郎が戦ったことでゆうめいだ。剣を振るうにはふさわしいし、潮の流れで草薙剣が流れ着いていてもおかしくない。武蔵だとありきたりだし主役は小次郎としよう。ネタ被りがないかしらと「巌流島・草薙剣・佐々木小次郎」とかで検索したが、なかったのでたぶん大丈夫だ。誰かが先に思いついていてもおれはパクっていない。安心しろ。

 そこで巌流島の戦いについて調べてみると、記録や伝承によって差異があり一様でない。佐々木小次郎についての記録も乏しい。それなら伝奇の腕の見せ所だ。最古の記録である「小倉碑文」や「沼田家記」をベースにし、実際にあったとしたらこうだろうと詰めていく。そして「沼田家記」によれば小次郎は決闘に弟子を連れて来ず、武蔵に殺されたが蘇生し、その場で武蔵の弟子たちに撲殺されたという。だが決闘に際して立会人も弟子もいないのは不自然だから、おれの次元ではいたことにした。

 古くは小次郎の刀は「物干し竿」と呼ばれておらず、ただ「三尺の白刃」であったといい、燕返しも使っていない。刀身の長さが三尺とすれば野太刀か大太刀のたぐいだろう。対する武蔵は「木刃」を使ったと小倉碑文にもある。決闘の原因は弟子同士のいざこざらしいが、二刀流と野太刀のどちらが強いかの論争だろうから、「武将感状記」の説を拾って木刀二刀流とした。間合い自体は野太刀の方が長いが、二刀流なら片手を小太刀として防ぐことができるし、現実的にはそのようにして勝ったのだろう。

 ここまでを前半としておよそ400字。後半は虚実が転換して怪奇現象が起きる。木刀なら即死はしないが気絶はしただろうし、ナラクか衛府の七忍のアレめいて何者かが小次郎の脳内に語りかけてくるわけだ。耳なし芳一の話も壇ノ浦の近くの寺が舞台だったというし、海上で国境の船島ならオヒガンと通じてそうしたこともあろう。かくて砂中から草薙剣が掴み取られ、あるいは錆びた砂鉄が凝り固まって剣と成り、岩流/巌龍・佐々木小次郎が幽鬼の如く蘇生する。操られているだけなら武蔵も興醒めだろうが、どうやらそうでもないらしい。このまま弟子たちに撲殺されるわけもあるまい。瀕死の小次郎が放つは、燕返しか九頭竜閃か。いざ非尋常に勝負再開!

関連作品

◆巌◆

◆龍◆

二発目:ロードキル・キャット

 現代伝奇だ。前回が海だったのでとし、草薙剣が出たので八咫鏡めいた銅鏡とした。昨年なんか好評だった「夜山踏み」に似ているが、一人称の主役は情緒不安定なワケアリの女だ。女言葉の男かもだが。

 現代性というほどでもないが、「埋め部」と「祠壊し」が直近のTLで流行っていて備忘録を作らしめるほどだったので(後者は備忘録が3つもある)やりたくなってやることにした。主役が一人だと話が弾まないし、百合にしてもよかったが、今回は男女?の組み合わせだ。タカシはヤクザやチンピラや無軌道YouTuberではなく理解がある彼氏で、古事記や銅鏡を知っているぐらい教養もあるが、一体何者なのだろう。稗田礼二郎や岸辺露伴でもあるまい。絵柄的には諸星大二郎より荒木飛呂彦の短編風のつもりだったりする。

 埋め部なので死体を埋めねばならないが、二人で人間の死体を埋めるのは結構大変そうだし、そいつが死体になった理由とか人となりとかを描写する必要もあってめんどくさい。子供だと陰惨だ。ならば動物……にしよう。猫には9つの命があるというし、祟りそうなイメージもある。時々道路に野良猫の死体が転がっているが、ああいうのは誰が掃除しているのか、法的にはどうなのかと調べたところ、日本では廃棄物処理法が該当し、道路を管理する自治体(都道府県とか市町村)に連絡すれば引き取ってくれるらしい。報告を怠ると法律違反だが、こいつらにそうさせると埋め部できないので、なんかワケアリということになった。YouTuber罪とかではなかろう。

 そんなわけで『ペット・セメタリー』じみて土の中から死んだ猫?が蘇生し、児啼爺めいてごぎゃ啼きする。前のもそうだが何か異常なことが起きてヒキ、というのはありがちではあるな。前のが少々視点がふらふらしているのに対し、こっちは一人称視点で固定しているのでいいとしよう。しかして両作品ともスキの数は前年比であまり多くなく、Xでお褒めの言葉はいただいたが、特にピックアップもされていない。これでは最終選考どころか第一次選考も通るかどうかおぼつかないが、まあそんな年もあろう。

関連作品

◆Nine◆

◆Lives◆

 以上だ。健闘を祈る。

【ひとまずおわり】

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