大天狗国(テングリア)
チンギス・カンは天狗だった。この事実を知った時、私は目が眩み、膝が震えるのを感じた。だが、考えてみればわかる。源義経は天狗に武芸を習った。彼が大陸に渡り、チンギス・カンとなった。この有名な二つの伝説から、自ずと結論は導かれる。チンギス・カンは天狗だったのだと。
義経は天狗に成っていたのだ。星々の海から降臨した大魔王に。その超常的な力は海に嵐を起こし、アイアンゴーレムを操り、富士山を噴火させたという。彼を恐れた同族は、平家との戦争が終わるや彼を追い詰め、殺そうとした。天狗に対抗できるのは天狗だけだ。当時の日本には多数の天狗が割拠していた。
義経は新天地を求め、大陸へ渡った。そこには狼祖神話を持つ民が暮らしていた。蒼き狼、それは蒼天の遣わした狗……天狗のことなのだ。そしてチンギスとは―――――
「……なかなかよく調べていたようだな」
暗闇の中、天狗面の男は遺された手記をめくる。その目は蒼く輝いていた。
【続く】
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