忍殺TRPGリプレイ【オペレイション、オペレイション・レスキュー】06
前回のあらすじ:ネオサイタマの北、中国地方に広がるタマチャン・ジャングル。ヨロシサンに追われてここに逃げ込んだサヴァイヴァー・ドージョーは、バイオインゴット不足と分断工作により追い詰められていた。大将サワタリと客人ナーギニーは物資調達と捕虜奪還、救援要請のため動き出す!
◆
「内部の状態にもよるが、調査可能な部分からいくぞ。電算室が生きていればザイバツへ救援信号を送る。しかし最優先すべきは、バイオインゴットとメディキットの確保だ」「了解」サワタリとナーギニーは頷き合う。「ハイドラも可能な限り救出する。洗脳されていた場合、無力化する」「了解」
ハイドラはバイオインゴットの供給がある限り、ほぼ不死身の肉体を持つ特異なバイオニンジャだ。だが相当に痛めつければ気絶はする。手足をもいで、あるいは首だけにして持ち帰り、バイオインゴットを十分に与えれば蘇生するだろう。それでもヨロシサンの洗脳が解けなければ、仕方ない。
二人は軽いブリーフィングを行ったのち、しめやかに施設へ潜入を開始した。果たして中には何が待ち受けているだろうか……?
潜入開始
廊下の蛍光ボンボリがバチバチと鳴り、光が揺れた。巡回クローンヤクザ二名の蒼ざめた横顔と、壁に貼られた「ヘルス大事」「売上高い」の色褪せたショドーを照らす。クローンヤクザ二名は15秒ごとに向きを変え、アサルトライフルを構える。バチバチバチ。蛍光ボンボリが点滅する。
照明の問題は、施設が放置されてきた為だ。ボンボリはジリジリと音を鳴らし、消え、また点灯した。……また消えた。……点灯した。クローンヤクザそれぞれの真後ろに、フォレスト・サワタリとナーギニーが立っていた。二人のニンジャはそれぞれの獲物の首を捻じって殺した。ナムアミダブツ。
サワタリは死体の手首をククリナイフで無雑作にケジメし、廊下突き当たりの隔壁の認証パネルに押し当てた。『管理レベル不足ドスエ』電子マイコ音声が告げた。「チッ、警備員ではダメか。研究員クラスの……」ふと、彼は自分の掌を見た。かつて自分は、ヨロシサンの研究員だったはずだ。
ニンジャ第六感が働き、サワタリは無造作に自分の掌を、隔壁の認証パネルに置いた。『研究員認証。開くドスエ』ガゴンプシュー。隔壁は難なく開き、温室めいた区画へ道が通じた。二者は頷いてエントリーする。通路の左右は汚れて霞んだガラス、その向こうは得体の知れぬ枯れた植物だ。
放置され、枯れるに任せた植物園か。強化ガラスには大穴が開けられた場所があり、飛び散ったガラスは脇に寄せられている。二者はそのまま進み、閉ざされたカーボンフスマをサワタリが再び研究員認証で開く。その先は再び通路。壁には猿が二足歩行し、道具を手にし、人間となる絵図がある。
人間のその先に何か描かれていたようでもあるが、その部分の壁が抉られるように砕けており、判別できない。突き当たりには「静電気」「第二が計算」のノーレン。つまり第二電算室。くぐり抜けると、オフィスめいたUNIXルームだ。ピピポピポ……ピポポポ。ビープ音が室内を満たしている。
電算室
「あっさり着いたね」「気をつけろ」二者は物陰に潜む。……「13時間働いた」「食事タイミングを」会話と足音が近づいてくる。ウイーン……ドアが自動で開き、武装クローンヤクザが二名入室。「特に問題無いですね」「そうですね」続いて、チョンマゲ頭に白衣のひ弱そうな研究サラリマンだ。
「ふーむ、ずっと動いてたんだな。地下ジェネレーターのおかげか」サラリマンは電算室を見回し、懐からフロッピーディスクを取り出した。UNIXから機密情報を抜き出すか、消去しようというのだろう。二人のニンジャは頷き合い、物陰から飛び出した!「「イヤーッ!」」アンブッシュだ!
◆ヨロシ・トルーパー(種別:モータル/バイオ生物/クローンヤクザ)×2
カラテ 3 体力 2
ニューロン 2 精神力 2
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ - 万札 1
攻撃/射撃/機先/電脳 3/ 3/ 2/ 1
◇装備や特記事項
◆電磁ショック警棒:テック近接武器、ダメージ1+電磁1
◆アサルトライフル:連射2
◆ショットガン:ダメージ2
◆ライオットシールド:敵からの射撃判定難易度+1
能力値合計:8
BAMBAM!「アバーッ!」サワタリのショートボウから毒矢が放たれ、武装ヤクザの一人を射殺!SLASH!「アバーッ!」ナーギニーの外骨格ブレードが閃き、もう一人の武装ヤクザの首を刎ねた!ナムアミダブツ!「アイエエエ!?」チョンマゲ研究員はNRSを起こし、腰を抜かして失禁!
「騒ぐな」サワタリは瞬時に研究員の背後へ回り、首筋にマチェーテの刃を突きつけて拘束する。「ヒッ」「情報を吐け。ヨロシサンは何人のニンジャを派遣した。名前を言え」「アイエ……じょ、情報漏洩はケジメで」「今ここでケジメされたいか」「い、言います!殺さないで!」研究員は失禁!
「さ、サブジュゲイター=サン……アサイラム=サン……」「うむ。エルトリアト=サンも確認した。他には」「す、ストームタイガー=サンと、ラハブ=サン。五体……いや、五人です……」「そうか」「そ、それと、ボタニック=サンが……この施設から脱走した……」「やつは殺した」「アイエエエ!」
研究員は恐怖に震えた。「わ、私は役に立ちます!殺さないで!」「この施設の見取り図を出せ」「ハイ!」研究員はUNIXを操作し、言われるままにモニタへ見取り図を表示させた。最深部には第三電算室、バイオインゴットやメディキット、食糧品などの貯蔵庫、バイオニンジャ培養槽がある。
確証はないが、捕虜になったハイドラがいるとすれば培養槽だ。治療や研修を受けているはず。洗脳が完了する前に救出せねば。可能なら彼にも物資を背負わせ、なるべく多くを持ち出したい。「よし。ここのUNIXは外界と通信できるか?」「……禁止されてはいますが、可能です」「繋げ」「ハイ」
研究員は必死でUNIXのキーボードを叩き、施設外へ停車させた輸送車両のUNIXを介して、外部との通信を可能にした。「極めて秘密の通信だ。ログを自動的に消去するようにしろ。通報だとかおかしなことをすれば、俺にはすぐわかるからな」「アッハイ……」サワタリは哀れな研究員を脅しつけた。
???
……サワタリの命令により、研究員は椅子から立って両手をあげ、後ろを向いて床に座った。ナーギニーが進み出て秘密IPアドレスを入力し、IRC通信を試みる。ザイバツのネオサイタマ駐屯部隊のひとつ、チーム・ヘルダイバー。敵の襲撃で散り散りになり、長らく通信できていなかったが……。
010101……『タイガー』とモニタに表示された。チームの合言葉だ。ナーギニーは無言でキーボードを叩き、『ジャングル』と入力する。続いて『スネーク』には『フェニックス』と。どこか繋がりがあるようでいて容易には繋がらないパスワードを、いくつも繰り返し応酬したのち……01010101
『ドーモ。そちらから名乗って下さい』繋がった。『ドーモ、ナーギニーです』無言タイプでアイサツ。『ヘルダイバーです』アイサツが返る。
『生きていたか。チョージョー。チームの他のメンバーも無事だ』『よかった。こちらはピンチ。救援を要請する』『どこだ』『タマチャン・ジャングル、ヨロシサンの秘密施設。仲間といるけど、追い詰められている』『仲間とは』『サヴァイヴァー・ドージョー』しばしの沈黙。『……なるほど』
ヘルダイバーは状況判断する。ヨロシサン製薬はザイバツの提携先のひとつではあり、対ソウカイヤ・オムラ連合とも明確に敵対関係にはない中立勢力だ。わざわざ敵に回して得られるメリットはない。しかし……『了解。付近で活動する仲間と連絡をとり、救援に向かわせる。すぐとはいかないが』
サヴァイヴァー・ドージョーは脱走バイオニンジャ集団として悪名高く、ザイバツにも噂は届いている。彼らを手懐けて手駒に加えておけば、神出鬼没のゲリラ部隊として動かすことができるだろう。ヨロシサン自体を動かすよりはラクだし、経費も軽く済む。『感謝する』『幸運を祈る』通信終了。
通信ログは瞬時に消去され、やりとりは互いの脳内にのみ残る。だが、救援要請は成功したのだ。「OK」「うむ。次は最深部だ。手分けをすることになるかも知れん」「了解」「アイエエエ……わ、私は気絶させられたことにして下さい!……ケジメはされるでしょうが、死にたくありません!」
チョンマゲ研究員は命乞いした。「か、家族が帰りを待っているんです!許して下さい!」二人は顔を見合わせた。口封じに殺すべきだが、家族を持ち出されては……「わかった。協力感謝する。イヤーッ!」「ムン」サワタリはオジギし、彼の首筋にアテミ・チョップを加えて昏倒させた。その時!
???
BEEP!BEEP!BEEP!突如、施設内に緊急警報が響き渡る!『警戒!警戒!巡回警備員の殺害を確認!侵入者ドスエ!』潜入時に殺した巡回クローンヤクザが発見されたか。「展開!」「展開展開!」「調査スッゾー!」足音と声!十数人の武装クローンヤクザが電算室へ接近!「展開展開!」
「「イヤーッ!」」サワタリとナーギニーは色付きの風と化し、天井の通気孔へ飛び込む!モニタに表示された施設見取り図によれば、このダクトを這い進めば最深部区画に到達可能だ!そして当然、サワタリは電算室入口付近にトラップを仕掛けてある!……KABOOOM!「「「アババーッ!」」」
武装クローンヤクザたちがドアトラップに引っかかり、まとめて吹き飛ばされる!サワタリとナーギニーは闇の中を這う蛇めいてダクトを這い進む!「「ムーヴムーヴムーヴ!」」……「サワタリどもか」「そのようね」しばらくして、第二電算室に二人のバイオニンジャが駆けつけた。
◆ストームタイガー(種別:バイオニンジャ)
カラテ 6 体力 13
ニューロン 6 精神力 7>6
ワザマエ 6 脚力 5/E
ジツ 0 万札 22>8
DKK 0 名声 4
攻撃/射撃/機先/電脳 6/ 7/ 6/ 6
回避/精密/側転/発動 6/ 7/ 7/ 0
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:1
◇装備や所持品
▲▲戦闘用バイオトルソーLV1:体力+3、脚力+1
△ビーストレッグ:ワザマエ判定と体力+1
▲▲戦闘用バイオサイバネLV1:バイオ武器LV1、ダメージ2、交渉判定難易度+1
●過剰バイオサイバネ(5個):精神力-1
◉バイオニンジャ:体力+2、交渉判定難易度+1、アイテムによる回復量-1
●脆弱性:火炎(精神力1)
◆ニンジャレガース:体力・緊急回避+1、脚力ダメージ軽減1
◇ジツやスキル
◉常人の三倍の脚力:脚力+1、連続側転難易度-1
◉ランスキック:脚力値で近接攻撃判定(N、回避N)
命中すると殺伐出目1(痛打+弾き飛ばし) 殺伐が出たら殺伐出目D6も可
脚力7以上で連続攻撃2可能 迎撃回避不能
◉トライアングル・リープ:連続側転で壁に触れて移動した時、
直後の近接攻撃の難易度上昇を無視し、一発目に痛打+1
○生い立ち:純正バイオニンジャ
◉知識:バイオ系メガコーポ
◉忠誠心:ヨロシサン 精神力+1
能力値合計:18
◆ラハブ(種別:バイオニンジャ)
カラテ 6 体力 8>12
ニューロン 6 精神力 7>6
ワザマエ 6 脚力 4>5/E
ジツ 1 万札 25>0
DKK 0 名声 4
攻撃/射撃/機先/電脳 7/ 6/ 6/ 6
回避/精密/側転/発動 6/ 6/ 7/ 7
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▲▲戦闘用バイオサイバネLV1:バイオ武器LV1、ダメージ2、交渉判定難易度+1
▲▲戦闘用バイオトルソーLV1:体力+3、脚力+1
△バイオテイル:体力及び攻撃&側転+1
●過剰バイオサイバネ(5個):精神力-1
◉バイオニンジャ:体力+2、交渉判定難易度+1、アイテムによる回復量-1
●脆弱性:火炎(精神力1)
◇ジツやスキル
☆ヘンゲヨーカイ・ジツLV1:手番開始時に精神力1消費し発動(N)
次の手番までカラテ+3、脚力+2 精神力1消費し1ターン継続可
ヘンゲ時は強制的に素手&スリケン装備となる
◉常人の三倍の脚力:脚力+1、連続側転難易度-1
◉トライアングル・リープ:連続側転で壁に触れて移動した時、
直後の近接攻撃の難易度上昇を無視し、一発目に痛打+1
○生い立ち:純正バイオニンジャ
◉知識:バイオ系メガコーポ
◉忠誠心:ヨロシサン 精神力+1
能力値合計:20
ストームタイガーとラハブ。この作戦に駆り出されたニンジャたちの中では弱いほうだが、二人揃えば油断ならぬ戦闘力を発揮する。サワタリとナーギニーがもし遭遇していれば、倒されはしないまでも苦戦は必至であっただろう。だが彼らの目的は戦闘や殺戮ではなく、掠奪と奪還、生存であった。
「電算室で、やつらは何をしていたと思う」「アタシなら……施設のマップを確認するね。目当てはバイオインゴットと医療品だろ」「そうだ」「後を追うの?」「否。先回りして貯蔵庫を防衛する」「了解」二人は武装クローンヤクザ部隊に第二電算室の制圧と調査を任せ、最深部へと駆け去った。
ストームタイガーはサブジュゲイター、アサイラム、エルトリアトらにもIRCで連絡し、状況を報告する。『了解。私は第三電算室で社員らとともにデータ抽出を行っています。決して近づかせぬよう』サブジュゲイターから返信。『ネズミ袋です。囲んで叩き、サワタリを捕獲しなさい』「了解!」
【続く】
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