忍殺TRPGリプレイ【イン・ザ・ケージ、イン・ザ・フォレスト】01
ドーモ、三宅つのです。これはゴルダ=アルカトラス=サンのソロシナリオ案「ワイルドハントのオンセン休暇護衛」を元にしたリプレイ小説です。ネタバレにご注意ください。
ザイバツのニンジャ(成長の壁1つ以上突破)が、上司ワイルドハントのオンセン休暇を護衛する任務です。確定でニンジャスレイヤーと戦うハメになるため難易度はデッドリーですが、逃走は可能です。
つの次元ではすでにロード・オブ・ザイバツとパラゴンが討ち取られましたが、キョート城はネオサイタマ上空のオヒガンとの狭間に存在し、キョジツテンカンホーの残滓が中心市街地を覆っています。ワイルドハントらザイバツ・ネオサイタマ駐留部隊の残党は、この網目を利用してソウカイヤ打倒のため暗躍しています(スローハンド、パーガトリーらは行方が知れず、ニーズヘグらはキョート城でダークニンジャ/サツガイ・ニンジャの帰還を待っています)。今回は……このニンジャがうってつけでしょう。
◆イエローフィスト(種別:ニンジャ)
カラテ 5 体力 7
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 6>7 脚力 3>4/E
ジツ 1 万札 29>0
DKK 0 名声 5>6
攻撃/射撃/機先/電脳 5/ 7/ 3/ 3
回避/精密/側転/発動 7/ 7/ 7/ 4
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
◆ZBRアドレナリン注射器
◆オーガニック・スシ
◆パルスダガー:ダメージ1+電磁1
◇ジツやスキル
☆ムテキ・アティチュードLV1
☆◉瞬時の解除
◉◉タツジン:ジュージツ
◉滅多蹴り
◉常人の三倍の脚力:脚力+1、側転難易度-1
◉トライアングル・リープ
◉ランスキック
○生い立ち:スモトリ崩れ→カラテカ崩れ 体力+2、脚力-1
◉知識:スポーツ、水路港湾エリア 記憶
○背景:全能感や野望
能力値合計:16>17
ニンジャスレイヤーを相手どるには実力不足ですが、相手も弱体化していますから生き残る可能性はあります。では、始めます。
◆◆◆
序
ネオサイタマ南東部・ヤマ半島。電子戦争の復興から取り残され、過疎化が進むこの地には、江戸時代さながらの暮らしを続ける迷信深い村落や、俗世の喧噪を離れて技を極めんとする職人たちの伝統的工房が点在する。また内陸のヤマ山地は平安時代から霊場として畏敬され、信仰を集めている。
独特の装束を身に纏い、山道を歩むのは、日本古来の山岳信仰の聖職者「ヤマブシ」たちだ。彼らは霊地を巡礼してそのパワーを体内に取り込み、ニンジャじみた超常のジツを振るう者として畏れられた。実際、彼らの何人かはニンジャであったやも知れぬ。「もうじきだ。急ぐぞ」「ハイ」
二人組のヤマブシは言葉少なに言い交わす。彼らは実際ニンジャであり、ザイバツ・シャドーギルドの残党だ。先を行く者はワイルドハント。後からついてくる者はイエローフィスト。オムラ・インダストリの本社要塞周辺を襲撃した彼らは、ネオサイタマ市街地に身を隠したのち、ここに来ていた。
◆ワイルドハント(種別:ニンジャ)
カラテ 8 体力 8
ニューロン 9 精神力 16
ワザマエ 11 脚力 6/H
ジツ 6 万札 30
攻撃/射撃/機先/電脳 8/11/ 9/ 9
回避/精密/側転/発動 11/11/11/15
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
◆ムチ
◆コマ×4:カラテミサイル触媒4回ぶん
◇ジツやスキル
☆タナカ・ニンジャクラン、ジツLV6
☆カラテミサイルLV3:連射4、マルチターゲット
☆◉カラテミサイル触媒:即応ダイス1を消費し、ジツの精神力コストを1軽減
★ラピッド・カラテミサイル:連射2、マルチターゲット、ダメージ1
手番開始フェイズに精神力1か回避ダイス2を消費し発動(自動成功)
★キネシス迎撃:手番開始フェイズに精神力1を消費し瞬時発動(H)
戦闘終了まで射撃ダメージ軽減1
◉◉グレーター級ソウルの力:ニューロン+ジツ=精神力
★★カラテストーム:精神力3を消費し発動(H)
術者を中心とする5×5マス以内の敵全員へ範囲攻撃
隣接マスには2ダメージ(回避UH)、その外へは1ダメージ(回避H)
判定出目666なら隣接マスの回避難易度UH2、2マス外へは2ダメージ(回避UH)、
3マス外へは1ダメージ(回避H)
カラテバリア使用中なら解除の代わりに精神力コスト-2、発動E
★コマ・ジツ:手番開始フェイズに精神力1を消費し瞬時発動(H)
戦闘終了まで「疾駆」および通常移動時のみ有効な「轢殺2」を得る
術者が弾き飛ばしやダメージありの強制再配置効果を受けると効果終了、再発動なし
◉◉タツジン:ムチ・ドー
●連続攻撃2、連射2、時間差、マルチターゲット
◉忠誠心:ザイバツ
◉憎悪:ソウカイヤ
能力値合計:40
あの日……8月15日のオールド・オーボンの夜、キョート城がネオサイタマ中心市街地に出現した。ワイルドハントはそれを見上げ、ロードのキョジツテンカンホーに触れて感涙した。ついに、ついにニンジャ千年王国が到来するのだと。だが……そうはならなかった。キョート城は姿を消した。
ギルドとの連絡はつかず、キョート共和国の情報も入らなくなった。やむなくワイルドハントらはネオサイタマにとどまり、反ソウカイヤ活動を続行することになった。たもとを分かった者も多かったが、イエローフィストら少数の者はワイルドハントに賛同した。もはやこれは意地だ。メンツだ。
二人が行こうとしている場所は、秘湯で有名なアマミヤ村だ。かつてショーグン・オーヴァーロードの徳川エドワード家康がお忍びで訪れたことがあると言われ、ストレス解消、消化器不良や筋肉痛解消に効果があるという。しかし、オンセン休暇に行くわけではない。秘匿された真実があるのだ。
徳川エドワード家康は、彼の治める江戸……現在のネオサイタマ中心部をニンジャのジツや侵入、様々な災害から守るため、ニンジャや非ニンジャの魔術師を総動員して、巨大な結界を張り巡らした。江戸城を中心とする螺旋状の堀や街道等で、各地の寺社や霊地を蜘蛛の巣のように結びつけたのだ。
江戸のキモン(北東部)に存在したラクシャージ・テンプルは、この結界の要であり、ザイバツのネオサイタマ駐留部隊の拠点だったが、ソウカイヤの総攻撃を受けて潰滅した。しかし、江戸の結界の要はまだ多くある。北の中国地方には、タマチャン・ジャングルに沈んだ家康の霊廟が存在する。
このヤマ山地も、江戸を守る結界の要の一つだ。ギルドは古文書によってこれら霊的結界を解明し、利用する計画を立てていた。派遣した駐留部隊に命じて各地に魔術的なビーコンを仕込み、ロードのキョジツテンカンホー・ジツをネオサイタマにも及ぼさせる計画を。それは今も作動している。
ならばロードはご健在のはずだ。ネオサイタマの上空のキョート城に今もおわし、準備を整えて再臨なさるに違いあるまい。穢土なる魔都を焼き滅ぼし、地上に千年王国を築くために。だがジツの範囲はまだ狭く、ネオサイタマ全体を覆うには至っていない。さらに多くの霊地を繋ぐ必要がある!
温泉街
夕刻。ヤマ山地の温泉街アマミヤ村。2人は旅のヤマブシに扮してここまでやってきた。ニンジャとはいえ山中の長旅、疲労と空腹は抑えきれない。ワイルドハントは宣言した。「今宵はここで宿を取り、食事をしてオンセンに入る。万全の体調でなければ儀式は完遂できまい」「……ハイ」
イエローフィストは頷いた。男女2人ではあるが、ワイルドハントは常に暑苦しく復讐心に燃えており、温泉宿に泊まるからといってそういう仲にはなりそうもない。自分もソウカイヤに対する復讐心はあるが、センパイのアダウチはしたし、個人的に上司とそういう仲になるのは抵抗がある。
とはいえ、位階が下の者が上のために尽くすのはギルドのしきたりだ。イエローフィストは覚悟を決めた。「では、宿を探してまいります」「うむ」彼女は立ち並ぶ温泉宿を訪ね、部屋に2人ぶんの空きがないか訪ねて回る。休日ゆえかどこも満員だが、上司に野宿をさせるわけにはいかない。
……やがて、イエローフィストは『マサムネの庵』なる屋号の旅館で部屋を取ることに成功した。しかし……「その、お隣の部屋の方に『なるべく隣に誰も泊めないように』と頼まれておりまして。どうかお静かに願います」支配人はペコペコとオジギしながらそう告げた。「ハイ、わかりました」
イエローフィストは奥ゆかしくオジギし、ワイルドハントも説明を受けて了解する。静かな風情を好む奥ゆかしい客もいよう。自分たちも騒がしくするつもりはない。ソウカイヤなど敵対組織に見つかれば面倒だ。「ではドーゾ、ごゆっくりおくつろぎを」2人のヤマブシは件の部屋に案内された。
「やれやれ。まあ、奥ゆかしくしていればよい」「ハイ」2人はしめやかに部屋に入ると、荷物を置いて装束を緩めた。イエローフィストはいそいそとチャを淹れ、茶碗に注いでワイルドハントに勧める。「ドーゾ」「うむ」ワイルドハントは奥ゆかしくそれを受け取り、静かに飲み干す。遥かに良い。
イエローフィストも出涸らしのチャを飲み、一息つく。TVもラジオもUNIXもないこの部屋は実際静かで、キョートには及ばぬながらゼンめいた風情がある。まるで岡山県にいるようだ。隣の部屋には確かに別の客の気配があるが、物音を立てる様子もない。なんと奥ゆかしい客であろうか。
しばらくして、夕食が運ばれてきた。山奥の温泉宿らしくイノシシ鍋だ。その他の料理も川魚や山菜、キノコが主である。食事も酒もキョートには及ばないが、ワイルドハントは久しぶりにリラックスした気分を味わった。隣の客を刺激せぬよう、こちらも静かにせねばならぬ緊張感も心地よい。
「……では、行くか」「ハイ」2人は奥ゆかしく言葉を交わし、立ち上がる。いよいよオンセンだ。宿のスタッフに聞けば、入浴施設は宿の裏山の奥にあり、景色を楽しめるものの、少し山道を歩く必要があるという。問題ない。2人はニンジャであり、腹も満ち、疲労もある程度は癒やされているのだ。
廊下に出ると、隣の部屋のフスマが開き、トレンチコートにハンチング帽の男が姿を現した。単独客のようだ。アイサツせねばなるまい。「ドーモ。スミマセン、お騒がせしています」イエローフィストは奥ゆかしく声をかけてオジギした。「……いえ、ドーモ」男は軽く会釈し、去っていった。
【続く】
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