忍殺TRPGリプレイ【リインカーネーション・オブ・ザ・ゴッデス】03
前回のあらすじ:ネオサイタマの中立地帯ニチョームで騒ぎが起きた。ゲイバー『絵馴染』に逃げ込み、店主ザクロに庇護された女ニンジャ・ドミネイターを追ってザイバツニンジャたちが現れたのだ。ザクロと2人の傭兵ニンジャはこれを打倒し、ニンジャ自警団に彼女を加え入れることとなった。
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彼女によれば、ネオカブキチョの路地裏でモータルを殺して掠奪している彼らを発見し、妨害したところ恨まれたのではないかという。噂に聞くニチョームの顔役のところへ逃げ込めばどうにかなるかと思い、ここに転がり込んだのだ。「味方も多かったし、ここで退治した方が後腐れないかなって」
彼女に嘘をついている様子はない。「恩返しに、ここで働かせて下さい。食費程度はなんとか稼ごうと思うんで」「アータ、親は?」「オールド・オーボンの夜、キョート軍の秘密兵器の攻撃だかなんかで死んじゃって。私も死んだけど、なんか起きたらニンジャになってて」「そう……ウーン……」
ネザークイーンは状況判断する。家族も住処も失った野良ニンジャ。ソウカイヤのスカウト部門に連絡して引き取ってもらってもいいが、ニチョーム自警団が人手不足なのも事実だ。防衛のためにソウカイヤの戦力を借りる、というわけにもいかない。反ソウカイヤ勢力から目をつけられるだろう。
「……じゃ、ヨロシク」「ヤッター!アリガトゴザイマス!」ドミネイターは喜び、ネザークイーンと握手した。「お二人もアリガトゴザイマシタ」「どういたしまして」「コンゴトモヨロシク」……かくして、ニチョームのニンジャ自警団には、新たな戦力が加わることとなったのである。
絵馴染
ザクロたちはソウカイヤに連絡してザイバツニンジャたちを引き渡し、交渉して店の修繕費を含めた報奨金を受け取ったのち、片付けや掃除を行うことにした。ネオサイタマの酒場で暴力沙汰は日常茶飯事だが、相手がザイバツニンジャではマッポの手に負えないし、賠償請求のしようもない。
「まあ、あんまりソウカイヤに頼りすぎても中立でなくなっちゃうから、ほどほどにね。ここは実際微妙な政治的バランスで成り立ってるの」ザクロは少しずつニチョーム周辺の状況をレクチャーしていく。キョートとの戦争やオムラ・オナタカミ紛争、それに連携したヤクザ抗争やハイデッカー台頭。
「そもそも、今回みたいにトラブルを外から持ち込むのはご法度よ。ザイバツはソウカイヤの敵だから、大きな抗争になりかねないの」「ハイ」ドミネイターは頷く。凶悪犯罪者やザイバツニンジャであろうと、ニチョーム内で奥ゆかしくしていれば、今回のように外部へ引き渡されることはない。
やがて片付けは一通り終わり、後は業者の到着を待つだけとなった。「オツカレサマ。じゃ、明日はニチョームを巡回がてら案内してあげるから、今日はもう寝なさい」「私、寝床が……」「2階に従業員の寝床があるわ。貸してあげる」「ハイ」「俺らはアパートあるからそっちで寝る。じゃな」
ニチョーム
翌朝。ザクロはドミネイターを連れて周辺の店舗やニチョーム自治会に紹介し、道すがらにニチョームについてのレクチャーを行う。他の2人は別の場所を巡回中だ。「ニンジャでも非ニンジャでもこの街では奥ゆかしく振る舞い、争いや諍いを起こしちゃダメ。違反したらまずは警告して厳重注意」
「ブチのめすのは?」「最後の手段よ。なるべくね。どんなクソ野郎でも、相手が奥ゆかしくしている限り、こっちから手出しはできないわ」「ハイ」「まあ、人間が集まるところに諍いはつきものだし、いちいち取り締まってたらきりがないけどね。アブナイがないと歓楽街としてはしぼんじゃう」
「じゃあ、取り締まりの規準は?」「軽度の犯罪行為なら、こっちが手出しする必要はないの。各地域の住民や自治会が協力して解決し、マッポが適度に取り締まれば済む話。度を超えた非合法ビズで洒落にならない被害が出たり、背後にニンジャがいる場合は、アタシたちの出番ってわけ」「ハイ」
ザクロの立ち上げたニンジャ自警団は、非ニンジャ(モータル)の「ニチョーム自治会」とは別に設立されたものであり、密に連絡を取り合い行動しているが、互いの内情には深入りしない。ニンジャ自警団の主な仕事は、ニチョームの掟をニンジャたちに知らしめ、日々見回りを行うことである。
だがこれは、金銭的な見返りはほとんど得られない、善意のボランティアめいた仕事だ。所属するニンジャたちは収入を得るために他のビズやシノギを持っており、一日中この仕事に専念できるわけではない。昨日のような大捕物も滅多にはなく、報酬を得るために揉め事を起こせば追放される。
「だから、アータもなるべく表のシノギを持っときなさい。酒場のバイトでもいいから。アパートや職場も紹介してあげる」「ハイ」ザクロは甲斐甲斐しく世話を焼く。まるで女神かボディサットヴァ(菩薩)だ。「……じゃ、アタシは絵馴染に戻るから。あの2人と合流して、巡回継続ね」「ハイ!」
3人は合流して昼食を食べ、巡回しながら情報を交換する。「ザイバツニンジャたちがこの辺に潜んでるって噂は聞いてたけど、マジでいたのね。ニチョームの外にいるんなら賞金稼ぎに行きたいところだけど」「相手が何忍いるかもわからん。やめとけ」「アイアイ。『藪からコブラ』よね」
???
……その時。010101010101010101010101010101010101010101
「ザイバツだと」罪罰罪罰罪罰……裏路地の暗がりから、突然大柄な人影が突然現れた。筋骨隆々の肉体に、古代ローマの剣闘士めいた異様な出で立ち。ニチョームには多いコス・プレイ者、ではなさそうだ。あからさまなニンジャアトモスフィアを発している!「話を聞かせてもらおうか……!」
「……ドーモ、ファイアランナーです」「ドゥームキラーです」「ドミネイターです」3人はアイサツした。ニンジャならば、アイサツされれば返さねばならない。古事記にも書かれている。大男は威圧的に応じた。「ドーモ、俺はザイバツ・シャドーギルド所属ニンジャ、グラディエイターです!」
◆グラディエイター(種別:ニンジャ)
カラテ 10 体力 14
ニューロン 8 精神力 10
ワザマエ 10 脚力 5/UH
ジツ 0 万札 20
攻撃/射撃/機先/電脳 10/10/ 8/ 8
回避/精密/側転/発動 12/10/ 9/ -
即応ダイス:3 緊急回避ダイス:3
◇装備や所持品
◆グラディウス&バックラー(カタナ二刀流)
連続攻撃+1、攻撃H、側転難易度+2
◆古代ローマ剣闘士装束一式(伝統的ニンジャ装束一式)
回避+2、緊急回避+3、体力・精神力・即応+1、脚力ダメージ軽減1
◇ジツやスキル
◉◉戦闘系ソウルの力:攻撃・射撃判定直前に精神力1を支払い、攻撃+2か射撃+4
1ターン中に使用可能な精神力は2まで
◉◉タツジン:グラディウス・ドー(二刀流) 二刀流装備時の攻撃難易度N
●ワザ:アキレス・カッター 出目665+時発動 殺伐出目4、回避H
●戦闘スタイル:強化防御構え 連続攻撃上限2、殺伐なし
次の手番開始まで回避難易度-1か、射撃ダメージ軽減1を獲得
●ワザ:捌き突き 迎撃時出目5+で発動、回避難易度+1
相手が回避できない状態・種別ならダメージ2
●戦闘スタイル:連続回転斬撃 ワザマエ判定で発動(H)
隣接する全員にダメージ1(痛打・殺伐なし、エンハンス可)
カラテ値由来の連続攻撃回数分まで繰り出せる
◉ヒサツ・ワザ:マサシズ・パニッシュメント 二刀流装備時のみ
出目65+で迎撃発生時に発動可能、1ターン中1回まで
迎撃ダメージ2、回避UH 命中すると敵を崩れ状態か、攻撃フェイズ強制終了にする
◉特殊近接ステップ:1マス移動して集中可能
◉頑強なる肉体:体力+2
◉忠誠心:ザイバツ 精神力+1
●連続攻撃2、連射2、時間差、マルチターゲット
●不如帰:単独で2体以上の敵と戦う時、1ターンに手番2回
直前の手番と全く同じ行動は選べず、同じ標的も選べない
能力値合計:28
3人は後じさりした。見るからに相当のタツジンで、3人がかりでもやや厳しそうな相手だ。絵馴染に連れていくわけにもいかぬ。ここは話術でなんとか宥めて、お引き取り願うしかあるまい。「ええと……いいかしら。ここはニチョームで、『不戦の掟』っていうのがあって」「ニチョーム?」
グラディエイターは首を傾げ、訝しんだ。「はて、俺は罪罰罪罰罪罰罪」彼の声がノイズ混じりになり、輪郭がぼやけ、周囲の壁に異様な網目模様が浮かび上がる。「なんか……ヤバいわ」「ああ」3人は頭痛をこらえる。網目の隙間からは蛍光緑色の01ノイズが漏れ罪罰罪罰ギルドの敵か!殺す!」
ナムサン!グラディエイターの様子がおかしい!正気を失っている!キョジツテンカンホーの影響か、それともその隙間から漏れて降り注ぐオヒガンのエテルの影響か!どのみち3人には計り知れぬこと!「ちいッ……カタギに迷惑かからねェうちに、やるしかねェ!」一触即発アトモスフィア!
戦闘開始
マップ
1ターン目
「イヤーッ!」BLALALAM!ファイアランナーは回転しながらピストルカラテを繰り出す!「イヤーッ!」キキィン!グラディエイターは堅牢な構えで防御し反撃!「イヤーッ!」紙一重回避!「シューシュシュシュ!」「イアイ!」ドミネイターとドゥームキラーが猛攻!BOBOBO!SLASHSH!
「ヌルいわ!イヤーッ!」ガガガガッ!グラディエイターは全て捌き切り反撃!BOBOBO!SLASH!「ンアーッ!」ドミネイターに命中!恐るべきタツジン!これが古代ローマ帝国で畏れられたグラディウスとバックラーによる攻防一体のカラテ「グラディウス・ドー」だ!「クソ、強い……!」
ドミネイターは傷口を筋肉の収縮で止血し、舌打ちする。昨夜のサンシタどもとは格が違う強者だ。悔しいが、ここはネザークイーンにIRCで連絡を罪罰罪罰罪罰「これは!?」ファイアランナーは周囲を見回す。壁、地面、上空が罪罰の網に覆われていく!「IRCが通じねェぞ……磁気嵐か!?」
IRC端末の画面に「罪罰」の文字。何者かがこの空間を外界から遮断している!「罪罰罪罰助けなど来ぬ!ここは我らの殺合場よ!」ナムアミダブツ!もはやグラディエイターを倒すしか脱出方法はないというのか!?否、倒しても……戻れるのか!?だが、こうなればやるしかない!
戦闘継続
【続く】
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