忍殺TRPGリプレイ【ウィン・ユア・ドリームス】03
前回のあらすじ:泣く子も叫ぶ正義の暴力集団、NSPD49課。そこに所属するニンジャデッカーたちが今回捜査するのは、数週間前からアジサイ・ストリートで起きている連続殺人事件だ。彼らは入念な調査の末、ついに犯人らしき男を探り当て、潜入捜査を開始した!カラダニキヲツケテネ!
◆
「アイエッ!?」青年サラリマンはドゲザ姿勢から恐る恐る顔をあげた。「あ、あなた方は……!」「静かに。屋上へ行きたいの」アイススリケンは人差し指を唇に当て、片膝をついて尋ねた。青年サラリマンは驚く。「屋上へのエレベーターはあちらですが……い、今は屋上には行けませんよ!」
「それは、なぜ?」「な、なぜって……カイカ社の本部長チギノ=サンが、昼休みにゴルフしてるからですよ。うちの営業のハズマ=サンがセッタイしていて、誰も近づけるなって……毎日」「そう。じゃ、どこから行ける?」アイススリケンは冷たい指で青年の顎をつまんだ。「アイエッ……それは」
青年は震える指で、左手奥の方向を指さした。「あっちに確か、屋上施設のメンテナンスルームが……」「ありがと」「ムン」アイススリケンが指を離すと、青年はNRSで昏倒した。……周囲に監視カメラのたぐいはない。「では、あっちを調べましょう」「お、おう」「よし、行くぞ!」
屋上
同時刻、アジサイ・チョット・ビル、屋上。重金属酸性雨が降りしきる枯山水じみたティーグラウンド!
「ンーッ!ンンーッ!」ティーショットの位置にあるのは、猿轡を噛まされた青年の首。生きたまま砂に体を埋められ、首だけが地上に出されているのだ。「残念だなァ、ハズマ君。君は僕の好みの男だと思ったのだが!」彼を見下ろすのは、顔にメンポを装着したチギノ!彼はニンジャなのだ!
◆チギノ/スパロードライヴ(種別:ニンジャ)
カラテ 6 体力 7
ニューロン 5 精神力 5
ワザマエ 6 脚力 4/E
ジツ 0 万札 20
攻撃/射撃/機先/電脳 7/ 7/ 6/ 6
回避/精密/側転/発動 6/ 6/ 6/ 0
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
◆ゴルフクラブ(カタナ):二刀流も可
◆ステルス・グレネード:通常移動でも敵のいるマスを通過可能
◇ジツやスキル
◉常人の三倍の脚力
◉ウィークポイント射撃
◉スリケン乱射
◉ニンジャソウルの闇
◉邪悪なサディスト
能力値合計:17
◆クローンヤクザ(Y-13型)×6(種別:モータル/バイオ生物/クローンヤクザ)
カラテ 3 体力 2
ニューロン 2 精神力 2
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ - 万札 1
攻撃/射撃/機先/電脳 3/ 3/ 2/ 2
◇装備や特記事項
●チャカガン
能力値合計:8
ティーグラウンドにはチギノとハズマに加え、全く同じ顔と髪型、服装をした屈強なヤクザめいた男たちが整然と並んでいる。チギノが率いている兵隊だ。彼らがチギノの命令でハズマを取り押さえ、土中に埋め、このような状況を作り出したのだ。「ンーッ!ンンーッ!」ハズマは絶望の涙を流す!
「この下にあるのはマケグミの居住区だ。君や私がゴルフボールを命中させて殺したところで、経済的には何の問題もない!それどころか、我々をスカッと爽快な気分にさせ、ビジネスの生産性を向上させる!素晴らしい娯楽なんだよ!」「ンーッ!ンンーッ!」「それを断るなら、こうだ!ハハハ!」
ナムアミダブツ!なんたる非道!重金属酸性雨が強く降り始める中、チギノは足をしっかり開いて立ち、ゴルフクラブを振り上げた。そのスイング軌道上には……ハズマの頭部がある!「さあて、君の飛距離はどれぐらい行くかな?ハッハハハハ!」「ンーッ!」おおブッダよ、寝ているのですか!
……その時!
「「「Wasshoi!」」」枯山水バンカーの砂が爆発!砂をまき散らして三つの影が飛び出した!「なにッ!?」
戦闘開始
マップ
1ターン目
チギノ本部長は反射的にゴルフクラブで防御姿勢を取る!「「「イヤーッ!」」」「イヤーッ!」見切って躱し、迎撃!だがゴルフクラブは空を切る!襲撃者の一人は屋上の柵を蹴ってトライアングルリープし、チギノに空中回し蹴りを叩き込む!SMAASH!「グワ、アバーッ!?」サツバツ!
頭部に痛烈な打撃を食らい、打ち倒されるチギノ!アンブッシュをきめた三人は着地し、レッドフィストがジゴクめいて代表アイサツした。「ドーモ、チギノ=サン。我々はNSPD49課です」「よ、49課だと!?なぜ貴様らがここに!?」「連続殺人事件の重要参考人として同行願います!」
なぜ彼らがここに?答えはメンテナンスルームだ。そこには清掃やボール回収のため、池やバンカーの底に通じるハッチがあった。彼らはドトン・ジツの要領でバンカーの底に潜り込み、忍び込むことに成功したのだ。チギノは血を拭い、アイサツを返した。「ドーモ、チギノです。証拠は!?」
レッドフィストはビニール袋を懐から取り出す。中にあるのは血の付いたゴルフボール!「なッ……!?」「これが証拠品だ。アジサイ・ストリートでの謎めいた殺人事件は全て、貴方がここでゴルフをしている時間帯に発生している」「位置や角度、統計データ……まだまだあるぜ、証拠はよ!」
「で、そこに埋められているサラリマンはなんですか?まさか彼の頭部をゴルフボール代わりにしようとでも?」「くっ……!」チギノはうろたえた。相手は泣く子も泣き叫ぶ49課、説得や賄賂は通じそうにない。しかもニンジャが三人!非ニンジャのクズなら殺して口封じできたが、圧倒的不利だ!
「い、イヤーッ!」チギノは連続側転を繰り出し、敵の頭上を飛び越えて包囲を離脱!彼の脚力は常人の三倍である!彼は瞬時に屋上非常ボックスまで到達し、中にしまわれていたものを探った。それは折り畳み式の強化カーボンフレームと黒い布だった。彼は一瞬のうちにこれを背負い、紐を引く!
バサム!折り畳み傘が開くにも似て、それは一瞬にして大型の背負い式凧(カイト)となった。黒字に白抜きで、カイカ・ソリューションの社章。緊急事態に備えてビル屋上に設置してあった、非常脱出用カイトである!「奴らを射殺しろ!」「「「ハイヨロコンデー!」」」クローンヤクザが動く!
「「「ザッケンナコラー!」」」「「「スッゾコラー!」」」BLALALAM!BLALALAM!一糸乱れぬ一斉射撃!狙うはやや体勢を崩しているアイススリケンだ!「い、イヤーッ!」紙一重でブリッジ回避!ワザマエ!「わ、私をかばえ!」「逃がすかよォ、サンシタが!」GRRRR……頭上で雷鳴が轟く!
「アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」ハズマはニンジャ同士のイクサを目撃し、NRSを起こして泣き叫ぶ!もし彼を放置して敵を追えばクローンヤクザやチギノに殺されるだろう。誰かがかばわねばならない!
2ターン目
「TAKE THIS!」BLAMBLAM!ブラックマシーンはハズマをかばいつつLAN直結型ハンドガンを連射!「アバーッ!」クローンヤクザの一人がチギノをかばい即死!「「イヤーッ!」」アイススリケンとレッドフィストはハズマを彼に任せ、チギノへトビゲリを放つ!「う、ウオーッ!」必死で躱す!
「い、イヤーッ!」チギノはそのまま身を翻し、ビルの屋上から飛び降りる!背中のカイトが上昇気流をはらみ、彼をたちまちのうちに空高くへと舞い上がらせた。チギノのニンジャネームは「スパロードライヴ」……その名にふさわしく、彼はカイトを巧みに操り、バイオスズメめいて飛翔する!
「ハッハハハハハハ!スワローにスワンの思いはわかるまい!」チギノ……スパロードライヴは見事なコトワザを引用し、遥か上空から嘲笑った。その距離すでに百メートル超!「こんな気安いレクリエーションを理由に、なぜ殺されねばならん!後日ニンジャアサシンを雇い入れて対処してやる!」
「オノレ!」レッドフィストは空を見上げて拳を握る。常人の三倍を超えるニンジャ脚力でも、あの高さに到達することは困難だ。飛びつけたとしても空中で暴れ、道連れにされかねない。デッカーガンやスリケンなら撃ち落とせるかも知れないが……「「「ザッケンナコラー!」」」ヤクザが動く!
5つの銃口が狙うのは、ハズマ!チギノの命令により口封じを行う気だ!BLALALALALAM!「イヤーッ!」ガキキキキキン!ブラックマシーンはテッコを振るって銃弾を叩き落とす!「クソッタレ!このままじゃ……!」
その時、三人は泣き叫ぶハズマの傍らのティーを見た。レッドフィストの懐には、証拠品である血まみれのゴルフボールがある。そして非常用ボックスの傍らにはチギノが投げ捨てていったゴルフクラブが。……ニンジャ第六感の閃きが、三人を電撃的に衝き動かす!一撃必殺アトモスフィア!
3ターン目
「TAKE THIS!」「kill-9 U!」BLAMBLAM!ZZTZZT!「「アバーッ!」」クローンヤクザ二人が即死!「イヤーッ!」レッドフィストはゴルフクラブを拾い上げて側転、ハズマの隣のティーに血まみれのゴルフボールを乗せる!「え」ハズマは死を覚悟した。だが、ゴルフクラブの軌道は先程とは違う。
レッドフィストは空中でゴルフクラブ……最も飛距離の出る一番ウッド、ドライバーと呼ばれるそれを振りかぶった。常人の三倍の脚力で屋上の端から端まで跳躍し、柵を蹴り、三角跳びを行って勢いをつけた。縄めいた筋肉が装束越しに浮き上がり、人智を超えた極めて凄まじい膂力が込められた。
「イイイ……イイイイヤアアーーーーッ!」SMAAAASH!レッドフィストはゴルフクラブを……振り抜いた!弾丸めいて上空へ射出される血まみれの白球!空気との摩擦によって、球は赤黒の炎を纏い飛んで行く!そしてその飛行軌道上には……スパロードライヴのカイトがある!「なッ……!?」
スパロードライヴは驚きに目を見張った。そのコンマ1秒後、飛来したゴルフボールはカイトを貫通し、そのままスパロードライヴのこめかみを貫通した。「アバーッ!」血と脳漿をまき散らし、カイトから切り離されて、スパロードライヴはキリモミ回転しながらビルの谷間に落ちていった。
落下した先の地面には、何らかの工事によって蓋が開けられたままのマンホールが口を開けていた。スパロードライヴは穴の中に落下し……「サヨナラ!」爆発四散した。インガオホー!
戦闘終了
エピローグ
「ア……ア……」ハズマは砂の中で震えながら、ジゴクめいた筋骨隆々のニンジャを見つめる事しかできなかった。「「「ザッケンナコラー!」」」BLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」ガガガ……銃弾が飛び交い、屋上のヤクザたちはみるみる数を減らしていく。三人のニンジャたちは傷ひとつない。
「終わったぜ。ご苦労さん」メガネをかけたニンジャが声をかけてきた。「真犯人は爆発しちまったが、まあ事件解決だ。アンタや会社はどうなるのかね。俺たちには関係ねェか」「アイエエエ……」ハズマは震え上がった。わけがわからない。チギノ本部長がニンジャで、ニンジャ、ニンジャ……。
ニンジャ・リアリティ・ショック反応によってドーパミンが過剰分泌され、ハズマは朦朧とした意識状態に陥る。彼は砂の中から首だけを出した状態のまま、無意識の闇へ落ちていった。
【ウィン・ユア・ドリームス】終わり
リザルトな
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