【聖杯戦争候補作】The Gong of Knockout
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無数の光の粒子が、光速で飛び交い、衝突し、影響し合い、生成と消滅を繰り返している。それらはいくつか大きな渦を巻き、遥か彼方へ流れている。夢か、幻か。それとも、あの世というやつか。俺は酒に酔って……寝ているはずだ。これは、夢に過ぎまい。
『ああ、夢だと思えばいい。実際、夢だ』
そうか。いや、誰だ。目の前にぼんやりと、大柄な影が現れる。
『どうも、初めまして。おいらは聖杯戦争のサーヴァントだ。ライダー(騎兵)ってことになってる。そういや、そうかな』
聖杯、戦争。ああ、なんだか、そんな与太話を聞いたな。夢物語に。
人影は、次第に鮮明になる。力士のように大きくて、横幅がある。だが、相撲取りじゃない。柔道家とも違う。この雰囲気は……空手家か。
『そう。あんたもそうだな。おいらはあんたの、遠い後輩にあたるのかな。お会いできて光栄だぜ』
ライダー、と名乗ったそいつは、仏教の僧衣と袈裟をまとっていやがる。坊主か。後光を放っているってことは、仏様か、お地蔵様か。
『昔、ちょいと空手を嗜んだが、ゆえあって坊主になった。即身物には成ったが、まだブッダには成ってねえ。菩薩道を歩む者よ。さて、起きな』
俺は目を覚まし、立ち上がり、そいつに挨拶する。礼儀は大事だ。
「どうも、愚地独歩です……」
そいつは大きな手のひらを合わせて、挨拶を返した。
『どうも。おいらの真名(なまえ)は、呑破(ドンファー)だ。これもカラテネームってやつで、本名は捨てちまったが。まあ、そう呼んでくれや』
◇
呑破は、見るからに生身の人間ではない。肉体は金属で、鼻の上にはカブトムシのような角がある。だが、表情は人間だ。金属製の体はよく使い込まれ、細かな傷があり、相当な鍛錬を積んだことが見て取れる。身のこなしといい、なかなかの空手使いだとわかる。あるいは、自分よりも。
『おいらの体(ボディ)は、サイバネよ。サイボーグってやつだな。脳ミソは生身だったかチップだったか……まあ、同じ物質だ。大した違いはねえ』
「仏像が動き出したみてェだな。随分遠くからお越しのようだが、そちらにも空手や仏教はあるのかい?」
『良くも悪くも、大いに繁栄してらあ。ま、それはいい。おいらは因縁あってここに赴いただけだが、まずは、あんたの願いを聞いときてえ』
「願い、ねェ。俺にゃ女房も息子もいるし、社会的には功成り名を遂げて、結構有名人にもなってるが……へへ。強いていやァ、強敵が欲しいな」
『ほう』
「俺の知る中でも、強い奴らはわんさといるさ。けどよ、殺し合いの喧嘩は立場上出来ねェんだ。日本は平和な法治国家だし、女房や子供、弟子たちに迷惑がかからァ。鍛え上げたこの空手を、思う存分、人間をブッ壊すのに使ってみてェ。そういう欲は、止められねェんだ。坊さんに言うのも何だが」
呑破は頷いた。
『そうか。わからなくもねェな。おいらも若い頃はそうだった。バカもやったし、無茶もやった』
「若い頃は、か。俺はそろそろ還暦だぜ」
『おいらは年齢も忘れちまったな。あんまり褒められた願いじゃねェが、幸いここは聖杯戦争、殺し合いの場だ。どうやら願いは叶いそうじゃねェか。つっても、生身で英霊と殴り合いは出来ねェか』
「なーんだ、俺が戦ってみてェのによ……」
ため息をつくと、呑破が胸の前で拳と手のひらをあわせた。
『おいらが現世で空手を振るうと、差し障りがあるな。そんじゃァ、こうしよう。おいらがあんたに取り憑いて、英霊とも戦えるようにしてやらァ。ただ、おいらは坊主だからよ。戦うのは悪ィ奴らだけにしてくれねェかな』
「へへ、いい年こいて、俺が正義のヒーローか。いいぜ、頼まあ」
◇
……そこで、目が覚めた。いつもの布団の上、いつもの時間だ。バカバカしい夢だった。顔を洗って着替えて、朝飯食って、日課をやらねば。洗面所の鏡を見ると、自分の顔に重なって、カブトムシの角が生えたあいつの顔。
『よう、おはよう。今日からあんたは正義のカラテマンだ。よろしくな』
◆
【クラス】
ライダー
【真名】
呑破(ドンファー)@銃夢LastOrder
【パラメーター】
筋力A 耐久A 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具EX
【属性】
中立・善
【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。電磁力を用いて短時間の結界空間を張る。
騎乗:EX
乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。量子的存在確率が不安定であり、接触した存在の体に「乗り移る(憑依する)」事が可能。
【保有スキル】
超電磁空手:EX
超電磁空手の創始者。サイボーグの肉体と電磁力を自在に操り、宇宙海賊を相手に一撃虐殺を成し遂げるほどの神話的な空手の技を振るった。
地蔵力:A
世の理の解答、菩提(智慧)に至らんとする菩薩が纏う守護の力。対粛清防御と呼ばれる“世界を守る証”。物理攻撃、概念攻撃、次元間攻撃等をある程度削減し、精神干渉を無効化する。神ではないため「神性」を持たない。一種の六神通を持ち、ある程度は未来を予測することも可能である。
物顔三撫:A
敵対サーヴァントが精神汚染スキルを保有していない場合、相手の戦意をある程度抑制し、話し合いに持ち込むことができる。聖杯戦争においては、一時的な同盟を組む際に有利な判定を得る。平和主義で争いを好まないが、いざとなれば容赦はしない。南無阿弥陀物。
【宝具】
『色即是空変転機(D-リッパー)』
ランク:EX 種別:対時空宝具 レンジ:? 最大捕捉:?
彼の体内に仕込まれた謎の装置。天才科学者Dr.メスフィールドによって万物理論のひとつ「D理論(物理的時空と現象的意識を統一的に記述する)」の証明のために作られたが、周囲の人間の意識に感応して効果を変え、人間をトランス状態にし、時空構造をも破壊する危険性がある。これを組み込まれたために、彼は異なる次元を不安定に行き来する難儀な体質になってしまった。一瞬だけ非実体化して攻撃を無効化することも可能。
『空即是色戮虎拳(タイガー・スレイヤー)』
ランク:EX 種別:対時空宝具 レンジ:? 最大捕捉:?
彼が生涯をかけて極めた極限の空手。敵の攻撃や敵自身を遠く離れた場所(80万6000kmほど)へとワープさせる右掌「是空掌」と、ブラックホールを生み出し全てを破壊する左拳「是色拳」を振るう。発動には莫大な量の魔力ないし電力を必要とし、全力で放てば力を使い果たして消滅する。
【Weapon】
己が鍛え上げた超電磁空手。この次元では相応に弱体化させられている。
【人物背景】
漫画『銃夢LastOrder』に登場する人物。力士めいた体型の大柄なサイボーグで、鼻にはカブトムシの角めいた突起がある。口調は伝法でおおらかな性格。火星においてカラテマスターよりカラテネームと古式唐手「那覇手」を授かり、「戮虎の拳を編み出せ」との遺言を受けたが、当時は虎が絶滅していたため自分なりに考えて答えを出すことにした。やがて「超電磁空手」を創始して育て上げ、「星拳」の異名をとった。相弟子の絶火(ゼッカ)とは実力伯仲、互角のライバルであり、その衝突により大爆発を起こしている。
のち長の座を後継者に委ねて引退、仏門(宇宙仏教唯物宗)に入門。小惑星帯で素手で隕鉄を加工し仏像を作る荒行を重ね、即身物「呂菩地蔵尊」と化した。抜け殻は絶火に破壊されたが死亡したわけではなく、体に搭載されたD-リッパー装置のために別の次元を行き来できる特異体質となり、ワープや実体化・非実体化を自在にできるようになっていたのである。彼はそのまま絶火の体に取り憑き、孫弟子の刀耳(トージ)の体に移ったのち、因縁によって突如物理的な姿を現すことになる。
空手道を自分なりに極めた末に「大慈悲心により争わぬ空手、空(くう)に至る手」と考え、広い視野によって「屠るべきは戦争や人を抑圧する社会システム、人間存在そのものの中にある苦しみや悪しき因果である」との見解を得た(彼なりの理解であり、他者に押し付ける気はない)。また想像力の制御を修業しており、他者の意識の中に入り込んで悪い想念から生じた悪霊を連れ去ることすら可能である。
【サーヴァントとしての願い】
特になし。聖杯を手に入れても、破壊した方が良ければ破壊する。
【方針】
マスターを導き、この次元でなすべきことをなす。
【把握手段】
原作漫画。11巻で登場。彼が実際に登場して空手を振るうのは、物語の終盤、17巻だけである。
◆
【マスター】
愚地独歩@刃牙シリーズ
【Weapon・能力・技能】
鍛え上げた己の空手。素手とはいえど繰り出される攻撃の威力は刃物に等しく、命中した肉体を破壊する。不意打ちや騙し討ち、弱点を突くこと、挑発しての心理戦もお手の物。勝つためなら手段は選ばないが、空手家としての誇りから自らの肉体以外の武器は用いず、万一用いる時もカバンや扇子、衣服など偶然身につけていたものに限る。
ライダーが憑依しているため、その空手は英霊にもダメージを与え得るし、戦闘力も相応に強化されている。ただし疑似サーヴァントほどには融合しておらず、ライダー単独で出て来ようと思えば出て来れるし、マスターに助言を与えたりも可能。
【人物背景】
漫画『グラップラー刃牙』シリーズに登場する人物。CVは麦人/飯塚昭三/菅生孝之/中嶋比呂嗣。スキンヘッドで傷顔、右目を失い眼帯をつけた、厳つい強面の壮年。身長178cm、体重110kg。性格は江戸っ子気質で豪放磊落、お茶目でひょうきんな愛妻家。世界最大の勢力を誇るフルコンタクト空手団体「神心会」総帥。武神、人食いオロチ、虎殺しなど数々の異名を持ち、生きた伝説と称されるが、鍛錬は怠っておらず未だ現役。幼少より生涯かけて愚直に鍛え続け、百戦錬磨の経験は他の追随を容易に許さない。
【ロール】
都内に小さな道場を持つ空手家。妻子はいない。
【マスターとしての願い】
強いやつと闘いたい。聖杯は単なるトロフィーとみなす。当然生きて帰って妻子と再会するつもり。
【方針】
強くて悪いやつに喧嘩をふっかけ、ぶん殴る。
【把握手段】
原作漫画。
【参戦時期】
第三部・範馬刃牙あたり。神心会総帥の座は息子・克己に譲ったが、抑えきれない殺傷本能を発散するため、街を徘徊してわざとトラブルを起こし、喧嘩を買っている。年齢は地下闘技場編時点で55歳なため還暦近い。
◆
ライダーが少ないので探したら、呑破センセイが因縁によってこの次元へお出ましになられた。マスターを探したところ、虎殺しを成し遂げたカラテマンということで独歩ちゃんに白羽の矢が立った。前にガイアを聖杯戦争に呼ぼうとしたし、その因縁もあろう。
呑破センセイは法外に強いが、流石に疑似とはいえ物理世界でそのカラテを存分に振るわれるとヤバいため、それなりに弱体化した上で独歩ちゃんを疑似サーヴァントか憑依ニンジャみたいにしてみた。物理系の菩薩繋がりで普賢真人と出会ったらどうなるだろうか。
【続く】
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