忍殺TRPGリプレイ【タックスマン、ミスター・シーフ】02
前回のあらすじ:ネオサイタマを牛耳る暗黒組織ソウカイ・シンジケートには、外交部門が存在する。今回の彼らの任務は、集金部門で不正を行っている悪徳ニンジャの摘発だ。小さな不正を見逃せば、積もり積もって組織全体の損となる。組織の利益を守るため、戦えソウカイヤ外交部門!
◆
フューネラルは顎を手で擦る。「……で、君たちがヤクザクランに詫びを入れて、それを返却するので?ソウカイヤが、ニンジャが、モータルに?」ブルータルライオンが空気を読み、目を細める。「……それでは、好ましくないかと」「そうとも。我々は支配者で、モータルは被支配者です!」
パンパン、とフューネラルは手をたたく。「モータルは生かさず殺さず。ヤクザやカチグミ、暗黒メガコーポがカタギを搾取するのなら、我々ニンジャは彼らからさらに上前をはね、搾取する存在です。謝罪も返却もしなくてよろしい。ただ、不正を働き組織に害なすニンジャを処罰すればよい!」
「「「ハイヨロコンデー!」」」三人はフューネラルの意向を受け、ただちにツチノコ・ストリートへ向かった。悪徳ニンジャを捕縛してソウカイヤに罪状を報告し、然るべき罰を与えさせるのだ!
ヤクザの事務所
ここはネオサイタマの掃き溜め、ツチノコ・ストリート。その濁流の中に浮かぶ、薄汚いビルディングの13階の一室。ここに零細ヤクザクラン「エレファントヘッド」の事務所がある。伝統主義的な事務所の応接室には、背広を着たグレーターヤクザのカワセマが、のっぴきならぬ表情で座っている。
「ザッケンナコラー!」カワセマはクリスタルデスクを叩く。「このままじゃあ、百年続いたエレファントヘッドは終わりだ!」生き残ったレッサーヤクザたちは沈痛な面持ちでうつむき、すすり泣く。「ソウカイヤめ!血も涙もねェ!ニンジャさえ!ニンジャさえいなけりゃあよォ!チクショウめ!」
その時。「オジャマシマス」「アイエッ!?」カワセマは飛び上がり、ドアを睨んだ。「ドーモ、ソウカイ・シンジケートの者ですが」「アイエッ!お、お早いお着きで!ドーゾ!」三人はドアを開け、応接室にエントリーした。「さ、三人……」「終わりだ……」ヤクザたちはガックリと膝をつく。
「ドーモ。カワセマ=サン」「ドーモ……」カワセマは椅子からまろび出てドゲザした。「た、ただいま手下たちに必死で上納金をかき集めさせております!どうか!お寛ぎ下さい!」どうやら上納金の準備が間に合っていないようだ。三人は上座に腰を下ろした。「ええ、その件ですが……」
……マキーナが冷静に事情を伝えると、カワセマたちは滂沱の涙を流し、深々とドゲザした。「よ、よかった……!これで安心だ!」「助かった!」「こっちもメンツあるから、謝罪や過剰分の返還はしないね。あなたたちがカタギにカネ返さないのと同じ。以後の上納金額が通常に戻るだけね」
「じゅ、充分でございます。アリガトゴザイマス」カワセマは泣きながら頷いた。「タックスマン=サンはこっちで捕まえて処分するね。あなたたちは手出し無用。ニンジャがヤクザにナメられたら困るね」「承知いたしましてございます」ヤクザたちはブッダに対するように、五体投地して平伏する。
「まあ、WIN-WIN関係にしないとお互い損です。経営体力を取り戻し、これからも上納金を適切に納めていただければ、それで結構」ブルータルライオンは微笑んだ。「「「ハイヨロコンデー!」」」「……で、タックスマン=サンはいつ頃ここへ来るの?」「も、もうすぐ来られる予定でして……」
フォーコがドアを振り返る。「来るよ。隠れて」「「了解」」ニンジャ第六感だ。三人はニンジャ野伏力で姿を隠し、ヤクザたちは頷き立ち上がる。「……ドーモ、カワセマ=サン。タックスマンです。万札とトロ粉末は用意しましたか?」ノックもなくドアが開けられ、タックスマンが入ってきた!
◆タックスマン(種別:ニンジャ)
カラテ 4 体力 5
ニューロン 4 精神力 4
ワザマエ 4 脚力 3/E
ジツ 0 万札 12
攻撃/射撃/機先/電脳 5/ 5/ 4/ 4
回避/精密/側転/発動 4/ 4/ 4/ 0
即応ダイス:2 緊急回避ダイス:2
◇装備や所持品
◆ZBRアドレナリン注射器
◇ジツやスキル
◉常人の三倍の脚力
◉滅多打ち
◉ランスキック
◉ニンジャソウルの闇(1)
能力値合計:12
「アッハイ、ドーモ!」カワセマとヤクザたちは深々とオジギする。「このアタッシュケースの中に」「足りませんね。二つ要るはずですよ」タックスマンは無慈悲に告げ、ツカツカと歩み寄る。……その時だ!
戦闘開始
1ターン目
「「「ハイヤーッ!」」」三人のニンジャは物陰から一斉に飛びかかった!「う、うおッ!?イヤーッ!」だがタックスマンはとっさに跳躍回避!ワザマエ!彼の脚力は常人の三倍にも達する!「フン、少しはやりますね。ドーモ、我々はソウカイ・シンジケート。私はブルータルライオンです」
「マキーナオスクラね」「フォーコでいいよ」「ど、ドーモ、タックスマンです。ソウカイヤだと!?私は仕事をしていただけだ!」動揺したタックスマンはクロスカタナ紋のバッジを見せる!「あなたの不正が露見したのですよ。おとなしく投降しなさい。口を利いてあげます」「う……ウオーッ!」
タックスマンは雄叫びをあげ、常人の三倍の脚力で窓へ側転!逃げながらスリケンを投擲!「イヤーッ!」フォーコは跳躍回避!「逃がすか!」
2ターン目
「「「ハイヤーッ!」」」三人は一斉にタックスマンへ飛びかかる!マキーナとフォーコはカンフーのタツジンだ!「う、ウオーッ!」タックスマンは死物狂いで躱し、首筋にZBRアドレナリンを注射!脚力をさらに強化する!「キエーッ!」KRASH!窓をブチ破って逃げながらスリケン投擲!
「イヤーッ!」フォーコはブリッジ回避!「まずいですね。逃がせば敵組織と合流するかも」「追うね!フューネラル=サンにも連絡重点!」「前みたいにクスリを盛ればよかったなぁ」三人は窓から飛び降り後を追う!「す、スゴイ……」カワセマたちは唖然としてニンジャ同士のイクサを見送る。
3ターン目
「「「ハイヤーッ!」」」KRASH!「グワーッ!」タックスマンの背にスリケンが突き刺さり、マキーナのトビゲリが命中する!だがタックスマンは死物狂いで跳躍し、ブルータルライオンへスリケン!「イヤーッ!」「ハイヤーッ!」ブリッジ回避!ワザマエ!「どこへ逃げても無駄ね!」
4ターン目
「イヤーッ!」ブルータルライオンは側転しながらスリケン投擲!「グワーッ!」命中!タックスマンはバランスを崩す!「好機!イイイ……!」マキーナは大きく身を縮め、全身のバネを使って跳躍!「ハイヤァアアーッ!」タックスマンの肩に飛び乗った!「グワーッ!?」「キエーッ!」
そのまま両脚で頭部をホールドし、思い切りバック転!アスファルト道路に頭頂部を叩きつける!SMAASH!「アバーッ!」ナムアミダブツ!これは古代ジュー・ジツの流れをくむカンフー・カラテのヒサツ・ワザ、フランケンシュタイナーだ!「ゴボッ……!」タックスマンは白目をむいて昏倒!
「シューッ……!」マキーナは立ち上がり、呼吸を整えつつザンシンした。油断ならぬ相手であった。「でかしました!」「ヤッター!キンボシ・オオキイ!」ブルータルライオンとフォーコが駆け寄り、標的を捕縛する。
戦闘終了
「アブナイでした。ニチョームやザイバツのアジトに逃げ込まれていたら大変でしたよ」「私たち、まだまだカラテが足りないね」「鍛えましょ」「ともあれ、一件落着です」ブルータルライオンはIRCでフューネラルに連絡する。「モシモシ。タックスマン=サンを無事に捕縛しました」
『ご苦労。ヤクザクランはどうかね』「交渉の結果、謝罪も賠償もしなくてよいとのこと」『ご苦労。では、不正は正された。彼を速やかに連れ帰りなさい』「ハイヨロコンデー!」通信終了。三人は捕縛したタックスマンをカワセマらに示し、改めてソウカイヤに忠誠を誓わせると、アジトへ戻った。
???
……数日後。ソウカイヤでの拷問まじりの取り調べにより、タックスマンは横領した資金の一部を、ザイバツの関連施設に横流ししていたことが明らかになった。ソウカイヤに対する完全な背信行為だ。彼は処罰としてリー先生のラボに送られ、いなくなった。そして問題は、資金の送り先である。
タックスマンからの資金の送り先のひとつは、とある地下秘密クラブだ。幸いニチョームではなかったが、二人のソウカイニンジャ「バイコーン」と「ゼブラ」のアジトだという。つまり彼らも資金横領に関わり、ザイバツと内通している疑いがある。しかしデータによれば、二人はかなりの手練れ。
「どうする?」フォーコが眉根を寄せる。おそらく、彼らがタックスマンを手下にしてカネを集めさせていたのだ。だがこちらはカラテにやや乏しく、三人がかりでもタックスマンにさえ苦戦する有様。となると……「威力部門か顧問にお出ましいただきましょう。我々は暴力が本業ではないので」
「そうするね」三人はIRCで連絡する。『了解しました。ただちに現場に急行します。フォハハハハ!』フューネラルは二つ返事で了承した。『たまには私も戦わないと、腕が鈍ってしまいますのでね!それにザイバツが関わっているとなると、君たちだけでは少々危険だ!』「アッハイ」
『では、君たちは先にそのクラブへ踏み込み、ニンジャたちを誘き出しなさい。逃げ場がなければネズミ袋、イチモ・ダジーンです!』「「「ヨロコンデー!」」」これはサイオー・ホース。背信ニンジャたちを捕らえるのだ!
【続く】
◆