忍殺TRPGリプレイ【ダイ・セット・ダウン】
ドーモ、三宅つのです。これはオケガワ/シルバーフェイス=サンのソロシナリオ「ミッション・フロム・シルバーフェイス その1 オハギ取引現場」を元にしたリプレイ小説です。ネタバレにご注意ください。
ヤクザクランの違法薬物取引現場にカチコミをかける初心者向けシナリオです。そういえばヤクザと薬物に関係のあるニュービー野良ニンジャがいますから、彼女を派遣してみましょう。
◆ミヤギ・ウキフネ/フレイムツルギ(種別:ニンジャ)
カラテ 3 体力 3
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 3 脚力 2/N
ジツ 0 万札 13
DKK 1 名声 1
攻撃/射撃/機先/電脳 5/ 4/ 4/ 5
回避/精密/側転/発動 4/ 3/ 3/ 0
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▶テッコLV1:カラテ判定と回避+1
▷内蔵型火炎放射器:射撃N、連射1、カトンLV1 装備・所持ペナルティなし
使用回数1、即応1を支払ってリチャージ1(シナリオ中1回だけ)
射撃時出目666で2連射(回避N、時間差可)
▶生体LAN端子LV1:ニューロン判定+2、イニシアチブ+1
◆トロ粉末入りのネオン・コケシ
◇ジツやスキル
◉ニンジャソウルの闇:体力および攻撃・射撃・ジツ発動+1
◉ランスキック
○生い立ち:放火魔
◉狂気:放火魔
◉知識:犯罪(記憶)
◉交渉:煽り(記憶)
能力値合計:9
では、始めます。
◆◆◆
序
「アハ……アハハハ!キャーッハハハハハ!」フレイムツルギは大きくのけぞり、産声めいて哄笑した。そのおぞましい声は壁面に跳ね返り、狭い空間に響き渡る。ZZZZTTT……バチン!火花がスパークし、可燃物に燃え移った!「いいぞ!いいぞ!燃えちゃえよォーッ!」フレイムツルギは舞い踊る!
全ては一瞬の、半ば無意識の出来事だった。自分の中に、何かが宿った。それが自分を蘇らせ、作り替えたのだ。彼女は重金属酸性雨の水溜まりを見下ろした。ヤクザの死体から転がり落ちたネオン・コケシがそこにあった。フレイムツルギは屈み、無造作にコケシを拾い上げた。
……その時、水溜まりの鏡面に、己の姿を見た。変貌したもうひとりの自分を。怪物を。前よりも邪悪で、素晴らしい力の持ち主を。この日ミヤギ・ウキフネは死に、フレイムツルギとなって蘇った。急激な力の減衰を感じつつも、彼女は満足げに笑った。力を手に入れた。この世の王にもなれる。
彼女は、ニンジャになったのだ。
……パチ、パチ、パチ。
「ン?」フレイムツルギは、背後から聞こえてきた拍手の音に気がついた。首を捻じ曲げて振り向くと、そこには……妙な男がいた。「ドーモ、私は……そうだな、シルバーフェイスとでも名乗っておくか」
「……ドーモ、シルバーフェイス=サン。フレイムツルギです」彼女は反射的にアイサツを返した。ニンジャはアイサツされれば、返さねばならない。古来の礼儀作法だ。古事記にも書かれている。「誰ですか」「ニンジャさ。君と同じね。一部始終を見させてもらったが、これからどうする」
ダンゴウ
シルバーフェイスはキツネめいた目をゴーグルの奥で細めた。鼻と口元はキツネをかたどったメンポで覆われており、その下の表情はうかがい知れない。「……どう、って」「君が殺したこいつらは、ヤクザなのだろう? メンツを重んじる奴らだ。アダウチのために、君を殺しに来るかも知れない」
フレイムツルギは鼻を鳴らす。「返り討ちにしてやりますよ」「威勢がいいな。だが、敵は組織だ。協力者がいる。私のような」「手を組んで、そいつらと戦おうってわけですか。……まあ、いいでしょう」「グッド!」シルバーフェイスは肩を揺すった。「彼らはイビルドクダミ・ヤクザクランだ」
「さっき名乗ってましたね」「そう。そいつらの事務所にカチコミをかけてもいいが、私は事情通だ。今夜、イビルドクダミのオヤブンが、ある廃倉庫でオハギの取引に来るとの情報を得ている。そこを襲撃しよう!」シルバーフェイスはグイグイと話を進める。「事務所を襲うよりは手勢も少ない」
「わかりましたよ。私を利用しようっていうのは、わかりましたよ。いくらくれますか?」フレイムツルギは邪悪に笑う。「それは君の働き次第だね。取引されるオハギと交換だ。万札15ってところかな」「まあまあですね。では、さっそく行きましょう」「ああ」二人のニンジャは闇に駆け出した。
???
数十分後。沿岸の廃倉庫にたどり着いた二人は、闇に潜んで周囲の様子をうかがう。ニンジャ視力をもってすれば、闇夜といえど真昼に等しい。「そこに警備ヤクザがいるね。どうする」シルバーフェイスがささやく。「カラテで倒してもいいし、闇に紛れて進んでも、壁を飛び越えたっていい」
「カラテしましょう」フレイムツルギは闇から身をもたげる。ニンジャソウル憑依直後の暴走状態は過ぎ去っているが、以前にも増したカラテと暴力衝動が、体の奥底から湧き上がっているのを感じる。「イヤーッ!」SMASH!「アバーッ!?」彼女はテッコを振るい、警備ヤクザの首を刎ねた!
「お見事」シルバーフェイスが目を細め、小さく拍手した。「あなたは戦わないのですか?」「まずは君の行動を尊重しよう。大勢出てきたら援護するよ」「了解です」二人は廃棄されたコンテナ群の隙間を縫って進んでいく。時に忍び、時にヤクザを殺しながら。やがてトリイ・ゲートが見えてきた。
「おっと、あれはトリイ・ギロチンですね」フレイムツルギはニンジャ第六感で察知し、立ち止まる。ハッキングで解除してもいいが面倒だ。二人はトリイを迂回し、ニンジャならではの身体能力で別の道をくぐり抜ける。すると……進行方向に、一人の浮浪者が寝ている。ここは彼のねぐらのようだ。
「邪魔ですね。イヤーッ!」「アバーッ!」フレイムツルギは無慈悲な平手打ちを繰り出し、浮浪者をハエめいて叩き潰した。トマトじみた血液が飛び散り、浮浪者は無残に死んだ。ナムアミダブツ!「ついでに金目のものを回収しますね。活用して経済を回します」「マーベラス。なんたる無慈悲!」
シルバーフェイスはケタケタと笑い、フレイムツルギの悪行を称賛する。こうでなければネオサイタマの闇社会で生きてはいけまい。
???
二人はトリイ・ゲートを迂回し、いよいよ取引現場の近くに到着した。だが……入口の警備ヤクザを殺したことが伝わったのか、ヤクザたちは浮足立ち、ざわめいている。「ドカマテッパダラー!」「テメエのとこのアサシンか!?」「アッコラー!?」「アッコラー!」取引どころではなさそうだ。
「ワドレザナッグラー!」ナムサン!周囲を調べていた警備ヤクザが、潜んでいた二人のニンジャを発見した!警備ヤクザはドス・ダガーを構えてフレイムツルギに突撃!シルバーフェイスは……いつの間にか姿を消している!「ファック!」フレイムツルギはバック転を繰り出して回避!ワザマエ!
「クセモノダー!」「アマ!」「シネッコラー!」興奮したヤクザたちが一斉にチャカガンを抜き、フレイムツルギめがけて銃弾を発射!BLAMBLAM!BLAMBLAM!BLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」フレイムツルギは連続側転回避!ニンジャに銃弾はめったに当たらぬ!「皆殺しにしてやります!」
フレイムツルギは邪悪に笑い、両掌をヤクザの群れに向けた!「キャハハハハハハハ!燃えちゃえよォーッ!」瞬時に掌に穴が開き、爆炎を噴いた!KABOOOM!「「「「「「「アババーッ!」」」」」」」ナムアミダブツ!全員即死!彼女がサイバネ・インプラントした軍用の火炎放射器だ!
「マーベラス!」パチ、パチ、パチ……シルバーフェイスはいつの間にか戻ってきており、コンテナの上から拍手した。「なんたる無慈悲。これでオハギは我々のものだ。……ただ、少し問題があってね」彼はひらりとコンテナから飛び降りた。「オヤブンは、今回取引に来ていない。慎重な男だ」
「まあいいですよ。私はカネがもらえれば。それに、殺しや放火もできましたしね!」フレイムツルギは邪悪に笑いながら、焼け焦げたヤクザたちの頭を踏み潰し、カイシャクしていく。万が一にもニンジャソウルが憑依すれば大変だ。「アハ、アハハハ!トマトを踏むみたいに簡単に潰せますね!」
シルバーフェイスはオハギの入ったアタッシュケースを探し出し、回収した。「これでよし。オハギを換金したら、君に報酬を支払おう。それから、今度こそオヤブンを殺すため、事務所にカチコミをかけよう」「乗りかかった渡し舟です。向こう岸まで行きましょう」「グッド!ハハハハ……」
こうして、ニュービーニンジャ・フレイムツルギは、謎めいたニンジャ・シルバーフェイスとコンビを組むことになった。否……コンビというより、彼はフレイムツルギを手駒として利用し、利益を得ようとしているようだ。おそらく実力も年季も彼の方が上。ならばせいぜい、利用させてもらおう!
【ダイ・セット・ダウン】終わり
リザルトな