忍殺TRPGリプレイ【プア・サム・シュガー・オン・ミー】03
前回のあらすじ:ニチョーム自警団の根城『絵馴染』に、またもトラブルが舞い込んできた。女ニンジャ・ブライカンが入れ込んでいるハイオイラン「オタマ」が、カラテカルト教団「ドクノキバ」に洗脳されたというのだ。しかし相手は複数のニンジャを抱える危険集団。ここは……交渉重点!
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廊下に戻った一行は、さらに左手奥へ進む。キッチンの隣にはバスルームもあるが、そちらに用はない。最奥には「礼拝堂」と書かれた荘厳なドアがあり、奇怪な蛇神像のレリーフがいかめしく周囲を睥睨している。中には複数の気配。『ペットをかわいがってくれたようね。どうぞ、お入りなさい』
ドアの向こうから、蠱惑的な女の声。麝香めいた甘いにおいがひときわ強くなり、ブライカンは鼻の下を伸ばす。「でへ、でへへ……なんてェ美しい声、そして、いいにおいだァ……」「しゃきっとしなさい。アンタが一番の当事者よ」「へえ」「タノモー!オジャマシマス!」突入!
礼拝堂
ギギギィ……礼拝堂のドアが内側から開き、一行を迎え入れる。薄暗く、甘く淀んだ空気の奥には、複数の影が屹立する。一番奥にはノレンがあり、異様なアトモスフィアを放つ偶像が置かれ、マキモノやフルーツなどが供えられている。教団の本尊というわけだ。その前で美女がザゼンしている。
「ようこそ、ニチョーム自警団の皆さん。私はカラテ教団『ドクノキバ』のネオサイタマ支部最高幹部、タクシャカです」
◆タクシャカ(種別:ニンジャ)
カラテ 5 体力 10
ニューロン 10 精神力 17
ワザマエ 8 脚力 4/N
ジツ 6 万札 10
攻撃/射撃/機先/電脳 5/ 8/10/10
回避/精密/側転/発動 11/ 8/ 8/16
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:4
◇装備や所持品
◆ニンジャ存在感のオーラ(全身、標準的な)
緊急回避+4、体力+2、精神力・回避+1、脚力ダメージ軽減1
◇ジツやスキル
☆ドクガ・ニンジャクラン、ジツLV6
☆カナシバリ・ジツLV3
◉魅了
◉痛覚遮断:体力+3、攻撃や射撃による精神力ダメージ軽減1
☆◉ニンジャ存在感のオーラ
☆◉操り人形
◉◉グレーター級ソウルの力
★◉カウンター・イビルアイ
★◉発狂加速
★コブラ・ゲン・ジツ
★★イビルアイ
★★グレーター・マインドブラスト・ジツ
●連射2、時間差、マルチターゲット
能力値合計:35
続いて、影たちが名乗った。
「シャドウティアーです」「ナーガストラです」「ブレードルークです」
「ドーモ、ニチョーム自警団代表、ネザークイーンです」堂々とアイサツを返す。代表アイサツではあるが、相手方が全員名乗った以上、こちらも名乗るのが礼儀ではあろう。「ファイアランナーです」「ドゥームキラーです」「ドミネイターです」「ドーモ、ブライカンと申しやす。お見知りおきを」
「おおよそ事情はわかっているけど、一応聞きましょうか?」タクシャカはフランクに訊ねる。いずれ劣らぬタツジン揃いだが、この場で乱戦となればニチョーム側が若干不利か。数では優勢だが、ここはドクノキバの腹の中、フーリンカザンもある。一行は促されて腰を下ろし、深々とオジギした。
交渉開始
「ええ。ハイオイランのオタマ=サンが店に出てこなくなっちゃったから、店の主人に頼まれて連れ戻しに来たのよ。タダとは言わないわ」ザクロはにこやかに告げ、オミヤゲを差し出す。合法オハギ詰め合わせの箱の下には、店の主人が用意したトロ粉末などが隠してある。これも交渉だ。
「そう。……隣の部屋のアナコンダは?」「『助けて』って声が聞こえたから、思わず体が動いて飛び込んじゃって。そしたら、あの子が襲ってきて、身を守ったわけ。安心して、殺しちゃいないわ。ごめんなさいね」ザクロはペコペコとオジギする。「檻の中のヤクザたちは?」「逃げちゃったわ」
ザクロは堂々と告げる。嘘も時には必要だが、真実と正論はやはり強い。「……そのオハギは、さっきの件の慰謝料としていただくとして……足りないわねェ」タクシャカは妖艶に微笑んだ。「それに、それだけじゃあないわよね。……私たちに、ニチョームから出ていって欲しいんでしょう?」
「……できればね。アンタたちがソウカイヤを敵に回したことは知ってるもの」ザクロは低い声で告げた。「政治的なしがらみもあるし、今すぐに通報はできないけど……あまり非道なことをされると、こっちもかばいきれないの。なるべく奥ゆかしくしてもらえると助かるわ」「その頼みの対価は?」
「政治的庇護よ。ニチョームに匿って、ソウカイヤに通報しないでおいてあげる」「足りないわねェ」タクシャカは鼻で笑う。「我らが神に敬意を表しなさい。そして忠誠を誓い、上納金を」「それはダメよ。中立の掟に反するから」「人の定めた掟に、神が、ニンジャが従えっていうの?」「そうよ」
「アハハハ!」タクシャカは嘲笑った。「話にならないわねェ!」「交渉決裂、には早いわよ。囲んで殴ろうっていうなら抵抗するし、戻らなかったらソウカイヤに通報しろって自治会にも伝えてあるわ」「じゃあ、こっちがザイバツやオナタカミを呼び込むと言えば?」ナムサン!全面戦争か!
……その時!
???
スッ、とドミネイターが立ち上がった。「ちょっと、座りなさい!」ザクロはたしなめるが、ドミネイターは聞かず、手のひらをノレンの奥の神像へ向けた。「何?マッタってこと?」タクシャカは訝しんだ。『そっちのボスと話がしたいの。いいかしら』ドミネイターは異様な声をあげ0101010101
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ドミネイターの主観時間が泥めいて鈍化し、周囲が闇に包まれる。蛍光緑色の格子模様と、蛍光緑色の01が飛び交う。ここは現実世界ではない。電子ネットワークとオヒガンの狭間に浮かぶ領域……「IRCコトダマ空間」だ。その場に立つのはドミネイターと、異様な姿の鉄の蛇神像のみ。『GRRRR!』
蛇神像はドミネイターを見据え、唸り声をあげた。『貴様!我が神聖なる領域に踏み込んで来るとは!』『ドーモ、改めまして。ドミネイターです』先にアイサツを繰り出す。ニンジャであれば、アイサツされれば返さねばならない。蛇神像はアイサツした。『ドーモ、アイアンコブラです!』
ズオオオオ……! アイアンコブラの恐るべきカラテ・アトモスフィアが周囲を圧する。彼は神代に眠りについた強大なリアルニンジャだ。傷ついた本体をタイのアユタヤ大密林の地下遺跡に横たえ、レリックLANケーブルをその身に纏い、精神を鉄の神像に接続させて教団に指令を下している。
彼は物理肉体にLAN端子孔を持たず、ジツによって超自然的IRC通信を行っているのだ。同様のジツはファイアランナーも用いているが、アーチ級ニンジャソウル憑依者であるドミネイターの方が先に気づいた。とはいえ彼女のジツはまだファイアランナーに劣り、アイアンコブラにはなおさらだ。
『小娘めが!自我を洗脳され、我がしもべとなるがいい!』アイアンコブラはビカビカと両目を輝かせた。『マッタ!』ドミネイターは対話を望んだ。『このままだと、ニチョームにソウカイヤやザイバツ、オナタカミの軍勢がなだれ込むわ。あなたの教団も滅ぼされてしまう』『そんなことはさせぬ』
アイアンコブラは憤った。『我が使徒たちは最強。我が教団は世界を征服する』『最強なら、なんでソウカイヤに負けたのかしらね?』『貴様ァァ!!』アイアンコブラは激怒!アブナイ!『我がタクシャカは、卑劣にも沐浴中に3人のニンジャに襲われたのだ。1対1ならば……!』
ドミネイターは笑って腕組みした。シツレイ!『そうかしら?他の3人はともかくタクシャカ=サンって、見たところジツは強そうだけど、カラテはさほどでもなさそうね。たぶん、アタシでもジツ抜きならイケるかも……』『我が使徒を侮るか!』アイアンコブラの周囲に稲妻が閃き、雷鳴が轟く!
『ならば証明せよ!貴様のカラテが、我がタクシャカに勝ると!ドージョー破りとして、純粋なカラテで、タクシャカと一騎打ちで戦うのだ!』
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「「「……ンアーッ!?」」」現実世界。ドミネイター、タクシャカ、ついでにファイアランナーは、アイアンコブラの憤怒のアトモスフィアを浴びて悶絶した!「え、ちょ、マ!?私が!?一騎打ち!?」タクシャカはアイアンコブラからの指令を受けて狼狽した。「な、なに!?」ザクロも混乱!
「シューッ……あっちのボスと話をつけたわ」ドミネイターは目から血涙を流しつつ、タフに笑った。『然り!』ノレンの奥の神像が声を発した。教団のニンジャたちは一斉に神像に向き直りドゲザし、ニチョーム自警団のニンジャたちも深々とオジギして敬意を表する。お互いに礼儀は大事だ。
『我はアイアンコブラ。この教団の総帥である。先ほど我はドミネイター=サンからのドージョー破りの申し出を受けた。我が使徒タクシャカが、カラテのみで一騎打ちに応じるとな!古来の掟にのっとり、敗者は勝者に従うべし!』ゴウランガ!「私に何の相談もなく、そんな」『ダマラッシェー!』
ナーガストラは納得した。「我らが神の仰せであるからには、従わねばなるまい。勝てばよいのだ」「ちょっと!?」「ヒヒヒ!アンタ、ジツに頼り切りでカラテはいまいちだからなァ!」ブレードルークが身を起こし、肩を揺すって笑う。「……ご武運を祈ります」シャドウティアーも頷いた。
タクシャカは余裕を失い青ざめた。だが……使い魔であるカラテアナコンダの感覚を通じて、彼らの実力の片鱗は見せてもらった。ドミネイターは、ネザークイーンやブライカンよりは、カラテは弱い。ボックス・カラテはあるが反応速度はさほどでもなく、サイバネや武器で武装してもいない。
つまり、比較的与し易い相手ではある。ならば、やるしかあるまい。ここはカラテカルト教団の拠点たるドージョーだ。それを預かる使徒たる者が、ドージョー破りを挑まれて受けぬわけにはいかぬ!何より神の命令だ!「わかったわよ!やってやる!」タクシャカは覚悟を決めた!「グッド!」
試合成立
【続く】
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