【つの版】忍殺TRPGリプレイ【オブザーバー・エフェクト】#3
(前回のあらすじ:カネモチ・ディストリクトに画廊を構える、トロ粉末の闇仲介業者ウタカワのもとを訪れたチーム・ヒップの三忍。穏便に事が済むと思われたが、彼は突如苦しみ出し、煙と共に姿を消す!ウタカワはニンジャだったのだ!三忍は奥のアトリエへ彼を追い詰め、フスマを開けた!)
「バカな……行き止まりとは……!」三忍が足を踏み入れたのは、タタミ敷きの四角い小部屋であった。それはシュギ・ジキと呼ばれるパターンで、十二枚のタタミから構成されている。四方は壁であり、それぞれには傘、パンダ、トクリ、ヒツジの見事なウキヨエが描かれていた。
#2 終了時
◆ハウスバーナー (種別:ニンジャ) PL:つの
カラテ 6 体力 6
ニューロン 4 精神力 4→3
ワザマエ 5 脚力 3
ジツ 1 万札 8
DKK 0 名声 0
◇装備や特記事項
◆ジツ:カトン・ジツ
◆ZBRアドレナリン注射器
◆トロ粉末
◆インパーミアブル (種別:ニンジャ) PL:つの
カラテ 4 体力 4
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 5 脚力 3
ジツ 0 万札 2
DKK 0 名声 0
◇装備や特記事項
◆ジツ:なし
◆家族の写真(レリック)
◆サイバネアイ:【ワザマエ】判定時にダイス+2個
◆テッコ:【カラテ】判定時にダイス+1個、回避ダイス+1個
◆トロ粉末
◆ポイズンバタフライ (種別:ニンジャ) PL:つの
カラテ 5 体力 5+1
ニューロン 6 精神力 6→5(ザンギョウによる)
ワザマエ 6 脚力 3
ジツ 2 万札 10
DKK 0 名声 0
◇装備や特記事項
◆ジツ:カナシバリ・ジツ
◆ウイルス入りフロッピー:ハッキングの難易度-1
◆タクティカルニンジャスーツ:【体力】+1
◆ブラッドカタナ(置いてきた)
◆トロ粉末
◇効果蓄積鍛錬(カラテ):次のカラテ鍛錬での必要出目-1
トラップルーム
「なんだこりゃ……アトリエなのか?」「違うわよね、どう見ても」三忍はつばを飲む。室内にウタカワはいない。フスマは背後の一つだけ。ならばどこかに秘密の扉があるに相違なし。「聞いたことがある。シュギ・ジキというトラップルームの存在を……」「知っているのか、IP=サン」
脂汗。このまま逃げられれば、このミッションは……。「ああ。ニンジャ・パルプ小説で読んだことがある。古代のニンジャが使用したという恐るべき罠だ。まさか実在したとは……」「出処はいい。対策を言えや」「この壁の裏側に狭い通路があり、やつはそこに潜んで移動できる……」
「そして突如ドンデン・ガエシで壁から現れ、奇襲するという寸法だ」「じゃあ、三方向を見張ってればいいな」「いや、そんなお遊びに付き合ってどうすんのよ!そこの壁をぶっ壊して探すわよ!逃げられちゃうわ!」PBが壁へ向かってカラテを構える!その時だ!《イヤーッ!》
PBめがけて虹色の奇怪なスリケンが飛来!アンブッシュだ!
このスリケン攻撃は回避ダイスを1つ減らして回避せねばならない。つまり難易度HARD、目標値5だ。PBは6D6で[1,4,1,3,4,3]=失敗! 体力-1(残り5)。そして精神力も-1(残り4)!
PBに命中!「グワーッ!?」血が流れ、頭がグラつく!「どこにいる!?」《ハハハハ……!》しゅるしゅると白煙が空中に集まり、ニンジャが出現!白い装束、エーレンシュタイン的意匠のフルメンポ。その中は嘲笑の表情に違いあるまい!《ハハハハ……!ドーモ、コルネリウスです》
声も体格もウタカワのものだが、アトモスフィアが違う。モータルとニンジャの多重人格というやつか。モータル側のウタカワは取引に応じたが、ニンジャ・コルネリウスが拒んだのだ。PBはそう推察した。しかもこのニンジャは狂っている。でなくば、取引を蹴る合理的な理由はないはず。
「ドーモ、ポイズンバタフライです」「インパーミアブルです」「ハウスバーナーです」双方アイサツを交わす。《どうだね諸君。種明かしをしよう、私はブンシン・ジツの使い手だ。先程応接室にいたのも、今ここにいるのもブンシンだ。本体は悠々と逃げ出しているさ。残念だったな!》
「ブンシン・ジツ……!?カートゥーンのニンポかよ」「いや、実在するジツよ。なんかで読んだことはある」《そのとおり!そして!》コルネリウスが両腕を広げるや、煙が漂い、凝縮し、二人のコルネリウスが同時に出現!《君たちはここでなぶり殺す!ハハハハハ!》恐るべき狂笑!
◆コルネリウス (種別:ニンジャ)
カラテ ? 体力 ?
ニューロン 8 精神力 8→6
ワザマエ 8 脚力 4
ジツ ? 万札 ?
◆装備や特記事項
スキル:ブンシン・ジツ、マヨイ・スリケン、マヨイ・カラテ
◇ブンシン・ジツ
移動開始前に使用可能。精神力を消費した数だけ、半実体の分身を出現させる。
分身は攻撃を受けると霧散するが、何度でも再生する。
◇マヨイ・スリケン
謎めいた虹色のスリケン。攻撃の回避難易度+1。命中すると体力と精神力にダメージ1。
◇マヨイ・カラテ
謎めいたカラテ。攻撃の回避難易度+1。命中すると体力と精神力にダメージ1。
分身全員と共に攻撃する時、相手が回避しても一発だけ必ず命中する。サツバツ!は出ない。
戦闘開始、1ターン目
《行くぞ!》三人のコルネリウスがカラテを構えIPに向かう!ハヤイ!しかしその構えはやや覚束ない。ジツが強力なぶん、カラテは弱いのだろうか?《イヤーッ!》「俺のテクノカラテで迎撃してやる!」IPはサイバネアイを光らせ、テッコを構える!「貴様の動きが見える!見えるぞ!」
まとめて回避。難易度はHARD。IPはテッコで回避ダイスが+1され、7D6で[3,5,1,1,2,6,1]=成功。しかし!
「グワーッ!?」思いもよらぬ方向から、IPにカラテが一発命中!《ハハ、どうだね》「バカな……俺のサイバネアイで見切ったはず」頭がグラつく!《サイバネ?そのガラス玉がかね?その右腕も義手ではないか、ブザマなものだ。マケグミはそんなものに頼りたがる》三人のコルネリウスが侮蔑!
IPの体力-1(残り3)。精神力も-1(残り5)!
「あいつのカラテやスリケンは危険よ。避けにくいし、ニューロンにもダメージがあるみたい。毒か、ジツか……」PBが警告する。「面倒だな」「とにかくまずは、この壁をブチ破るわ!」「ああ!」IPとPBが動き、向かって左の壁へカラテ!「「イヤーッ!」」
難易度HARD。PBは5D6で[2,5,4,5,5]=成功、IPはテッコでカラテ判定ダイスが+1され、5D6で[6,1,5,2,3]=成功。しかし!
だが……「あ?」「れ?」二人のカラテは空を切る!あらぬ方向への攻撃!《イディオットどもめ、どこを狙っている?こんなところで油を売っていていいのかね?私の本体はとっくにこのビルを脱出している頃だろうな。無能な君たちのお蔭でね……》IPとPBは歯ぎしりする。無敵か。弱点はどこだ。
「そうかい。そんならよぉー」HBが進み出る。「てめえらを全員ぶっ飛ばしゃあすむよなァッ!」IPとPBはしゃがむ!「サイコ野郎!このクソ部屋ごと燃えちまえ!カトン・ジツ!イヤーッ!」
5D6で[4,5,5,3,1]=成功 精神力-1(残り2)
KBAM!火炎が周囲を焼き払う!だが……《ハハ……無駄、無駄、無駄だ》三人のコルネリウスは霧散し再凝縮!壁やタタミにも焦げ跡なし!耐火性だ!「厄介ね。ここは一旦撤退も……うっ?」PBが振り向くと、入ってきたフスマがない。壁だ。《逃しはせんよ。ここではIRCも通じん。死ぬがいい》
三忍は脂汗を垂らす。攻撃が通じず、相手の攻撃は極めて厄介!壁も破壊できぬ!まさにジリー・プアー(訳注:徐々に不利)、否、ラット・イナ・バッグ!「キューソーは猫を噛んだら殺す、とも言うわ。噛み付いてやる!」
2ターン目
《イヤーッ!》コルネリウスたちが壁際へ動き、三枚の虹色スリケンを同時に投擲!三忍各々を狙う!
HBは6D6で[2,1,2,4,3,3]=失敗、IPは7D6で[5,3,2,4,4,3,2]=成功、PBは6D6で[6,5,2,1,5,3]=成功。HBは体力-1(残り5)、精神力-1(残り1!)
「グワーッ!」HBに虹色スリケン命中!ヤクザスーツが切り裂かれ、懐のトロ粉末の袋が引き裂かれる!空中に舞う白い霞!「チクショウ、目の前がグラグラしやがる……」体力は残っているがニューロンが危険!このままでは昏倒だ!「「イヤーッ!」」IPとPBがコルネリウスへスリケン投擲!
PBは6D6で[5,4,4,4,3,5]=成功、IPは7D6で[2,5,1,5,3,5,3]=成功。しかし!
だがコルネリウスには通用せぬ!すり抜けるだけだ!《ハハハ……ドゲザしたまえ、犬のように!》HBは…「チクショウもったいねえ!吸ってやる!」精神力を少しでも補給すべく、空中のトロ粉末を吸引!SNIFF!だが大部分は床にこぼれ落ちる!「ええい、チクショウ!」床に這いつくばる!
そのまま、床に散らばったトロ粉末を鼻から吸引!SNIFF!SNIFF!「HB=サン!」「何やってんの!?」《ハァーッハハハハ!!なんたるブザマ!》コルネリウスの哄笑が響き渡る!《まさに犬だな!貴様のようなマケグミの貧乏人のサンシタヤクザにはお似合いの格好だ!楽しませてくれる!》
HB:精神力+2(残り3)。そして……!
その時!HBの視界に、極彩色の模様が見えた。トロ粉末を吸引したことによる脳内のケミカル反応か?極限状態に追い詰められたことによるZBRの禁断症状、あるいはソーマト・リコールの一種か?否!粉末の白い霞が視野にかかった部分にだけ、それが見える!床や壁一面に虹色の模様が見える!
「こ……これは!?」
HBは【ニューロン】判定、難易度HARD。4D6で[2,5,5,1]=成功!
3ターン目
《褒美に貴様からだ!ニューロンを焼かれて死ぬがいい!イヤーッ!》三人のコルネリウスが壁際へ動き、HBへ虹色スリケンを集中投擲!アブナイ!
難易度HARDでまとめて回避。しかし回避失敗すれば体力に3、精神力に3のダメージをまともに食らい、体力は2残るが精神力が0になって気絶してしまう。HBはここで精神力を1消費し自動成功!(精神力-1、残り2)
これを食らうわけにはいかぬ!HBのニューロンにアドレナリンが注ぎ込まれ、主観時間が泥めいて鈍化!「イイイヤァアアーーーッ!」ゴウランガ!HBはカラテを振り絞り、三枚の虹色スリケンを弾き飛ばす!「どうすりゃいいの……」PBとIPは移動し、コルネリウスたちからHBをかばう!その時!
HBが叫んだ!「マボロシだ!」そして指差す!「虹色の模様だ!俺のカトンが僅かだが、壁や床を傷つけた!俺たちは最初っから、やつのジツ中にハマっていたんだ!」「なんですって!?」「マボロシ!そうか!」
PBとIPもニューロン判定。HBがマボロシと指摘したので難易度はNORMALに下がる。6D6で[3,3,5,5,4,2]=成功、[5,5,2,1,4,3]=成功。
「「イイイヤーッ!!」」極度のニューロン集中により血の涙が流れ、視界が歪む!こ0100れは1?10偽りのテクスチャーが剥がれ落ち、シュギ・ジキの部屋は消え去り、虹色に覆われた真の姿を現す!何たる激情的色彩の奔流に支配された混沌閉鎖空間!「入口の廊下と同じだ!錯覚だ!」
「バ……バカな!私のジツを見破っただと!?貴様ごときサンシタが!?」やや離れた位置にコルネリウスが出現!真の姿が暴かれる!その装束は白ではなく、超自然の虹色であった!「錯覚を利用したジツでこちらを幻惑していたのね。恐ろしいフーリンカザンだわ」「むう、不覚……!」
手品のタネはバレた。ゲン・ジツを克服した三忍を前に、コルネリウスは歯ぎしりする。「オノレ!だが貴様らはもうオシマイだ!私を捕まえられるものなら捕まえてみるがいい!」捨て台詞を残し、ドンデン・ガエシで壁の後ろへ!「ぶっ壊すわよ!」「「おう!」」壁を守る幻覚もなし!ならば!
「「「イヤーッ!」」」KRAASH!壁を破壊!
◆コルネリウス(真)(種別:ニンジャ)
カラテ 3 体力 3
ニューロン 8 精神力 8→6
ワザマエ 4 脚力 2
ジツ 3 万札 5
◆装備や特記事項
スキル:ゲン・ジツ(虹)、シュギ・ジキ(虹)
◇ゲン・ジツ(虹)
視覚があり虹色閉鎖空間を通過する対象を、密かにジツの影響下に置き幻覚を見せる。
対象人数に制限はなく判定も不要。この状態で対面すればモータルなら思いのままに操れる。
幻覚の可能性に気づき、【ニューロン】判定HARDで成功すれば影響から逃れられる。
◇シュギ・ジキ(虹)
謎めいたトラップルーム。十二枚のタタミから構成される四角い小部屋。耐火性。
室内には虹色が塗られており、この中においてのみコルネリウスは上記の状態表となる。
また彼への攻撃が一切通用しなくなり、壁などのカラテ破壊も錯覚で不可能になる。
広範囲の無差別攻撃で巻き込むことは可能だが、本体は幻の壁の裏側に潜んでいる。
戦闘パート終わり。これ以後は判定なしです。巻いていくぜ!
???
「アイエエエ!?」「ドーモ、コルネリウス=サン。手こずらせたわねえ」三忍はこめかみに青筋を浮かばせ、隠し部屋のコルネリウスを追い詰める。黒漆塗りの金庫、冷蔵庫、黄金UNIXデッキの置かれたデスク、そして描きかけのウキヨエ。「ここがアトリエか。いろいろ創作してたってわけだな」
PBがIRCを確認する。「モシモシ。ウタカワの隠し部屋を発見。本人もそこにいます」『ザリザリザリ……おう、通信回復したな。よしよし。さっさと捕まえとけ』「ハイヨロコンデー。IP=サン、UNIXをお願いね」「おうよ」震え上がるコルネリウスに向かい、HBとPBは歩を進める。
タネはエントランスから仕込まれていた。あの廊下だけでなく、ここまでの壁も床も全てが虹色に塗られていた。それを錯視を利用して白色に見せかけていたのだ。歪みは脳内で勝手に補正され、そのように認知されてしまう。ニンジャでも人間でも、脳の創作物を認識しているに過ぎない。
応接室での消失は、ゲン・ジツで認識を歪めたもの。しばらく隠れ潜んでからドンデン・ガエシで脱出しただけ。シュギ・ジキ部屋でのブンシンも、攻撃が命中しなかったのも、カラテが必ず命中したのも、ゲン・ジツを利用したものだ。さっさと逃げ出せばよかったが、歪んだ狂気が邪魔をした。
コルネリウスは非力なニンジャだ。彼のゲン・ジツは強力ではあるが、フーリンカザンの構築が不可欠。またジツの使用にはニューロンを酷使し、トロ粉末が手放せない。そこでゲン・ジツでカネモチを籠絡し、成り上がったというわけだろう。そこでやめておけばよかったのだが……。
「ウオーッ!私は負けてなどいない!ウキヨエの価値も分からぬマケグミめーッ!」PAM!コルネリウスはスモーク・ボムを炸裂させた!「「グワゲホーッ!?」」ドンデン・ガエシ!「私は!私は!アアーッ!」走る!受付への隠し扉を……「エッ」開かない!「「テメッコラーッ!」」KRASH!
HBとPBがカラテで壁を破壊!怒りに燃えて連続側転で追跡!スモーク・ボムはあれだけだ!ゲン・ジツは見破られている!「開かない、な、ナンデ!?開け!開けーッ!」混乱!カラテが乏しく破壊できぬ!スリケンを「「イヤーッ!」」「グワーッ!」HBとPBのカラテが炸裂!インガオホー!
「……やっぱり、そこか」受付の机やトイレモップなどを壁に固定し、隠し扉を外から封鎖していたのは、受付に残してきたカバノキだ。フロアマップや壁を叩いた音から、このへんであろうとあたりをつけておいた。手負いの丸腰でニンジャとカラテすれば死ぬ。ならば、できることをする。
「殺さないわ。アタシたちはね。申し開きはソウカイヤでなさい。その方が生き残る確率は高まるはず」PBは冷静に告げる。『そういうことだ、ウタカワ=サン。俺様が多少は口を利いてやるぜ』ソニックブームも勧告。「……わかった」コルネリウスは開かない隠し扉の前でうなだれ、両手をあげた。
一方、IPは黄金UNIXデッキを慎重に操作し、機密情報をハッキングしようとしていた。「かなり厳重だが……よし」モニタの横にはパスワードを書いたメモ用紙が張ってあった。いかに隠し部屋とはいえ不用心。「取引していたヤクザ・クランのリストだな。これは結構なカネになる……ン?」
IPが何かに気づいた。コルネリウスを連れて戻ってきたHBとPBに、手招きする。「なんだ?」「何か見つかった?」IPは無言でモニタを指差す。そこには……横長の菱形に単眼模様の奇妙な紋章が映っていた。三忍には研修で見覚えがある。「「ザイバツ・シャドーギルド……!」」
◆罪◆<◎>◆罰◆
エピローグ:トコロザワ・ピラーな
ネオサイタマのネオンの海にそびえ立つトコロザワ・ピラーは、泣く子も黙るソウカイ・シンジケートの本拠地である。このフロアはその総帥、ラオモト・カンのヘッドオフィスだ。金箔を散らした黒漆塗りの床、中央には30畳ほどの見事な紫色のタタミが敷かれている。その上に、ラオモトが座す。
ハウスバーナー、インパーミアブル、ポイズンバタフライの三忍、チーム・ヒップは、上司ソニックブームと共にその前に並んでドゲザしている。ラオモトの後ろに控える四人の金髪オイランたちは、彼らに嘲笑するような、誘惑するような眼差しを投げかける。彼女らのカラテは相応に高い。
「ムハハハハハハ! 最近イキのいい連中が入ったとソニックブーム=サンから聞いていたが、お前たちか。では、すみやかに今回の首尾を報告せよ。タイムイズマネーだ!」「「「ハーッ!」」」HBとIPは威光に撃たれ、顔をあげることも出来ぬ。シツレイな真似をすればその場でセプクだ。
ソニックブームに促され、PBが代表して進み出る。彼はラオモトに心酔しており、以前のミッションで謁見を許されていた。「ザイバツと繋がっていたウタカワことコルネリウスを捕縛し、彼が押さえていたトロ粉末の密売ルート、それに通じる多数のヤクザ・クランの機密データを入手しました」
コルネリウス、カバノキ、ブローカーは連行され、トコロザワ・ピラーの牢獄にて硬軟取り混ぜたインタビューを受けている。「……さらに、ネオサイタマに潜伏するザイバツ勢力の位置と数についてのデータも入手しました。これは我々だけでなく、ソニックブーム=サンの差配あっての手柄です」
ハシバミの事務所にカチコミをかけ、機密情報を探り出したのはブラックマンバたちだが、彼らは裏で動く斥候ニンジャ。然るべき報酬は受け取るにしても、こうした晴れの舞台に出る者たちではない。三忍にしても、誰がハシバミをやったかまでは知らされていない。しかし、全員の手柄だ。
「ムハハハハ! 見事だ!しかも奥ゆかしい!気に入ったぞ!」ラオモトは上機嫌に高笑いし、ポンポンと手を叩く。四人のオイランたちは背後のタンスから万札束を取り、豊満な胸に挟んで運んでくる。ソニックブームには万札40、三忍には各々万札20。合計100万。破格の報酬だ!
「「「「アリガトゴザイマス!!」」」」四忍はより深くドゲザ!「ムハハハハ!それだけの働きはした!次も期待しているぞソニックブーム=サン、ポイズンバタフライ=サン!他二名!」「「アイエッ」」HBとIPはビクリとした。「そう、ハウスバーナー=サン、インパーミアブル=サンもだ!」
「「「「ハイヨロコンデー!」」」」
―――――――
家紋タクシーの中。「スズリはシロか」ソニックブームが呟く。チーム・ヒップのアジトに来ていたのは、盗聴やスパイを探るためもあった。ザイバツや敵対組織のスパイがどこに潜んでいないとも限らない。裏はとった。ただの哀れなオイランだ。だが利用するやつもいるだろう。警戒はしておく。
ソウカイ・ニンジャの大概のアジトには、監視のために盗聴機や隠しカメラが仕込んである。裏切りやヌケニン、ゲコクジョを防ぐためだ。チーム・ヒップには現在そうした兆候はないものの、用心に越したことはない。首筋などにIRC通信機をインプラントさせれば、より確実だ。便利もいい。
IRC端末を取り出し、通話する。「モシモシ。……ドーモ、アーソン=サン。ソニックブームです。……ああ、例の件。第三埠頭でな」トロ粉末のルートは押さえた。あとはメン・タイだ。仕切り値を下げている連中をシオキし、かつ傘下に加える。あの辺にシマもあるし、アーソンが適任だろう。
彼は元ヤクザ・バウンサーだ。ソニックブームも、ポイズンバタフライも。ニンジャになろうがやることは変わらない。ヤクザとして暴力をチラつかせ、マネーを集め、敵対組織と交渉し、潰す。クレバーな立ち回りが必要だ。やりがいはあるが忙しい。取り留めなく思いを巡らす。
スシをゆっくりと咀嚼し、サケをちびり。この手柄でシックスゲイツの「六人」に選ばれるかどうか。いまのところ欠員はいない。ヘルカイトがやたら頑張ってるが、この前ザイバツに捕縛されて重傷を負ったとも聞く。大きな失点だ。(ま、なったところで仕事が増えるだけか……どうすっかな)
出世はし、マネーは得ている。不自由と言えば、スカウト部門の人手が足りない。チーム・ヒップは駆け出しだが将来性はある。様子を見よう。(それよりも、だ……)目下最大の懸念事項はザイバツだ。ニンジャスレイヤーとやらも、あるいはザイバツのアサシンか。とすれば辻褄は合う。
キョートくんだりからネオサイタマまで来て、何を企んでいる。日本の支配か。世界の征服か。ザイバツのニンジャを何人も囚えて拷問したが、カルト宗教めいた文言を繰り返すばかり。不気味な連中だ。上では条件付き不戦条約の締結準備も進んでいるらしいが、あちらが守るとも思えない。
「ノー・カラテ、ノー・ニンジャ」ぼつりと呟く。複雑怪奇な情勢を生き抜くために、策略も戦術も必要だ。だが最後に状況を打破するのはカラテだ。卓越したカラテがあれば、理不尽を通せる。理不尽を打開できる。ヤクザ、暴力団はそうして生きて来た。その生き方しか……自分にはない。
重金属酸性雨が、今夜も無慈悲に降り注ぐ。家紋タクシーの窓を僅かに貫くネオンのきらめき、かまびすしい広告音声に、寝不足気味のソニックブームは眉をしかめ、静かに目を閉じた。
【オブザーバー・エフェクト】終わり
リザルトな
獲得 各々万札20、【名声:ソウカイヤ】2
◆ハウスバーナー (種別:ニンジャ) PL:つの
カラテ 6 体力 6→5
ニューロン 4 精神力 4→2
ワザマエ 5 脚力 3
ジツ 1 万札 28
DKK 0 名声 2
◇装備や特記事項
◆ジツ:カトン・ジツ
◆ZBRアドレナリン注射器
◆インパーミアブル (種別:ニンジャ) PL:つの
カラテ 4 体力 4→3
ニューロン 6 精神力 6→5
ワザマエ 5 脚力 3
ジツ 0 万札 22
DKK 0 名声 2
◇装備や特記事項
◆ジツ:なし
◆家族の写真(レリック)
◆サイバネアイ:【ワザマエ】判定時にダイス+2個
◆テッコ:【カラテ】判定時にダイス+1個、回避ダイス+1個
◆トロ粉末
◆ポイズンバタフライ (種別:ニンジャ) PL:つの
カラテ 5 体力 5+1→5
ニューロン 6 精神力 6→4
ワザマエ 6 脚力 3
ジツ 2 万札 30
DKK 0 名声 2
◇装備や特記事項
◆ジツ:カナシバリ・ジツ
◆ウイルス入りフロッピー:ハッキングの難易度-1
◆タクティカルニンジャスーツ:【体力】+1
◆ブラッドカタナ
◆トロ粉末
◇効果蓄積鍛錬(カラテ):次のカラテ鍛錬での必要出目-1
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