忍殺TRPGリプレイ【ジ・イルーシヴ・ニンジャ】05
前回のあらすじ:ネオサイタマを離れた辺境の地・長野県に駐屯するザイバツのニンジャチームを、マスター位階ニンジャ・アンバサダーが訪れた。彼から与えられたミッションは、豪族ムセン・タカハシが所有するレリックアイテムを、手段を問わず入手することだ。だがニンジャが立ちはだかる!
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「さあ、これで3対1よ。まだ戦う?」「ヌウッ……!」クイックシルヴァーはたじろぐ。彼のカラテとジツがあれば、3対1でもかなり戦えるだろう。しかし、リング・オブ・ウィンドを奪い取って逃げおおせるとなれば……難しいと言わざるを得ない。先ほどのアンブッシュが失敗したのが運の尽きだ。
ラオモトから秘密の指令を受け、ムセンの暗殺と指輪の奪取を命じられてここに来てみれば、すでにニンジャたちの戦闘は始まっていた。漁師がカチグミを狙い、護衛ニンジャたちに助太刀してみたものの、こうなっては……「わかった。退こう」クイックシルヴァーはハンズアップした。
「……イヤーッ!」ゴールデンクイーンは瞬時に相手の行動を予測し、応接間のムセンのもとへ飛び戻る!「ちいッ!イヤーッ!」クイックシルヴァーは連続側転で飛び戻り、NRSで気絶したムセンを攻撃!「イヤーッ!」ゴールデンクイーンがかばう!ヒュンヒュンヒュンヒュン……風の刃が守る!
「「イイイヤァアアアーーーッ!」」シルバーナイトとエッジビショップも飛び戻り、クイックシルヴァーへ猛攻!猛攻!猛攻!狙うは逃げるための脚だ!「い、イイイヤァアアアーーーッ!」グニォン!クイックシルヴァーはアドレナリンを過剰分泌し、肉体を異常流体化させ紙一重回避!タツジン!
「ま、マッタ!」クイックシルヴァーは交渉を持ちかける!「指輪はそちらへ渡す!偽物だと報告しよう!しかしムセンの首はこちらがもらう!ラオモト=サンも満足されるだろう!それでテウチとしようではないか!」実際、これは理にかなった提案ではある。だがムセンが死ねば……うまくない。
ゴールデンクイーンはタフに笑い、無慈悲に宣言した。「どっちも渡すわけにはいかないわね。ここでアンタも始末させてもらうわ!」最終決戦!
戦闘継続
8ターン目
「イヤーッ!」ゴールデンクイーンはシルバーナイトの背後に跳躍しつつ収束カラテミサイルを射出!BOOMBOOM!「ヌウッ!」クイックシルヴァーは異常軟体化してしゃがみ回避!ここは……「オタッシャデー!」東側の庭へ撤退!敵を誘い出し、残ったムセンかゴールデンクイーンを始末すべし!
「誘いには乗らんぞ!イヤーッ!」シルバーナイトは瞬時に魂胆を見抜き、クイックシルヴァーへスリケン!エッジビショップは後を追ってマニ車メイスを繰り出す!「イヤーッ!」「ちいッ!」グニォン!クイックシルヴァーは瞬時に異常軟体化して回避!ここは……このまま離脱するしかない!
9ターン目
「イヤーッ!」BOOMBOOM!強烈なカラテミサイルがクイックシルヴァーを襲う!「逃げるがカチグミ!イヤーッ!」クイックシルヴァーは異常軟体ブリッジ回避!そのまま連続バック転を繰り出して庭を飛び出し、崖の下へ飛び降りた。「ぬう、逃げられたか……」「ここは逃がしてやりましょ」
ゴールデンクイーンは状況判断した。このまま指輪とムセンの両方を守りながらクイックシルヴァーを討ち取るまで戦うのは、流石にキツい。禍根を残したことにはなるが、これもムセンを説得する材料にはなるだろう。「護衛ニンジャたちは捕縛しといて。あとで説得するわ」「「了解」」
戦闘終了
エピローグ
……かくて、ムセン・タカハシの命は危うく守られた。しかし油断はできない。クイックシルヴァーは窮地から一時撤退し、戦略的に仕切り直したに過ぎない。援軍を率いて再び現れ、ムセンの命を狙ってくるだろう。それを防ぐには、ザイバツニンジャたちがこの地に駐屯するほかないわけだ。
「と、いうわけで。あなたは命の恩人に対して、どう接すべきかしらね?」ゴールデンクイーンは気絶から回復したムセンに微笑みかける。ムセンはNRSを発症して震えながら、涙を流して頷いた。「アイエエエ……ブッダ……ボディサットヴァ……!貴方様に全て差し上げます……!」「よろしい」
平安時代の哲人剣士ミヤモト・マサシは兵法家として多数のコトワザを遺している。「大勢で一人を攻撃すれば楽に倒せる」「逃げる戦士は追う戦士より遠ざかるので致命傷は受けにくい」「勝ってメンポを確かめよ」……実際実用的だ。だが彼より前に、グンペイ・ヘイケの遺したコトワザがある。
「恩を売れば従ってくる」。平安時代のショーグンであるグンペイ・ヘイケは、各地の有力者に様々な利権や保護を与えて多数の仲間を集め、一介の流人から天下人にまでのし上がったという。徳川エドワード家康も、ロード・オブ・ザイバツもそうした。また共通の敵がいれば協力関係は築きやすい。
これでムセンの領地も、マサシの指輪もこちらのものだ。護衛ニンジャたちはザイバツに従うかはわからないが、恐怖を叩き込んでうまく躾ければ、戦力になるだろう。従わないなら殺し、寝返るなら殺すまでだ。「あとは、これを持ち帰ればいいわけだけど……またあいつが襲ってきたら面倒ね」
「その必要はない」応接室の西のフスマがスッと開き、若いニンジャが現れた。アンバサダーだ。「「「ドーモ」」」3人のザイバツニンジャは一斉に頭を下げる。「一部始終は見させてもらったぞ。よくやった」「アッハイ」アンバサダーはゴールデンクイーンに手招きし、指輪を献上させる。
なんたる神出鬼没。アンバサダーは先回りしてムセンの邸宅に忍び込んでいたのだ。「この屋敷と領地、宝物の一切は我らが接収する。ただ、このままソウカイヤの刺客に狙われ続けるのも厄介だな。私が宝物のいくらかを引き渡すなどして休戦交渉するとしよう。お前たちはしばらくここにいろ」
彼はすらすらと外交による解決策を述べる。「大使(アンバサダー)」のニンジャネームは伊達ではない。……だが、我々は知っている。彼がザイバツ・シャドーギルドを裏切り、ニンジャスレイヤーたちとともにキョート城に潜入し、ロードとパラゴンを討ち取らせてネオサイタマに戻ったことを!
ならば、彼が今ここにおり、ザイバツニンジャの残党にマサシの指輪の接収を命じたのは何のためか? それはまだ申し上げられない。「では、サラバ」アンバサダーは謎めいたアルカイックスマイルを浮かべ、闇に消えた。
【ジ・イルーシヴ・ニンジャ】終わり