忍殺TRPGリプレイ【スピン・ザ・ブラック・サークル】01
邦題:回れ、黒い円盤(Spin The Black Circle)
ドーモ、三宅つのです。これはぺりかん=サンのシナリオ案「ピザ・タキvsピザ・スキ」および原作小説「ラグナロク・オブ・ピザ・タキ」を元にしたリプレイ小説です。ネタバレにご注意ください。
ピザタキとピザスキのピザ販売対決にPCたちが巻き込まれる、コメディ寄りのシナリオです。つの次元にはAoSなのでタキもコトブキもいますし、ピザタキもピザスキも存在します。そればかりか、ピザスキのグルヤマならぬゴルヤマ本部長は、タキの仲介で派遣されたサイバネモータルのフクト=サンに殺されています。因縁は実際あるようです。なおマスラダやザックはいるかどうかわかりません。
ただ、コトブキはメイレインを始末したソウカイニンジャのシャープウォーカーたちに引き取られ、ツキジにある彼らのアジトで生活しています。暇なのでソウカイヤと関わりのあるピザタキでバイトしているとすればいいでしょう。チーム・シャープウォーカーは三人揃えばダークドメインを撃退するぐらいに強く、彼らが出たらおおごとになって大変です。ピザスキの背後にザイバツがいるとかしてもいいですが、リラックスできませんね。
タキと繋がりのあるフリーランスのスティギモロクたちを出してもいいですが、ここは実際ピザスキと因縁がある彼を出しましょう。
◆フクト・ウサイダ(種別:モータル)
カラテ 4>6 体力 4>6
ニューロン 4 精神力 4
ワザマエ 4 脚力 3>4
ジツ - 万札 11>-7
名声 2
攻撃/射撃/機先/電脳 6/ 6/ 5/ 6
回避/精密/側転/発動 7/ 5/ -/ -
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
◆ショットガン:小銃、ダメージ2
▶サイバネアイLV1:ワザマエ判定+1、射撃時さらに+1
▶生体LAN端子LV1:ニューロン判定+2、イニシアチブ+1
▶︎ヒキャクLV1:脚力と回避+1
◇スキル
○生い立ち:危険生物ハンター
◉知識:危険生物、銃器
能力値合計:12
前回の冒険で万札10、名声1、余暇3日を獲得しました。カラテカを倒し「毎日カラテを練習しろ」と少年に発言したので、カラテを鍛錬して[53]=8>4=成功。残り万札5。万札7を借金して[12]=3<5=失敗、[62]=8>5=成功。カラテが6になりました。日々の鍛錬と借金の賜物です。彼は時に殺人も行う屈強なアウトローであり、特にカルマ善ではありません。
◆コトブキ(種別:戦闘兵器/ウキヨ)
カラテ 4 体力 6
ニューロン 4 精神力 4
ワザマエ 3 脚力 3
ジツ - 万札 10
攻撃/射撃/機先/電脳 4/ 4/ 5/ 6
回避/精密/側転/発動 4/ 3/ -/ -
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0
◇装備や特記事項
▶生体LAN端子LV1:ニューロン判定+2、イニシアチブ+1
◉重サイバネ化:体力+2、脆弱性:電磁(1)
○生い立ち:ウキヨ
◉知識:オイランドロイド、旧世紀ビデオ、カンフーなど
◇カルマ:善
能力値合計:11
素のオイランドロイドに「特殊生い立ち:ウキヨ」を載せただけで、特に成長していません。そこらのモータルよりは強いでしょう。
フクト=サンは先月出たばかりですがいいとしましょう。借金があるため仕事になりふり構っていられません。難易度等はモータルのソロプレイ向けに調整します(コトブキも参加しますが)。では、始めます。
◆◆◆
ダンゴウ
「と、いう事で。ピザタキ作戦会議を始めます!」
ネオサイタマ、キタノ・スクエアのこじんまりとしたピザ店、ピザタキ。その店内で、看板娘である『コトブキ』が、どこからもってきたのか、白く大きなボードにマジックで「作戦会議」と書き込み気勢を上げた。店内には店主のタキと、常連客で屈強なサイバネ・アウトローのフクトがいる。
StableDiffusionDemoに「blonde grunge guy(金髪の不潔な男)」と呪文を唱えたらこう出ました。ややグッドルッキングです。
「ハ?」カウンターのタキはエッチ・ピンナップから顔をあげ、訝しんだ。ここは安い冷凍ピザを客にセルフで電子レンジで温めさせ、ぬるいケモビールを冷蔵庫から客に出して飲ませる、実際シケた店だ。ピザ店というより、周辺住民やアウトローの「溜まり場」としての役割が大きい。そして。
何より、タキの本業は情報屋だ。アウトローの溜まり場には、当然ビズの情報も集まってくる。タキはテンサイ級ハッカーを自称してもおり、IRCを介して情報を集め、ビズを求めてくるアウトローや傭兵ニンジャに提供するのが仕事なのだ。一応ソウカイ・シンジケートがケツモチについてもいる。
コトブキは、そのソウカイ・シンジケートの凄腕ニンジャが見つけ出した「自我を持つオイランドロイド」なのだという。自我を持つため暇がっており、自分で求人情報などを探し、勝手にここへ居着きアルバイトを始めた。タキとしても無碍に扱えず、看板娘として実際評判もいい。だが、しかし。
「今回の議題はこれです!ピザスキ!」そう言うと、コトブキは一枚のチラシを磁石クリップでボードに張り付けた。チラシには『新装開店』『ピザが大好き』『IRC注文で2倍量』などの文字が躍る。「ああ、最近斜向いに支店が出来たとこか」「ほっとけや。ウチとは客層も存在意義も違うんだしよ」
タキは鼻を鳴らし、エッチ・ピンナップに視線を戻す。コトブキは気にせず続ける。「いえ、実際お客さんは取られています。常連客の方々も、最近来られません」「いいンだよ。物珍しさに飽きたら戻って来るって」「俺も行って食べたけどよォ、やっぱ冷凍ピザより遥かにウマいわ」「アッソ」
タキは興味なさげだ。「つまり、こうだ。オレたちがピザスキでピザ買って、ここで売ればいいんじゃね?」「客があっちへ行って買ってくりゃ済む話じゃねェか」「ここで集まって食べることに意義があンの。手数料とショバ代」「そういうことではありません」コトブキはぴしゃりと言った。
「じゃあ、どうすんだ。言ってみろや」タキはため息をつき、雑誌をカウンターに伏せた。「新商品の開発です」「どこの冷凍ピザを買うんだ」「この店で作るんです。手作りで。私のポケットマネーを使い、中古ですがピザ窯も買って来ました」「余計なことすんな!オレはピザなんか焼かねえぞ!」
タキは流石にキレた。「期待していません。私がやります。任せてください」「いいんじゃね?やらせてやれよ」フクトは面白がった。「飽きたらやめるだろうし、アンタの懐も痛むわけじゃなしさ」「ケッ!冷凍ピザの何が悪いってんだ……」「では、フクト=サン。手伝っていただけますか?」
「俺ェ?」フクトは自分の顔を指さした。「そうです。店主のタキ=サンがこの体たらくですから、正直猫の手も借りたいのです。ピザの作成、販売を私一人でやるのは限度があります」「いいんじゃね?やってやれよ」タキは面白がった。「ローンの返済もあんだろ。儲かったら返せるぜ」「成程」
こうして、ピザタキの新商品開発会議が幕を開けた。
試作
コトブキとフクトはエプロンに着替え、ピザタキの厨房に立った。さして広くはないが業務用冷蔵庫と、本格的なピザ焼き窯があり、冷蔵庫の中には様々なトッピングの具材が用意されている。「まずは、ブレインストーミングで出た案をすぐ作って確かめてみましょう。1枚90秒で焼けますからね」
「キアイが入ってて結構だがよ、材料費はお前のバイト代から差っ引いとくからな!」タキはカウンターから叫んだ。「ハイ!……では、ピザ生地、ソース、トッピングを選んで行きましょう。何にしましょうか」コトブキは腕まくりをしてやる気まんまんだ。「そうだな、俺も詳しくないが……」
PCは1D6を振ってピザ生地、1D12を振って(Google検索に「1D12」と入力すれば電子ダイスが振れる)ソースを、2D6(D66)を振ってトッピングを決定する。生地は1D6[2]=ナポリ風、ソースは1D12[11]=チョコレートだ。トッピングはD66[26]=エビ。トッピングは1-5回振れる。[35]=マッシュルーム、[21]=マグロ、[36]=バジル、[54]=プルコギ。
「ナポリ風ってのが本格的なんだっけか」「本格的ですね!」「チョコレートソースって甘いやつ?」「甘いですね!」「トッピングは……えーと、これはエビか。これがマッシュルーム、マグロ、バジル。プルコギも載せちまおう」「すごいですね!バジルがあればだいたいピザだと思います!」
評価は1D100。Googleの電子ダイスにはないが、ググったらD100が振れるサイトが見つかった。1D100[38]。いまいち。
トマトソースもチーズもないが、黒いピザめいた物体が生まれた。あとはこれを焼くだけだ。「できました!試食しましょう!」「なんだこりゃ?」タキは訝しんだ。「ナポリ風チョコレートソース・シーフードピザのプルコギ添えです」「なんでも載せりゃいいってもんでもねェだろ……うッ!?」
タキはピザを一切れ食べ、目を見張った。「美味しいですか?」「エビとマグロとマッシュルームとプルコギが、チョコレートソースをかぶって口の中でカラテしている……100点満点で38点だ」「ダメか」「食えなくもねェがよ、これじゃピザスキにゃ勝てねェぜ。だいたい、相手はプロだろうが」
???
タキはケモビールでピザを流し込み、口を拭った。二人も食べては見るが上出来とは言えない。冷凍ピザの方がマシだ。二人がしょげかえるのを見て、タキはアドバイスした。「うまくできたとしても、新作ピザひとつで戦況をひっくり返すってのは無理があるぜ。やるならもっと別の手がいる」
「どうすれば」「プロがいないンなら、プロを雇え。足りないもんは外注だ」「雇う……アテがあるのか」「ねェよ。オレはオレの意見を出しただけだ。どうするのかはお前らで考えてくれや」コトブキは頷いた。「一理あります。我々は実際素人なのですから、プロを雇うのは理に適いますね」
コトブキは、ツキジを支配するソウカイ・ニンジャチームのツレだ。ツキジなら料理人は大勢いる。ツテを辿ってプロのピザ職人が見つかるかも知れない。「モシモシ、シャープウォーカー=サン。コトブキです……」彼女は携帯IRC端末でソウカイニンジャに連絡した。果たして、どうなるか。
???
……翌日。ピザタキを、一人の男が訪れた。年齢は三十代後半、角刈り頭で、イタマエの服装。「……お邪魔いたしやす。こちらで料理人を募集していると聞き及び、僭越ながら敷居を跨がせていただきやした」「「「ど、ドーモ」」」三人は彼の放つオーラに威圧された。ニンジャではないが……。
「あっしは、流れのイタマエ。名をアキジと申しやす。お見知り置きを」
だいたいのイメージとして引用します。幸いアキジ=サンは奥ゆかしく、ジロー=サンのように包丁で人の首を切断したりはしませんが。
「まあ!プロの方ですね!私はコトブキです!」「ドーモ。ピザのほうは詳しくありやせんが、いくらかは、お力になれるかと思いやす。よろしくお願いしやす」「こちらこそ!」コトブキの顔がほころぶ。「ケッ。スシ・ピザでも作ろうってのかね?」タキは小声で挑発的に言い放った。
アキジはタキの方をじっと見た後、コトブキの方を振り返った。「では、厨房の方、見せて頂いても」「ど、どうぞ!ご自由に!」アキジは奥ゆかしく頭を下げ、厨房へ向かった。「それでは、お借りしやす」おお、ゴウランガ……イタマエのアキジは、今、初めてのピザ作りに挑戦する!
生地は1D6[4]=ミラノ風。ソースは1D12[6]=チリソース。トッピングは[31]=コーン、[52]=ネギ、[26]=エビ、[35]=マッシュルーム、[46]=モッツァレラチーズ。
「……できやした」アキジは奥ゆかしく完成品を差し出す。生地はミラノ風に薄く大きく、ソースはオーソドックスなチリソース。トッピングはコーン、ネギ、エビ、マッシュルーム、そしてモッツァレラチーズだ。シーフードと言えるのはエビぐらいで、トマトもバジルも使われていない。「ふむ」
タキはにおいを嗅ぐ。……いいにおいだ。少なくとも冷凍ピザや、さっきのピザよりは遥かに良い。「いただくぜ」「どうぞ」タキは切断されたピザの一片を手に取り、恐る恐る口にする。「……ムウッ!?」「ど、どうなんですか?」「……う、美味い……いや、それどころじゃあねーぜ……!」
彼はポロポロと涙を流した。「生まれてこのかた、こんな旨いもんは……ピザに限らず口にしたこたァねェ……!いや、そうだ、このエビは……ッ!」「ハイ。99マイルズ・ベイの……バイオイセエビです。汚染地域のバイオものでも、うまく処理すれば……」「あ、あんた!お、オレのことを……!?」
「指を……見ていました。貴方の指先を。その色素沈着は、バイオイセエビの殻を毎日のように剥いた指だ。見たことがありやす」「う、うう……!」タキは言葉にならず、カウンターに突っ伏して男泣きに泣いた。「姉貴……オレ……オレは……!」アキジのスシは、心を握る。彼のピザは、心を焼く。
「どんな材料にも……材料独自のよさがあるんです。それを邪魔せず、引き出してやるのが『和』の料理です」コトブキとフクトもピザを勧められ、恐る恐る口にした。「こ、これは……!」「ブッダ……!」馥郁たる香り、芳醇で玄妙な味が口とニューロンを駆け巡る。まるでニルヴァーナにいる心地。
「あ、アキジ=サン!合格です!いえ、ぜひ、うちで雇わせてください!」コトブキは深々とオジギした。アキジは恭しく頭を下げる。「あっしは、店を持たずに流しでやってやす。長居はできやせんが、僭越ながら、多少なら技術指導めいたことぐらいは……」「ぜひ!ぜひともオネガイシマス!」
「……頭をお上げください。こちらこそ、ピザの奥深さ、学ばせていただきやす」こうして、イタマエのアキジは一週間ほどピザタキにとどまり、技術指導を行うことになったのである。
【続く】
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