忍殺TRPGリプレイ【ファイアーズ・オブ・ルビコン】02
前回のあらすじ:ネオサイタマ・キョート戦争は膠着状態に陥った。これを打開するため、ソウカイヤ・オムラ連合は湾岸警備隊とともにキョート共和国への全面攻勢に打って出る。チーム・ナイトフライトはヴォルテージとともにキョート側へ潜入、破壊工作を開始する!カラダニキヲツケテネ!
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「ガイオンに近い北側は警戒も厳しい。琵琶湖の艦隊から艦砲射撃が飛んでくる」ヴォルテージは地図を指差す。「艦隊には手練れニンジャも大勢乗り込んでおり、容易には落とせない。そこで南だ」ヴォルテージの指が南へ動く。「ナゴヤの対岸、イセ地方。まずは、ここに忍び込む」「ハイ」
「物資輸送トラックに忍び込んで検問を抜ければ、キョート共和国南部方面軍基地がナラ盆地に存在する。まずはそこを落とす」「ハイ」ナラ地方は荒野と沼沢地と山々の間に村が点在する辺境の地で、大部分がキョート・ワイルダネスに含まれる。ガイオン以外の共和国領は概ね見捨てられた地だ。
「以前、ソウカイ・シックスゲイツのニンジャたちがこのルートからキョートに侵入したことがある。連絡は途絶えているが、合流できればする。我々の潜入と同時に、イブキ・マウンテンやツルガ方面でも湾岸警備隊が動き、陽動を行いつつ侵攻の隙を伺う。まずは内側から突き崩すんだ」「了解!」
実際危険な作戦だ。シックスゲイツの「六人」級のニンジャでさえ生還できない可能性もある。だが今回の任務もラオモト・カンの命令だ。やるしかない。何より彼らはセキバハラで多くのニンジャを屠り、実力を見せつけた精鋭なのだ!「よォし、行くぞ!」「「「ハイヨロコンデー!」」」
作戦開始
事前調査
一行は事前調査を行い情報を収集する。南部方面軍基地はナラ盆地北部に存在し、共和国軍かザイバツのニンジャ、あるいはその両方によって防衛されている可能性が高い。当然ながら各種の戦闘兵器や共和国兵がひしめいており、手練れのニンジャでなければ中枢まで忍び込むことはできまい。
ナゴヤからそこへの最短ルートは、かつて存在した「カンサイ・メインライン」と呼ばれる鉄道に沿って進むことになる。重金属汚染されたイセ湾を泳いで渡り、防衛線を避けてイセ地方に上陸したのち、カメヤマ、イガを経てナラ盆地北端へ出るのだ。各地には検問所があるが、やり過ごせばよい。
「聞いたことのねェ地名ばっかりだな」「外国ですからね」「日本語は通じるさ。本来はパスポートが必要だが」「オムラ・キョート支社の社員IDなら準備してあるぜ」「活用させていただきましょう」基地の見取り図もキョート支社を通じて入手しており、ニンジャ以外の情報は概ねツツヌケだ。
「しかし……なんだ、この巨大なシリンダーは」見取り図の中心部分には、超弩級のハンマーシリンダーが備え付けられている。まるで製鉄所だ。「《ベヒーモス》というらしい。オムラ・キョート支社からのリークでは、戦闘兵器ではなく掘削機だ。地下に秘密基地でも拡充しようってのかね」
それ以上の情報は得られない。ザイバツや共和国軍からの発注とすれば、彼らの何らかの思惑によるものだろう。「まあいい、行けばわかるさ。ついでにブッ壊してやれば、キョートの連中も困るだろうぜ」「アイアイ」
潜入開始
ウシミツ・アワー。ナゴヤ・ミッドランドの対岸、キョート共和国のイセ地方。かつて大規模工業コンビナート帯であったこの地域は、Y2K時の天変地異による津波や核攻撃でナゴヤもろとも滅び、無惨な廃墟と化している。ネオサイタマで言えば99マイルズ・ベイのシャッタード・ランドだ。
日本国との国境地帯であるため共和国軍の警備は厳しいが、ニンジャならば問題ない。廃墟づたいに上陸した一行は、物資や人員を輸送する複数のトラックに身を潜め、ナラ盆地の軍事基地へ直行する。見つかって尋問されてもオムラ・キョート支社のIDを無言で提示すれば済む。これが組織の力だ。
……数時間後、一行は問題なくナラ盆地に到達した。輸送トラックが急ごしらえの駐車場に停止し、労働者がぞろぞろと吐き出される。ナイトフライトたちは彼らに紛れ、首尾よく軍事基地に潜入した。「案外ずさんなもんだなァ」「本番はここからだ。キアイを入れろ!」「「「ハイ!」」」
1階
ゴギン!ガン!ゴギン!ガン!ゴギン!ガン!耳をつんざく機械音とセントー(訳註:銭湯か)めいた蒸し暑さが軍事基地を支配していた。件の《ベヒーモス》のユニット組み立て最終確認が行われている。超弩級ハンマーシリンダーの巨大シルエットはまさに怪物的で、巨大な製鉄所じみている。
表面には労働者の反抗心を削ぎ落とすためか、威圧的な文言がショドーされた垂れ幕が飾られている。左隅には上階への階段。右側にはカンオケ・ホテルと無人スシ・バーのユニットが設置されている。それらの前には見張り役のクローンヤクザ部隊が二組ずつ立っている。なかなか厳重だ。
◆クローンヤクザ・チーム(種別:モータル/バイオ生物/クローンヤクザ)×4
カラテ 2 体力 3
ニューロン 1 精神力 1
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ - 万札 1
攻撃/射撃/機先/電脳 2/ 3/ 1/ 1
◇装備や特記事項
●チャカガン・サンダンウチ:連射1、ダメージ1、回避H
●脆弱性:爆発/範囲攻撃(体力1)
能力値合計:6
彼らにかかずらわっている暇はない。監視の目をすり抜け、階段へ向かわねばなるまい。
「「「「イヤーッ!」」」」四人は色付きの風と化し、《ベヒーモス》の陰に隠れながら階段へと駆け抜ける!クローンヤクザたちも監視カメラも、彼らの姿をとらえることはできない!
2階
一行は2階に潜入した。《ベヒーモス》は1階天井部の吹き抜けを貫いてこのフロアに達しており、やはり威圧的な文言が記された垂れ幕が目に入る。階段の横には部屋があり、壁に「→機関室な」と書かれている。室内には、何らかの機密情報が記録されたUNIX端末があるはずだ。しかし……。
機関室の扉の前には、オムラの製品である「モーターヤブ」が配備されている。あれを無力化しなければ機関室に入れないというわけだ。「オムラ・キョート支社のIDを提示すれば、どいてくれるのでは?」ナイトフライトが推測する。「いや……よく見ろ。あれはオムラの製品じゃない。海賊版だ」
ヴォルテージが指摘する。ナムサン、なんたる冒涜!戦闘兵器の表面には《大平核心工業集団》の社名とエンブレムが刻まれている。キョートは海外との貿易で成り立つ国家であり、こうした海外製品も珍しくないのだ。オムラ・キョート支社が本社と結んでいる可能性を鑑みてのことではあろう。
◆モーターダーピン(種別:戦闘兵器)
カラテ 6 体力 12
ニューロン 3 精神力 -
ワザマエ 6 脚力 2
ジツ - 万札 6
攻撃/射撃/機先/電脳 6/ 6/ 3/ 3
◇装備や特記事項
●ショック・サスマタ:テック近接武器、ダメージ1+電磁1
●ガトリングガン・アーム:銃器、連射6、ダメージ1、チェーンターゲット
●銃弾の雨:射線上の3×3範囲内の全員に1ダメージ(回避H)
●跳躍移動:3マス以内に移動する
能力値合計:15
「これは許せませんね」「ああ」二人のオムラマンは怒りに燃え、海賊製品を睨んだ。破壊せねばならない!一触即発アトモスフィア!
戦闘開始
「「インダストリ!」」ナイトフライトは低く駆け寄り、逆関節の脚部へ!ヴォルテージは懐へ飛び込み致命的な中枢部へ、電磁クローアームを突き立てる!ZZTZZTZZTZT!『ピガガガガーッ!SAYONARA!』KABOOOOOM!モーターダーピンは爆発四散!その音は周囲の轟音にかき消される!
戦闘終了
ナイトフライトは素早く機関室へ飛び込み、UNIXをハッキングして情報を抜き取りつつ、監視カメラやモーターヤブもどきの情報を上書きして『問題なし』の信号を発信させ続ける。欺瞞工作だ。「……この上の司令室には、ザイバツニンジャが詰めているようです。名は『トゥールビヨン』と」
「そいつを囲んで殴って、ブッ殺せばいいわけだな」「ええ。ただ……他にもニンジャの気配があります。手こずれば戦闘兵器や共和国兵もやって来るかも知れません。気をつけましょう」「ああ」一行は司令室へ駆け上る!
【続く】
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