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忍殺TRPGリプレイ【ヘッド・ハント】02
前回のあらすじ:ソウカイ・シンジケートの女ニンジャ、サイレントシャドウに、密かにヘッドハンティングの声がかかった。相手はソウカイヤと敵対中のオナタカミ社だ。彼女は悩んだ末、これをセンパイのデンパルスに報告し、丁重にお断りを入れることになったが……。カラダニキヲツケテネ!
◆
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「ど、どうすれば……」「これを聞いた以上、放置ねェスね。またそいつが勧誘かけて来たら、今度こそ囲んで殴られるかも知れねェし」デンパルスは眉根を寄せる。「けど、一応は休戦協定を結んでるから、オナタカミに抗議して事を荒立てるのも……難しいスねェ」
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スカウト部門筆頭のソニックブームは、つい先日カメレオンなる女ニンジャに毒を盛られてダウンし、オンセンに送られて療養中だ。代わりにスカウト・育成業務を行っているクレイニアムは、湾岸警備隊から出向中の外様であり、内部事情を詳しく伝えるのもやや問題がある。何より彼女は多忙だ。
となると外交部門のフューネラルか。否、忠誠心の面でやや怪しい。ならば……『了解した。そちらで対処し給え』ソウカイヤ最高顧問ゲイトキーパーは手短に告げた。「アッハイ」『現場の者が独断で動いた、という形にすれば問題ない。誰か信頼できる手練れを見繕って連れて行けばよかろう』
「アッハイ、そうします」『以上。健闘を祈る』通信終了。彼も極めて多忙なのだ。デンパルスは考えた末、ウーリーマンモスに声をかけた。「詳しいことはIRCじゃあ伝えにくいんで、直接話します」『ああ、構わんぜ。例の遺跡でちょっとトラブルがあって暇だったんだ』「トラブル?」『喧嘩だ』
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ウーリーマンモスは多くを語らない。デンパルスは深く詮索しないことにした。いろいろあったのだろう。「……じゃ、そいつの指定した場所行って丁重にお断りして、四の五の言ったら殴打のめすってことで。危険かったら逃走りゃいいッスね」「アッハイ」
事前調査
ウーリーマンモスも合流し、事情を聞いて頷いた。とはいえ敵の腹の中へ何も調査せず飛び込めば、囲んで殴られてオシマイだ。まずは綿密に事前調査を行わねばなるまい。「指定された場所は、明日だとオハヤシ・ストリートですね」サイレントシャドウがメモを示す。カチグミエリアのビルだ。
ビル名を公式の企業の簡易名付けチャートから命名する。2D6[25]=7、スゴイ/カナリ。1D6で奇数なら前者、偶数なら後者。[5]=スゴイ。業種は2D6[51]=6、インダストリ/モーターズ。1D6[2]=後者。スゴイ・モーターズのビルということになる。
「ビルの所有者は『凄井重工』か。実際オナタカミ系列の下請けッスね」デンパルスはソウカイヤの秘匿IRC通信で電脳部門にデータを送信し、当該ビルについての電子的・物理的な調査を依頼する。情報を精査して何を読み解くかは、読み取る側の知識やワザマエによる。
代表者が調査判定、難易度H。デンパルスが挑む。11D6[61361321365]成功。出目666によりだいたいわかった。即応・緊急+2。
デンパルスはホストとしての話術、スカウト部門で培った情報収集能力を遺憾なく発揮し、相手や場所について詳しく調べ上げた。熟練デッカーも舌を巻く速さと深さだ。電脳部門や斥候部門等との連携の賜物でもある。「大概了解ッス。問題のビルに目立った仕掛けは無し」
監視カメラの映像にも、ヨモツブレード以外のニンジャは見当たらず、ネオサイタマの一般的セキュリティレベルを逸脱したレベルのトラップも見つからない。無論、伏兵や罠の可能性はゼロではないが。そして、ヨモツブレードは……バイオインゴットらしき緑色のヨーカンを時々摂取している。
「バイオニンジャか」デンパルスは眉根を寄せた。オムラと並ぶ戦闘兵器やサイバネティクスで有名なオナタカミのエージェントが、ヨロシサン製薬と関わりが深いであろうバイオニンジャだとは。となると……ヨロシサンがオナタカミと手を組んだ可能性が高い。これは、かなりヘヴィな状況だ。
ザイバツ、オナタカミ、イッキ・ウチコワシ、コブラ教団ばかりかヨロシサンまでもが敵に回れば、囲んで叩かれて滅ぼされかねない。またヨモツブレードの秘匿IRC通信ログを調べたところ、『ヴァニティ(VANITY)』という謎めいたアカウントと、しばしば連絡を取り合っていることがわかる。
ヴァニティ……英語で「虚栄心」「虚飾」「うぬぼれ」などを意味する。化粧台をvanity table、携帯化粧品入れをvanity bagと言うように、化粧や整形などを指すこともある。デンパルスはスカウト部門事務所でのカメレオンの案件を思い出し、眉根のシワを深くした。彼女が関わっているのか?
この次元ではヴァニティとデンパルスは遭遇していません。アマクダリ・セクトも正式には発足しておらず、アガメムノンやオナタカミ、ヨロシサンなどの一部が結託して、静かに勢力を広げています。オナタカミの戦闘兵器にはすでにクローンヤクザ脳も使われていますが、ヨロシサンは完全にソウカイヤの敵というわけでもなく、中立を宣言するでしょう。
「兎に角、複数の敵が関わってる案件ッスね。気をつけて」「ハイ」「おう」三人は事前調査を終え、各方面に連絡したのち、翌日の指定された時間まで休むことにした。休息は大事だ。
面談
翌日。オハヤシ・ストリート、カチグミエリアのスゴイ・モーターズ所有ビル前に家紋タクシーが止まり、三人の男女が降りた。堂々と正面から受付に行き、名刺を出して「10階で面談の予定がある」と告げる。受付は上に確認をとり、三人をエレベーターホールに案内する。コソコソすれば危険だ。
ポーン。『10階ドスエ』奥ゆかしい電子マイコ音声とともにドアが開き、三人はエレベーターを降りる。眼の前には奥ゆかしい室内庭園が広がり、ゼンを感じさせる和室がある。「オジャマシマス」サイレントシャドウはやや気圧されながら、二人を連れて和室へ向かう。『ドーゾ、お入り下さい』
三人は障子戸を開け、和室にエントリーする。タタミの上には二枚のザブトンが敷かれ、その一枚の上に、着物姿の美青年が座っている。彼の肌は陶磁器めいて白く、瞳は翡翠じみた緑色。奥のトコノマには漆塗りの刀掛け台が置かれ、二本のカタナが掛けられている。彼は雅な動きでオジギした。
「ドーモ、ヨモツブレードです」
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◆ヨモツブレード(種別:ニンジャ/バイオニンジャ)
カラテ 4 体力 9
ニューロン 11 精神力 7
ワザマエ 8 脚力 4/N
ジツ 0 万札 12
攻撃/射撃/機先/電脳 4/ 8/11/11
回避/精密/側転/発動 11/ 8/ 8/11
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:4
◇装備や所持品
▲▲▲▲▲▲戦闘用バイオサイバネLV3:バイオ武器LV3、ダメージ2
出目6で痛打、出目66で痛打+2
△△△△イアイドーアーム:バイオ武器装備時もカタナ/二刀流装備を前提としてスキル使用可
エンハンス不可、装備ペナルティやスロット消費なし
△おそるべき美貌:バイオ武器を原因とする交渉判定難易度上昇を1だけ軽減する
◉バイオニンジャ:体力+2、交渉判定難易度+1、アイテムによる回復量-1
●過剰バイオサイバネ(11個):精神力-4、あと1個で危険生物化
●脆弱性:火炎(精神力1)
◇ジツやスキル
◉◉タツジン:イアイドー
カタナ攻撃の出目6成功時に痛打+1、装備ペナルティなし
●戦闘スタイル
強化精密攻撃:ワザマエで攻撃判定 出目665でナムアミダブツ
強化強攻撃:攻撃判定難易度+1、基本ダメージ2 連続攻撃上限3
●移動スタイル:カスミ 回避ダイス1を獲得しつつ移動可能(脚力+2まで)
●イアイ反撃:回避判定出目に6を含んだ迎撃のダメージが2となる
◉ヒサツ・ワザ:タイノサキ 回避判定の出目66で迎撃を発生させた時、
迎撃ダメージ3、回避UHとする ターン中1回まで使用可
●二刀流使用時:各種ペナルティなし
ダメージ2、連続攻撃+1、攻撃難易度H
●戦闘スタイル
防御構え:回避判定難易度-1、連続攻撃上限1、殺伐なし
回転斬撃:ワザマエHで発動判定、隣接する敵全員に1ダメージ
連続攻撃上限1、痛打・殺伐発生なし
◉痛覚遮断:体力+3、攻撃・射撃による精神力ダメージ軽減1
◉翻弄:自分よりイニシアチブが低い敵のみを攻撃・射撃の標的とする際、
攻撃・射撃ダイス+1 イニシアチブの差が3以上なら+2、6以上なら+3
◉緊急ブリッジ回避:回避判定直前に精神力1消費し発動 シナリオ中1回限り
この手番に1回の回避の判定難易度を-2し、この時のみ使用可能な緊急回避+6
他の回避難易度軽減効果とは累積しない
◉魅了:ニューロン+ジツ値で発動(N)
視線上のモブモータル1人を倒す 出目66でさらに1人、666でさらに2人
シナリオ中1回だけ、交渉判定を振り直せる(精神力1消費)
●連射2、時間差、マルチターゲット
能力値合計:23
元シナリオのデータを整理するとこうなります。カラテは乏しいですがニューロンとワザマエが高く、恐るべき攻撃を仕掛けて来ます。イアイドーで強化精密攻撃すればワザマエで連続攻撃2ができるため、無理して二刀流に切り替えなくても良い気がしますが。
「ドーモ、サイレントシャドウです」「デンパルスです」「ウーリーマンモスです」三人はアイサツを返す。ヨモツブレードは動揺する様子もなく、冷たい視線を投げかけた。「お出でいただき光栄です。少々、人数が多いようですが」「アッハイ、この人々は」「ソウカイヤの方々、ですね」「ハイ」
ヨモツブレードは優雅な態度を崩さない。キョートの貴族の屋敷にいても不自然でないほどの、ネオサイタマでは不自然なほどの美しさだ。バイオ技術によるものであろう。「話は聞かせてもらった。あんたはオナタカミか?ヨロシサンか?」デンパルスはタタミにどっかと座り、交渉に入る。
「ヨロシサンからオナタカミに出向中です。しかし、貴方とは話していませんよ」ヨモツブレードは静かな怒りをデンパルスに向けた。「サイレントシャドウ=サン、美しい貴女がいるべきなのは、ソウカイ・シンジケートではありません。オナタカミ、ヨロシサン、そして……ザイバツです」
ぴしり、と空気が凍った。間違いない。「休戦中だってのに、ウチの構成員に勧誘掛けるとはよォ」デンパルスが凄む。「この件は上に報告してある。荒事にはしたくねェ。ここで手を引いてくれや」続いてウーリーマンモスがなるべく穏やかに交渉する。そうしたタクティクスだ。
「そうは参りません。契約書にサインとハンコを頂きたい。よろしければ、そちらのお二方も」「断る」デンパルスは即答した。ウーリーマンモスは質問で返す。「……ヨロシサンが、オナタカミやザイバツと手を組んだってことか?」「まだ全体ではありませんが、少なくとも、その一部は」
デンパルスは脂汗を垂らした。かなり、ヤバい。ヨモツブレードは淡々と告げる。「オナタカミは、知事代行のシバタ=サンとも密に連絡を取り合っています。ラオモト=サンが日本国の総理大臣といえど、ネオサイタマとキョートを敵に回せば、ソウカイヤにもオムラにも未来はありません」
「降伏勧告かよ」「事実を述べているまで。この情報は、じきにソウカイ・シンジケートやオムラの末端にまで届き、足元を揺るがすことになるでしょう。否、すでに」ヨモツブレードはカタナめいた目を光らせた。「あなた方は包囲されています。命まで取りはしません。我々に従う方が賢明です」
「う、うう……!」サイレントシャドウは震え上がった。「さあ。断るとおっしゃるなら、私がお相手することにもなりましょうが、それでそちらの危機が去るわけではありませんよ。ヨロシサンを完全に敵に回してもよければそうなさるがいい」「ど、どうする」ウーリーマンモスも動揺している。
ニューロンかワザマエで判定、難易度UH。サイレントシャドウ/SSは6D6[315142]失敗!デンパルス/DPは11D6[11164254245]成功!ウーリーマンモス/WMは6D6[352265]成功!SSは戦闘に参加できない。
サイレントシャドウは不安げにデンパルスとウーリーマンモスを見る。このままでは説得されてしまうだろう。だがヌケニンは厳罰だ。どうすれば。「わ、わか……」「「マッタ」」デンパルスとウーリーマンモスは同時に立ち上がった。「この案件、持ち帰らせてもらう。彼女もな。帰るぜ」
「私はサイレントシャドウ=サンの意志を問うています。貴女の口から直接聞きたい。ここまで聞いてソウカイヤにとどまる意志が、まだあるのかを」ヨモツブレードは譲らない。デンパルスは食い下がる。「じゃあ、こうだ。互いに戦って勝った方が、彼女を獲得する。それでどうだ」「決闘ですか」
ヨモツブレードは眉根を寄せる。サイレントシャドウは……こくりと頷いた。「野蛮なことだが、貴女の意志ならそうしましょう。では、一対一。どちらからでもかかって来られよ」ヨモツブレードは刀掛けの二刀には手を伸ばさず、裾から恐るべきバイオブレードを伸ばした!一触即発!
戦闘開始
1ターン目
イニシアチブ:ヨモツブレード/YB(11)→デンパルス/DP&ウーリーマンモス/WM&サイレントシャドウ/SS(6)
YBは…1D6で奇数ならDP、偶数ならWMへ攻撃。1D6[6]。WMへ側転&強化精密連続攻撃、攻撃ダイス+3![24464613][33655][265166]3成功&痛打、3成功&痛打2&ナムアミダブツ[2]頭部痛打!回避N・UH!WMは回避ダイス3、緊急回避ダイス6。緊急回避3を消費し[62][6366]回避!スゴイ!
ゆらり……ヨモツブレードの輪郭が揺らぎ、消える!「ウオーッ!」ウーリーマンモスはとっさにデンパルスとサイレントシャドウをかばい、前に出る!SLASHSH!ヨモツブレードは凄まじい威力の斬撃を繰り出していたが、ウーリーマンモスはビッグニンジャ耐久力で全てを防御し切った!「む」
DPは…集中して精密ジャブ連打、ワザマエ11で5連発![44][22][15][24][524]4発成功。YBは[11][12][36][41]2発命中!残り体力7!
WMは集中してノダチ攻撃[2116][6652]1成功、3成功&殺伐[2]頭部痛打!ともに基本3ダメージ!YBは回避ダイス残り5、緊急回避2を消費し[214][5511]回避!
「勿巫山戯此方!」デンパルスは目から稲妻を散らしつつ、ヨモツブレードへボックス・カラテジャブ四連打!BOBOBOBO!SMASH!「グワーッ!」躱しきれず命中!だが浅い!「ウオーッ!」ウーリーマンモスが剛腕を振るって殴りかかる!「イヤーッ!」紙一重回避!
「一対一だと言ったでしょう、無礼な野蛮人どもめ!」ヨモツブレードは美しい顔を歪め、怒りをあらわにした。「ラオモト=サンは仰ってるぜ!より卑怯な方が勝つってな!」「外にどれだけ味方がいても、ここじゃテメエだけだ!」ナムサン!「どうです、これがヤクザのやり口ですよ……!」
ヨモツブレードはサイレントシャドウに呼びかける。「貴女はこんな連中の、卑劣な犯罪者の仲間でいいのですか?もしヤクザだとバレたら世間からも爪弾きにされ、のけ者にされ、笑い者にされるのですよ?私なら耐えられない!」「うう……」正論!「耳を貸すな、サイレントシャドウ=サン!」
戦闘継続
【続く】
◆
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