忍殺TRPGリプレイ【ビー・ユア・トゥルー・マインド】05
前回のあらすじ:ネオサイタマ上空、現世とオヒガンの狭間に浮かぶキョート城。ロードを失い、崩壊したザイバツの残党は、なおも戦いを続けていた。取り残された女ニンジャ・フローライトは3人の仲間たちと合流し、事態の打開を図らんと動き出す。だがそこへ01010101010101010101010101
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「ハイクは詠ませぬぞ。詠む知性もなかろう」イエローソードは瞬時に重箱の中のスシを食べ(やはり味はしない)、キアイを入れてカタナを構えた。「罪には罰を!イヤーッ!」SLAASH!無軌道ニンジャの首が刎ねられ宙を舞う!インガオホー!「サヨナラ!」KABOOOOOOOM!爆発四散!
「やれやれ、ひどい目に遭った」イエローソードは血を拭う。手こずらせてくれたが、さしたる手練れでもなかった。多勢に無勢では勝てないのは当然だ。「攻撃を引き付けるのも大事な役目だ。よくやった」ドゥームアイズは労をねぎらう。「後は、ティーブレイカーとかいうアホだけね」「ええ」
一同は、西側のタタミ部屋を振り向いた。……そこに異様な人影がいた。頭は天井につくほど高く、その下の闇には輝く2つの目があった。片手には、ティーブレイカーの持っていた超振動ダガーを持っている。その装束もティーブレイカーのものに似ているが、異様に引き伸ばされている。
どくん。どくん。どくん。その場の4人は畏怖に打たれ、心臓が痛いほどに強く拍動する。そこにいるのは、単なるニンジャではなかった。神の化身であった。直感的にわかった。モータルがニンジャに遭遇した時のように、一同は震え上がり、恐怖し、惹きつけられた。それはアイサツした。
『……ドーモ……ブギーマン……です』
戦闘継続
マップ
6ターン目
「ドーモ、ドゥームアイズです」「フローライトです」「ポイズンアサシンです」「イエローソードです」4人は一斉にアイサツを返す。礼儀作法は大事だ。アイサツ終了のコンマ数秒後、ブギーマンと名乗った存在はドゥームアイズの眼の前に立っていた。『イヤーッ!』超高速振動ダガーで攻撃!
「イヤーッ!」ドゥームアイズはブリッジ回避!ブギーマンのカラテやワザマエは先程の無軌道ニンジャたちとは数段上だが、理不尽な強さではない!しかし4人が束になってかかっても勝てるとは思えぬ。負傷者もいる。ここは……「逃げるぞ!」ドゥームアイズは状況判断し、撤退を選択した!
「「イヤーッ!」」ドゥームアイズとフローライトは弾かれるように連続側転!南側の玄関めがけて移動しながら牽制のスリケンを投擲する!SMASH!『グワーッ!』ブギーマンに命中!カラテやスリケンは通用するようだが、正面から戦って勝つ自信はあまりない。フローライトは下唇を噛んだ。
「「イヤーッ!」」ポイズンアサシンとイエローソードは小部屋から飛び出し、南側の玄関めがけて移動しながらスリケン&カラテ斬撃!SMASH!『グワーッ!』ブギーマンに命中!だが邪悪な影は苦悶しながら、食らったスリケンを体内に取り込んでいく。何か……何かを「食らっている」のだ!
7ターン目
01010101ブギーマンは再びドゥームアイズの眼の前にいた。「え」『イヤーッ!』超高速振動ダガーを振り下ろす!「い、イヤーッ!」紙一重で見切って側転回避!先程の攻撃よりも速度が、カラテが増している。もしや、「学習」しているのか?戦えば戦うほど、何かを奪えば奪うほど……!?
ドゥームアイズは再び状況判断する。このままこいつを野放しにして逃げてよいのか?追ってくるのでは?逃げるのはいつでも可能だ!「イイイヤァアアアーーーーッ!」彼は脂汗を振り絞り、その場で回転!ブギーマンのみぞおちにヤリめいたキックを放つ!『イヤーッ!』跳躍回避!ワザマエ!
「見掛け倒しですね!イヤーッ!」フローライトは連続側転で追いつきスリケン投擲!SMASH!『グワーッ!』命中!「「イイイヤァアアアーーーーッ!」」ポイズンアサシンとイエローソードも踏みとどまり、踵を返してブギーマンへ斬りかかる!SLASHSHSH!『グゥワーッ!』命中!苦悶!
8ターン目
0101101011010……ブギーマンは01分解して唐突に消え去った。滅んだのか。否。気配は奥の部屋、先程までいた場所に移った。逃げたのか。否。どるん、どるん、どるん、ドルルルル……トップスピードが乗っていた違法改造大型バイクのエンジン音!『これ……は……宝……だな……!』ナムサン!
「どうする?4人で囲んで殴れば、結構いけそうだけど」「いえ……撤退しましょう」フローライトは首を振った。屋敷が次第に歪み、萎び崩れていく。この屋敷を維持していた何らかの力が失われたのだ。それはおそらく、あのブギーマンが奪ったのだろう。オヒガンから到来した得体の知れぬ存在が。
「「「「イヤーッ!」」」」4人のザイバツニンジャたちは頷き、玄関から連続側転で脱出した。0101010101010……屋敷は01分解し、瞬く間に萎れ、消えていく。フローライトは思わず後ろを振り向いた。崩れ去る屋敷。オキ諸島での日々、謎の怪物、従者たちの死。閉じ込めていた思い出が蘇る。
「シツレイ!イヤーッ!」動きを止めていたフローライトを、イエローソードが米俵めいて担ぎ上げた。「あ」「俺は昔オオサカでヒキャク・パルクールをやっていた。脚力には自信がある」彼は傷ついた身体にカラテをみなぎらせ、全速力で駆け出した。フローライトは目を閉じ、ため息をついた。
「ありがとう、ございます。……私の責任ですね」
エピローグ
ドンコドンコドンドン……ドンコドンコドンドン……遠くからタイコの響きが聴こえてくる。イクサに用いる陣太鼓。ムーホン者のニーズヘグたちが城内へ入ったか。フローライトたちは身を伏せ、床に耳をつけ、情報を掴み取ろうとする。ブギーマンは……追ってこない。どこかに潜んでいるだろう。
ここは比較的安定している。カラテとエゴ、礼儀作法の力で秩序が保たれている。フローライトたちはあの後、別の茶室を見つけてセーフティポイントとした。イエローソードの負傷を手当てし、休息をとるには充分な程の。「スシを食べても味がしない」そういう彼の顔は影じみて青ざめている。
「これからどうする」「探索を続けます」「脱出口などあるのかねェ」「探すしかないな。IRCやUNIXならともかく、コトダマ空間やらオヒガンやらのことはさっぱりだ」「それがわかる味方を探せばいい」「いりゃいいがな。もしムーホン者の中にいるなら、彼らと手を組むのか?」「さあ……」
3人は茶室に向き合って座り直し、これからのことを相談する。フローライトは茶室の隅で奥ゆかしくチャを立てる。城内で飲食しても良いかは躊躇ったが、自我を保つのには必要だろう。「一緒の茶釜からチャを飲めば仲良し」と古事記にも書かれているではないか。「……タイコの音を追うか」
ドゥームアイズが提案する。彼はネンコの上では一番センパイにあたる。「我々だけではジリー・プアー(ジリ貧)だ。もっと仲間がいる。ムーホン者であろうと、そうでなかろうと。元は同じギルドの仲間ではないか。合流し、話してみよう」「……そうね」「仕方あるまい」「……承知しました」
3人は頷く。他に向かうあてもない。4人は揃ってチャを飲み、立ち上がった。いかなる状況にあろうとも、ここはザイバツ・シャドーギルドだ!
【ビー・ユア・トゥルー・マインド】終わり
リザルトな