忍殺TRPGリプレイ【コーリング・フォー・ユア・デビルサイド】02
前回のあらすじ:ザイバツのネオサイタマ駐留部隊主力を追い払ったソウカイヤだが、オナタカミを筆頭に反ソウカイヤ勢力はまだ多い。ソウカイヤはこれに対処するため、ネオサイタマにおける様々な情報工作活動を強化することにした。これも立派なイクサなのだ。カラダニキヲツケテネ!
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フューネラルが指を鳴らすと、机の上にドサドサと書類が降ってきた。「とりあえず、可能そうな案件を手当たり次第に実行して下さい。私もサポートはしますが、なるべくあなた方で解決する方が望ましい」「了解です」かくして、ソウカイヤ外交部門は対・反ソウカイヤ工作活動を開始した!
工作開始
煽動(カラテ)ミッション
01 非協力的メガコーポの株主総会への出席・威圧
02 非協力的メガコーポへの恫喝や労働組合結成の支援
03 NSPDやハイデッカーに先んじての軽犯罪解決
04 公務員やその家族へのヤミ金融による融資
05 地道な地廻り活動
06 バウンサー(ヨージンボ)部門の活動補助
07 歴史的施設再開発への反対運動
08 自作自演の救助活動
09 公共工事予定地に対する地上げ、売却時の恫喝交渉
10 ヤクザに対する裁判への証人としての出廷
交渉(ニューロン)ミッション
11 ヤクザクランへの闇取引の保証、中立的ダンゴウ場所の提供
12 マスメディアとの関係構築
13 ヤクザアリバイ会社の運営
14 市議会議員選挙への協力
15 NSPDへの癒着工作
16 ヤクザクランへの闇投資
17 ヤクザクランの再懐柔
18 ヨロシサン本社周辺のヤクザクランへの支援
19 ケオサキのヤクザクランへの支援
20 防衛予算増額のための市議会への干渉
隠密(ワザマエ)ミッション
21 ネオカブキチョに蔓延する危険薬物の生成者の捜索
22 ヤクザ抗争ショウビズ化についての証拠の確保と拡散
23 違法薬物流通に関するNSPD関与についての証拠確保と拡散
24 暗殺野球の妨害
25 反ソウカイヤ系末端ニンジャの洗い出しと被害者救済
26 若手モデル失踪事件に関する調査と情報拡散
27 非協力的メガコーポの調査
28 非協力的カチグミやヤクザクランへの工作
29 野良ニンジャの洗い出しと報告
30 敵対衛星組織の洗い出しと妨害・挑発
「実際多くない?」フォーコがうんざりした表情を浮かべた。「手分けすれば早いね」「難しそうなのは後回しにして、他の部門に任せましょう」「はーい」「私たちカラテあまり強くないから、交渉や隠密の方が確実そうね」三人は書類の山と格闘しながら、向いていそうなミッションを探す。
「……では、私はヤクザクランの再懐柔を行うとしましょう」「私はドラッグ関係をやってみるね」「カチグミへの工作なら任せて!」三人はそれぞれの得意分野を選び、行動を開始!
ヤクザの事務所
ここはネオサイタマの掃き溜め、ツチノコ・ストリート。その濁流の中に浮かぶ、薄汚いビルディングの13階の一室。ここに零細ヤクザクラン「エレファントヘッド」の事務所がある。伝統主義的な事務所の応接室には、背広を着たグレーターヤクザのカワセマが、のっぴきならぬ表情で座っている。
「ど、ドーモ……その節は大変お世話になり……いつも大変お世話になっております」カワセマはハンケチで冷や汗と脂汗を拭い、対面に座るニンジャ、ブルータルにペコペコとオジギする。彼には実際恩義がある。不正を行っていたソウカイニンジャを討伐し、倍増した上納金を元の額に戻したのだ。
「そ、それでその、ご用件はなんでございましょう。上納金ならしっかりと納めさせて頂いておりますが」新たな集金部門のニンジャは別におり、不正をしている様子もない。では、なぜ彼が?「ええ。集金部門の方とも話がついておりまして。そちらの利益になるビジネスの話を持ってきたのですよ」
交渉開始
ブルータルはサラリマンじみた営業スマイルを浮かべつつ、スーツケースから書類を取り出す。表紙には『あなたは借りられる!ふわふわローン』とある。「うっ……」カワセマはやや鼻白む。ネコソギ・ファンド系列の悪名高い高利貸しだ。「資金繰りにお困りの様子。投資に興味はお有りで?」
「うう、あの、興味はござい、ますが、ローンを組むとなると返済が……」カワセマはオイランじみた卑屈な笑みを浮かべる。相手は恐るべきソウカイ・シンジケートのニンジャ・エージェントだ。隙を見せればどれだけカネをむしり取られるか知れたものではない。彼のヤクザセンスの見せ所だ。
「なるほど。では、こちらの件はどうでしょう」ブルータルは最初の威圧的な要求をスッと取り下げ、第二案を提示した。「『闇取引の保証と、中立的なダンゴウ場所の提供』……資金繰りに困っておられるのなら、周辺との闇取引は必須ですね。我々が仲介者となり、優先的に取り計らいましょう」
「……ふむ。ちょっと拝見」「どうぞ」カワセマは真剣な表情で書類に目を通す。生き馬の目を抜く裏社会でヤクザクランを経営し、生き残っていくためには、上位の暴力組織との提携は不可欠だ。「なかなかいい条件ですな。しかし、正直言ってウチは零細クラン。なぜこうも良くしてくださる?」
カワセマは油断なくデスクに置かれた六法全書を撫でた。ブルータルは答える。「私どもは裏社会に一定の信頼と秩序をもたらし、ヤクザの救世主たらんと日夜つとめております。それには伝統と権威が必要です。このクランは実際伝統があり、奥ゆかしい。ゆえに我々の協力者にふさわしいかと」
ブルータルは真剣な表情でカワセマの目を覗き込む。カワセマは……目を細めて涙ぐみ、深々とオジギした。「そこまで、ウチを買っていてくださるとは……感服いたしました」「いえいえ。我々は共存共栄、WIN-WIN関係でなければともに損ですから」ブルータルはさらに別の書類を差し出した。
「これはソウカイヤが新たに立ち上げたシノギに関するファイルです。後ろ盾のない下層市民や債務者に我々が偽造した市民IDなどで名義を保証し、賃貸契約を結ばせて働かせ、見返りにカネを受け取れます」「なるほど」「名刺や身分証、連絡先もそれぞれ用意できます。なかなかいいビジネスかと」
ネオサイタマには「保証人制度」という強固な相互管理システムが存在する。堅実な生活基盤や学歴を持っているか、身内にそのような者がいれば賃貸契約や就職、融資等に際して有利だが、そうでなければ様々な壁にぶつかる。そうした弱者を「救済」し、良い条件で働かせてカネを搾取するのだ。
用意される偽の身分は、公務員やオナタカミ社の正社員など、社会的信用の値が比較的高いものだ。トラブルが起きれば担当ヤクザクランにはしらを切らせ、オナタカミに対する社会的信頼を失墜させられる。ソウカイヤとオムラが連合してオナタカミに対抗していることは、今の裏社会では常識だ。
「……わかりました。喜んでやらせていただきます」カワセマは改めて深々と頭を下げた。オナタカミ・トルーパーことハイデッカーには、シノギに関してたびたび煮え湯を飲まされても来た。彼らに対抗するにはソウカイヤに縋るほかあるまい。表社会のカタギを食い物にしてこそのヤクザである。
「よろしい。では、ついでに噂を広めて頂きたい。『オナタカミはネオサイタマ市政と手を組み、伝統的な裏社会を抑圧する血も涙もない悪党だ。だがソウカイヤは違う。ヤクザを救うのはソウカイヤだ』と……!」ブルータルはカワセマの手を握り、そう告げた。「ハイヨロコンデー!」契約成立!
ナムアミダブツ、なんたる欺瞞。ソウカイヤは所詮暗黒組織、裏社会を抑圧して搾取する血も涙もない悪党の集団であることに変わりはない。だが「無慈悲なダイミョに慈悲深いという名声があると二倍有利」と平安時代の兵法家ミヤモト・マサシは説いている。欺瞞は勝ち残るために必要なのだ。
交渉終了
ネオカブキチョ
一方、マキーナは外交部門の事務所に隣接する歓楽街、ネオカブキチョを訪れていた。最近この街では危険薬物「ピュア・オハギ」が蔓延しており、ソウカイヤ系の伝統的な違法薬物密売市場が荒らされている。密売ルートを辿ったところ、正体不明の生成業者がどこかに潜伏していると判明した。
用心深い相手だが、カネと薬物の流れを辿れば見つけられない相手などいない。諜報偵察部門による対象の潜伏場所捜索を補助し、威力部門の確保チームに任務を引き継ぐ体勢を整えねば。「まずは、デンパルス=サンやネザークイーン=サンに話を通しておくとするね」両者とも既に知り合いだ。
調査開始
……マキーナはデンパルスやネザークイーンを介してネオカブキチョやニチョームの顔役とダンゴウを重ね、「ピュア・オハギ」の密売ルートをさらに詳しく調べていく。すると驚くべき事実が判明した。NSPDの一部の課が密売に関わっているようなのだ。以前ソウカイヤも関与してはいたが……。
担当ニンジャであったフレイムタンがNSPD49課に始末された後、いつの間にか別組織からニンジャが送り込まれ、このルートを掌握してしまったのだ。犯罪組織と癒着しがちなNSPDが違法薬物を取り扱うこと自体は珍しくないが、反ソウカイヤ系組織と繋がりがあるとなると由々しき事態だ。
しかし、決定的な証拠は掴めていない。隠密行動によって証拠映像を撮影し、ヤクザIRCに放流すれば一発だが、相手はかなり用心深い。となると……NSPDの他の課をソウカイヤ側に取り込み、問題の課を内部調査させるのが良いかも知れない。タテワリ組織構造のNSPDに課同士の連携は希薄だ。
……マキーナはNSPDの別の課と秘密裏に接触し、交渉の結果ソウカイヤに引き込むことに成功した。腐敗しているとはいえ、デッカーの捜査能力は過重労働で判断力が低下した通常のマッポの50人分に相当する。たちまち内部の機密情報が明らかになり、問題のニンジャのアジトやヤサも掴めた。
「……というわけね」マキーナは中間報告をデンパルスおよびネザークイーンに行う。「心底感謝ッス」「やるわねェ」二人はマキーナの的確な情報収集能力を賛嘆した。失敗を即座にカバーし、さらなる情報を引き出す手段を調達してくるとは、ソウカイヤ外交部門の面目躍如である。
「ニチョームはネザークイーン=サンに任せるけど、ネオカブキチョの方の被害者救済はソウカイヤでやるね。慈善事業も支持を集めるには必要よ」「了解ッス。問題のニンジャは、オレらが踏み込んで捕縛まえりゃ解決ッスね」デンパルスは拳を鳴らす。さらに裏を洗わねば。
調査終了
かくてブルータルとマキーナは工作活動を成功させ、ソウカイヤの評判を裏社会で高めることになった。その頃、フォーコは……?
【続く】
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