忍殺TRPGリプレイ【ヘッド・ハント】04
前回のあらすじ:ソウカイ・シンジケートの女ニンジャ、サイレントシャドウに、密かにヘッドハンティングの声がかかった。相手はソウカイヤと敵対中のオナタカミ社だ。彼女は悩んだ末、センパイたちとお断りに行くことに。スカウトのヨモツブレードをなんとか倒したものの、新手が出現!
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「シューッ……!」デンパルスはザンシンした。恐るべき強敵であった。「アバッ……なぜ……なぜだ、サイレントシャドウ=サン……」ヨモツブレードはまだ生きている。なんたる生命力か。「ユウジョウ、です」「アバッ……だが私を倒しても、あなた方はすでに……!」ターン!フスマが開かれた!
???
三人は振り向く。そこにいたのは、黒いパンツスーツ姿の妙齢の女性だ。長身で引き締まったモデルめいたスタイル。身長は6フィート(180cm余)はあろう。どこか気怠げなアトモスフィアと、油断ならぬ手練れのカラテを伴っている。「ハイそこまで。ドーモ、ヴァニティです」
「……ドーモ、デンパルスです」「ウーリーマンモスです」「サイレントシャドウです」「アバッ……ヨモツブレードです」各々アイサツ。「アンタは何処の代理人だ。オナタカミか、ヨロシサンか、ザイバツか」デンパルスは用心深く訊ねる。ヨモツブレードと連絡していた相手だ。
ヴァニティは薄く笑い、部屋の中の様子を注意深く見渡す。「見たところ、今回のやり方を続けても実りはなさそうねェ。ヨモツブレード=サン」「おい」「アイアイ、失敬。私は……治安維持組織『ハイデッカー』長官、ムナミ・シマカタ=サンの部下。マッポじゃないけど、弁護士よ」
「ハイデッカーだと」「そう。別名オナタカミ・トルーパー。その正体は、ご存知でしょうけどクローンヤクザ。とっくにオナタカミとヨロシサンは手を組んでるってわけ……」「ソウカイヤにもクローンヤクザはいるがな」「それはそれよ」ヴァニティは肩をすくめた。「とにかく、そっちの敵」
「ヨモツブレード=サンとIRCで連絡を取り合ってたようだが」「私はそいつのお目付け役よ。一人でやるっていうからやらせてみたけど、ちょっと難しかったかしら」「要は、一枚岩じゃあねえェってことだ」デンパルスは脂汗を垂らす。こいつは、強い。今の自分たちでは逃げ切れるかどうか。
もし二人が同時に襲いかかって来たなら、こちらの命はなかっただろう。そうでなかっただけでもツイている。「さて、お話しはこれまで。ここからプランBね。まあ、要はカラテだけど」ヴァニティは長い両腕を広げ、凄まじいカラテを放った。「死にたくなければ、彼女をこっちに渡しなさい」
戦闘開始
1ターン目
「イヤーッ!」ドン!ヴァニティはウーリーマンモスへ飛びかかり、異常なカラテをみなぎらせた攻撃を叩きつける!狙うは頭部と脚!「イヤーッ!」デンパルスがかばう!パパパン!ボックス・カラテ連打で攻撃を捌き、紙一重で回避!「半端ねェカラテッスねェ、オネエサン。当たればよォ」
「イヤーッ!」デンパルスはヴァニティの頭上を飛び越え、ヨモツブレードへカイシャクのスリケン投擲!「死なせるのも勿体ないか!フン!」ヴァニティがかばい、裏拳で弾き落とす!「ウオードッソイ!」KRASH!ウーリーマンモスは全力疾走してフスマを蹴破り、隣の部屋へ飛び出した!
「キエーッ!」KRASH!サイレントシャドウは南側の障子戸を蹴破って脱出し、廊下に飛び出す!その姿がぼやけ、四人にブンシンした!「二兎、無兎、ってやつッスねェ。そいつは返してやるから、オレらは逃がして下さいや」「ハハ!」ヴァニティは笑う!
2ターン目
「じゃあ、逃げてご覧なさい」彼女はヨモツブレードを無造作に片手で持ち上げ、背負った。「う……ドーモ」「手練れのニンジャ戦力は貴重なの。お目付け役の責任もあるし」ヴァニティはデンパルスを睨む。「然れじゃ、お然らば!イヤーッ!」「「イヤーッ!」」三人は全力で撤退!
3ターン目
「逃がさないわよ!イイイ……イイイヤァアアアーーーッ!」ヴァニティは全身にカラテをみなぎらせ、ヨモツブレードを背負ったまま跳躍!ウーリーマンモスめがけ必殺の拳を放つ!BOOOM!デンパルスが歯を食いしばってかばう!「イイイヤァアアアーーーッ!」大雑把なパンチを捌き、迎撃!
「おっと!」ヴァニティはひらりと躱し、廊下に着地する。「「「イヤーッ!」」」KRASH!三人のソウカイニンジャたちはドアを蹴破り、室内庭園から飛び出す!さらに窓を突き破り10階から逃走せんとす!「もう少し追ってみるか……ン」ヴァニティは眉根を寄せた。フロア一面に、光るキノコ。
???
『フォハハハハ……キノコは光りますか?おかしいと思いませんか貴女?』不気味な声がフロアに響き、逃げるソウカイニンジャたちが極彩色の蝶の群れに覆われて見えなくなる!「救援か!ドーモ、ヴァニティです!」『フォフォフォハハハハ!ドーモドーモ、フューネラルです!ドーモ!』
蝶の群れの中から、シルクハットを被った異様ないでたちのニンジャが現れた。『ゲイトキーパー=サンからお話しを伺い、こちらの構成員たちを救出に参った次第。わたくし、こう見えてソウカイヤ外交部門の顧問でございますので、今後お話しがあればご連絡願いますね』彼は名刺を差し出す。
ヴァニティは名刺を交換する。「無能な外交部門もあったものね。そっちはもはやネズミ袋よ。あなたもこっちへ寝返ったら?」『そうも参りませんでして。ラオモト=サンとゲイトキーパー=サン、ダイダロス=サンの目の黒いうちは、わたくしムーホンもゲコクジョもいたしませんよ!フォハ!』
フューネラルは意味有りげに目配せし、ステッキで掌を叩きながら嘲笑った。『ともあれ、ここはお互いにテウチといたしましょう。幸い死人も出ていないようですし、今後は共存共栄と行こうではありませんか!』「……そうしましょうかね」ヴァニティは肩をすくめた。仕方あるまい。
『では、わたくしもオサラバ。オタッシャデー!フォフォフォハハハハ!』極彩色の蝶の群れが視界を埋め尽くしたかと思うと、フューネラルは三人のソウカイニンジャたちとともに、忽然と姿を消していた。
戦闘終了
エピローグ
……かくて、サイレントシャドウに降り掛かったヘッドハンティング案件はなんとか解決した。だがソウカイヤ・オムラ連合が政治的に孤立を強め、同盟組織や傘下組織、所属ニンジャらの離反が相次いでいる状況に変わりはない。敵の網は大きく広がり、今やソウカイヤを包囲しているのだ。
今回は乗り切ったものの、誘惑や脅しに負けてヘッドハントされ、ヌケニンとなる者もまだ出て来よう。それを未然に防ぎ、構成員の忠誠心とモチベーションをアップさせるには、十分な給与や待遇、さらには目に見えて優勢な状況を作り出すことが必要不可欠だ。すなわち、敵への反撃である。
遠く離れたキョート共和国との戦争は、ネオサイタマに大きなインパクトを与えない。ならばネオサイタマに潜む敵対組織、特にザイバツの駐留部隊を炙り出して滅ぼすのが最も良い。敵将の首をとって見せしめにしてやれば同盟者や傘下組織も震え上がり、構成員は大いに士気を上げることだろう。
「次は、こちらが敵の首を狩る番ですね。フォハハハハ!」フューネラルは高層ビルの屋上に立ち、重金属酸性雨に煙るネオサイタマを見下ろして、不気味な笑い声をあげた。
【ヘッド・ハント】終わり
リザルトな