忍殺TRPGリプレイ【ヘヴンズ・フォーリング・ダウン】03
前回のあらすじ:ネオサイタマ南西、磁気嵐の荒野。ここに墜落したツェッペリンを秘密裏に回収するため、アシッドウルフは若き三人のニンジャを送り込んだ。だが墜落位置に到達する前に、三人は湾岸警備隊のニンジャを含む戦力と遭遇、戦闘を開始する!カラダニキヲツケテネ!
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「「「「「援護射撃ーッ!」」」」」BRTTTTTTTT!銃弾の雨がサイバーメイヘムに降り注ぐ!アブナイ!「キエーッ!」紙一重回避!スゴイ!だが!クオオオー!クオオオー!輸送車両の荷台から黒いバイク型戦闘兵器が二機降車!高速で廃ビルへ接近する!『『敵対存在を排除重点します』』
「クソ……!」アースハンドは舌打ちする。敵はかなりの戦力だ。こんなところで手間取っている暇はないというのに!「殺せる敵から着実に殺そう」デッドリーパーは銃のマガジンを交換しながら冷静に告げる。狙撃による支援もあるし、ここに敵を惹きつけておくことが必要なのだろう。
残った湾岸警備隊員は五人。新手の戦闘兵器は二機。敵ニンジャは二人。こちらはニンジャが三人と、狙撃ニンジャが一人。……問題なし!
戦闘継続
4ターン目
「イヤーッ!」廃ビルの残骸からアースハンドが側転で飛び出し、手前の湾岸警備隊員にスリケン!ほぼ同時にスナイパースリケン!SMASH!「アバーッ!」サツバツ!両眼にスリケンが突き刺さり即死!「こっちだ!」「了解!イヤーッ!」サイバーメイヘムは北東ビル廃墟に飛び戻りスシを補給!
「またガキか!死ねッ!」ダストブレイカーはハンドガンを構え論理射撃!BLAMBLAM!「ハッ!」サイバーメイヘムはビル残骸を遮蔽物にして躱す!「イヤーッ!」続いてデッドリーパーが飛び出し、北西の湾岸警備隊員へ二挺拳銃を撃つ!BLAMBLAM!「アバーッ!」射殺!残り隊員三名!
『かかれ!イヤーッ!』『『モータートラは賢く強い』』「「「ウオオオーーッ!」」」ベンドナイトはダストブレイカーをかばいつつスリケン!戦闘兵器モータートラは駆けつけながらアームバルカンを展開、銃弾の雨を降らせる!残る隊員たちも叫びながらアサルトライフル連射!BRTTTTTTTTTT!
「「「イヤーッ!」」」三人のニンジャは見事に回避!ゴウランガ!「あっちに逃げるぞ!」「「了解!」」
5ターン目
「「イヤーッ!」」アースハンドとサイバーメイヘムは、もといた廃ビルの陰に隠れた!残骸が遮蔽物となり射線を遮るのだ!そして!SMASH!「アバーッ!」またしても湾岸警備隊員がスナイパースリケンを受け即死!残る隊員は姿勢を低くしているが、敵は狙撃ニンジャ!次に死ぬのは……!
「TAKE THIS!」ダストブレイカーは諦めず、デッドリーパーへハンドガン論理射撃!BLAMBLAM!「ンアーッ!」命中!ウカツ!デッドリーパーはそのまま廃ビルから落下し……「イヤーッ!」側転を繰り返して南側の廃ビルの陰に隠れた!ならば!『行け、モータートラ!』ベンドナイトが命令!
『『クオオー!』』二機の戦闘兵器は猛獣めいて吠え、高速で廃ビルの裏へ駆けつけてアームバルカン展開!BRTTTTT!BRTTTTTT!「「イヤーッ!」」ニンジャたちは必死で銃弾の雨を躱す!『これで戦闘データが取れるな』ベンドナイトは無機質な声で呟く。『傷ついて出てきたところを撃つ』
6ターン目
「kill-9 U!」アースハンドは北側のモータートラへ遠隔ハッキング!ZZT!ZZT!『ピガーッ!』命中!大きくよろめいたところへスナイパースリケン!SMASH!『ピガーッ!』「イヤーッ!」サイバーメイヘムがトビゲリ!『ピガーッ!』命中!だがまだ動く!デッドリーパーは二挺拳銃を構える!
「TAKE THIS!」BLAMBLAM!北と南のモータートラへ同時に射撃!『『ピガーッ!』』命中!北の方は黒煙を吐いて活動停止!南の方はなおも動く!『敵を許さないです』BRTTTTTT!「イヤーッ!」アースハンドは難なく見切って回避!「なかなかやるな」ダストブレイカーはモニタ画面を見つめる。
この部隊の任務はツェッペリンへの破壊工作ではなく、オナタカミ社の試作兵器「モータートラ」の実地試験だ。野良ニンジャが出るとは予想外だったが、思った以上の戦闘データが獲得できた。しかし……『これでは勝てない。撤退重点』ベンドナイトは無機質に告げた。「……了解」「「了解」」
ダストブレイカーは悔しげに頷き、生き残った湾岸警備隊員も頷いた。部隊の損害が大きすぎるし、負傷も疲労も大きい。野良ニンジャの数は三人。さらにスナイパーもいる。ここにとどまるのはあまりに危険だ。
「イヤーッ!」『イヤーッ!』ダストブレイカーとベンドナイト、および生き残りの湾岸警備隊員たちは、モータートラが足止めしている間に戦場を離脱した。輸送車両に戻り、速やかに安全地帯を目指すべし!隊員の遺体は捨て置くことになるが……「いずれアダウチせねば、気がおさまらんぞ!」
7ターン目
「kill-9 U!」ZZTZZT!『ピガーッ!』SMASH!『ピガーッ!』「イヤーッ!」『ピガーッ!』残るモータートラもニンジャたちの猛攻を浴びてたちまち沈黙!『『証拠隠滅重点。SAYONARA!』』KABOOOOM!ナムサン!大規模な自爆だ!廃ビルの残骸が巻き込まれ、崩れ落ちる!アブナイ!
「「「イヤーッ!」」」三人はとっさに連続バック転回避!「フーッ……」周囲から輸送車両が撤退していく。どうやら被害甚大、状況不利と判断したようだ。「サイバー馬は、無事?」「別の場所に潜ませておいた。無事だ」三人はしめやかに馬の隠し場所へ駆けつけ、飛び乗った。急がねば!
戦闘終了
???
湾岸警備隊の輸送車両部隊は、ツェッペリンが墜落した地点とは別方向に去っていった。三人はサイバー馬を駆けらせ、目的の座標へひた走る。
……やがて、すり鉢状の盆地が見えてきた。あの底に墜落ツェッペリンがあるはず。しかしすでに大型トレーラーとクレーン車両が展開し、ツェッペリンを回収して積み込もうとしている。スマコチラ社だ。「遅かったか!」アースハンドが舌打ちした。「襲って殺して奪えば済むわねェ!」
サイバーメイヘムが凶悪に嗤った。だが……「「アバーッ!」」「「「アババーッ!」」」トレーラーやクレーン車両の近くから断末魔の悲鳴!「なんだ!?」三人はサイバー馬を飛び降りて身を伏せ警戒する!その時!『ザザザ……遅かったな。ドーモ、サイオコールです。ただいま制圧中だ』
三人の秘匿IRC端末に、またしても。「ど、ドーモ。……アリガトゴザイマス」アースハンドはそう答えるしかない。『ハハハ……制圧完了。社員3名、雇われのサイバネ傭兵が2名。ニンジャなし。楽な作業だ』サイオコールは邪悪な笑い声をあげた。『近づいてよし。私はツェッペリンの中にいる』
???
『改めまして、ドーモ。サイオコールです』墜落ツェッペリンの中から、長身痩躯の重サイバネニンジャがアイサツした。宇宙飛行士めいた白いサイバネフレームと、巨大なサイバネアームが特徴的だ。「「「ドーモ」」」三人はアイサツを返す。彼がいなければ、ここにたどり着けなかっただろう。
『君たちが別地点で騒動を起こしたおかげで、ここに簡単に潜入できた。これは君たちの手柄だ』「いえ……あなたのおかげです」『奥ゆかしいな!』サイオコールは愉しげに笑い、ツェッペリン内部へ三人を導いた。『アシッドウルフ=サンと私は、利害が一致した協力関係にある。今のところはね』
アシッドウルフからの連絡はない。サイオコールに聞けということだろうか。『次の目的地も彼から指定されている。ここからそう遠くない。チョッコビン・エクスプレス社の廃棄された倉庫だ』サイオコールはそう告げた。『ツェッペリンを浮上させ、まずはそこへ運び込む』「「「ハイ」」」
チョッコビン社は、ネオサイタマとキョートを結ぶ新幹線を運営する鉄道会社だ。その車両用倉庫なら、ツェッペリンを運び込むことは可能だろう。『このマグロは、獰猛なサメを誘き出す餌なのだ。我々はそれに釣られたエージェントを始末して、マキモノや情報を奪う。それが任務だ』「ハイ」
『アシッドウルフ=サンの情報操作で、スマコチラ社が抜け駆けして隠匿する、ということにしてある。スマコチラは否定し、アサノサンやオナタカミが部隊を差し向けるわけだ』「これが餌なら、寄って来る戦力も相当ねェ」「もし我々の手に負えない場合は、どうしますか?」『遠隔爆破する』
サイオコールは事もなげに答えた。『燃料炉に細工済みだ。ニュークだから相当に離れねばならんがね。……さ、運転席へ急ごう』「「「ハイ」」」
???
……数時間後。マグロ・ツェッペリン「MG775」は、無事に目的の倉庫へ着陸した。人の気配はない。ツェッペリンの中にも生体反応はなかったが、先んじて「掃除」しておいたというところだろう。『これでよし。後は敵が来るまで自由行動だ。一旦解散』「「「ハイヨロコンデー!」」」
……しばらくの間、三人はツェッペリン内部を探索し、物資や情報を調達したり、カラテを鍛錬したりして過ごした。罠を仕掛けたり、貨物を移動させて遮蔽物としたり。時間は有意義に過ごさねばならない。「……アシッドウルフ=サンは」「連絡がない。いつものことだろ」「……そうだけど」
デッドリーパーは訝しんだ。このツェッペリンを餌にして、暗黒メガコーポの部隊を誘き寄せる。それもまた、アシッドウルフの謎めいた単独行動を円滑ならしめるための餌だろう。自分たちは駒で、彼は頭脳だ。彼は結局のところ、何を目論んでいるのか。そして『鷲のニンジャ』とは何なのか。
突然現れたサイオコールは、頼もしい味方だが胡散臭くもある。彼に色々なことを聞いてもはぐらかされるだけで、答えてくれなかった。アースハンドやサイバーメイヘムは、作戦行動について考えるばかりで、裏の動きについては興味がないという。現実的と言えばそうだが、しかし……!
彼女は頭を振って、余念を振り払う。良くない。殺人マシーンは余計なことを考えてはダメだ。銃のように殺すだけの機械に徹さねば。……本当に?「スゥーッ……ハァーッ……」デッドリーパーは深呼吸する。そうだ。考えることは、必要だ。そうしなければ。私には……自我がある。機械ではない。
【続く】
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