忍殺TRPGリプレイ【フィール・ザ・ヒート】前編
邦題:熱さを感じろ(Feel the heat)
ドーモ、三宅つのです。これは、つのの自作シナリオ「バーニング・アップ・ザ・タウン」を元にしたリプレイ小説です。テストプレイのためにほぼそのままでやってますので、ネタバレにご注意下さい。
「作成直後から壁超え前のニンジャ3-5人」用のシナリオです。新たにニンジャを作成してもいいのですが、流石に作りすぎなのでちょっと抑え、これまで作って生き残ったソウカイ・ニンジャの中から、まだ出番が少なくほとんど成長していない連中をチョイスします。時系列も考慮してみましょう。
今回挑むのは、この3人です。
◆ファイアシーフ(種別:ニンジャ)
カラテ 4 体力 4
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 4 脚力 2
ジツ 2 万札 21>11
DKK 0 名声 1
◇装備や特記事項
☆カトン・ジツLV2:隣接した3×3マス内の敵に1ダメージ(回避NORMAL)
中心点の敵はD3ダメージ
▶テッコLV1:カラテ判定ダイス+1、回避ダイス+1
▶生体LAN端子LV1:ニューロン判定ダイス+2、イニシアチブ+1
○生い立ち:ブラインドタッチ キーボード使用ハッキング時に判定ダイス+1
生体LAN端子とのボーナス重複不可
◆ウイルス入りフロッピー:ハッキング判定ダイス+3(使い捨て)
能力値合計:18 回避ダイス:7
前回の冒険?の後、余暇1日と万札10を消費して「生体LAN端子」を入れました。ハッカーらしくやっていきましょう。時系列的には5月にトーフ屋襲撃事件でニンジャとなり、6月頃にレストラン襲撃事件を起こして下水道へ逃れ、7月頃にソウカイヤに加入し、ソニックブームの愛車を洗車してからすぐ、となります。首筋にIRC通信機がつけられており、ソウカイヤに逆らおうとすればBOMBされますが、生体LAN端子でもあるわけです。
◆ランタンシャーク(種別:ニンジャ)
カラテ 5 体力 7
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 6 脚力 3
ジツ 3 万札 0
DKK 0 名声 3
◇装備や特記事項
☆サメ・ニンジャクラン:ジツ値3
☆ドトン・ジツLv1::土中を脚力の倍速で移動、直後の近接攻撃難易度-1
●噛みつき攻撃:特殊近接武器、基礎攻撃難易度HARD、ダメージ2
●頑強なる肉体:体力+2
○生い立ち:拷問好き
◉邪悪なサディスト:拷問・脅迫判定難易度-1、殺伐で敵を殺すと精神力1回復
◆カタナ
能力値合計:20 回避ダイス:6
前回の冒険で相方のマーシレスフィンガーが入院し、万札や余暇も獲得できなかったためそのままです。時系列的に6月のアトロシティから1ヶ月は経っており、相方はニンジャ回復力で職場復帰したものの、今回の遠征は留守番として参加していません。エアコン代を稼ぐことはできるでしょうか。あとニューロンを少し鍛えたがいいでしょう。
◆デモゴルゴン(種別:ニンジャ)
カラテ 5 体力 5
ニューロン 6 精神力 7
ワザマエ 2 脚力 3
ジツ 2 万札 0
DKK 0 名声 2
◇装備や特記事項
☆カラテミサイルLv2:ジツ値+1個のミサイルを連射(マルチターゲット)
使用者から視線が通っていれば必中(回避難易度NORMAL、まとめて回避可)
▶サイバネアイLv1:ワザマエ判定ダイス+2
◆家族の写真:精神力+1、消費すると精神力4回復しDKK獲得やWasshoi判定を回避できる
○生い立ち:下劣なパパラッチ 戦闘中かつ2ターン目以後の手番で、
回避ダイス2とターン時の行動を消費し撮影行為可能
難易度HARDのワザマエ判定に成功するとシナリオ終了時に万札D3獲得
かなりの特ダネであれば万札D6+1を獲得
○立ち位置:秘密や陰謀
能力値合計:17 回避ダイス:6
前回の冒険からまもなく、ということになります。オキナワから帰ったら仕事がますます増え、インパルスも死亡し、さっそく寝不足でカロウシしかけているソニックブーム=サンはゴッシュショー&カンワイソーです。カネを稼いだらワザマエを鍛えましょう。
4人だとやや楽勝ムードが漂うので、3人にしてみました。カトン持ち&ハッカー、カラテ・ワザマエ&拷問担当、後衛&撮影担当と役割分担ができますね。どいつもこいつも邪悪で、モータルをブッ殺すのに躊躇がありません。回避ダイスも6-7はあるのでたぶんダイジョブでしょう。名声に差はありますが大した違いはないので平等です。
ではリプレイを通じて、彼らの生き様を見届けてやりましょう。
◇🎲◇
ダンゴウ
「おう。テメエらに、クソみてえなミッションだ。喜べ」
夏の夕刻。トコロザワ・ピラーのトレーニングフロアに集められた3人のニンジャを前に、シックスゲイツの一人・ソニックブームはそう言い放った。有無を言わさぬ迫力がある。カタナめいた鋭い目の下には凄まじい隈が刻み込まれ、恐ろしい。一週間は徹夜していなければ出せない凄みだ。
「アッハイ」「ハイ」「ヨロコンデー」ファイアシーフ、デモゴルゴン、ランタンシャークがオジギする。3人とも出会うのは初めてだ。どういう理由で選ばれたかは不明だが、チームになれば各々の弱点を補い合えると考えられたのだろう。実際それぞれに油断ならぬニンジャたちである。
目つきが悪いフードの男ファイアシーフは最近ソウカイヤに入ったが、アーチ級ニンジャソウル憑依者の討伐にも加わったという。背の高い悪相の男ランタンシャークは既にいくつかミッションをこなし、元ヤクザの事務所をアジトとしている。相方のマーシレスフィンガーは今回は留守番だ。
片目隠れの女ニンジャ・デモゴルゴンはニュービーだが、ケジメ水産CEO暗殺事件を未然に防いだとして少し有名になった。既に情報交換は行い、互いの能力は承知している。「あるカネモチからの依頼だ。ニンジャに盗まれた高性能オイランドロイドの奪還。もし破壊されていても持ち帰ること」
「ハイ」3人は気を引き締める。「そいつのアジトは、ネオサイタマの北の郊外。ガミオダってシケた街だ。そこにクソッタレな野良ニンジャがいて、悪さしてる。情報によると『ブラッドバス・シアター(血まみれ劇場)』とかいう悪趣味な退廃パーティーを夜な夜な開催してるそうだ。アホくせェ」
ソニックブームは鼻を鳴らす。「名前はヒートシーカー。どんな野郎か知らねェが、やってることのショボさから、大したタマでもなさそうだ。こういう手合はほっておくと増長して良くねェ。ヤキ入れてやれ。ソウカイヤに入らせて下さいと懇願しなけりゃ、殺してかまわん」「ヨロコンデー」
「どうせ中にいる連中は、後ろ暗い無法者のバカだけだ。目的のオイランドロイドを持ち帰りゃ、殺そうが奪おうが焼き払おうが自由とする。テメエらのアジトにするってわけにはいかねェがなァ。田舎だしよ」ソニックブームがモノホシ・タバコを取り出し、ファイアシーフが慌てて火をつける。
「でだ。その退廃パーティーに参加するには、会員制の入場券……IDカードが必要だとよ。持ってねェとトラブルになる。どうにか調達しろ」「アッハイ」「テメエらで無理そうなら、ダイダロス=サンにでも頼め。必要経費としても、タダってわけにゃあ行かねェがな。……以上。俺様は寝る」
「「「ハイヨロコンデー!」」」3人がオジギすると、ソニックブームは立ち上がり、フラフラしながら立ち去っていった。「じゃ、行くか」「ああ、よろしく」「ええ。ガミオダまでは電車ね」互いにアイサツを交わし、IRCで通知情報を確認する。アジトの位置は既に判明している。
成功報酬は、万札30を山分け。1人頭万札10。ぼちぼちだ。略奪すればもう少し増えるだろう。「へへ、火事場泥棒ならお手のモンよ」「名前がそのままだもんなァ。俺もなるべく稼いで、エアコン買い替えねェと」「退廃パーティーやスナッフ映像を激写して、日刊コレワに売りつけてやるわ!」
3人は、まずはピラー内のフリーUNIXエリアに向かう。「ブラッドバス・シアター」に潜入するためのIDカードを偽造せねばならない。
事前調査
ハッキング判定、難易度NORMAL。ファイアシーフはニューロン6に加え、生体LAN端子で+2され8D6。[54654161]=成功。人数分のIDカードゲット。6の出目が2つ出たので、ボーナスとして万札1をゲット。
「フンフンフン……」ファイアシーフは鼻歌を歌いながら、生体LAN端子をUNIXにリンクさせて論理高速タイピングを行う。ブラインドタッチは体に染み付いているが、やはりこちらの方が手っ取り早い。ブラッドバス・シアターに関する情報が高速で検索され、やすやすとIDカードを入手できた。
「お見事」「フフン。ま、大したセキュリティじゃねえな。ガバガバだぜ」ファイアシーフは鼻を高くしてふんぞり返る。「普通にネットオークションとかに出品されてるのね。知能指数が低いやつら」「ほっといてもマッポやデッカーに踏み込まれてたろうなァ。ニンジャがいるから慢心してンのか」
デモゴルゴンは、3Dプリンターで出力された偽造IDカードを手に取り、表裏を確かめる。無地の黒いカードに見えるが、よく観察すれば細かいバーコードが「寿」の漢字のように並んでいる。「おめでたい連中ね」
ガミオダ駅前
夜。ガミオダ駅の駅前は、華やかなネオン輝くネオサイタマ中心部の装いとは大きく異なる。ロータリーを囲む飲食店群の明かりの奥に広がる闇はどんよりと底無しで、薄ら寒い。「マジでシケた街ね」トコロザワから来たデモゴルゴンがつぶやく。電車の本数も少なく、たどり着くのも一苦労だ。
ピカピカ光る青い蛍光色「ぎょうざ」看板の店。そこに列を為す、汚れたブルゾンの人々。あるいはその横に座り込む酔漢。濁った夜の闇の先には、全くの等間隔で配置されたショッピングモールを中心にした効率的居住区が、ぽつりぽつりと配置されている。住民はここで生まれ、生き、死んでいく。
酔漢や失業者が埃っぽい路地をうろつき、偽造電子喫茶カードを配るプッシャーの声も小さく、犬は痩せている。日が落ちれば闇と短絡犯罪の時間だ。駅前のロータリーにはバス停やタクシー乗り場があり、カレッジ学生と思しき若い女性がタクシーを待っている。「危ねえな、彼女」
ランタンシャークがつぶやき、水色の目を光らせる。「なんだ、ナンパしようってか」「違う。そうしてもいいが……」ファイアシーフの軽口を躱し、彼はタクシー乗り場へ歩いていく。2人もそれに続く。彼女のところへたどり着く前に、滑るようにして、白いワゴン車がロータリーに入って来る。
ワゴン車は彼女の前で止まった。やや酔った様子の彼女は、腕時計とワゴン車を交互に見た。タクシーではない。ワゴン車のスライドドアが開き、爆音の歌謡音楽が溢れ出る。「え?」「ドーモ」屈強な体躯のタンクトップ男が身を乗り出し、無造作に彼女の腕を掴むと、車内に引きずり込んだ!
「アイエエエエエ!」「前後ワゴンにようこそ!」「アブナイゼ!」
ランタンシャークはワザマエ判定、難易度EASY。6D6で[234455]=成功。
「オイオイオイ」ファイアシーフの下卑た笑いを後ろに、ランタンシャークは大股で駆け出した。無言でワゴン車の中へ飛び込む。「エッ?」「テメ、何シテンノ?」「前後したいン?」「男は足りてるヨ?」運転手含め4人ばかりのヨタモノ。ランタンシャークが混じっていても違和感はない。
「えと。タクシー。いいスか」「ハ?」「ヤクやってる?」全員がキョトンとした。「まさか、何?ヒーロー?彼氏?」「いや、止まってたんで。タクシーっしょ、これ」ランタンシャークはヘラヘラ笑いながら、手近なタンクトップ男の人差し指を掴み、へし折った。「エ?」「インタビューします」
◆前後ワゴン・ヨタモノ(種別:モータル)×3
カラテ 2 体力 1
ニューロン 1 精神力 1
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ - 万札 1
◇装備や特記事項
◆ナイフ:近接武器、ダメージ1
◆チャカガン:射撃武器、ダメージ1
カラテ判定、難易度NORMAL。5D6で[34556]=成功。残り2人。
「よっと」「グワーッ!」ランタンシャークの裏拳がタンクトップ男をノックアウト!「「ワッザファック!?」」混乱するヨタモノたちは、躊躇せずナイフを抜き放つ!「「死んどけやーッ!」」
2D6を2つ。[15][16]=成功。雑魚の攻撃なのでニンジャはまとめて回避できる。6D6で[334445]=4成功。1人をカウンターカラテで倒す。残り1人。5D6で[11144]=成功。運転手以外のヨタモノ全滅。
「フン、フン、フン」「ムン」ランタンシャークは余裕でナイフをさばき、もうひとりにカウンターで裏拳を叩き込むと沈黙させた。さらにもうひとりに手刀を叩き込む。「ハイ、残念」「「アイエエエ!?アイエエエ!?」」運転手と女性は、突然の闖入者による無慈悲なカラテに泣き叫んだ。
「あー、どもども。俺、こういうモンで」ランタンシャークは女性に名刺を差し出した。黒い地に金箔押しで「クラブ『深海魚』ホスト:ヒロサメ・タカジマ」と書かれており、勤め先の連絡先も記されている。「よろしくね」「アッハイ、アリガトゴザイマス」女性は頬を赤らめ、名刺を差し出した。
「やっぱナンパじゃねーか!」ファイアシーフが駆けつける。「違うって。今お仕事中だから。個人的なお付き合いは、また別の機会に」ランタンシャークはヘラヘラ笑う。彼と相方の表稼業はそうしたものだ。亡きインパルスの知人から紹介されて、最近勤め始めたばかりだが。
「あ、タクシー来たわよ。彼女乗せてあげて」デモゴルゴンが片手を挙げてタクシーを止める。ワゴンの運転手はファイアシーフに助手席に座られ、震え上がり、動けない。ランタンシャークは女性の手をとってワゴンから下ろしてやる。「アリガトゴザイマシタ」「どういたしまして、レディ」
「ンだよ!ムカつくな!」ファイアシーフが苛立ち、窓から腕を出すとワゴンのドアを叩く。彼は女性にモテない。「アイエエ……」運転手が泣きながら失禁した。「泣いちゃった」デモゴルゴンが、いつの間にかワゴンの後部座席に座っている。ヨタモノたちはもういない。「アイエ……」「ハァ?」
ファイアシーフが運転手に凄む。「やめとけって。じゃあ運転手、タクシー頼むね」「アッハイ……」ランタンシャークがワゴンに戻ってきた。近くの鉄柱に、ヨタモノたちが下半身裸で縛り付けられている。「どちらまで」「アレだ。えーと、『サーペント隠し道』」「え?」「知ってるだろ」
「ブラッドバス・シアターまで」「アイエエエ!」運転手は再失禁した。
【続く】
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