忍殺TRPGリプレイ【アンダーグラウンド・ハリーアップ!】02
前回のあらすじ:ネオサイタマ、地下下水道ダンジョン。異世界へ通じているという謎めいた「緑の土管」を探すため、女ニンジャ・ファイアキラーはここに潜入して探索を開始した。危険生物や胡乱なニンジャを切り抜け、ついに彼女は「緑の土管」を発見、飛び込んだ!カラダニキヲツケテネ!
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……ファイアキラーは、ついに緑の土管がある部屋に到達した。そこはまるでつい最近作られたかのように状態がよく、汚れも傷も見当たらない。明らかに異常だ。問題の緑の土管も、土管の形状はしているが、どんな材質で出来ているのか見当もつかない。この先には……果たして何が待つのか。
タイガー・クエスト・ダンジョン!「イヤーッ!」ファイアキラーは身を翻し、緑の土管へ飛び込んだ!
0101010101010101010101
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010101010101……蛍光緑色の01がチカチカと瞬き、高速で飛び交う暗黒の空間を、ファイアキラーはどこまでも落下していく。次第に彼女の肉体も01分解しかかるが、カラテを高めて抵抗する。ここは現世ではない。ハッカーたちの伝説にいうコトダマ空間……すなわちアノヨ、オヒガンなのだ。
『0101010101』やがて、闇の彼方から緑色のノイズで構成された獣のような存在が近づいてきた。姿形は不定形かつ不明瞭だが、少なくともこちらに好意がある様子ではない。明らかに危険だ!『0101010101!』
「kill-9 U!」ZZTZZT!ファイアキラーは必死に遠隔ハッキングを行い、謎の存在を拒絶する!カラテだ!『0101010101アババーッ!SAYONARA!』KABOOOM!ノイズ獣は01分解され爆発四散!同時にファイアキラーの周囲も無数の01ノイズに満たされ……01010101010101010101010101010101
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……気がつくと、ファイアキラーは薄暗い空間……天然の洞窟じみた場所に転がっていた。岩肌の手触りや冷たさはあたかも実体のようだが、ここが現実空間である保証は何もない。ニンジャ視力があれば、この程度の暗さなら問題はない。先へ進むしかなかろう。……やがて、開けた場所に出て来た。
しかしそこは断崖絶壁だ。上も下も見渡す限り闇が広がり、距離は計り知れない。前方に別の断崖があり、こちらがわと同じような洞窟が口をあけている。あそこへ飛び込めばいいわけだ。もし落下すれば、ニンジャといえど命はあるまい。距離は……助走をつけるか、連続側転すれば届く程度か。
ファイアキラーは状況判断し、洞窟の奥へ下がってから連続側転!勢いをつける!「イイイ……イイイヤァアアアーーーッ!」跳躍!彼女は難なく奈落の裂け目を飛び越え、向こう側の断崖にある洞窟へ飛び込んだ。その先には……「え」ナムサン!突然足場が01分解し、再び自由落下が始まる!
いつのまにか周囲は白い雲が浮かぶ青空に変わり、眼下にはターコイズ色の海が広がっている。落ちる!否、ちょうど無人のモーターボートが一隻!「イヤーッ!」ファイアキラーは空中で身をひねり、なんとかボートの上に前転着地した!ワザマエ!ドルルルルルル……ボートは勝手に走り出す!
「なんなんだ、一体!」緑の土管に入ってから、訳の分からない事態の連続だ。まるで脈絡のない悪夢のようだ。モーターボートはどこまでも広がる海の上を自動的に駆け抜けていくが、島も陸地も見当たらない。とはいえボートから降りて海に飛び込み、泳いでいくわけにもいくまい。……その時だ!
「シュシューッ!」ナムサン!海から巨大なイカが現れ、ボートめがけて触腕を繰り出してきた!アブナイ!このままではボートごと海の藻屑だ!
「ブッダファック!イヤーッ!」ファイアキラーは高速走行するボートの上から跳躍し、巨大イカめがけてトビゲリ!SMAAASH!「AARGHHH!」巨大イカは悶絶しながら触腕で絡め取らんとす!「イヤーッ!」ファイアキラーは側転回避し、イカの目の間に踵落とし!SMAASH!「アババババーッ!」
イカは苦悶の声をあげながら海中へ逃げていく。ファイアキラーはくるくると回転し、ボートの上へ戻った。ゴウランガ!『0101010101!』「え?」ファイアキラーは後ろを振り向いた。ボートの甲板の上に、突然見知らぬ存在が……ニンジャが立っていた。ピンク色の装束に身を包んだニンジャが。
0101010101
『0101010101』それは身長が2メートル近くあり、正体不明の金属でできた銀色のメンポは官能的な流線型を描いて顔全体を覆っており、目元には細い横一直線の覗き穴が空いていた。彼はファイアキラーに向き直り、アイサツを繰り出した。『010101ドーモ、ザ・ヴァーティゴです010110101』
「……ドーモ、ファイアキラーです」アイサツを返す。モーターボートは停止することなく海上を疾走している。『010101……よし、アイサツは通じてるな。ええと、身構えないでくれ。俺は味方だ』ザ・ヴァーティゴと名乗ったニンジャは左の掌を向けたが、右手には剣呑な斧が握られている。
『ああ、これはテツノオノだ。あいつが横着したもんだから一緒についてきてしまって。重箱データには付随していないが気にするな。たぶんチェーンソーかノダチ扱いだと思う。投擲可能だけどね』ザ・ヴァーティゴはフランクな口調でよくわからないことを話している。狂っているのだろうか?
『シツレイな。俺は気さくでハンサムな次元旅行者だってことはきみも知ってるだろ。The Interviewsが消滅したり俺のツイートがほぼ全部消滅したりはしたが、最近はnoteでも頑張ってるんだ。VTuberになる予定だってあるんだぞ。いつになるやらわからないが……』アッハイ、スミマセンでした。
ザ・ヴァーティゴは虚空へ話しかけている(ようにファイアキラーには見えた)。『ああっと、ほら、余計なこというから彼女が困惑しているじゃないか。ええとね、俺……私は、きみをこのへんちくりんな世界からネオサイタマに連れ帰るために来たんだ。きみの探し人をともに救出しよう!』
「……アッハイ」ファイアキラーは頷いた。見るからに強そうなニンジャだし、逆らっても勝てそうにはない。協力してくれるなら心強かろう。『とりあえず、話を聞いてくれ。きみが通ったあの緑の土管、実はただの土管じゃない。悪の多次元存在組織「グンバ団」が作った侵攻用ポータルなのだ』
「アッハイ」『やつらは異次元からネオサイタマに攻め込むため、あれを足がかりとして各地に設置した。私はあれを破壊すべく動いていたのだが、その矢先にきみや、きみの探し人が入り込んでしまったというわけ』「はあ」ファイアキラーはうつろな目で頷いた。いったん全部飲み込むしかない。
『……まあ突拍子もない話だ。信用できないのもわかる。だが事実なんだ。きみが今まで通ってきた世界や怪物も、全部あいつらが生み出した……否、どこかから引っ張ってきたものだ。やつらはいろんな異世界から自分に都合のいいものを取り入れて利用する。このままではネオサイタマも危ない』
ザ・ヴァーティゴは熱弁を振るい、ファイアキラーに胡乱な真実を語り聞かせた。『本当にヤバいんだよ。■■ヶ丘とかと接続されたらめんどくさいし。前にワルサイタマと一瞬繋がったことはあったけど……ともかく、この先にグンバ団の拠点がある。このボートは私が調達したものなんだ』
気がつくとモーターボートは星の海を走っていた。『まずはやつらの拠点に潜入し、きみの探し人とか囚われになった他の人々を救出する。そして、グンバ団をぶっ潰す。協力して欲しい』「……わかった」ファイアキラーは理解を超えた出来事に頭を抱えつつ、そう答えるしかなかった。
『ありがとう。では、ここからは私が操縦する』ザ・ヴァーティゴはボートの操舵室へ入ると、謎めいたUNIXを操作し始めた。0101010101……
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ボートが緑色の01ノイズに包まれた次の瞬間、ザ・ヴァーティゴとファイアキラーは……『……あれ?』濁った沼地にいた。空は曇天で、風化した石像が立ち並ぶ、不吉なアトモスフィアを漂わせた空間だ。視界の彼方には丘陵地帯が連なる。ここはまるで……『やばい。変なとこに不時着しちゃった』
「え」ファイアキラーは愕然とした。ただでさえわけがわからない状況だというのに、案内人すら見知らぬ場所に来てしまうとは。モーターボートはあるが……『ええい、転移エネルギーが足りない!どこかそこらへんでカラテニウム鉱石をとってこないと』「なにそれ」『なんか真っ黒い石だよ!』
二人は焦りだした。時間の概念も希薄そうだが、あまり手間取っていれば現世に戻る時にウラシマと化すのではないか?「石って、例えば、そこの石像とか……」ファイアキラーがボートを降りて石像に近づいた、その時だ!『GRRRRRR……!』石像が動き出した!否、それは石像めいた怪物だ!
『こいつは、ニンジャじゃないな。トロールとかゴーレムのたぐいだろう。問題ない、倒すぞ!』「了解!」ザ・ヴァーティゴはテツノオノを構え、ファイアキラーもカラテを構えた。一触即発アトモスフィア!
戦闘開始
【続く】
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