忍殺TRPGリプレイ【バッド・アップル】03
前回のあらすじ:タカギ・ガンドーを始末した後、狂気の暴走を続けるニンジャ・ガンスリンガーに対し、ザイバツは抹殺指令を下した!彼が次に狙うのは父コケシ・サイコウだ。大立ち回りの末、彼はザイバツの刺客である傭兵ニンジャ・ジャッジメントを倒し、父に銃口を突きつけた!その時!
◆
コケシ社
「……生きろ?残酷だな」ソイチは不意に黙り込み、空ッぽの、虚無の目を向けた。サイコウは心の底から戦慄した。「俺は殺人犯の脱獄囚で、ザイバツからも抹殺指令が出ているお尋ね者だ。俺の実力なら、逆らって生きようと思えば生きられるだろうが……嫌だね。美しくないなァ、そんなのは」
ソイチは昂奮して語り続ける。「これで俺のドラマは終わりだ。全ての悲劇をまとめてIRCに放流し、ドラマは、俺は、永遠に生き続ける。最高の幕引きだろ!刑務所では怖くてセプクできなかったが、ニンジャになった今ならできる!最高の悲劇とともに、俺は時間を巻き戻す……黄金時代へ!」
彼は引き金を引きかけ、そして……止めた。「待てよ、父さん。何か隠してるだろ?俺は知能指数が高いんだ」サイコウは怯えて震え上がった。自分が恨まれて死ぬのはまだいい。だが……!「机の上に、随分と写真立てが増えたなァ……なんで、伏せた?」サイコウは絶望し、目を閉じて祈った。
……その時だ!
KRAAAASH!社長室のスモークガラスを突き破る影!その手にはロープ!彼は社長室へ転がり込み、武骨に着地し、アイサツした!「てめえの辛気臭えドラマは真っぴらだぜ……ドーモ、ディテクティヴです!」
???
「ヘェーヘェーヘェー、シリアスな場面が台無しだァ……ふざけやがって」ソイチは写真立てに伸ばした手を止め、再び二挺拳銃を引き抜く。そして涎を垂らし、舌なめずりしながら敵に歩み寄る。「悪いな。俺の流儀でな」ディテクティヴもまた49マグナム二挺拳銃を抜き、静かに前方へと歩む。
アンダー第八階層の探偵事務所は、ガンスリンガーによって荒らされていた。オブツダンは引き倒され、シキベの写真と書籍は燃やされ、UNIXは全てデータを消去され、徹底的に破壊されていた。気絶中にガンドーの生体LAN端子からデータを抜いたのだろう。……だが、49マグナムは残っていた。
ガンドーから奪われた二挺拳銃がそのまま置かれていた。分解して慎重に調べたが、何も仕掛けられてはいなかった。これはガンスリンガー、怪盗スズキ・キヨシからのプレゼントだ。ガンドーが生きていて、再び自分に挑んで来た時のための。わざわざ額を狙って撃ったのは、そういうことか。
「俺の助手を殺ったのがザイバツニンジャで、お前はとんだ濡れ衣と言ったら……どうするよ?」「ヘェーヘェー……俺の好みの筋書きじゃないな」二挺拳銃を前方に突き出した両者は、社長室の中央に向かってゆっくりと歩きながら言葉を交わす。サツバツ!タタミ二枚の距離を取って二者は静止した。
必殺圏内!一触即発!だが未だ両者はトリガを引かぬ!「怪盗スズキ・キヨシの宿敵、探偵タカギ・ガンドーは甦った!怪盗と同じく、ニンジャになって!ふざけた筋書きだなァ!」「ああ、ひどいジョークだぜ。知っててやっただろ」「探偵が水に落ちる。古典だ。ニンジャになるとは想定外だが」
「……手加減しねえぞ坊主。俺は今、腹が立ってんだ」ガンドーは顔に巻いた黒布の下で短く笑った。一瞬の静寂。
戦闘開始
1ターン目
ガンスリンガーの姿がゆらめき、消える。瞬時にディテクティヴの懐に飛び込みピストルカラテ乱舞!「イヤーッ!」BLAMBLAMBLAM!ハヤイ!だがディテクティヴのニンジャ視力にはギリギリで視え……SMASH!「グワーッ!」一発命中!しかし彼のニンジャ耐久力はこれに耐える!「ヌルいぜ」
ディテクティヴはカラテをみなぎらせ、必殺のピストルカラテ正拳突き!「イヤーッ!」重厚な拳銃をナックルダスターとして用い、痛烈な密着射撃を食らわせる殺人技だ!BLAMN!「い、イヤーッ!」ガンスリンガーは必死でブリッジ回避!だが大きく体勢を崩す!「ナメるなよ……探偵!」
ガンスリンガーはピストルカラテ乱舞!BLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」ディテクティヴは見切って躱す!ガンスリンガーは駆け抜けて距離をとるが、追いつける!「ウオーッ!」必殺のピストルカラテ正拳突き!BLAMN!ガンスリンガーは目を見開き、攻撃を見切ろうとする。
狙いはみぞおち。内臓に痛烈なカラテをブチ込み、密着射撃でトドメを指す気だ。ガンスリンガーは華麗に回転しながら紙一重で……SMASH!「グワーッ!」ブリッジ回避で致命的な一撃を躱すが、躱しきれぬ!脇腹に損傷!「どうだ!」「ぐうう……貴様……よくも、邪魔ばかりしやがって……!」
ガンスリンガーは黒い復讐心を煮えたぎらせ、憎悪に歯をギリギリと食いしばる。「俺はいつもシリアスだった!それを貴様は!」「シリアスに寄り過ぎたな、お前」ディテクティヴ、タカギ・ガンドーは笑う。「人生のセンパイとして教えてやる。シリアスとリラックスのバランスが必要なのさ」
2ターン目
「ぬかせ!イヤーッ!」ガンスリンガーは憎悪に燃えて飛びかかり、嵐のようなピストルカラテ乱舞!BLAMBLAMBLAM!「グワーッ!」二発が命中!ディテクティヴはのけぞり、血反吐を吐くが……タフネスで耐える!「イヤーッ!」駆け寄ってピストルカラテ正拳突き!速さでは及ばぬが重さなら!
「い、」SMASH!BLAMN!「グワーッ!」命中!肩への致命的な密着射撃はかろうじて躱したが、カラテを躱しきれぬ!「銃弾やスリケンは見切れても、カラテはダメか?お坊ちゃん」「オノレ……オノレ!」激怒に取り憑かれたガンスリンガーは、目に見えて動きが狂いつつある!チャンスだ!
「イイイ……イイイヤァアアアーーーッ!」BLAMBLAMBLAM!ガンスリンガーは嵐のようなピストルカラテ乱舞!SMAASH!「アバーッ!」ナムサン!躱しきれぬ!ディテクティヴの全身に銃弾とカラテが浴びせられる!「ウオオオーッ!」反撃の正拳突き!BLAMN!「イヤーッ!」華麗に回避!
3ターン目
「イイイヤァアアアーーーッ!」BLAMBLAMBLAM!ピストルカラテの竜巻が飛びかかる!「イヤーッ!」ディテクティヴは危うく回避!「ブッダミット!」ブッダを罵りながら正拳突き!BLAMN!「グワーッ!」命中!だが浅い!「ハァーッ!ハァーッ!勝つのはこの俺だ……黄金時代を取り戻す!」
「イイイ……イイイヤァアアアーーーッ!」ガンスリンガーは死物狂いでピストルカラテ乱舞!BLAMBLAMBLAM!どくん……ディテクティヴはニンジャアドレナリンを過剰分泌し、これをSMASH!「グワーッ!」ナムサン!躱しきれず脇腹に一発食らう!反撃の49マグナムを……KLIK!不発!
「ブッダファック!」ディテクティヴはバランスを崩し転倒!ナムサン!「何か細工しやがったか」「否。これで残弾はゼロ。お前はブッダに見放されたのさ」ガンスリンガーは嘲笑う。彼は呼吸を整えつつザンシンし、油断なくディテクティヴに銃口を突きつける。「トドメだ!」……その時!
BLAMN!残弾ゼロのはずの49マグナムが、火を噴いた。「え」ガンスリンガーはアドレナリSMAAASH!胸が大口径銃弾で粉砕され、嘲笑うハロウィンのカボチャめいた大穴を空けた。「あ、アバッ……バカ、な」ガンスリンガーはよろめき、あえいだ。「ナンデ……そうか、ハングファイア……か」
ハングファイア(遅発)。引き金を引いても反応がなかった場合、それは必ずしも不発とは限らない。装薬の燃焼速度が通常より遅くなり、撃発から少し遅れて銃弾が飛び出すことがある。銃口の向きを変えた途端に突然発砲されたり、不発弾と思い込んで排出しようとしたら急に燃焼したりする。
「不発弾をリロードし、それを狙った……?」「正解。助手のアイディアを拝借だ」ガンドーはザンシンしたのち、二挺拳銃を回しながらホルスターに収めた。「カレンダー見たか?今日はブッダピース(大安)だろ」……どさり。ガンスリンガーは仰向けに倒れた。その体が膨張し始める。
ニンジャソウルの暴走に死にかけた肉体が耐え切れず、爆発しようとしているのだ。「父さん……助け……」彼は涙を流して呻き、父に助けを求めた。コケシ・サイコウは弾き飛ばされた拳銃を拾い上げ、息子の額に銃口を向けて、撃った。BLAMN!「サヨナラ!」KABOOOOM!彼は爆発四散した。
戦闘終了
エピローグ
何故か爆発四散した息子を、サイコウはぽかんと見つめていた。社長机にもたれ、両膝から血を流しながら。これはもしやオバケ……数年前のあの夜に生まれた、ファントムなのではあるまいか。……どちらでもいい。変わり果てようとソイチはソイチだ。「わしらはジゴクでまた遭うだろう」
ブガーブガー!社長室に鳴り響くエマージェンシーブザー!非常ボンボリが赤く回転する!『ドーモ!社長ご無事ですか!エントランスから死体の道が!まるでツキジです!』スピーカーから聞こえる正規セキュリティの声。サイコウは机のボタンを押し手短かに答える。「撃たれた。救護班を送れ」
『じ、状況を詳し……』サイコウは通信を切る。荒い息を吐きながら、社長椅子に座り、伏せた五枚の写真立てを起こす。その中には、まだ幼いソイチの写真もあった。痛みを紛らわせるためにZBR煙草を吹かすガンドーに対して、サイコウは話しかける。「セキュリティが来るまで数分はある」
「ああ」ガンドーは煙を吹きながら返す。「過去の清算をしよう」サイコウは引き出しからボイスエフェクターを取り出す。「あんたが依頼人だな」とガンドーは答え、スカーフを外した。「新たな依頼を受けてくれるか?真犯人への復讐を」「そうだな」ガンドーは思案した。「俺一人じゃ難しい」
「断るか?」「いや、あんたにも手伝って欲しい。もう安全圏には居られないかもしれないが……その覚悟があるならだ」ガンドーは故障したドローンを物珍しそうに拾い上げる。「いいだろう」サイコウは答えた。身を乗り出し探偵と握手を交わす。「俺たちのコードネームは、ディープスロートだ」
【バッド・アップル】終わり
リザルトな
つのにサポートすると、あなたには非常な幸福が舞い込みます。数種類のリアクションコメントも表示されます。