忍殺TRPGリプレイ【ディープ・レッド】05
前回のあらすじ:キョート共和国北部、タンバ地方。ニンジャスレイヤーはアンダーガイオンでの調査の末、ここにザイバツの荘園があることを突き止めた。狙うはグランドマスター・イグゾーション!だが敵の凄まじいカラテの前に、ニンジャスレイヤーは倒れ……蘇った!ニンジャ殺すべし!
◆
「グゥワーッ!」KRASH!イグゾーションは……瓦礫に叩きつけられた!だがダメージは軽微!彼は致命的な攻撃だけをギリギリで躱し、自ら後ろに弾き飛ばされることで、ダメージを最小限に抑えたのだ!タツジン!「よくぞ躱した。だが、残るはオヌシ一人。モータルの怒りを思い知るがいい!」
ニンジャスレイヤーはジゴクめいて告げた。イグゾーションは優雅に立ち上がり、ジュー・ジツを構えつつ作戦を練る。バリキ爆弾たちは充分なダメージを与えたが……弾切れだ。もっと多くの手駒を調達しなければ。すでに荘園の警備クローンヤクザたちには招集をかけた。足りるか。足りる。
だが……遠い。倒壊した邸宅の東、ニンジャスレイヤーの背後から、こちらの手勢が駆けつけて来るまでには遠い!ならば攻撃をかいくぐり、クローンヤクザたちのところへ駆けつけ、バリキ爆弾化してぶつけるしかない!「モータルの、怒りだと?」イグゾーションは目を細め、鼻で笑った。
「地を這う虫けらどもが何匹死のうが知った事か。平安時代も江戸時代も、現在も……過去も未来も、モータルどもはニンジャの奴隷だ。我ら貴族が、高等市民が、下賤な労働者どもをこき使うのと同じだ。それが格差社会だ。現世に秩序をもたらすために!我々は……支配しなければならない!」
戦闘継続
3ターン目
「イヤーッ!」イグゾーションは橙色の光と化し、邸宅の残骸を飛び越えて離脱せんとす!同時に空中でマルチタッパーからオーガニック・トロスシを取り出し咀嚼!「コワッパ!逃げるか!」ニンジャスレイヤーは赤黒の炎と化して追いすがる!「「イイイヤァアアアーーッ!」」カラテ応酬!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
応酬が続く!イグゾーションは撤退の隙を見いだせぬ!「ブザマに尻尾を巻いて逃げ、モータルの命を消費せねばイクサもおぼつかぬか。ジツ頼りのサンシタめが」ニンジャスレイヤーは凄まじいカラテ応酬を繰り広げつつ、イグゾーションを激しく罵り、怒りを煽る。ヤクザ部隊は……まだ遠い!
「……よかろう!この場で倒す!」イグゾーションはさらにセルフ・バリキを強め、攻撃速度を増す!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」SMASH!「グワーッ!」ナムサン!イグゾーションの輝く拳が、死神を打ち据える!
「イイイ……イイイヤァアアアーーッ!」ニンジャスレイヤーは獣めいた姿勢でイグゾーションに飛びかかる!SMAAASH!「グワ、アッバーッ!」サツバツ!イグゾーションの胸と腹に刻印された「忍」「殺」の文字に、再び大型ブラスナックルが激突!黒い炎がグランドマスターの肉体を焼く!
「勝機!……イイイヤァアアアーーッ!!」イグゾーションは渾身のカラテを振り絞り、輝く拳を、チョップを、キックを、縦横無尽に動きながらニンジャスレイヤーに叩き込む!SMASH!SMASH!SMAAASH!「グワ……アババババーッ!」ナムサン!黒い炎が光によって散らされ、消えていく……!
ゴウランガ……!なんたる強さ!これがザイバツ・シャドーギルド最強のグランドマスター、イグゾーションの真のカラテ!「ハハハハ……ハハハハハハハハハ!」彼は宵闇の迫る中、白い髪、白い目を輝かせ、両腕を広げて天を仰ぎ、高らかに笑う!狂ったように!嗚呼、ニンジャスレイヤー……!
◇◇◇
???
八畳の暗い和室。色褪せた妻子の写真や数個のショドーが砂壁に掛かっている。ここはフジキド・ケンジのローカルコトダマ空間……つまり彼の内面世界だ。長らくナラク・ニンジャが寝たきりとなっている安らぎフートンの横には、この空間の主であるフジキドが、苦悶に満ちた顔で正座していた。
「ナラクよ、すまぬ……オヌシならば……」彼はナラクに呼びかける。だが、ナラクの目は開かない。……ザリ、ザリザリ、ザリザリザリ……アンティーク調TVモニタにノイズが走った。「!?」フジキドは駆け寄り、ボリュームダイヤルを回す。『……すべし……殺すべし……ニンジャ……殺すべし……』
ナラクか?否。ショウジ戸で四方を囲まれた精神チャノマの外側から、その声は風めいて流れて来る。『アア……!』ナラクが呼応し、弱々しい声を発した。『ここは……タンバか……足りぬ……だが……!』TVモニタから冷たい怨念の風が吹き出した。それはナラクに纏い付き、吸い込まれていく。
『……傷ついた……マズダ・ニンジャを……くびり殺すには……充分……!』どくん……どくん……どくん!
◇◇◇
ボコボコボコボコ……!現実世界では、ニンジャスレイヤーの肉体がぐつぐつと煮えたぎり、熔融しつつあった。鉄と硫黄のにおいが漂い、黒い不浄の炎が、再び……燃え上がる!「!」イグゾーションは本能的恐怖を感じ、瞬時に飛び離れた!「まだ……動くというのか!ハハハハハハ!スゴイ!」
『殺すべし……殺すべし……ニンジャ……殺すべし……!』マグマめいて泡立ち脈打つ、赤黒の塊がひとりでに捏ね上げられ、ニンジャの姿をとった。焼け焦げた老人の死体じみた禍々しい姿だ。それは掌を合わせてアイサツした。『……ドーモ、マズダ・ニンジャ=サン。ナラク・ニンジャです……!』
◆ナラク・ニンジャ(種別:ニンジャ)
カラテ 17 体力 33
ニューロン 10 精神力 14
ワザマエ 12 脚力 9/N
ジツ 0 万札 20
攻撃/射撃/機先/電脳 17/12/10/10
回避/精密/側転/発動 18/12/12/ 0
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:8
◇装備や所持品
◆アーチ級生成装束(ブレーサー以外):体力と精神力+3、緊急回避+6
◆家族の写真:精神力+1
◆ブレーサー・オブ・ドウグ:回避+1、緊急回避+2
部位防御(腕部):シナリオ中最初に与えられた殺伐出目5の付属効果を無視
◆フックロープ:遠隔武器、ダメージ1、拘束、連射可
カラテ値対抗判定に勝利すると引き寄せ
◇ジツやスキル
☆ナラク・ニンジャソウル
☆◉即死耐性:即死効果を無視し、痛打2D6とみなす
カイシャク不能、体力0以下で撤退する
☆◉ヘルタツマキ:精神力1を消費しワザマエ判定(H)、2ターン連続使用不可
自身を中心とした5×5マス以内の全員にスリケンによる1ダメージ(回避N)
射撃ではなく特殊範囲攻撃で、出目66ならダメージ2(回避H)
★◉不浄の炎:ニンジャへの近接攻撃に火炎ダメージ+1
攻撃フェイズ開始時に精神力1消費すると手番中の火炎ダメージを+2にする
精神力2消費すると大型ブラスナックルを生成し、火炎ダメージを+3にする
☆◉肉体破壊:素手装備時のみ連続攻撃+1、出目55で殺伐発生
☆◉ナラクの知識:回避や抵抗が可能なジツに対する判定難易度-1
☆◉古の恐怖:マップ上の敵ニンジャ全員は手番開始時にニューロン抵抗判定UH
失敗した者は戦闘中のナラクへの近接攻撃判定難易度+1 判定は1回のみ
★◉ヒサツ・ワザ:カトン注ぎ込み
近接攻撃で「ナムアミダブツ」発生時、精神力2と回避ダイス2を消費し発動(H)
回避難易度UH 命中すると火炎ダメージボーナス+2D3
★★★◉共振装束生成
★★★◉欠損部位再生:即死耐性、部位損傷回復(精神力1と攻撃手番消費)
★★★◉半神的存在:ニューロン×3で体力換算
◉◉タツジン:ジュージツ 近接攻撃回避判定難易度-1(素手・スリケン装備時のみ)
●ワザ:マウントタックル 出目66で発生、痛打+1、回避難易度H
マウントをとった敵に対する残り連続攻撃は回避不能(殺伐発生せず)
●ワザ:フランケンシュタイナー 出目666で発生、殺伐出目2(頭部痛打)
回避難易度H マウント状態に入る
●ワザ:受け流し 回避判定に出目66を含み迎撃を発生させた場合、
1ダメージの代わりに回避不能の回避ダイスダメージ2を与える
●連続攻撃3、連射2、マルチターゲット、時間差
◉◉憎悪:ニンジャソウルの闇
◉憎悪:ソウカイヤ、ザイバツ
◉サイバネ殺し:戦闘用サイバネ化部位への部位破壊による能力値ダメージ+1
◉ランスキック:脚力で攻撃判定(N)、連続攻撃2を選択可能
基本ダメージ1、命中すると殺伐出目1(痛打+1&弾き飛ばし)か出目D6
「鉄拳」が乗るため痛打+2&弾き飛ばし&装甲貫通1になる
◉鉄拳:素手による近接攻撃に痛打+1&装甲貫通1
◉スリケンの見切り:スリケンや弓矢の回避判定難易度-1
◉ツヨイ・スリケン:精神力1を消費しワザマエ判定(UH)、2ターン連続使用不可
非移動時のみ使用可能 視線が通る敵へスリケン射撃(回避UH)、ダメージD6
◉ヒサツ・ワザ:ポン・パンチ 出目666で発動、回避ダイス2か精神力1を消費
痛打+2D3(回避UH)、弾き飛ばし
◉ヒサツ・ワザ:サマーソルトキック
回避判定に出目66を含み迎撃を発生させた場合に発生(ターン中1回のみ)
迎撃ダメージD3、回避UH 体力ダメージを与えた敵のニューロンとワザマエに2ダメージ
能力値合計:39
「ドーモ、ナラク・ニンジャ=サン」己に憑依したニンジャソウルの名を呼ばれ、彼は恐怖を感じながらもアイサツを返す。「イグゾーションです!」上空には雷雲が渦巻き、雷鳴が轟き、大地が振動する。両者のキリングオーラが天地を揺るがす!……最終決戦だ!「『イイイヤァアアアーーッ!』」
戦闘再開
1ターン目
ナラク・ニンジャとイグゾーションが激突!凄まじいカラテが荒れ狂い、稲妻を伴った二つの竜巻が発生!「『イイイヤァアアアーーッ!』」大地に亀裂が走り、邸宅とアズキ農園が崩壊、砕け散る!カラテの応酬は、何分に及んだであろうか。だが……やがて……イグゾーションが押され始める!
『イイイヤァアアアーーッ!』「グゥワァアアアーーーッ!」ゴウランガ!ゴウランガ!彼の胴体に刻印された「忍」「殺」の文字が禍々しく輝き、内側からジゴクめいた黒い炎を放って焼き苛む!これまで彼が搾取し、消耗して来た、無数のモータルの命が……憎悪が、内なる炎となって燃え上がる!
「『イイイヤァアアアーーッ!』」死力を振り絞った双方のカラテの応酬!応酬!応酬!応酬!「グワ……アババババーッ!」ゴウランガ!ついにイグゾーションが力尽き、のけぞり、よろめく!ザイバツ最強のグランドマスターの最期……否!否!否!「アババババーーーッ!」全力セルフ・バリキ!
イグゾーションはカラテ竜巻の中、両腕を広げて空中へ舞い上がる!「我々はッ!我々はッ!……支配しなければならないッ!伝統も作法も知らぬ、蛮人の如き下層民どもを!我々貴族は、支配し続けねばならんのだッ!ロードがお導きになる、栄光に満ちた千年王国の中で!それが我が使命!」
「私は死なぬ!永遠に支配する!……マズダ・ニンジャ……そしてロード・オブ・ザイバツよ!我に力をッ!」イグゾーションが両手を天高く掲げると、おお、見よ!おびただしい数のバイオスズメやバイオコンドルが空中に集まって来たではないか!いずれも目を血走らせ、異常興奮状態にある!
爆裂した死体の血肉、撒き散らされたアズキ、そして凄まじいカラテ衝突が巻き起こした竜巻……さらにマズダ・ニンジャの力によってか、無数の鳥が呼び集められたのだ!古事記によれば、かつてイランを支配したマズダ・ニンジャは猛禽を呼び寄せて乗騎とし、敵の死体を食わせたという!
2ターン目
「ガンバルゾー!Wasshoi!」イグゾーションは血反吐を吐きながら己を鼓舞し、跳躍!急降下してきた猛禽を踏み台にし、次々とバリキ爆弾化しながら、天へと飛び上がる!「イイイヤァアアアーーッ!」ナムアミダブツ!まるで平安時代のニンジャ神話だ!爆弾化した猛禽類がナラクへ殺到!
東から迫る宵闇の中、輝きながら迫るそれは、死して再び昇る太陽の鳥、不死鳥(フェニックス)の如し!KABOOM!KABOOM!KABOOM!KABOOM!KABOOOOOOM!『グゥワァアアアーーーッ!』命中、爆発!ナラクといえども躱しきれぬ!だが……なおも動く!西に沈む太陽を背に!
『Wasshoi!』ゴウランガ!ナラク・ニンジャも猛禽を踏み台とし、イグゾーションへ飛びかかる!しかし、距離が足りぬ!ならば!ナラクは手首から燃える炎の鞭を伸ばし、イグゾーションの足首に絡みつけた!「何ッ!?」ナムサン!それはドウグ社製のフックロープ!それに炎が纏い付いている!
『グハハハハハ!捕まえたぞ、マズダ・ニンジャ=サン!』ナラクは兇悪に嗤う!『天から地を見下ろす、神気取りのニンジャめが!地面に引きずり下ろしてドゲザさせ、大地のありがたさを思い知らせてくれようぞ!』ぐいとロープを引っ張ると、猛禽の上のイグゾーションは体勢を崩し……落下!
「おおおおおおーーーーッ!!」イグゾーションはカラテを振り絞り、フックロープを引きちぎる!だが目の前にナラクが!『遅い!イイイヤァアアアーーッ!』SMAAAASH!大型ブラスナックルが牙を剥き、空中でイグゾーションをとらえた!「グワ……アババババーッ!」な……ナムアミダブツ!
『ニンジャ殺すべし!』イグゾーションの胴体が、腹が、ひきちぎられた。上半身と下半身に分断された彼は、血とハラワタを撒き散らしながら、砂塵まみれの大地に顔面から激突した。「サヨ……ナラ!」KABOOOOOOOM!イグゾーションは爆発四散した。
戦闘終了
エピローグ
ナラク・ニンジャは地面に降り立ち……片膝をついた。肉体もニンジャソウルも限界が近づいている。キンボシ・オオキイではあったが、このままでは……少なくとも、フジキド・ケンジの肉体は滅びかねない。そうなれば、ナラク・ニンジャは宿主を失い、またも長い眠りにつくこととなろう。
「「「ザッケンナコラー!」」」「「「スッゾコラー!」」」農園を警備していたクローンヤクザ部隊が、大地の崩壊や瓦礫を乗り越えながら、ようやく戦場に到達した。手にはアサルトライフルやマシンガン、チャカガン。サイバー馬やバイクなどにまたがる者もいる。惰弱な敵どもだが、今は。
『イィヤーッ!』ナラク・ニンジャは立ち上がり、大きく身を捩ると、無数のスリケンを瞬時に生成、投擲した。ヘルタツマキ!「「「「「アバババババババーッ!」」」」」多数のクローンヤクザが薙ぎ払われて死ぬ。だが、自我の薄いクローンヤクザからは……ナラクに届く力は、実際乏しい。
「「「「「ゲーッ!ゲーッ!」」」」」爆弾化されなかった無数の猛禽が一斉に急降下し、クローンヤクザやイグゾーション、農園奴隷たちの死体に飛びかかった。生き残ったクローンヤクザたちにもそれは襲いかかり、ナラクが逃げ延びる時間を稼いでくれた。だが動物の自我もナラクの力にならぬ。
『足りぬ……血が、肉が、怨念が……!』ナラクは呪詛めいて呟きながら、赤黒い粒と化して地面に染み込んでいく。『セキバハラ……のような……戦場があれば……!』ナラクの声は弱々しくなり、消えていく。深い闇の底へ。
【ディープ・レッド】終わり
リザルトな