忍殺TRPGリプレイ【ジ・ユニヴァース・イズ・ベリー・ストレンジ】02
前回のあらすじ:キョート共和国、アッパーガイオンの男子高校生、グンペイ・ワキボシには秘密がある。夜な夜なアンダーガイオンの歓楽街に繰り出し、サイバーゴス「リゲル」となって愉しんでいるのだ。だが、彼の前に幼い頃の女友達アキ・トナミが現れた。シュラバ・インシデント!
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「え、アバッ……え?」胸の穴から血が噴き出す。メイサの眼の前が暗くなり、血の気が引き、膝の力が抜けて、崩れ落ちる。リゲルも巻き込んで。「うおっ、と!どした!?」「たす、け、て」メイサは口と鼻から血を流し、事切れた。「アイエッ!?血、血!?」リゲルは気づき、慌てた。
「……お、おい、メイサ=サン。なんだよ、これ」リゲルには何がなんだかわからない。周囲のサイバーゴスたちは、サケやドラッグ、ドリンクに酩酊していて状況がわからない。リゲルはメイサの胸の穴に手を当て、血を止めようとした。「無駄よ。私が殺したの」アキは微笑み、立ち上がった。
リゲルは血まみれだ。「え?」「行こうよ、グンペイ=サン。私と一緒に二人きりで。永遠に」アキは手を伸ばす。「……あ」リゲルの顔から血の気が引いた。「アイエエエエーーーーーエエエエエ!!?」
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……それから、どうなったか。リゲルの記憶は曖昧だ。アキは彼を軽々と米俵のように抱え上げ、色付きの風と化してサイバーゴス・クラブを飛び出した。華奢な少女の姿からは信じられない力だった。全身をサイバネ改造でもしていたのか? それとも……罪罰罪罰罪罰……なんだっけ……。
「アハハハ!学校も友達も勉強も!会社もガイオンもキョートも!ぜんぶぜんぶなくなればいい!」アキは狂った声で笑い、叫び、アンダーガイオンを駆け抜ける。勝手知ったる庭のように入り組んだ隠し通路を潜り抜け、大型リフトへ無断乗車!アンダーの中層以下は、リゲルも知らぬ領域だ……!
観光客は猥雑なアンダーガイオンに立ち入らぬことを推奨されているが、実際には非合法物品や違法マイコサービス、過激なオスモウピットファイトなどに惹かれて、多くの観光客が大型リフトに乗って地下都市へと足を踏み入れている。安全が保障されているのは、アンダー第5階層までだ。
タタミ20畳ほどの第8階層行のリフト。激しく金属部と滑車が擦れバチバチと火花が散る。上層から染み出してきた汚染水の水滴が暗闇の中へ落ちていく。鉄網状の足場は、いかにも頼りなく揺れていた。「もう少しよ」「ハイ」リフトに乗っているのは他にブディズムパンクスが二人だけ。
「ブッダがある男をジゴクから助け出すため、切れやすい蜘蛛の糸を垂らした。ナンデ?」蛍光ブッダヘアーの二人は難解なスカム禅問答を繰り返す。「ゲイのサディストだから」「正解です」。彼らのあまりに異質な思考回路と、露出した逞しい二の腕は、リゲルを酷く恐怖させた。
リフトが第8階層の大地をノックする。第6-8階層の環境は劣悪だ。工業区画であり、中心部に居住施設はほぼ存在しない。強制収容所じみたトーフ工場、ショーユ工場、コケシ工場。あとは実際安い歓楽街が並ぶだけである。「アハハハ!着いた!」「たす、けて」パンクスたちは黙っている。
その時!「イヨオーッ!」「イヨ!イヨオーッ!」「イヨオーッ!」ナムサン!リフト昇降口に五人組の武装集団が突入してきた!黒いツナギ、オキナやオカメや武田信玄のラバーマスク、手にはチャカやカタナ!「アイエエエ!」「狂言強盗団だ!」ブディズムパンクスたちが逃げ惑う!
◆狂言強盗団(種別:モータル)×5
カラテ 2 体力 1
ニューロン 1 精神力 1
ワザマエ 3 脚力 2
ジツ 0 万札 1
攻撃/射撃/機先/電脳 3/ 3/ 1/ 1
◇装備や所持品
◆カタナ、チャカガン:ダメージ1
▶戦闘用サイバネ:攻撃ダイス+1
能力値合計:6
「イヨ!イヨーッ!」BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!「「アババーッ!」」ブディズムパンクスたちが狂言強盗団に射殺される!リフトで降りてきた者を殺し、金品を奪う気だ!「イヨ!イヨーッ!」「イヨ!」「イヨーッ!」リゲルとアキにも銃口が向けられる!「アイエエエ!」リゲルは恐れた。
サイバネがあるとはいえ、五人の武装したヨタモノに立ち向かえるほどではない!殺される!「邪魔ね。安心して、ブッ殺してやるわ」アキはリゲルをリフトの隅にしゃがませ、狂言強盗団にアイサツした。
「ドーモ、タビトです」周囲の空気が重くなる。一触即発アトモスフィア!
戦闘開始
イニシアチブ:タビト/TB(4)→狂言強盗団(1)
TBはスリケン、8D6[41351654]成功。狂言強盗団1体即死。残り4人はチャカガン、[521][343][411][221]3発成功。TBは[632631]回避。
「イヤーッ!」タビトはスリケン投擲!「アバーッ!」ナムアミダブツ!オキナ・オメーンの強盗が脳漿を撒き散らして即死!強盗たちは全員薬物をキメており怯まない!「イヨオーッ!」「イヨ!」「イヨオーッ!」「イヨオーッ!」BLAMBLAMBLAMBLAM!チャカガンを一斉射撃!食らえば即死!
「イヤーッ!」タビトは華麗なブリッジを繰り出し、銃弾を紙一重で回避!「イヨオーッ!?」「イヨ!?」「イヨオーッ!?」「イヨオーッ!?」強盗たちは驚愕!「無駄よ!イヤーッ!」再びスリケン投擲!
8D6[41311362]成功。3人はチャカ、[211][534][352]2発成功、TBは[546345]回避。TBはスリケン、[33324151]成功。2人はチャカ、[115][356]2発成功、[116661]回避。スリケン[41414326]成功、チャカ[556][246612]回避。スリケン[25356533]成功。狂言強盗団全滅。
「アバーッ!」命中!オカメ即死!「イヨオーッ!」「イヨ!」「イヨオーッ!」BLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」銃弾を回避しスリケン!「アバーッ!」ゴリラ即死!「イヨ!」「イヨオーッ!」BLAMBLAM!「イヤーッ!」銃弾を回避しスリケン!「アバーッ!」ハンニャ即死!
「イヨオーッ!」BLAM!「イヤーッ!」銃弾を回避しスリケン!「アバーッ!」武田信玄即死!狂言強盗団は瞬く間に全滅した!ナムアミダブツ!
戦闘終了
「シューッ……」アキは……タビトは無傷だ。息を切らしてもいない。「あ、あああ、ああ」リゲルは、グンペイ・ワキボシは震えながら涙を流し、尿失禁を必死でこらえる。ニン罪罰罪罰罪罰……ニンジャ。平安時代をカラテによって支配した半神的存在。それが今、目の前にいる。彼女はニンジャだ。
「ニンジャ……ナンデ……!?」絞り出された声に、タビトは振り向いた。「そうよ。私はニンジャになったの。カラテは強くないけど、スリケンを出して投擲したり、銃弾をまとめて避けたりできるわ」「アイエエエ……!」「怖がらないで、っていうのも無理か。モータルだもんね、まだ」
タビトはリゲルを軽々と担ぎ上げた。「ニンジャってすごいわよ。永遠に若く美しいままでいられる。きっと、あなたもなれるはず。だって、星辰がそう告げているんだもの……ウフフフフ」「……ムン」リゲルはあまりのことにニューロンがショートし、昏倒した。
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……一方、その頃。「クソが……!あの女、絶対……ブッ殺す……!」メイサは搬送先の病院、霊安室で目を覚ました。完全に死んでいたはずだが、今はなんともない。胸と背中の傷はふさがっている。サイバネアイの動作異常なし。そして。「イヤーッ!」メイサはベッドから飛び降り、ドアにキック!
KRAASH!頑丈なドアは一撃でひしゃげた!なんたるカラテだ!「イヒ、イヒヒヒ!スゴイ!アタシ、完全にニンジャだわ!」彼女は自分が突然授かった力に驚き、喜んだ。今ならわかる。あの女、アキもニンジャだ。やつが自分にスリケンを投げつけ、一撃で殺したのだ。だが、今ならば!
「さて、まずはあの女を探さなきゃね」メイサは色付きの風と化して霊安室を飛び出し、病院の外へ向かった。どうやって探すか?
調査判定、難易度UH。ワザマエで6D6[225464]成功。即応ダイス+2。
まずは、さっきのサイバーゴス・クラブへ戻る。そのまま戻ればユーレイ扱いで騒ぎになるし、隠れてだ。……近づくにつれ、アキの放っていたニンジャアトモスフィアが感知できるのに気づく。ナメクジが這った跡のようにカラテの流れ、エテルの乱れがほのかに輝く足跡として視えるのだ。
「アハハ!便利!」メイサは嘲笑い、しめやかに追跡する。ジゴクから蘇ったユーレイが、ニンジャを殺すために駆け抜ける!
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アンダー第八層の隠れ家。女ニンジャのタビト……アキ・トナミは、制服姿のグンペイにしなだれかかる。血に汚れた衣服は捨てられた。「あの後、いろいろあってね。アンダーガイオンに逃げ込んで、生き残るためにハッカーになったわ。結構苦労したの」「アッハイ」グンペイは怯えている。
「あなたのことも、ハッキングですぐ突き止めた。アッパーのハイスクールに通ってるって。逢いたいとは思ったけど、迷惑かかるかなって。アンダーの女に突然押しかけられたら、迷惑だって思うでしょ?私、耐えたわ」「アッハイ」「……でも、ニンジャになったのよ」「ど、どうして」
「死んだのよ。ビズに失敗して、ヤクザに踏み込まれて……そして、蘇ったの。ジーザスのようにね」アキは微笑んだ。「ヤクザたちを皆殺しにして、気づいたわ。もう我慢するのはやめにしたの。私は力を手に入れ、永遠に等しい存在になった。だから、あなたもそうなるはず。そうでしょう?」
グンペイは震え、歯をカチカチ鳴らした。この女は、狂ってる。自分を殺す気だ。ニンジャにするとか言って。そんなことがあり得るのか?そのまま死ぬだけでは?メイサのように。「あの女のこと、考えてるでしょ?」「アイエッ、イエ」「わかるのよ。ニンジャだから、心が読めるの……」
逆らえば死ぬ。従っても死ぬ。ナンデ?ニンジャ、ナンデ?「ここで永遠に……ううん、アンダーじゃやっぱダメよね。アッパーに行こう。そうだ、あそこがいい。オマモリをあなたに渡した場所……一緒に星空を見た、思い出の場所で……あなたは、ニンジャになるのよ。私の手によって」
「ハイ」グンペイは頷いた。逆らえば死ぬ。それにひょっとしたら、自分もニンジャになれるのかも知れない。彼は将来に対して楽観的だ。ニンジャになれば、アキとガイオンを飛び出して海外へ……「あ、そうだ」「なに?」「お、オマモリ、さ。身につけてないけど、俺の部屋にあったかも」
グンペイは思い出した。学習机の引き出しの中に、確かあったはずだ。まだ捨てていなかったと思う。「よかった。持っていてくれたのね。じゃあ、そうしましょ!」アキは目を細め、グンペイの手を握った。
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タビト/TBとリゲル/RGは調査判定、難易度UH。ワザマエを用いる。7D6[2422262]成功、6D6[632146]成功。
二人はリフトに戻る。狂言強盗団の死体は、付近の住民に運び去られていた。だが……リフトはまだ降りて来ていない。しばらく待つことになりそうだ。それに何か不穏な気配がする。「別のルートで行きましょう」「うん」アキはアンダーガイオンの地理に詳しい。「こっちよ」
……しばらくして、リフトが降りてきた。乗っているのはニンジャとなったメイサ。彼女はサイバネアイをぎょろつかせ、猫の瞳のように闇の中を視、微かに漂うニンジャアトモスフィアを感知する。
調査判定、難易度UH。ワザマエで6D6[466112]成功。
しめやかに闇の中を駆け抜け、アキの隠れ家と思しき場所を見つけ、忍び込む。だがもぬけの殻だ。「さっきまで誰かがいたアトモスフィアがある。ニンジャと、もうひとり。ベッドのシーツがくしゃくしゃで濡れてる。前後してたのかしら」ニンジャ第六感と女の勘を働かせ、状況を推理する。
ここに彼を連れ込んで、いちゃついて、よもやま話して……それから、どうするか。自分ならアッパーに行く。一緒に星を見たい、とかロマンチックなことを言ったのだろう。彼の家もアッパーにあるし、きっとそうだ。行き違いか。いや、リフトはさっきまで上にあったはず。つまり……。
「どこか別の道を辿ったわけね」メイサはリフトの昇降口まで戻り、さらに追跡する。女の執念は恐ろしい!
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タビト/TBとリゲル/RGは調査判定、難易度UH。ワザマエを用いる。7D6[6544513]6D6[444655]成功。
アッパーガイオン、リゲルの……グンペイ・ワキボシの部屋。両親は今夜も残業で戻らず、グンペイの夜遊びを知りもしない。成績と態度が良ければ文句も言わないのだ。「……あった」「よかった」グンペイとアキは学習机を探り、オマモリ・タリスマンを見つけた。「お揃いだね」「うん」
アキは微笑み、顔を赤らめる。目には涙。グンペイとの思い出とオマモリが、彼女の心の支えだったのだ。「これで、グンペイもニンジャになれるね」たとえ彼女が、狂った殺人鬼でニンジャだとしても。「……そうだな」グンペイは弱く笑った。もう、それでいいと思った。死ねばそれまでだ。
カチグミの家に生まれ育って、好き勝手やって、恋に狂ったマブな女に殺される。それもまた、いい人生ではないか。マッポーの世で長生きするよりマシかも知れない。「じゃあ、行こうか」「うん」二人の秘密の場所、あの小さなシュラインへ。時刻はウシミツ・アワー、空には満天の星と満月。
なんてロマンチックなのだろう。グンペイは目を細めた。
【続く】
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