国民総セカンドクリエイター時代
実はこの文章も昼寝から飛び起きて衝動的に書いている。向こうから見れば野次であり本人の許可も得ていない。なんなら僕も氏のことをよく知らないし、氏に至っては僕のことなど微塵も知らないのだ。だが思考を毎日吐き出して内省しながら日々自分のやりたいことに近づいていく僕にとって、良い題材は今この瞬間使わないわけにはいかない。恐縮だがライター「っぽいもの」になりきり、今日は遠隔から勝手に参戦させて頂いている。
事の発端
この前イベントをしに行った時にオーナーさんに教わったのだが、しんろくさんという方がいるらしい。イベンターで、このクリスマスは日暮里のホールを何も決まらない状態で丸一日貸してもらったので、文字通り「何か」みんなでやろうというとんでもなく抽象的なイベントをしているようだ。
この2週間もない会期の中で「何か」をやるには、正解もない状態から参加者がおのおの頭を使って企画「っぽいもの」を考え、プログラム「っぽいもの」を作り、お客「っぽいもの」になりきり、出演者「っぽいもの」になりきらなければならない。そしてそれらを全員が主体的に考えるのである。
本当にやっちゃうのかという感じだが、見ていてわくわくする。
急に面白そうなことが拡散され、急にオフラインで出会った人々が急に仲良くなる様はどうしても古の2chのノリを感じてしまう。僕は当時の2chのスレッドをリアルタイムで追えたことはないが、まさか2023年にこんなものを刮目できるとは思わなかったし、僕自身も噂を聞けて本当に嬉しかった。
別に話を聞いただけと言えばそうだが、謎のエネルギーがここまで来たという事実が非常に大事なのだ。それは僕がおそらく大切にしたいものであり、また今の世の中に不足しているものでもあると思う。何か、この「やっちゃったらできたという組織効力感」を僕は守っていきたいのだ。
配信もやっている。「配信担当さんっぽいもの」が当日までに名乗りを上げたということなのだろう。皆できることを持ち寄っているのが本当に素晴らしい。わがままでもいい、怒られてもいい、この貴重な瞬間を記録したいという思いに駆られた僕はPCの前でその狂気的な全貌を見守ることにした。
会場にはゴールドスポンサー「っぽい方」もいらっしゃって、その方は自分の仕事の紹介をするわけではなかったというから驚きである。知り合いのアイルランド在住のギタリストを紹介したいという使命で来られたようだ。何と素晴らしい。実際に会場には以下のPVがCM「っぽく」流れた。
そしてプログラムが始まると演奏者の皆様がぞろぞろと集まってきた。8割くらいはしんろく氏自身も知らない方で、全員この日の為に突貫工事でプログラムを持ってきたのである。アマチュアの方も多いが、都内に住むお祭り好きなプロの方もちらほらいるようで、たまにマジモンが紛れている。
中には大阪や福井から来られた方もいるというから驚きである。出身もバックボーンも違う、楽器もボーカルも照明もお客さんもやりたいからやる。皆その代わり楽しむことに関して妥協はしない。その一生懸命さと一体感、程よい緊張感が着実にプログラムを終演という名の成功に導いていく。
東京藝術大学大学院卒、天皇陛下の前で君が代を独唱したテノール歌手の田口昌範氏。声楽に詳しくない僕でもこれは聴き逃してはならないということは容易に分かる。圧倒的歌唱力を前に画面の前で盛大に拍手してしまった。氏は声楽を学ぶとこんな風に歌えるんだということを世の中に伝えるためにポップスの仕事も始めたのだという。こうした存在が世に広まってほしい。
このようなとてつもないゲストが現れる規模のイベントは氏も初だという。
終幕まで見届けた僕はひたすら感動してしまった。もちろん推しやプロのライブにお金を払ってクリスマスを過ごされる方も、沢山いるだろう。それはそれで素晴らしいが、僕は自分が半人前の存在であること、またこうした芸術、文化を体現した仲間が実は近くにいること、たくさんの人々が本当の感情を直視して努力していること、この活動の場が提供され、こうして刮目する機会を手にしたこと、そのかけがえのなさ、全てが素晴らしいのだ。
国民総セカンドクリエイター時代、あらゆる人々が自分の描きたい世界を描けるようになり、僕もまたその潮流に背中を押されこうして趣味と仕事の合間のような作業を細々と続けている。この記念すべき日に1年の活動を振り返りながら、自分の感じた大切なものを形にする勇気を一瞬一瞬振り絞り、それらが出来上がっていくことにわくわくしている。もちろん恐れこそあるが、来年はこうした人との繋がりを、関係性をもっと自分自身大切にしながら、かけがえのないエネルギーを放射できるような存在になりたいと思う。
さいごに
出すならもうちょっとましな額にしたいと思いつつ、僕もほんの少しだけ上記リンクから寄付させて頂いた。こちらからイベント費用は受け付けているとのことなので、もし応援したい方がいればご協力いただきたい。